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第七章 変わりすぎた日常

31話 朝食と侍女のお仕事

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 朝になって直ぐの事、ダリアが勢いよくぼく達の部屋のドアを開けると……

「ミュラッカはともかく、お前等も夜にうるさくなるのいい加減にしろっ!まともに寝れねぇじゃねぇかっ!」

 と叩き起こされ、驚いて起きたぼく達は急いで着替えて部屋を出ると……キッチンの方から何やら美味しそうな匂いがする。
いったい何かと思いながらリビングへと入ると、頭を深く下げて頭を下げているサリッサの姿と美味しそうな朝食がテーブルの上に沢山並んでいた。
ストラフィリアの料理のように身体の芯から温まる様に作られた物ではなく、メセリーで良くある片手で持って食べやすい食事だ。
パンの間に肉や野菜を挟まれたそれは、魔術や治癒術を研究して新たな術を作り出す者達が好む物で、ぼくもダートに止められるまでは食べながら参考書を読んで徹夜しながら研究に励んでいたくらいに作りやすいし、そして何よりも食べやすい。

「レース様、ダート様おはようございます」
「サリッサ……?、この料理はどうしたの?」
「これですか?これからお世話になるのですから侍女の私が作るのは当然です、主人の身の回りの世話をするのも仕事の一つなので」
「ありがとう……、でも家事は今迄ぼくとダートが交代しながらやってたから毎日やらなくても大丈夫だよ?」
「……っ!?、そんな訳には行きませんっ!先程も申しましたが侍女は主人の身の回りの世話をし、時には手足となり雑用を行なうのが私の役目であり存在意義、私の仕事を取らないでくださいませっ!」

 サリッサが真剣な顔をしてこっちを見る。
……これはぼくの方が折れないと、彼女のプライドを傷付けてしまうだろう。

「ならこれから身の回りの事をお願いするよ」
「はいっ!ありがとうございますっ!」

 何ていうか本当に嬉しそうだ……、でもサリッサに身の回りの事を全て任せてしまうといつか自分では何も出来なくなる気がして正直不安でしかない。
でもそれを彼女に言うとまた同じやり取りが続きそうだから今は黙っていようと思う。

「サリッサさん、この料理の数作るの大変だったんじゃない?、次からは時間がある時に私も手伝うから言ってね?」
「ダート様、ありがとうございます、その時は宜しくお願い致しますね」
「あ、じゃあぼくも……」
「レース様は結構です、ストラフィリアでは家事は女性の戦場であり力を示す事が出来る唯一の場所と言われていますので、馴染みは無いとは思いますがご理解ください」
「え、あぁ……うん」

 やっぱりあの国はおかしいこういうのは皆でやった方が良いと思うのに……、ミュラッカがそこも変えてくれる事に期待するしか無いか。

「ところでお二人はリビングでゆっくりとお話しをしていて大丈夫なのですか?、本日は朝から冒険者ギルドに行き大事な依頼の説明を受けると昨晩聞いていたので、歩きながら食べれる物をテーブルに用意したのですが……」
「あっ!?、ごめんサリッサっ!早く行かないと遅れるっ!」
「レース落ち着いて、今から出れば待ち合わせには間に合うから」
「でも、高ランクの冒険者は時間絶対に守るんで……んぐっ!?」
「その高ランク冒険者の私が大丈夫って言ってるの、だから食べながらゆっくり向かおう?ね?」

 焦ったぼくを落ち着かせるように、テーブルの上に置かれていたパンを喋っている口の中に入れると、ダートも手に取って食べる。
正直驚いて味が分からないから、次は食べさせてくれるなら一言でもいいから言葉にしてからにして欲しい……。

「ん、おいしっ、サリッサさんありがとう、これすっごい美味しいっ!」
「ふふ、そう言って頂けるとメセリーの料理を王城内の書庫で調べておいて良かったです」
「今度作り方教えて?レースに作って食べさせてあげたいから」
「はい、それなら今度一緒に作りましょう」
「うん、約束だよサリッサ!」

 ……そういえばぼく達を起こしに行ったダリアの姿が見えないけど、どうしたのだろうか周囲を見るけど姿が見当たらない、これはもしかして何かあったのかと思って心配をしていると……

「ダリアちゃんも一緒に寝るのぉっ!」
「だぁっ!俺は起こしに来たんだって!抱き着いてベッドに引きずり込むのやめろぉっ!」
「時間になったらサリッサが起こしに来るのっ!」
「だぁもうっ!分かった!分かったからっ!」

 どうやら三階に行ってルミィを起こそうとしてくれていたみたいだけど……、ベッドの中に引きずり込まれてしまったらしい。
取り合えず無事だったみたいだからいいか……

「ふふ、あの二人はストラフィリアにいる時からこうなんですよ?何て言いますか、実の姉妹みたいで微笑ましいです」
「ダリアに仲の良い家族が出来て良かったよ……、じゃあぼく達は行くから留守の方宜しくね」
「はい、レース様、ダート様いってらっしゃいませ……、冒険者のお仕事は大変だと思いますが無事に帰られますよう祈っておりますね」
「ありがとう、じゃあいってきます」
「サリッサさん、いってくるねっ!」

……そう言って家を出たぼく達は、外の階段を降りて診療所のようすを見ると……どうやら今日も師匠がソフィアを連れて手伝いに来てくれているようで、ぼく達に気付いた彼女がこっちに向かって手を振ってくれるけど……、眼に涙を浮かべて助けを求めていたように思えたのは気のせいだろうか。
そんな事を思いながらぼく達は冒険者ギルドへと向かうのだった。
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