治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

文字の大きさ
上 下
323 / 571
第八章 戦いの先にある未来

19話 メイメイの薬

しおりを挟む
 ダート達に合流するまでの間にメイメイの作った薬について教えて貰う事になり、後は実際に使ってみた方がいいと言われて薬を貰ったけど、エルフ用に作られた薬だから人族が使った場合の副作用に対してはデータが取れてないらしい。

「――じゃから、もし余の作った薬を使った時に副作用が出た場合、こちらも服用するのじゃよ?」
「ありがとう、でもメイメイこれは何の薬?」
「重い副作用が出た時に薬の効果を打ち消す薬じゃ、余が作った以上命の危険は無いとは思うが万が一があるかもじゃからな」

 万が一の事があるかもしれない、そう思うと使った後にどうなるのか心配ではあるけど、上手く使う事が出来れば【怪力】のデメリットを消す事が出来るようになるから試す価値がある。

「ところでレース殿よ、おぬしが道中で教えてくれた【怪力】という能力についてなのじゃが……、渡した薬を使えば問題無く使う事が出来ると思うぞ?」
「確か服用する事で体内の魔力が骨を強化してくれるんだよね?」
「そうじゃ、体が耐えきれずに壊れてしまうのなら、耐えきれるように作り変えてしまえば良い、少しずつ薬の量を減らす事で能力に身体を慣らして行けば?」
「……デメリット無く能力を使えるようになる?」
「そうなれば何れ体が能力に耐えられるようになり、使い続けている内にやがて限界に至る事も出来よう……、とはいえレース殿ただ余と同じ境地に至ってからが本番じゃぞ?なんせこの世界は……あぁいやこれは今は言わない方が良さそうじゃな、こちら側に来たら嫌でも知る事になるじゃろうからのぅ」

 知る事のなると言われても、それがいつになるのか分からない以上どう反応すればいいのか分からない。
とは言え……何となくこうではないかなと思う所はあるけど、確証があるわけでは無いから言葉にしない方が良いだろう。

「……くふふ、レース殿は良い子じゃな」
「余計な事を言わない方がいいかなって思っただけだよ」
「そうやって冷静な判断が出来るのは立派じゃよ」

 ぼくの予想が間違えで無ければSランク冒険者という存在は抑止力なんだと思う。
現にメイメイが話してくれた神々の事に関してもそうだ、例えばストラフィリアの神【ディザスティア】は強い者を見る事で満たされる。
これに関してゴスペルやカーティスが該当する、個人として圧倒的な戦力を持つ【福音】と傭兵団を率いて群としての力を持った【死絶】、この二人がいる事で満たされて力を失って行ったのかもしれない。
長い歴史の中で兄と同じ強さを持つ人物もいたと思うからあっている筈。

「……さて話はここまでじゃな」
「うん、色々と教えてくれてありがとう」

 話をしている内に遠くにダート達の姿が見えて来る。
思いの外長い時間待たせてしまったから謝らないとなぁって重いっていると何やら様子がおかしい。

「何かあったのかな」
「分からぬが何やら様子が変じゃのぅ」
「ん?これは……?」

 ……急いで合流する為に走ろうとした時だった。
人の腕の形をした黒い何かが落ちていて拾おうとしたら、触れた瞬間に形が崩れて落ち灰になってしまう。

「……走るよメイメイ」
「じゃな、どう見てもこの状況は異常じゃし急いだ方が良さそうじゃ」

 走ってダート達の所に向かうが徐々に地面が灰に覆われて行き足首まで埋まってしまう。
やはりこれは何かがあったのは確実だ、早く合流する為に肉体強化を使い走る速度を上げると、後ろの方で『んぎゃっ!』というメイメイの声と共にボフッという音が聞こえたが、多分転んだのかもしれない。

「皆っ!……これは何があったの!?」
「レ、レースっ!?あ、ちょっと待って!?」
「待たない、今は君達に怪我が無いか確認するのが最優先だから」

 ダートに近づいて怪我をしてないか確認する為に治癒術を使って全身を触りながら確かめるが、体温が少しだけ高いのと腹部に原因不明の違和感がある以外は問題は無い。
続いてカエデを確かめようとするが……

「……レースさん、私達は大丈夫ですのでそんな焦ったような顔をしないで落ち着いてください」
「落ち着いてってこんな異様な光景を見たら、冷静になれって言う方が難しいよ」
「父さん、俺達はこの通り怪我はねぇし、何方かというと色々とあって凄い調子が良い位だから気にすんな」
「……分かった、なら何があったか教えてくれるかな」
「あぁ、それについては色々とあったんだけどよ……、説明が難しいからこういう時にまとめるのが得意なカエデに任せて俺はメイメイを起こしてくるわ」

 ダリアが苦笑いをしながらぼく達から離れて行くと『のじゃー!灰が口に入ったのじゃ!気持ち悪いのじゃぁ!』とメイメイの悲鳴が聞こえる。
……これは確かに直ぐに助けてあげた方が良さそうだ。

「カエデ、何があったか説明してくれる?」
「えぇ、実はですね……」

……カエデが落ち着いた声でゆっくりと説明してくれる。
【死人使い】ルード・フェレスが放ったであろうアンデッドの集団に襲われた事と、敵だと思っていたSランク冒険者【滅尽】焔の炎姫が助けに来てくれた事、そして事情を説明したらこの国の王の元へ飛んで行ってしまったという一連の流れに少しだけ違和感を感じる。
まるで仕組まれたように襲撃を受けと、都合よくSランク冒険者が来て助けに入ったという事実に不穏な気配を感じるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

思想で溢れたメモリー

やみくも
ファンタジー
 幼少期に親が亡くなり、とある組織に拾われ未成年時代を過ごした「威風曖人亅 約5000年前に起きた世界史に残る大きな出来事の真相を探る組織のトップの依頼を受け、時空の歪みを調査中に曖人は見知らぬ土地へと飛ばされてしまった。 ???「望む世界が違うから、争いは絶えないんだよ…。」  思想に正解なんて無い。  その想いは、個人の価値観なのだから…  思想=強さの譲れない正義のぶつかり合いが今、開戦する。 補足:設定がややこしくなるので年代は明かしませんが、遠い未来の話が舞台という事を頭の片隅に置いておいて下さい。 21世紀では無いです。 ※ダラダラやっていますが、進める意志はあります。

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

処理中です...