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第七章 変わりすぎた日常

間章 複雑な気持ち ミオラーム視点

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 レース様と決闘をして数日が経過しましたわ。
正直最初はヴォルフガングおじさまのご子息と知った時は嬉しくなりましたけど……、正直顔が良いだけの嫌な人だと思ってました。
でも……、私が自分の中に封じられている【マリーヴェイパー】と言われるかつて神と呼ばれた化物を抑えきれなくなり、体の自由を奪われ暴走してしまった時に自身の身の危険を顧みずに助けてくれたと、後で目を覚ました時にカエデ様とフィーから聞いた時に、私はとんでもない事をしてしまったのだと理解した。
更にこの大きな寮と言われる家の主である事も知って、あの方に迷惑を掛けないように大人しくする事にしたけど……

「……あの方は今日も外で心器の大剣を振り回していらっしゃるのね」

 あれ以来彼に何て声を掛ければいいのか分からない。
何度かこの寮で顔を合わせたりはして、レース様から『おはよう』や『体調の方は大丈夫?』と声を掛けてくれる度に、顔が熱くなってしまってあの方を見る事が出来なくなってしまう。
何とか私なりに一生懸命返事をしようとしても……

『おはようございましゅわぁっ!』
『体調!?もちろん元気でしゅのっ!?』

 と変な所で呂律が回らなくなってしまって会話が出来ない。
私はどうしたら良いのだろう、マーシェンスで最も畏き者である賢王の座を暗殺という手で勝ち取った血塗られた王であるこの身はどうするべきなのだろう。
あの国で唯一、Sランク冒険者【黎明 マスカレイド・ハルサー】を信用出来ずに距離を取っていた私は、実の父や母達から煙たがられてまるで最初からこの世に存在していなかったかのように扱われ、血を分けた兄や姉達にも煙たがられて来た。
もしかしたらあの胡散臭いSランク冒険者何かよりも頭が良くなれば、皆が私の事を認めてくれるかもしれないと思って、毎日王城内で必死に魔科学に関して様々な資料を集めて学んだ。
国でメインの産業だった機械技術が何故魔科学から生まれた魔導具に負けてしまったのかも理解したし、何で今も国民は水蒸気を利用して動く機械を利用し続けているのかも私なりに正しく覚えられたのに、誰も私を見てくれなくて……

「だから我が儘を言ったり、皆を困らせる事で構って欲しかったし愛して欲しかった……」

 でもそんな事をしても何も変わらなくて、どうすればいいのか分からなくなってる時に父に依頼されて私を暗殺しに【宵闇 フィリア・フィリス】が来た。
あぁ……、ついにこの人達から本当の意味で消されてしまうんだなと察して一切の抵抗をしなかった私に何を思ったのか……

『何であなたは怖がらない?』
『あなたはどうして私に話しかけるの……?』
『それは……』

 どうやら出来る限り怖がらせてから処理するように言われていたらしく、それを撮影専用の魔導具で記録する様に言われていたフィリアは、何をしても怖がる事無く顔色一つ変えない私に対してどうすれば怖がるのか分からなくなり直接聞く事にしたらしい。
その結果様々な質問攻めになったけど何処かで思う事があったらしくて……、今では唯一の親友だ。

「……フィー、私どうすればいいと思う?」
「どうすればいいって、レースと話したいなら話せばいい」
「だぁかぁらぁっ!どうやって話せばいいのかって言ってるのだわぁっ!」
「うるさい、そんなに気になるのならぶつかって砕けなさい」
「砕けるってあなたねぇっ!」

 私達のやり取りを見て室内で何らかの専門書を読んでいるカエデが迷惑そうな顔をしてこっちを見る。

「カエデ様、騒がしくしてしまいまして申し訳もございませんわ?」
「……謝るのでしたら最初から大人しくして貰えると助かります」
「それもそうね、ミオあなた静かにしないとダメじゃない?」
「フィー、あなたも騒いでたじゃないの」
「私は静かにしていたけど?、大声で騒ぎだしたのはあなたでしょ?」

 確かに騒ぎ出したのは私だ。
これに関しては言い訳のしようがない……

「……あの、本当にごめんなさいですわ」
「いえ、怒ってないからいいですけど……、そうですね」
「カエデ様?」
「レースさんには、ダートさんという奥様になる方が既にいらっしゃるので淡い恋心は捨てた方がいいですよ?」
「……それに関してはあなたに言われたくありませんわよ?」

 この数日間カエデ様の事を見て分かった事がある。
レースさんが寮を訪ねると何故か静かにあの方の少しだけ後ろに立って、何か取ろうとすると先に取って渡そうとしたり等何だか変な距離感にいるのを見たり、何をされたら喜ぶのかを率先して行動していて、本当に隠す気があるのかしら?と疑問に思う事ばかりだ。

「私、栄花だとそういうお淑やかな男性を立てる女性が大変おモテになると聞いた事はありますけど、レース様に特別な方がいると言うのならあなた事諦めるべきではなくて?」
「……分かってますよ、でも私の身近にいて異性として見れる男性はレースさんだけでしたからどうしても夢見てしまうんです、あの人はストラフィリアの王族だからもしかしたらチャンスがあるのではって」
「でもあなたはキリサキの人間でしょう?、この世界において中立的な立場を維持しなければならない国で英雄の血筋と言う特別な血筋であるあなたが他国の王族に嫁ぐのは無理があるのではなくて?」
「えぇ、だから本当は我慢しなければいけないのですが……」
「ならキリサキと言う名を捨てて、栄花の騎士団も抜けてただのあなたになれば良いのですわ?、貴族は名を捨てる事で平民と同じ身分になるのだからそれでいいのではなくて?、何をそんな風に考えていますの?」

 ……正直8歳の小娘が何を言ってるのかと思われてしまいそうだけど、そこまで好きならそれ位やればいいのです。
ただ……私は一国の王だからそんな事は出来ない、そう思うと羨ましく感じる。

「色々とあるんですよ、ミュラッカ様にあんな事を言われなければ夢なんて見る事なかったのに……」
「……何だか色々とあるのですわねぇ、めんどくさそうですわ?」
「この中で一番めんどくさい系女子のミオが言うのはどうかと思うけど?」
「あなたねぇ、そうやって私を弄って反応を見て遊ぶのはそろそろお止めなさい……、そろそろ泣きますわよ?」
「ふふ、ごめんなさい……、だってここ数日のミオは私の知ってるあなただからそれが嬉しくてつい、ね?」

 フィーがそう言うと慰めるように私の頭を撫でてくれる。
それはまるで親友と言うよりも私が夢見た姉妹関係のようで……、何ていうか気恥ずかしい。

「んもうっ!恥ずかしいからおやめなさいっ!」
「ふふ、かわいい私のミオ、あなたが望むなら私は力になるからね?」
「そんなの分かってますわよ、でも私はフィーの者では無くてよ?」
「分かってるわ?でも、私にはそう思う位にあなたが大切なの……、ミオの為なら例え世界であろうと滅ぼして見せる」
「……なるほど、フィリアさまはそういう」

……フィリアはそういうってどう言う事なのかしら?と思っていると、外で行っているレース様の修行が終わったらしく、美しい程に透き通った水色の髪の男性と共に寮に戻って来る。
その姿を見て改めて思ったけど、私は本当にどうすれば良いのだろう。
そんな事を思いながら護衛依頼当日まで大人しく過ごすのだった。
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