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第八章 戦いの先にある未来
3話 その男W・W・W
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何でこの人が訪ねて来るのだろうか。
明日のBランク昇格試験の試験官である、元メセリーの魔術と治癒術を専門的に教える学園の講師で、現在は栄花騎士団にて幹部の立場に就いているウィリアム教授。
そんな彼が何故か今ぼくの家のリビングのソファーに座ってカエデが淹れてくれたお茶を飲んでいる。
「いやぁ姫くん悪いね、お邪魔してそうそうお茶とお茶菓子を出して貰えるとは思わなかったよ」
「いえ……、お客様が来るならおもてなしをするのは当然なので」
そういうカエデの顔は何となく膨れているような気がする。
多分だけど二人で食べる為に用意したお茶とお茶菓子をウィリアム教授に食べられてしまう事に関して不満があるのだろう。
でも彼女の言うように人が来たのに持て成さないのは良くないと思うし……、これは後日カエデに何か買って来て上げた方が良い気がするから、今度時間がある時にダートとカエデの三人で買い物に行くのも良いかもしれない。
「そうかね?、それなら遠慮なく頂くとするか……、しかし久しぶりのメセリーだが、まさかここで栄花のお茶菓子を食べれるとは思わなかったから嬉しい気持ちになるね、この特性のタレが付いた団子の甘味がお茶に合って最高に美味しい、レース君もそう思わんかね?」
「確かに美味しいけど……、ウィリアムさんはどうしてぼく達の家に?」
「ウィリアムではなく、ウァルドリィ・ワイズ・ウイリアム教授と呼びたまえ、この天才の中でも世俗的な考えを持った、この時代の宝であるこの私を讃えてWWW教授でも良いのだよ?」
「……めんどくさいから教授でいいですか?」
「君のそういう人に合わせようとしない所は子供の頃から治らんのだね……、まぁ教授で妥協しようではないか」
数年ぶりに会ったというのに凄いめんどくさい。
WWW教授何て正直呼び辛いから嫌だし、ウァルドリィ・ワイズという響きも何ていうか嫌だ。
能力は非常に高い人ではあるんだけど性格がぼくとは相性が悪いと思う。
「教授、どうしてレースさんを訪ねて来られたのですか?」
「ん?お、おぉ、お茶菓子の美味しさで忘れていたよ……、実はだねこの度レース君のBランク昇格試験の担当になった際に、あまりの懐かしさに会いたくなってしまってね?こうして訪ねに来た訳なのだよ」
「訪ねに来たって……、ぼくは教授と話すような事は特に無いですよ?」
「いや、私にはあるのだよ……、私と同じ天才である君に是非聞きたいのだよ、私の越えるべきカルディア氏に育てられた環境が作り上げた天才であるレース君にっ!」
「天才って……、ぼくはただの治癒術師ですよ」
聞きたい事があるならさっさと聞いて帰って欲しい。
そう思っていると紳士服のポケットから喫煙用のパイプ取り出すと指先から魔術の火を出現させ――
「吸っても構わんかね?」
「……この家には小さい子も暮らしてるので止めてください」
「そうか、それならしょうがない……、なら気分は乗らないが話をしよう、君は私とは違い心器を使う技術を治めているようだが、これをどう思うかね?」
「……どう思うとは?」
「単純に思った事を話してくれればそれで良い……、もう一度問うがどう思うかね?」
どう思うって言われても使用者の精神状況次第では決して壊れる事も無く、尚且つ独自の能力を3つも使えるようになる凄い武器や道具としての認識しかない。
「とても便利な技術だと思いますけど……?」
「そう、便利だ、便利なのだよ、だが同じ位に危険だと思わないかね?この技術は私が栄花騎士団の幹部という立場を利用して様々な国を渡り歩く中で気になり調べた所、遥か昔今やお伽噺として語られる程の過去に、英雄として語られている存在を討伐する為に当時の神達が作り上げ授けた技術なのだよ……」
「……つまり?」
「当時の神はこの技術が諸刃の刃である事を理解した上で人々に与えた兵器のような物だ……、今でこそ、栄花に存在していたという六柱目の神である【プリムラスグロリア】と呼ばれる存在により改良が行われ精神状態が安定している限りはデメリットが無くなり、使い手によっては強力な技術となったが、精神状態に左右されるというのは実に危険だとは思わないかね?」
確かにウィリアム教授の言うように危険だとは思うし、スイやミオラームのように使えはするけど安定しない人もいる。
スイの場合は本人曰く今なら問題無く使えるかもしれないらしいけど、感情的な性格をしているからもしもの事を考えて使いたくないらしい。
ミオラームは心器を使った攻撃の威力は凄まじい物があるけど、あの生物兵器との一戦以降近くにフィリアからもっと年齢を重ねて精神的に余裕が出来てくるまでは使わないようにと約束させられたそうだから、使った場合のリスクの方が大きいのだろう。
「……確かに危険だと思うけど、その為に栄花騎士団が使える人を管理してるんじゃないの?」
「管理をするのならそもそも、そのような危険な技術を使わせないようにするべきではないのかね?現に私は危険性に気付いたからこの技術を習得してはいないのだよ」
「でも師匠とかも普通に使ってるから大丈夫だと思うけど……」
「それは彼等の精神性が異常だからではないのかね?……とはいえ栄花の技術は戦いにおいて必要なのも事実、という事でここは一つ勝負と行かないかね?君の持つ心器と私が新たに作り上げた才能が無い者でも扱う事が出来る新たな技術、どっちが優れているのか実験行こうでは無いか」
……ウィリアム教授はそう言うと『では、言いたい事を言わせて頂いたからこれで私は帰らせて貰うよ』と続けて言葉にして立ち上がると、そのまま歩いて玄関から出て行ってしまった。
話が長くていったい何を言いたいのかはそこまで分からなかったけど、取り合えず心器と教授が作り上げた技術のどちらが秀でているのか実験したいから協力を要請しに来たのだろう。
何だかBランク昇格試験を関係無い事に利用させられているみたいな嫌な気持ちになるのだった。
明日のBランク昇格試験の試験官である、元メセリーの魔術と治癒術を専門的に教える学園の講師で、現在は栄花騎士団にて幹部の立場に就いているウィリアム教授。
そんな彼が何故か今ぼくの家のリビングのソファーに座ってカエデが淹れてくれたお茶を飲んでいる。
「いやぁ姫くん悪いね、お邪魔してそうそうお茶とお茶菓子を出して貰えるとは思わなかったよ」
「いえ……、お客様が来るならおもてなしをするのは当然なので」
そういうカエデの顔は何となく膨れているような気がする。
多分だけど二人で食べる為に用意したお茶とお茶菓子をウィリアム教授に食べられてしまう事に関して不満があるのだろう。
でも彼女の言うように人が来たのに持て成さないのは良くないと思うし……、これは後日カエデに何か買って来て上げた方が良い気がするから、今度時間がある時にダートとカエデの三人で買い物に行くのも良いかもしれない。
「そうかね?、それなら遠慮なく頂くとするか……、しかし久しぶりのメセリーだが、まさかここで栄花のお茶菓子を食べれるとは思わなかったから嬉しい気持ちになるね、この特性のタレが付いた団子の甘味がお茶に合って最高に美味しい、レース君もそう思わんかね?」
「確かに美味しいけど……、ウィリアムさんはどうしてぼく達の家に?」
「ウィリアムではなく、ウァルドリィ・ワイズ・ウイリアム教授と呼びたまえ、この天才の中でも世俗的な考えを持った、この時代の宝であるこの私を讃えてWWW教授でも良いのだよ?」
「……めんどくさいから教授でいいですか?」
「君のそういう人に合わせようとしない所は子供の頃から治らんのだね……、まぁ教授で妥協しようではないか」
数年ぶりに会ったというのに凄いめんどくさい。
WWW教授何て正直呼び辛いから嫌だし、ウァルドリィ・ワイズという響きも何ていうか嫌だ。
能力は非常に高い人ではあるんだけど性格がぼくとは相性が悪いと思う。
「教授、どうしてレースさんを訪ねて来られたのですか?」
「ん?お、おぉ、お茶菓子の美味しさで忘れていたよ……、実はだねこの度レース君のBランク昇格試験の担当になった際に、あまりの懐かしさに会いたくなってしまってね?こうして訪ねに来た訳なのだよ」
「訪ねに来たって……、ぼくは教授と話すような事は特に無いですよ?」
「いや、私にはあるのだよ……、私と同じ天才である君に是非聞きたいのだよ、私の越えるべきカルディア氏に育てられた環境が作り上げた天才であるレース君にっ!」
「天才って……、ぼくはただの治癒術師ですよ」
聞きたい事があるならさっさと聞いて帰って欲しい。
そう思っていると紳士服のポケットから喫煙用のパイプ取り出すと指先から魔術の火を出現させ――
「吸っても構わんかね?」
「……この家には小さい子も暮らしてるので止めてください」
「そうか、それならしょうがない……、なら気分は乗らないが話をしよう、君は私とは違い心器を使う技術を治めているようだが、これをどう思うかね?」
「……どう思うとは?」
「単純に思った事を話してくれればそれで良い……、もう一度問うがどう思うかね?」
どう思うって言われても使用者の精神状況次第では決して壊れる事も無く、尚且つ独自の能力を3つも使えるようになる凄い武器や道具としての認識しかない。
「とても便利な技術だと思いますけど……?」
「そう、便利だ、便利なのだよ、だが同じ位に危険だと思わないかね?この技術は私が栄花騎士団の幹部という立場を利用して様々な国を渡り歩く中で気になり調べた所、遥か昔今やお伽噺として語られる程の過去に、英雄として語られている存在を討伐する為に当時の神達が作り上げ授けた技術なのだよ……」
「……つまり?」
「当時の神はこの技術が諸刃の刃である事を理解した上で人々に与えた兵器のような物だ……、今でこそ、栄花に存在していたという六柱目の神である【プリムラスグロリア】と呼ばれる存在により改良が行われ精神状態が安定している限りはデメリットが無くなり、使い手によっては強力な技術となったが、精神状態に左右されるというのは実に危険だとは思わないかね?」
確かにウィリアム教授の言うように危険だとは思うし、スイやミオラームのように使えはするけど安定しない人もいる。
スイの場合は本人曰く今なら問題無く使えるかもしれないらしいけど、感情的な性格をしているからもしもの事を考えて使いたくないらしい。
ミオラームは心器を使った攻撃の威力は凄まじい物があるけど、あの生物兵器との一戦以降近くにフィリアからもっと年齢を重ねて精神的に余裕が出来てくるまでは使わないようにと約束させられたそうだから、使った場合のリスクの方が大きいのだろう。
「……確かに危険だと思うけど、その為に栄花騎士団が使える人を管理してるんじゃないの?」
「管理をするのならそもそも、そのような危険な技術を使わせないようにするべきではないのかね?現に私は危険性に気付いたからこの技術を習得してはいないのだよ」
「でも師匠とかも普通に使ってるから大丈夫だと思うけど……」
「それは彼等の精神性が異常だからではないのかね?……とはいえ栄花の技術は戦いにおいて必要なのも事実、という事でここは一つ勝負と行かないかね?君の持つ心器と私が新たに作り上げた才能が無い者でも扱う事が出来る新たな技術、どっちが優れているのか実験行こうでは無いか」
……ウィリアム教授はそう言うと『では、言いたい事を言わせて頂いたからこれで私は帰らせて貰うよ』と続けて言葉にして立ち上がると、そのまま歩いて玄関から出て行ってしまった。
話が長くていったい何を言いたいのかはそこまで分からなかったけど、取り合えず心器と教授が作り上げた技術のどちらが秀でているのか実験したいから協力を要請しに来たのだろう。
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