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第七章 変わりすぎた日常

44話 逃走と追跡者

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 あの後、全員で頭の合った場所に行ったけど……無くなっていた。
もしかして場所を間違えたのかもしれないと思って、周囲を探してみたけど場所はやはり合っている……

「もしかしてだけど……、自分の力で移動した?」
「それはない、頭だけの状態で移動するのは不可能」
「じゃあフィリアはどう思うの?」
「誰かが持ち去った可能性がある、それに戦闘中は余裕が無かったから思いつかなかったけど……違和感がある」
「違和感?それってどういう事ですの?」

 誰かが持ち去った可能性……、ここまで言われたらさすがのぼくでも理解出来てしまう。
フィリアの言う通りだったとしたらあの襲撃は何者かによって仕組まれた事になるし、その場合――

「マーシェンスの関係者がミオの命を狙ったと判断するのが妥当」
「わたく、しの命を?」
「えっと……、フィリアさんどういうことなの?」
「まずはこの場から離れて安全が確保出来た後に話すから着いて来て」

 フィリアが周囲を警戒する仕草をすると、顔でぼく達に行く場所を支持してゆっくりと歩き出す。
取り合えず指示に従った方がいいとは思うけど、どうして今教えてくれないのだろうか。

「着いて来てって、周囲にぼく達以外は誰もいないみたいだから、ここで話してもいいと思うんだけど……」
「もしここで生物兵器を放った何者と遭遇して戦闘になったら、負傷者を運んでいる私達は戦えない以上、ダートだけでは犠牲無しに戻る事は無理だと思う」
「……それならダートの空間跳躍で集落まで移動するのは?」

 それなら安全にここから移動出来ると思うし、そこで少しだけ休憩してスイが眼を覚ましてから都市に戻れば、もし道中ミオの命を狙っている何者かに襲われても問題無く抵抗出来る筈だ。

「無理ね……、相手は私達が何処を経由して来たのか知っている筈、残念ながらこれはただの襲撃ではなくモンスターを利用した事故に見せかけた暗殺、しかも周囲の被害を考えない手段の選ばなさ、そんな相手の前で空間転移を使って魔力の痕跡を残したら集落に生物兵器が放たれる可能性がある」
「フィリアさんの言う通りかなこれはもうただの護衛依頼じゃない、出来たらこのまま相手が退いてくれたらいいんだけど」
「その可能性も無いと見た方がいい、理解出来たなら移動する……、ダートはミオラームの周囲の空間を他の場所に常時繋いで襲撃に備えておいて欲しい、ミオは声を漏らさないように自分の手で口を覆って悲鳴をあげないようにしていて」
「確かにその方が不意を突かれても安全かな……、取り合えずレースは私の隣に着いて来て?その方がミオラーム様を守りやすいから」
「……分かった」

 フィリアの指示の元、彼女を先頭にして今迄来た道に向かって歩いて行く。
このまま集落に帰るのかと思っていると急に方向を変えて進み出す。
いったいどうしたのかと思っていると、歩を緩めてぼく達の隣に並ぶと――

「……フィリア?」
「黙って着いて来るか喋るなら声量を下げて気付かれないようにして、……あなたでは分からないと思うけど私達の後ろのを黒髪で黒いコートを着た全身黒ずくめの人物が樹の上を飛んで追って来てる」
「フィリアさん……、どうして分かるの?」
「私の魔力特性は鷹の目と宵闇、後者は切り札だから教えられないけど……前者の方は特殊でね、魔力で作った不可視の瞳を遠隔に飛ばす事で相手の場所を探る事が出来る、今回は前方を警戒する振りをしながら後方に飛ばして全方位を見てた」
「何で特性が二つあるのか分からないけど……、髪色と服装以外に何か特徴って分かったりするの?」

 限界に到達する事で魔力特性がもう一つ増えるという事は、以前マリステラから聞いてはいたけど……実際に二つ持ってると宣言する人物に出会うのは初めてだ。
多分母さんやマスカレイド……、今迄出会って来たSランク冒険者の人達も持っていたと思うけど、フィリアの言い方的に人に教える事は出来ない程に強い特性なのかもしれない。

「……長い黒い髪に黒い瞳、特に髪の方は染料で染め上げられた不自然な黒さ、服装の方も同じ染料で染めたようね、暗い場所で出会ったら私でもほんの一瞬だけ姿を見失うかもしれない」
「染め上げた黒い髪、ダートそれって……」
「うん、ミュカレーだと思う、でもどうしてあの人が」
「ミュカレー、確か元Aランク冒険者【闇天の刃】で今は父の協力者……、つまりミオを殺してこの子の兄か姉に王位継承させて国を完全に乗っ取るつもり?」
「マスカレイドは確か、マーシェンス周辺の国に潜伏してるって話があったから……ありえるかも」

……もしそうだった場合、無事にここから逃げる事に成功してもミオラームがマーシェンスに戻ったら、何時マスカレイドの手によって殺されしまうのか分からない。
それなら今ここでミュカレーと交戦して討伐した方がいいとは思うけど、ダートだけで戦う事は難しいだろう。
そう思っていると、フィリアが歩を止めて背負っているスイを地面に丁寧に降ろすと……、狙撃銃を立って構えるような姿勢を取る。
すると彼女の手元に心器のライフルが現れ……、音も無く銃口から銃弾を撃ち出すのだった。
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