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第八章 戦いの先にある未来
1話 新たな日々の幕開け
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都市の外にある診療所の職員が利用している寮、その外にある広場で金属の武器がなる音がする。
窓からその光景を眺めている何人かは興味深げに眺めつつ、その中の一人であるカエデは真剣な顔をしてガラスペンの片手に空中に何かを書き綴っていた。
「レース君……そんなんじゃ全然ダメっすよっ!」
「分かってるけど、大剣を扱うのって大変で……」
「腕の力だけで振るおうとするからそうなるんっすよ……、こう体全体を使って……」
この修行をつけて貰うようになってからカエデが纏めてくれている内容の初めには【レースさんの改善点】と書かれている。
以前気になって見せて貰った時は【大剣を使う上で必要な体の筋肉とつけ方について】という内容で、現在のぼくの状態について詳しく書かれているが、これを読んで内容が分かるのは人の身体構造に詳しい治癒術師位で、一般の人が見たら理解が出来ない筈だ。
「レ―ス君の場合、無理に利き手で無い方で大剣を使おうとするから大振りになるんすよ」
「でも……、心器の長杖と大剣を出すとすると利き手で長杖を持った方が持ちやすいし気がして……」
「何度も言ってるっすけどそれが間違いなんすよ、盾を持つって言う話なら利き手に持つ事で生存率を上げるって言う方法があるっすけど、杖を利き手に持っても攻撃を受ける訳じゃないから意味が無いっすよね?、栄花には突かば槍 払えば薙刀 持たば太刀って言葉があるっすけど、今のレース君には無理っすよ」
そして今こうやって色々と言いながらぼくに大剣の使い方を教えてくれているのは、【栄花騎士団最高幹部】のケイと言うぼくと同い年の青年だ。
カエデ曰く大剣の使い方を教わるなら彼の方が良いと辺境都市クイストに呼んで貰ったけど、彼とは以前開拓に同行する際に一緒になった事がある。
その時に指名手配されている元Aランク冒険者【死人使い】ルード・フェレスと交戦する事になり、その際に彼は片腕を失う等の大怪我を負ったけど……
「ん?レース君どうしたっすか?」
「いや……、パッと見じゃ本当に義肢なのか分からないなぁって」
「あぁ、これっすか?何でも新しいマーシェンスの王【賢王ミオラーム・マーシェンス】が作り出した新たな技術を元に作り上げた、脳から流れる電流と体内の魔力と魔導具の義肢の中に刻まれた回路を繋げる事で実際の手足と同じように使えるようになった物っすからね……、しかも表面の人工皮膚素材を着用者の肌色に合わるおかげでパッと見じゃ分からないって言うのは凄いっすよねぇ」
「ほんとだよね、近づくと腕を動かすたびに独特な音がしたりするけど良く聞かないとそれが義肢から出てる音だって分からないしさ」
「何でもこの人工皮膚の素材自体が防音性に優れてるらしいっすよ?、おかげで生身の腕だった頃よりも性能が良い腕になったっすけど戦士としては正直複雑っすね……、鍛えなくても一定の強さにはなれるって事っすからって、また利き手と反対の腕で大剣を振ろうとしてるっすよ、ちゃんと利き手に持つ癖をつけないとっ!」
確かに戦士からしたら面白くないのかもしれない、こうやって大剣の訓練をまともにやるようになって一週間、前回の以来から気付いたら2週間も経っているけど未だに協力要請が来ない。
カエデ曰く、現地に先に行ったアキラさん達からある程度の安全が確保出来たタイミングで連絡が来るらしいけど、何時になるのかはわからないそうだ。
特に協力者を任務にいれる場合は尚の事、必要以上の犠牲を出さないよう念入りな調査が必要らしいけど、正直今のぼくが行っても足手まといになりそうだから、出来れば一月ほどは待って欲しい気持ちがある。
「……レース君、今日はここまでにするっすよ」
「え?ぼくはまだ出来るけど?」
「集中し過ぎて気付いてないなら言うっすけど、かなり意気上がってるっすよ?この状態で更にやったら明日に響くから止めた方がと判断して止めるのは教える側の責任っすよ」
「明日に響くって……?」
「あれ?レース君知らないんすか?、明日は君のBランク冒険者昇格試験っすよ……、いつもは冒険者ギルド職員が担当するんすけど、今回は特別に栄花騎士団幹部でメセリー出身の元治癒術師で魔術と治癒術を学ぶ為に建てられた学園の教授だった、ウァルドリィ・ワイズ・ウイリアムさんが担当するらしいんすよ」
「……あぁ、あの人かぁ」
……首都にいる時に何度か会った事があるけど、何ていうか自分をウァルドリィワイズ……世俗的な天才と名乗るあの人は魔術と治癒術に関して、独自の理論で新術を開発したりした本当の天才ではあるのだけれど、色々と接すると面倒くさい人として恐れられていた記憶がある。
そんな人がぼくのBランク冒険者昇格試験の相手かと思うと疲れそうだなぁと思いながら、ケイから明日の事を聞いていると、護衛依頼を達成したらBランク冒険者になれる筈がSランク冒険者【宵闇】フィリアから例外を作らない方がいいと言われたらしく、試験をする事になったという事を教えて貰うのだった。
窓からその光景を眺めている何人かは興味深げに眺めつつ、その中の一人であるカエデは真剣な顔をしてガラスペンの片手に空中に何かを書き綴っていた。
「レース君……そんなんじゃ全然ダメっすよっ!」
「分かってるけど、大剣を扱うのって大変で……」
「腕の力だけで振るおうとするからそうなるんっすよ……、こう体全体を使って……」
この修行をつけて貰うようになってからカエデが纏めてくれている内容の初めには【レースさんの改善点】と書かれている。
以前気になって見せて貰った時は【大剣を使う上で必要な体の筋肉とつけ方について】という内容で、現在のぼくの状態について詳しく書かれているが、これを読んで内容が分かるのは人の身体構造に詳しい治癒術師位で、一般の人が見たら理解が出来ない筈だ。
「レ―ス君の場合、無理に利き手で無い方で大剣を使おうとするから大振りになるんすよ」
「でも……、心器の長杖と大剣を出すとすると利き手で長杖を持った方が持ちやすいし気がして……」
「何度も言ってるっすけどそれが間違いなんすよ、盾を持つって言う話なら利き手に持つ事で生存率を上げるって言う方法があるっすけど、杖を利き手に持っても攻撃を受ける訳じゃないから意味が無いっすよね?、栄花には突かば槍 払えば薙刀 持たば太刀って言葉があるっすけど、今のレース君には無理っすよ」
そして今こうやって色々と言いながらぼくに大剣の使い方を教えてくれているのは、【栄花騎士団最高幹部】のケイと言うぼくと同い年の青年だ。
カエデ曰く大剣の使い方を教わるなら彼の方が良いと辺境都市クイストに呼んで貰ったけど、彼とは以前開拓に同行する際に一緒になった事がある。
その時に指名手配されている元Aランク冒険者【死人使い】ルード・フェレスと交戦する事になり、その際に彼は片腕を失う等の大怪我を負ったけど……
「ん?レース君どうしたっすか?」
「いや……、パッと見じゃ本当に義肢なのか分からないなぁって」
「あぁ、これっすか?何でも新しいマーシェンスの王【賢王ミオラーム・マーシェンス】が作り出した新たな技術を元に作り上げた、脳から流れる電流と体内の魔力と魔導具の義肢の中に刻まれた回路を繋げる事で実際の手足と同じように使えるようになった物っすからね……、しかも表面の人工皮膚素材を着用者の肌色に合わるおかげでパッと見じゃ分からないって言うのは凄いっすよねぇ」
「ほんとだよね、近づくと腕を動かすたびに独特な音がしたりするけど良く聞かないとそれが義肢から出てる音だって分からないしさ」
「何でもこの人工皮膚の素材自体が防音性に優れてるらしいっすよ?、おかげで生身の腕だった頃よりも性能が良い腕になったっすけど戦士としては正直複雑っすね……、鍛えなくても一定の強さにはなれるって事っすからって、また利き手と反対の腕で大剣を振ろうとしてるっすよ、ちゃんと利き手に持つ癖をつけないとっ!」
確かに戦士からしたら面白くないのかもしれない、こうやって大剣の訓練をまともにやるようになって一週間、前回の以来から気付いたら2週間も経っているけど未だに協力要請が来ない。
カエデ曰く、現地に先に行ったアキラさん達からある程度の安全が確保出来たタイミングで連絡が来るらしいけど、何時になるのかはわからないそうだ。
特に協力者を任務にいれる場合は尚の事、必要以上の犠牲を出さないよう念入りな調査が必要らしいけど、正直今のぼくが行っても足手まといになりそうだから、出来れば一月ほどは待って欲しい気持ちがある。
「……レース君、今日はここまでにするっすよ」
「え?ぼくはまだ出来るけど?」
「集中し過ぎて気付いてないなら言うっすけど、かなり意気上がってるっすよ?この状態で更にやったら明日に響くから止めた方がと判断して止めるのは教える側の責任っすよ」
「明日に響くって……?」
「あれ?レース君知らないんすか?、明日は君のBランク冒険者昇格試験っすよ……、いつもは冒険者ギルド職員が担当するんすけど、今回は特別に栄花騎士団幹部でメセリー出身の元治癒術師で魔術と治癒術を学ぶ為に建てられた学園の教授だった、ウァルドリィ・ワイズ・ウイリアムさんが担当するらしいんすよ」
「……あぁ、あの人かぁ」
……首都にいる時に何度か会った事があるけど、何ていうか自分をウァルドリィワイズ……世俗的な天才と名乗るあの人は魔術と治癒術に関して、独自の理論で新術を開発したりした本当の天才ではあるのだけれど、色々と接すると面倒くさい人として恐れられていた記憶がある。
そんな人がぼくのBランク冒険者昇格試験の相手かと思うと疲れそうだなぁと思いながら、ケイから明日の事を聞いていると、護衛依頼を達成したらBランク冒険者になれる筈がSランク冒険者【宵闇】フィリアから例外を作らない方がいいと言われたらしく、試験をする事になったという事を教えて貰うのだった。
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