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第八章 戦いの先にある未来
8話 試験の結果と協力要請
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あの後魔力切れを起こしたぼくは動けなくなってしまい、この前の護衛依頼の時に使用した会議室に通されて休む事になった。
今は座って休ませて貰っているけど心配になったのか、ダート達が様子を見に来てくれたけど――
「父さんさぁ……、さすがにあれはやり過ぎだって」
「うん、冷静さを欠いて天井を吹っ飛ばしちゃうのはちょっとまずいかなって思うかなぁ」
「あそこまでやらないと勝てない気がしたんだけど……」
「レースさん、エレノアさんが最初に勝敗は問わないって言ってたの忘れましたか?」
「……あ」
確かにエレノアが言ってた気がする。
そういう意味では確かにぼくは冷静では無かったかもしれない。
確かにこれだとウィリアム教授が試験中に必死に止めようとしていたのが分かる。
「……天井の修理費どうしよう、診療所で稼いだお金で足りるかな」
「この建物の規模なら白金貨が5枚は飛ぶと思いますよ」
「……重いなぁ」
払えない訳では無いけど正直言ってぼくの手取りでは不可能だ。
診療所を開いてまだ9ヵ月位経ったけど、収益は利用者が増えたおかげで昔と比べて上がりはしたが働く人が増えたおかげで手元に入るお金は以前と然程変わっていない。
特に消耗品の補充や設備の整備費用等に充てる金額も結構馬鹿にならないし……、それ以上に今迄薬草や薬の補充を行商人に扮して世界を回っている【天魔】シャルネ・ヘイルーンに頼っていたのを、個人的な理由で止めてしまったから正直今ある分が無くなったら何処から補充すればいいのか……。
以前のように家で薬草を水洗いした後に干したりすればいいだろうけど、今はその為の環境が無いからそれは出来ないだろう。
そう考えると最先端の薬や様々な薬草を取り扱っている東の大国【メイディ】から直接取り寄せた方がいいとは思うけど、悲しい事にあの国には知り合いがいない以上どれ位の金額が掛かるか分からないから、白金貨5枚というのは払えはしても正直診療所からお金を出さなければいけないからかなり無理をする事になる。
「レース?足りないなら私も出すよ?」
「……いや、これはぼくがやった事だからちゃんと責任を取るよ」
「何言ってるの、夫婦なんだからこういう時に支え合わないとでしょ?」
「でも白金貨5枚だよ?ぼく達の手持ちでは無理じゃないかな」
「んー、一応冒険者の時に溜めたお金はあるにはあるけど少しだけ足りないから、ギルドから借りるしかないかなぁ」
ダートの気持ちは嬉しいけど足りない物はしょうがない。
そういう意味では冒険者ギルドからお金を借りる事が出来るなら一時的に借りて、少しずつ返済した方が良い気がする。
とは言え、何時全額返済出来るか分からない程の高額を借りてしまっていいのだろうか……。
「ふふ、レースさんはこういう時頼りない人ですね……、私に頼っていいんですよ?」
「……え?」
「カエデちゃん?」
「栄花騎士団副団長のお給金を将来旦那様が出来た時の為にと沢山溜めて来ましたからたぁくさん私に甘えて頼ってくれていいんですよ?」
顔を何故か赤く染めたカエデがぼく達の方を見て来るけど、甘えて頼ってくれていいってこの子は何を言っているのだろうか。
「白金貨5枚程度なら簡単に払えるのでちょっとジラルドさんの所に行ってきますね?」
「払うって、カエデお前そんな大金払っていいのかよ……、父さんと母さんが困惑してんじゃねぇか」
「いいんです、だってレースさんは将来私の旦那さんになる人ですし、ダート姉様が言うように夫婦はこういう時に支え合う物ですよ?」
「それと金で甘やかすのは違うと思うぜ?」
「私がやりたいからいいんですよ、でもそれでも不満ならそうですね……、レースさんとダートお姉様、今度三人きりで栄花の首都に一緒に買い物に行ってくれませんか?お二人に合いそうな着物とか買ってあげたいです」
そう言葉にするとぼく達の返答を聞かずに会議室を出て行ってしまう。
何て言うか凄い子と婚約してしまった気がするのは気のせいだろうか……
「とうさ……、他に人がいないからいっか、レースさぁあれ好きな男を甘やかして貢いでダメにするタイプだぜ?こいつの事だから大丈夫だとは思うけど、ダート、おめぇが第一婦人としてしっかりしないとまずいぞこれ」
「うん、私もそう思うから今回は頼る事になっちゃうけど、後で話し合わないと……」
「話し合うも何も、カエデの事だから二人の事を立てようとするだろ?だから次からはそういうのはいらねぇってはっきり言えばいいんじゃね?」
「……それならぼくが言うよ、さすがにカエデに依存した生活をする事になるのは違うと思うから」
「そっか?なら頼んだぜ?お、と、う、さ、ま?」
真剣な顔をしながらからかうようにダリアが言葉にすると同時に、会議室の扉からノック音がする。
そして暫くするとウィリアム教授が入って来てぼくの方を見ると……
「レース君、体調の方はどうかね……、おや邪魔したかね?」
「いえ、そんな事は無いです……、ウィリアム教授、先程はすいませんでした」
「お、おぉ、君から謝罪が来るなんて何と言うべきか反応に困るね……、カルディア氏の所に居た時は自分の意見を言葉に出来なかった子が成長したものだよ」
「……師匠の元を離れて色々と経験したおかげだと思います」
「そうかそうか、それはとても良い経験が出来たのだね……、さてどうやら体調は問題無さそうだから本題に入るのだが、試験立会人のエレノア君とギルド長を交えた三人で話し合って出た結果を持って来たのだよ、受け取なさい」
ウィリアム教授が真剣な顔をして一枚の紙を差し出すとそこには……【レース・フィリア、貴君の実力をBランク冒険者に相応しい物と認め、ここにBランク冒険者への昇格を許可する メセリー冒険者ギルド:クイスト支部 ギルド長ジラルド】と書かれていた。
「……ぼくがBランク冒険者に昇格して良いんですか?訓練所の天井を破壊したりしたのに」
「うむ、それに関しては言いたい事は山ほどあるのだが、Bランクへの昇格は単純に戦闘能力で決まる以上問題は無いのだよ、むしろここからが本番で高ランク冒険者となると信用と信頼の世界だからね、国とギルドからの指名依頼を受けて何時までもAランクに昇格出来ない者は信頼出来ない人物として依頼が来なくなり、将来的には自身よりも低い依頼すら受ける事が出来なくなる……、故にこれからは高ランク冒険者の自覚を持ち精々励みたまえよ」
「……はい、ありがとうございます」
「あぁ、後君の二つ名なのだが先程の戦いから私が勝手に決めて栄花に情報を送信しておいたよ、今日から君は【雪杖】のレース・フィリスと呼ばれる事になるだろうね、あの長杖から放たれた雪の結晶は高ランク冒険者の中でも上位に入るだろうから、二文字にしたが高ランク冒険者は二つ名が短ければ短い程戦闘力が高い事になり長くて6文字、短くて二文字となるのだが……強さにはそれ相応の責任が必要となる、故にその名に恥じぬ行動もしなさい」
……強さには責任が必要確かにその通りだと思う。
特に高ランク冒険者として二つ名が付いたという事はこれから先、発言や行動全てに今迄以上の責任を負う事になるという事だから気を付けないと行けない。
「そんな難しい顔をしないで良い、君は対人関係が不器用なのを勿論私は知っているからね……、指輪を見る限りAランク冒険者【泥霧の魔術師】ダート君とは夫婦なのだろう?ならば高ランク冒険者の夫婦として足りない所を補い合い、そして支え合いながら上手くやって行きなさい」
「はい、レースは私が責任を持って高ランク冒険者として育てます」
「それでいいのだよ、さてこれでBランク昇格試験の件は終わりだが……、最後に一つ栄花騎士団からレース君達に伝言を預かっているのだよ」
「……伝言だぁ?」
「では……、えーこほん、栄花騎士団から協力要請をレース、ダート、ダリアの三名に下す。東の大国【メイディ】にて最高幹部三名の任務に合流し、現在指名手配中の【紅獅子】ケイスニル・レイフ及び【死人使い】ルード・フェレスを討伐せよ。合流はこの協力命令を聞いてから一週間以内とする。……では伝える事は伝えたから私はこれで失礼するよ」
……そう言ってウィリアム教授が会議室を出て行くとすれ違うようにしてカエデが入って来る。
そしてぼく達を見て『ジラルドさんから聞きました、Bランク昇格試験合格おめでとうございます……って、どうしたんですか?』と途中で雰囲気を察したのか心配げに声を掛けるのだった。
今は座って休ませて貰っているけど心配になったのか、ダート達が様子を見に来てくれたけど――
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「レースさん、エレノアさんが最初に勝敗は問わないって言ってたの忘れましたか?」
「……あ」
確かにエレノアが言ってた気がする。
そういう意味では確かにぼくは冷静では無かったかもしれない。
確かにこれだとウィリアム教授が試験中に必死に止めようとしていたのが分かる。
「……天井の修理費どうしよう、診療所で稼いだお金で足りるかな」
「この建物の規模なら白金貨が5枚は飛ぶと思いますよ」
「……重いなぁ」
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以前のように家で薬草を水洗いした後に干したりすればいいだろうけど、今はその為の環境が無いからそれは出来ないだろう。
そう考えると最先端の薬や様々な薬草を取り扱っている東の大国【メイディ】から直接取り寄せた方がいいとは思うけど、悲しい事にあの国には知り合いがいない以上どれ位の金額が掛かるか分からないから、白金貨5枚というのは払えはしても正直診療所からお金を出さなければいけないからかなり無理をする事になる。
「レース?足りないなら私も出すよ?」
「……いや、これはぼくがやった事だからちゃんと責任を取るよ」
「何言ってるの、夫婦なんだからこういう時に支え合わないとでしょ?」
「でも白金貨5枚だよ?ぼく達の手持ちでは無理じゃないかな」
「んー、一応冒険者の時に溜めたお金はあるにはあるけど少しだけ足りないから、ギルドから借りるしかないかなぁ」
ダートの気持ちは嬉しいけど足りない物はしょうがない。
そういう意味では冒険者ギルドからお金を借りる事が出来るなら一時的に借りて、少しずつ返済した方が良い気がする。
とは言え、何時全額返済出来るか分からない程の高額を借りてしまっていいのだろうか……。
「ふふ、レースさんはこういう時頼りない人ですね……、私に頼っていいんですよ?」
「……え?」
「カエデちゃん?」
「栄花騎士団副団長のお給金を将来旦那様が出来た時の為にと沢山溜めて来ましたからたぁくさん私に甘えて頼ってくれていいんですよ?」
顔を何故か赤く染めたカエデがぼく達の方を見て来るけど、甘えて頼ってくれていいってこの子は何を言っているのだろうか。
「白金貨5枚程度なら簡単に払えるのでちょっとジラルドさんの所に行ってきますね?」
「払うって、カエデお前そんな大金払っていいのかよ……、父さんと母さんが困惑してんじゃねぇか」
「いいんです、だってレースさんは将来私の旦那さんになる人ですし、ダート姉様が言うように夫婦はこういう時に支え合う物ですよ?」
「それと金で甘やかすのは違うと思うぜ?」
「私がやりたいからいいんですよ、でもそれでも不満ならそうですね……、レースさんとダートお姉様、今度三人きりで栄花の首都に一緒に買い物に行ってくれませんか?お二人に合いそうな着物とか買ってあげたいです」
そう言葉にするとぼく達の返答を聞かずに会議室を出て行ってしまう。
何て言うか凄い子と婚約してしまった気がするのは気のせいだろうか……
「とうさ……、他に人がいないからいっか、レースさぁあれ好きな男を甘やかして貢いでダメにするタイプだぜ?こいつの事だから大丈夫だとは思うけど、ダート、おめぇが第一婦人としてしっかりしないとまずいぞこれ」
「うん、私もそう思うから今回は頼る事になっちゃうけど、後で話し合わないと……」
「話し合うも何も、カエデの事だから二人の事を立てようとするだろ?だから次からはそういうのはいらねぇってはっきり言えばいいんじゃね?」
「……それならぼくが言うよ、さすがにカエデに依存した生活をする事になるのは違うと思うから」
「そっか?なら頼んだぜ?お、と、う、さ、ま?」
真剣な顔をしながらからかうようにダリアが言葉にすると同時に、会議室の扉からノック音がする。
そして暫くするとウィリアム教授が入って来てぼくの方を見ると……
「レース君、体調の方はどうかね……、おや邪魔したかね?」
「いえ、そんな事は無いです……、ウィリアム教授、先程はすいませんでした」
「お、おぉ、君から謝罪が来るなんて何と言うべきか反応に困るね……、カルディア氏の所に居た時は自分の意見を言葉に出来なかった子が成長したものだよ」
「……師匠の元を離れて色々と経験したおかげだと思います」
「そうかそうか、それはとても良い経験が出来たのだね……、さてどうやら体調は問題無さそうだから本題に入るのだが、試験立会人のエレノア君とギルド長を交えた三人で話し合って出た結果を持って来たのだよ、受け取なさい」
ウィリアム教授が真剣な顔をして一枚の紙を差し出すとそこには……【レース・フィリア、貴君の実力をBランク冒険者に相応しい物と認め、ここにBランク冒険者への昇格を許可する メセリー冒険者ギルド:クイスト支部 ギルド長ジラルド】と書かれていた。
「……ぼくがBランク冒険者に昇格して良いんですか?訓練所の天井を破壊したりしたのに」
「うむ、それに関しては言いたい事は山ほどあるのだが、Bランクへの昇格は単純に戦闘能力で決まる以上問題は無いのだよ、むしろここからが本番で高ランク冒険者となると信用と信頼の世界だからね、国とギルドからの指名依頼を受けて何時までもAランクに昇格出来ない者は信頼出来ない人物として依頼が来なくなり、将来的には自身よりも低い依頼すら受ける事が出来なくなる……、故にこれからは高ランク冒険者の自覚を持ち精々励みたまえよ」
「……はい、ありがとうございます」
「あぁ、後君の二つ名なのだが先程の戦いから私が勝手に決めて栄花に情報を送信しておいたよ、今日から君は【雪杖】のレース・フィリスと呼ばれる事になるだろうね、あの長杖から放たれた雪の結晶は高ランク冒険者の中でも上位に入るだろうから、二文字にしたが高ランク冒険者は二つ名が短ければ短い程戦闘力が高い事になり長くて6文字、短くて二文字となるのだが……強さにはそれ相応の責任が必要となる、故にその名に恥じぬ行動もしなさい」
……強さには責任が必要確かにその通りだと思う。
特に高ランク冒険者として二つ名が付いたという事はこれから先、発言や行動全てに今迄以上の責任を負う事になるという事だから気を付けないと行けない。
「そんな難しい顔をしないで良い、君は対人関係が不器用なのを勿論私は知っているからね……、指輪を見る限りAランク冒険者【泥霧の魔術師】ダート君とは夫婦なのだろう?ならば高ランク冒険者の夫婦として足りない所を補い合い、そして支え合いながら上手くやって行きなさい」
「はい、レースは私が責任を持って高ランク冒険者として育てます」
「それでいいのだよ、さてこれでBランク昇格試験の件は終わりだが……、最後に一つ栄花騎士団からレース君達に伝言を預かっているのだよ」
「……伝言だぁ?」
「では……、えーこほん、栄花騎士団から協力要請をレース、ダート、ダリアの三名に下す。東の大国【メイディ】にて最高幹部三名の任務に合流し、現在指名手配中の【紅獅子】ケイスニル・レイフ及び【死人使い】ルード・フェレスを討伐せよ。合流はこの協力命令を聞いてから一週間以内とする。……では伝える事は伝えたから私はこれで失礼するよ」
……そう言ってウィリアム教授が会議室を出て行くとすれ違うようにしてカエデが入って来る。
そしてぼく達を見て『ジラルドさんから聞きました、Bランク昇格試験合格おめでとうございます……って、どうしたんですか?』と途中で雰囲気を察したのか心配げに声を掛けるのだった。
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