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第七章 変わりすぎた日常

間章 厄災の神達と人の形をした化物 ミコト視点

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 教会で与えられた部屋で紅茶を飲みながら心の中で頭を抱えている……面倒くさい事になった、本当に面倒くさい事になってしまったと思う。
折角自由になれたんだから兄貴の近くに居ようと思って、この辺境都市に出来た教会に滞在させて貰うことにしたんだけど、この前恐ろしい威力を持った赤い閃光によって屋根が吹き飛ばされた。
丁度その時、私を迎えに教会のトップである教祖自ら身分を隠してやって来て、トレーディアスに帰って来て欲しいと説得をされている最中で、正直戻ればまた自由を失うからどうやって穏便に帰らせるかと思っていた時に……

『ですからミコト様、あなたはこのような我々の権威を穢した国のいるべきではありません、トレーディアスにお戻り頂き治癒術を再び奇跡と呼ばれる時代に共に戻し、神々を讃え祀りましょう!、そうすれば五大国に再び神がお戻りになられ当時の栄光が再び教会の手に戻るので……』

 教祖が話している時に、兄貴がこの都市に滞在する時に使っているらしい大きな家がある方向から赤い閃光のような物がこっちに向かって高速で飛んで来た。
あぁこれ、防御しないと死にはしないけどやばいだろうなぁ……、でも私が受け止めないと周囲の被害が凄そうだからしょうがないかなぁって思って、魔力を闇属性の重力に変換し展開して行くと……

『あ……、そこにいると危ないから逃げた方がいいよ?』
『逃げるっ!?ちゃんと話を聞いておられるのですかミコトさひゅっ!?』
『あっ、ごめん』

 重力に引っ張られて私に目の前に来た赤い閃光が教祖に当たり弾け飛ぶ。
ただお陰で多少減速したから手元に作り出した重力の球で受け止めて運動エネルギーを落としていく。
そして完全に止まったと思って解除すると、中から鉄の塊が飛び出して来て……私の腕を吹き飛ばして壁に突き刺さった。

「まぁ、治せたから良かったけど……、すぅっごい痛かったし、兄貴に聞いても『……やった奴の心当たりはあるから私の方で叱っておく』の一言で終わるなんてさ、妹の私を大事にするべきじゃない?こんなに可愛くて綺麗な私が怪我をしたのよ?、もっと可愛がって優しくして欲しかったのに寂しいじゃない……、でも」

 教会は権力争いで大荒れ中だけど私からしたらどうでもいい。
治癒術だろうが奇跡だろうがどうでもいいし、次の教祖が誰になるのかを決める為にあれやこれやと、出来ない事を言い続けていて本当にくだらないのよ。
そもそも怪我人には無償で施しを授ける?そんなのして組織の維持に必要なお金は何処から持ってくるの?、教会にはSランク冒険者の【教皇】ミコト様がいてくれるからお布施を貰える筈だ?、ふざけんな私は見世物じゃないのよ?、……正直この組織にいるのももう限界かもしれないわね。

「それよりもミコトちゃん的には……、五大国の神が戻るとかの考え方が気に入らないかなぁ」

 教会の考え方が本当に五大国の神が戻す事だったら私が直接動いて壊してもいいよね?、だって私利私欲の為だけにこの世界を作り出して、更にはもっと犠牲が欲しいからと私達の世界に穴を空けて天族と魔族を巻き込んだ戦争を起こした集団が戻って来る何て考えたくない。
唯一反省して謝罪してくれたのは、栄花に今も存在する自らの力を封じて人の真似事をしている元神の化物だけど、今は確かミツネと言う名前で人が存在している限り終わる事のない命を楽しんでいるから、このまま大人しくしてくれていればいいなぁって思うけど、他の五柱の神……

ストラフィリア 【ディザスティア】
トレーディアス 【グローリシェス】
メイディ    【メランティーナ】
メセリー    【セラフナハシュ】
マーシェンス  【マリーヴェイパー】

 これだけは何があっても蘇らせては行けない。
一応シャルネ様とキリサキ・ゼンの間に産まれた、この世界でも王族とそれに連なる人や私達Sランク冒険者しか存在を知る事が許されない【悪星 マリステラ・ヘイルーン】が、復活を阻止する為のシステムを担ってくれているけど……、あの子はこうやって滅びた神の管理という責任の枷に掛けて縛り付けておかないと、私達では手に負えない存在だからこのまま……滅びるまで孤独に過ごして欲しいなぁって思う。

 それに何でそう感じるのかと言われたら……
ディザスティアは、巨大な体を持ち様々な武器を扱う為なのか悍ましい数の腕が背中から生えていて、それ等全て彼に捕食され体内に取り込まれた武芸者の成れの果て……、様々な武器の扱いを極める為に数え切れない程の戦士達を喰らい続けた。

 グローリシェスは、雲で出来た身体に、肥えた体型を持ち、金銀財宝でその身を着飾っていて、富を得る為に人を使い一定の金額を納めることが出来なかった物の体を金属に変えて彼女が着飾り美しくなる為に消費し続けた。

 メランティーナは、大樹から人の上半身が生えており、その顔には落ちくぼんだ瞳に痩せぎすの身体を持った少女で、薬学を極める為に人だけに飽き足らず様々な生物を利用して依存性のある薬物から病気を治す薬等の効果を確認する為の道具として使い潰し、最終的には薬漬けになった命を使い繁殖用にある程度は残したまま、新たな薬を作る為の材料へと変えていった。

 セラフナハシュは、二匹の蛇が互いの尾を飲み込んで一つの輪になっており、頭には天使の翼が生えていて、中央には鏡があり映された人物の魔力を生命毎吸い付くし、魔力に優れた者達を喰らい続け、亡骸を触媒にするという冒涜の限りを尽くした。

 マリーヴェイパーは、眼の無い顔に三つの頭、そして機械の身体を持ち、身体の至る所から蒸気が噴き出していて、人々が日々生み出す新しき物を求め、自分では考え付かないものを思い付いた一握りの天才とも呼べる知性の持ち主を捕らえては、自身のパーツへと作り変えて行き、知らない事を知りたいという知識欲に溺れた。

「まぁ、そんな存在蘇らせられたら私一人じゃどうしようもないんだけどね」
「それなら私の所に来ませんか?」

 笑顔で部屋のドアを開けて入ってくるシャルネを見て嫌な気持ちになる。
どうやって来たのかはどうでもいいけど、人の心の中を覗き込んでこうやって干渉してくる人の形をした異形の化け物……

「化け物何て酷いですね」
「さっさと出て行ってシャルネ様、人を呼びますよ?」
「それは面倒くさいから止めて欲しいですねぇ、今日はあなたとお兄さんを勧誘する為の来たので話だけでも聞いて欲しいなーって、お兄さんには先に話しましたよ?そうしたら妹の判断に任せるそうで……」
「あのバカ兄貴……、逃げたわね!?、しょうがないから聞いてあげるけど話って何なの?」
「何だかんだ優しいミコトちゃんのそういう所好きですよ?、では話しますが私は今戦力を必要としてます、やりたい事をやる為にどうしても力が必要で……、その為にまずはあなたとイフリーゼ、いえ今はアキラさんでしたよね、お二人の兄と姉である4人には協力してもいいと約束し貰えたのですが……、六人の兄弟姉妹の中でお二人を省くのは悪いなぁって思いましたので、是非私の力になって貰えませんか?」

……私達の兄姉がシャルネ様に協力しているという言葉を聞いてどうすればいいのかわからないまま、無言になってしまい静かに時が過ぎる。
暫くして私が出した答えは……、『あなたに従う位だったら、自分で首を引きちぎって死んでやるわよ』と言う拒絶の言葉だった。

『そしてその日、教会と言う組織から私の存在が消えた』
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