320 / 414
第八章 戦いの先にある未来
22話 ルードと不死竜
しおりを挟む
ドラゴン、それはモンスターの中でも絶対的な強者と呼ばれる存在らしい。
何でらしいって言うのかと言うと、ぼくが戦った事がある相手はグロウフェレスが呼び出した個体だけど、あの時はダートの空間魔術のお陰で楽に倒す事が出来た。
他には心器の能力を使ってドラゴンへと姿を変えたガイストだけど、実際に戦ったのは実父である前覇王ヴォルフガング・ストラフィリアだ。
あの時は弱体化した神に一撃で致命傷に見える肉体の損傷を与えたりした辺り、本物のドラゴンだったらどれほどの強さなのか、ぼくでは予想も出来ないけど、以前ストラフィリアに滞在していた時に調べた内容によると、若い個体はCランク冒険者でも相手になるけど年月を重ねて成長した歴戦の個体になると、高ランク冒険者でも勝つ事が困難な相手であり、余程の事が無ければ戦う事すら避けなければいけないとの事で……、メイメイとぼくを除いた全員が咆哮に乗せた魔力の振動で身体が竦んで動けなくなってしまう。
「皆死んじゃえっ!」
「レースよ、薬は飲んだのじゃ?」
「……うん、ドラゴンのアンデッドが作られた時に急いで何とか」
「ならば良しなのじゃ、効果は直ぐに出るからのぅ、心器を出して早速使って見るのじゃ」
「……分かった」
言われるがままに心器の大剣と長杖を顕現させると怪力を発動させ、治癒術を使ったり力を抑えたりせずに一歩前に出る。
本来ならそれだけで足の骨が折れて、皮膚を突き破り大量の出血が起きてもおかしくない筈だが、身体に痛みはない。
「その怪力とやらの本当の威力余に見せて見るのじゃ!」
咆哮を上げながらこちらへと突っ込んでくるドラゴンに向けて全力で大剣を叩きつける。
そこに流派等は無く、刃を立てる事もしない、心器の大剣で力任せにぶん殴れば良いだけ、暫くケイに修行をつけて貰っていた時に実感したのだけれど、ぼくはやっぱり武器を使う事に関して才能が無い。
それについて一度彼に相談した事があるけど……
『確かに才能は無いっすけど、修行と実戦で積み重ねた経験は裏切らなっす、俺に出来るのは大剣の基礎を教える事位っすけど、そうっすね、今は戦いになったら刃のついてる方で相手をぶん殴るって考えて置けばいいっすよ』
と言われたから今はとりあえず教わった通りにしていればいい。
「……え?」
「ほぉう、これは面白いのじゃ……」
腐敗した体に人の頭部や手足が無数に生えているドラゴンゾンビの前脚が弾け飛び横倒しになる。
……おかしいな、言われた通りに刃のある方を叩きつけたのに手首に凄い衝撃が来た。
驚いて何処に当たったのか確認すると刃の方ではなく、横の部分で殴りつけるような形になっていて困惑してしまう。
「斬った筈なのにおかしいな……」
「最初から大剣の横の部分で豪快にぶん殴っておったぞ?」
「えぇ……?」
「ぼくの友達をっ!――には悪いけど、お兄ちゃんは死んじゃえ!」
起き上がれず藻掻くドラゴンゾンビの周囲に再び灰が集まるとそこだけ、骨が無いのかぐにゃりと歪んだ巨大な人の脚になる。
ただそれでも体重を支えるのには充分なのか、残った三本の正常な脚を使い器用に起き上がると、人の脚を引きずりながらこちらに再び飛び掛かろうとするが……
「飛び掛かるんじゃなくて、ケイスニルと戦った時みたいに口から炎を吐いてっ!」
ルードの声に反応して動きを止めると、四本の脚で踏ん張る姿勢を取りぼく達に向けて大きく口を開ける。
「……これはレース殿だけでは分が悪いかもしれんのぅ、おぬし等まだ竦んで動けないのじゃ?」
「ごめんなさいメイメイ様、あの雄たけびの魔力に神経を麻痺させる効果があったみたいで……」
「馬鹿じゃのぅ、それ位治癒術が使えるなら即座に魔力の波長から読み取ってかかる前に治さんとダメじゃよ?ほら、レース殿は一瞬でそれが出来たじゃろ?」
「私だって反応出来たおかげで時間はかかっても少しだけ動けるようにはなりましたけど……、レースさんと同じレベルを求めないでください」
「……おぬしはこやつの嫁になるのじゃろうに情けない、栄花の英雄の娘とはこの程度のものじゃったか、ならカエデは鑑定の魔術が使えた筈じゃし、それでレース殿とあそこの灰で出来たドラゴンゾンビを鑑定するのじゃ」
カエデは心器のガラスペンを顕現させるとぼくと今にも何かを口から吐き出しそうなドラゴンゾンビを見て、空中に魔力の文字を書き始める。
そこには――
キノス・ルミヒウタレ・ヴォルフガング
肉体強化 10(+7)
魔術適正 8
治癒術適正 8
力10(+4) 魔力8 体力6 敏捷8(+3) 器用5 賢さ8
母さんから貰った偽装の効果が付与された指輪しか今は持ってないから、母親がぼくに名付けてくれた名前が表示されている。
そしてドラゴンゾンビの方はと言うと
ドラゴンゾンビ
使役者:ルード・フェレス
魔力適正
肉体強化 10
魔術適正 9(-1)
治癒術適正 5(-3)
能力
力10 魔力8 体力10 敏捷5(-5) 器用0(-5) 賢さ0(-3)
マイナスの部分は多分、アンデッドになった事で本来の能力から低下しているという事だと思うけど……
「ほぅ、レースという名前は偽名でじゃったか」
「偽名じゃないよ、この名前はぼくを産んでくれた人が付けてくれた名前なだけで、本当の名前はレースの方」
「何やら複雑な事情がありそうじゃのぅ……、それよりも思ったより能力が高いようじゃが、このプラスと書かれた範囲が【怪力】で上昇した能力じゃな……、肉体強化の適正が低いのにこんなぶっとんだ能力を使ったらそりゃ体が持たぬと言うものじゃよ」
「でも今は薬のおかげで耐えられてるから大丈夫、メイメイありがとう」
「礼を言っても余が照れるだけでそれ以上の物は出ないのじゃよ?……それよりもドラゴンゾンビの能力、これはヤバいのぅ、気が変わったから余も力を貸すのじゃよ」
……メイメイが腰に付けている薬が入ったポーチを開けると、【身体能力上昇薬:子供用いちごミルク味】と書かれた箱を取り出し中から錠剤を手に取ると口に含み飲み込むと、『おぬし等は余のかっこいい姿を特等席で見る事を特別に許してあげるのじゃ!』と獰猛な笑みを浮かべるのだった。
何でらしいって言うのかと言うと、ぼくが戦った事がある相手はグロウフェレスが呼び出した個体だけど、あの時はダートの空間魔術のお陰で楽に倒す事が出来た。
他には心器の能力を使ってドラゴンへと姿を変えたガイストだけど、実際に戦ったのは実父である前覇王ヴォルフガング・ストラフィリアだ。
あの時は弱体化した神に一撃で致命傷に見える肉体の損傷を与えたりした辺り、本物のドラゴンだったらどれほどの強さなのか、ぼくでは予想も出来ないけど、以前ストラフィリアに滞在していた時に調べた内容によると、若い個体はCランク冒険者でも相手になるけど年月を重ねて成長した歴戦の個体になると、高ランク冒険者でも勝つ事が困難な相手であり、余程の事が無ければ戦う事すら避けなければいけないとの事で……、メイメイとぼくを除いた全員が咆哮に乗せた魔力の振動で身体が竦んで動けなくなってしまう。
「皆死んじゃえっ!」
「レースよ、薬は飲んだのじゃ?」
「……うん、ドラゴンのアンデッドが作られた時に急いで何とか」
「ならば良しなのじゃ、効果は直ぐに出るからのぅ、心器を出して早速使って見るのじゃ」
「……分かった」
言われるがままに心器の大剣と長杖を顕現させると怪力を発動させ、治癒術を使ったり力を抑えたりせずに一歩前に出る。
本来ならそれだけで足の骨が折れて、皮膚を突き破り大量の出血が起きてもおかしくない筈だが、身体に痛みはない。
「その怪力とやらの本当の威力余に見せて見るのじゃ!」
咆哮を上げながらこちらへと突っ込んでくるドラゴンに向けて全力で大剣を叩きつける。
そこに流派等は無く、刃を立てる事もしない、心器の大剣で力任せにぶん殴れば良いだけ、暫くケイに修行をつけて貰っていた時に実感したのだけれど、ぼくはやっぱり武器を使う事に関して才能が無い。
それについて一度彼に相談した事があるけど……
『確かに才能は無いっすけど、修行と実戦で積み重ねた経験は裏切らなっす、俺に出来るのは大剣の基礎を教える事位っすけど、そうっすね、今は戦いになったら刃のついてる方で相手をぶん殴るって考えて置けばいいっすよ』
と言われたから今はとりあえず教わった通りにしていればいい。
「……え?」
「ほぉう、これは面白いのじゃ……」
腐敗した体に人の頭部や手足が無数に生えているドラゴンゾンビの前脚が弾け飛び横倒しになる。
……おかしいな、言われた通りに刃のある方を叩きつけたのに手首に凄い衝撃が来た。
驚いて何処に当たったのか確認すると刃の方ではなく、横の部分で殴りつけるような形になっていて困惑してしまう。
「斬った筈なのにおかしいな……」
「最初から大剣の横の部分で豪快にぶん殴っておったぞ?」
「えぇ……?」
「ぼくの友達をっ!――には悪いけど、お兄ちゃんは死んじゃえ!」
起き上がれず藻掻くドラゴンゾンビの周囲に再び灰が集まるとそこだけ、骨が無いのかぐにゃりと歪んだ巨大な人の脚になる。
ただそれでも体重を支えるのには充分なのか、残った三本の正常な脚を使い器用に起き上がると、人の脚を引きずりながらこちらに再び飛び掛かろうとするが……
「飛び掛かるんじゃなくて、ケイスニルと戦った時みたいに口から炎を吐いてっ!」
ルードの声に反応して動きを止めると、四本の脚で踏ん張る姿勢を取りぼく達に向けて大きく口を開ける。
「……これはレース殿だけでは分が悪いかもしれんのぅ、おぬし等まだ竦んで動けないのじゃ?」
「ごめんなさいメイメイ様、あの雄たけびの魔力に神経を麻痺させる効果があったみたいで……」
「馬鹿じゃのぅ、それ位治癒術が使えるなら即座に魔力の波長から読み取ってかかる前に治さんとダメじゃよ?ほら、レース殿は一瞬でそれが出来たじゃろ?」
「私だって反応出来たおかげで時間はかかっても少しだけ動けるようにはなりましたけど……、レースさんと同じレベルを求めないでください」
「……おぬしはこやつの嫁になるのじゃろうに情けない、栄花の英雄の娘とはこの程度のものじゃったか、ならカエデは鑑定の魔術が使えた筈じゃし、それでレース殿とあそこの灰で出来たドラゴンゾンビを鑑定するのじゃ」
カエデは心器のガラスペンを顕現させるとぼくと今にも何かを口から吐き出しそうなドラゴンゾンビを見て、空中に魔力の文字を書き始める。
そこには――
キノス・ルミヒウタレ・ヴォルフガング
肉体強化 10(+7)
魔術適正 8
治癒術適正 8
力10(+4) 魔力8 体力6 敏捷8(+3) 器用5 賢さ8
母さんから貰った偽装の効果が付与された指輪しか今は持ってないから、母親がぼくに名付けてくれた名前が表示されている。
そしてドラゴンゾンビの方はと言うと
ドラゴンゾンビ
使役者:ルード・フェレス
魔力適正
肉体強化 10
魔術適正 9(-1)
治癒術適正 5(-3)
能力
力10 魔力8 体力10 敏捷5(-5) 器用0(-5) 賢さ0(-3)
マイナスの部分は多分、アンデッドになった事で本来の能力から低下しているという事だと思うけど……
「ほぅ、レースという名前は偽名でじゃったか」
「偽名じゃないよ、この名前はぼくを産んでくれた人が付けてくれた名前なだけで、本当の名前はレースの方」
「何やら複雑な事情がありそうじゃのぅ……、それよりも思ったより能力が高いようじゃが、このプラスと書かれた範囲が【怪力】で上昇した能力じゃな……、肉体強化の適正が低いのにこんなぶっとんだ能力を使ったらそりゃ体が持たぬと言うものじゃよ」
「でも今は薬のおかげで耐えられてるから大丈夫、メイメイありがとう」
「礼を言っても余が照れるだけでそれ以上の物は出ないのじゃよ?……それよりもドラゴンゾンビの能力、これはヤバいのぅ、気が変わったから余も力を貸すのじゃよ」
……メイメイが腰に付けている薬が入ったポーチを開けると、【身体能力上昇薬:子供用いちごミルク味】と書かれた箱を取り出し中から錠剤を手に取ると口に含み飲み込むと、『おぬし等は余のかっこいい姿を特等席で見る事を特別に許してあげるのじゃ!』と獰猛な笑みを浮かべるのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
127
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる