治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

文字の大きさ
上 下
323 / 600
第八章 戦いの先にある未来

18話 滅尽 焔の炎姫 ダート視点

しおりを挟む
 あれが【滅尽】焔の炎姫、一瞬にしてアンデッドを灰にに変えてしまった圧倒的な戦闘能力に思わず言葉が出なくない。
一体一体が弱くても数の暴力の前ではどんなに強くても、いずれ疲れが見え始めれば無力になる。
そんな常識さえの覆しそうな程の殲滅力を見て、もしこの人がカエデちゃんの予想して通り敵だったとしたら、今の私達では戦いにすらならないと思う。

「危ない所だったねっ!私が来なかったらあなた達危なかったわよ……ってあれ?、あれあれ?そこのへそを出してる小さいお嬢ちゃんっ!」
「え?あ……な、なん」
「あぁごめん、相棒のせいで喉がやられちゃったんだね……、ごめんっ!直ぐに治すからね」

 彼女が私達に触れると熱でやられた身体が癒えて行く。
何ていうか治癒術とは違って身体が温かい感じで、例えるなら丁度良い湯加減の湯船に使って休んでいる気持ち良さで、思わず眠くなってしまいそう。

「あ?、なんだこれ……」
「身体が本来持つ治癒力を活性化させたんだ、こうする事で簡単な火傷とかなら直ぐに治せるけど、良かったちゃんと喋れるみたいだね、じゃあ再度聞くんだけど、綺麗な髪をポニーテールにしたへそ出しルックのかわいいお嬢ちゃん、君から私の弟子に似た魔力を感じるけど、もしかして血縁か何かかい?」
「弟子だぁ……?、自分の名前も名乗らねぇ奴に説明する口を俺は持ってねぇよ」
「その強気で生意気口調、かわいらしいルックスとは違うギャップ、君はとてもかわいい性格をしているね……、とはいえ私の名前か、周囲からは焔の炎姫って呼ばれていて、それを気に入ってずっと名乗ってたから忘れてたよ、改めて自己紹介するね、出身は栄花で名前は炎って書いてエン、姫と書いてキって言うんだよね」

 私達に分かるように空中に火で文字を書いてくれるけど、しっかりとした読み方を知らないからそういう読み方もある言語なんだなって納得する事にした。
でも栄花の文字みたいだからカエデちゃんは読めるわけで、エンキさんの名前を聞いて驚いた顔をすると……

「炎姫様は栄花の産まれだったのですか……」
「もう凄い昔に栄花を出てメイディに移ったから、気持ちはこの国の国民だけどね……、それにしてもあなたも可愛いわね、栄花の着物を着てるのを見るとあの国の貴族だろうし、それに凄い整った美人さん、そしてその隣にいるのは特徴的な髪の色だけどどちらかというとへそ出しルックの子と同じ魔力を感じるしもしかして姉妹?、更に何て事なの!?見た目がお人形ちゃんみたいにかわいいっ!栄花の子よりもあなた達の事が気になるっ!この正義のお姉さんに二人の事教えてくれない?ほら、名前も教えたしいいよね?」
「……私はダート、そしてこの子は私の娘のダリア」
「娘……、あなたその歳で子持ち何て凄いね、あのさダリアちゃん、ガイストって言う私の弟子を知ってる?知ってたら聞きたいんだけど」
「知ってるも何も……、俺の叔母だけど、んな事聞いてどうすんだよ」

 エンキさんが面白い物を見たような顔をして私達を見ると、何かを考えるような仕草をしてぶつぶつと精霊と話すような仕草をすると……

「どうりで、へぇどうりでねぇ……魔力の質が似ているわけだ、いやぁこんな所で弟子の身内に会う何て思わなかったよ……、ガイストは元気しているかい?」
「元気してるかって……、エンキ様はガイストが何をしたか知っているんで――」
「ん?あぁ知ってるよ?名前が分からない栄花の娘さん、親殺しでしょ?……あの子にはそれをする権利があるし彼女なりの正義の形だけど、あなたには関係無い話だから今は静かにしていて貰えるかな?」
「残念ならそういうわけには行きません……私の名前はカエデ、栄花騎士団の副団長でダートお姉様と同じ男性と婚約関係にありますので、私からしたらガイストさんは義姉なので私にも関係があります」

 え?本当に?と小さく呟いて私を見るけど本当の事だから黙って頷く。
カエデちゃんは私にとっては妹のような子だし、知らない人からしたら複雑な関係に見えてしまうかもしれないけど、私達が納得した上でこの関係になっているのだからそれでいいと思う。

「え、そう……なんだ、ごめんね?カエデちゃんって言ったよね、冷たい反応しちゃったの許してくれる?、でも重婚だなんて確かに叔母って事は弟の子だろうし王族の子だからありなの?」
「一般的私も最初は悩みましたが、レースさんとお姉様が許してくれて婚約できたので……」
「皆が納得してるならいいけど……、あぁ、まぁ話を続けるけど弟子が復讐を終えたら私の元に帰って来て一緒にこの国を守るって言ってたのに何時までも帰って来ない、気になって調べて見たらストラフィリアは強い事が正しい国だから王を殺す事に関しても罪には問われない筈なのに、指名手配されてるから無事なのか気になるんだよね」
「……あ?もしかしておめぇガイストが何で指名手配されてんのか知らねぇのか?」
「知らない、メイディを守る事に忙しいし……、この国の王様がちゃんとしてたらこんな事しなくて良いんだけど、国内の治安維持を冒険者に頼ってばかりで頼りないし、兵士や騎士達は正直かなり弱いしで私がいないとどうなるか分からないんだよね、だから外の事に関しては調べた事以外は何も知らないんだ、だから教えてくれない?」

……困ったように言うエンキさんを見て、カエデちゃんが心配していた協力者は彼女では無いと確信する。
カエデちゃんも同じようで困ったように私の方を見ると『言いづらいのですが、ガイストさんは――』と彼女が何をして指名手配になった経緯を説明すると……。
『あのクソ眼鏡、私の弟子に何て事をさせてくれてんだ……、ごめんちょっとやらないといけない事が出来たから薬王の所に行ってくる』と真剣な顔をすると精霊に跨り上空へと飛び立って何処かへと言ってしまうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...