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第七章 変わりすぎた日常

8話 懐かしい姿

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 冒険者ギルド長の部屋から聞こえる懐かしい声の内容に思わず苦笑いを浮かべながらアンに付いて行くけど、離れていても聞こえる位の大きな声で騒いでる当たり本当に計算事が苦手なのかもしれない。
それにしても依頼に対する人数の振り分けがって言ってたけど、人数次第では依頼料を上回ってしまったりして追加の料金が発生するとかあったりするのだろうか。
その場合依頼主に追加料金を求めたりするのか、もしくはギルドの方で負担したりするのかもしれない、そうだった場合カエデが指摘するのも当然の事で、依頼を受けても赤字にしかならない状態になってしまうのは良くないと思う。

「……ここよ、まぁあんな大きな声で騒いでたら嫌でも分かると思うけどね」
「アンさん、案内して頂いてありがとうございます」
「……仕事だからいいのよ、心器を扱える人だからBランクからになりそうだけどどうなるか分からないわね」
「Bランクからって?」
「……あなたはもう充分に戦う能力があるわ、それに【心器】を使用する許可を【栄花】から得ているもの、戦闘力の面で見たらCランクにしておくわけには行かないのよね、まぁ詳しくは姫ちゃんとギルド長に会って話し合いなさい、私は取り合えずこれで受付に戻るから後は先輩冒険者のダートが面倒見てあげるようにね」
「はいっ!、レースの事は私が責任を持って立派な冒険者にするので大丈夫です」
「……ふふ、期待してるわ【泥霧の魔術師】さん」

 アンはダートにぼくの事を任せると通路を戻り受付のある広間へ戻って行ってしまう。
出来るならギルド長室と書かれた部屋の中まで一緒に来て欲しかったけど、彼女には仕事がある以上はしょうがないと割り切るしかない。
現に今もカエデに色々と指摘されている声とジラルドの叫び声が扉越しに聞こえてくるから、個人的に大変気まずかったりする。

「……入っていいのかなこれ」
「気まずいけど良いと思うよ?、取り合えずノックしてみよ?」
「そうだね」

 このまま扉の前に立っていても時間が無駄になるだけだ。
そう思いながら扉をノックをすると、部屋から聞こえていた騒がしい二人の声が静かになり……『ジラルドさん、こういう時はどうぞって言わないと入って来ないですよ?』というカエデの声が静寂の中で響いた。

「あ、あぁそうだな、どうぞ」
「……失礼しますギルド長、受付に案内をされて冒険者志望の方を連れて来ました」
「冒険者志望の奴を?それなら受付で済ませばいいだ……って、レースとダートかっ!」
「……レースさん?、それにダートお姉様がどうしてこのような所に?それに冒険者志望ってどういう?」

 部屋に入ると大きな机から身を乗り出しながらぼく達の事を見るジラルドと、驚いた顔をしているカエデの姿が見える。
暫く見ない間に彼は少し身体が小さくなった気がする、やつれたというよりも身体の筋肉が減った結果体型が変わってしまったのかもしれない。
……多分冒険者の仕事よりも、トレーディアスの貴族として覚える事が多くて体を動かせていなかったのかもしれない、確か領地を治めたりとか色々とやる事がある的な事を大分前に西の大国の王【商王クラウズ・トレーディアス】が言っていたという話をダート達から聞いた記憶がうろ覚えだけどあった気がするからしょうがないんだと思う。
そしてカエデの方は何ていうか……、白い綺麗な着物を着て清楚な雰囲気を感じさせる。
それにお化粧をしているのだろうか、何処となく大人っぽく見えて目のやり場に困ってしまいそうだ。

「カエデちゃんの顔をまじまじと見るのやめてよ……、私がいるでしょ?」
「いや、そういう訳じゃなくて……、お化粧をしてるせいか大人っぽい雰囲気だなぁって思ってただけだよ、それに腰に付けてる大きなベルトみたいな物のせいか体型が強調されて目のやり場に困るっていうか」
「レースさんっ!?あなた何処を見てるんですかっ!?せ、セクハラですっ!まさかそんな事を言う為にここに来たんのですか!!」
「……レース、後で二人きりで話をしようね?」
「お前らなぁ、冒険者志望で来たっていうのに態々ここでいちゃつくの止めろよ……、ここまで来たって事は登録時に何らかの問題が起きたんだろ?、このままだと話が続かなくなるから話してくれよ、カエデも俺の教育に来たんなら公私を分けてくれないと困る」

 呆れたような顔をするジラルドがそう言いながら椅子に座り直すと、カエデも顔を赤らめて彼の隣に立つ。

「えっと、色々とあって師匠から冒険者登録をするように言われたんだけど、アンから心器を使える人を受付で鑑定するわけには行かないと言われて……」
「心器が使えると何で受付じゃ駄目なんだ?」
「アンさんに感謝しなければいけませんね、本来一般の方が心器を扱う技術を持つという事自体が異常ですし、冒険者ギルドの鑑定の魔導具では魔力適正と能力値そして特性しか見る事しか出来ませんが、心器を扱えるという事は能力面が非常に高いという事になります……、この都市で戦う能力が無いと思われているレースさんが目立つ事が無いように気を使ってくれたのかもしれませんね」
「なるほどなぁ、確かにそういう意味ではギルド長室っていう外から見えない場所で見た方がいいよなぁ」
「まぁ、これはこれで冒険者用の受付に来た人がギルドの奥に入って行く時点で悪目立ちしてしまってますからね……、ジラルドさんに呼ばれて治癒術師としての仕事を受けに来たついでに冒険者登録をする事になったという事にしましょう」

……そう言いながら難しい顔をするカエデを見て、治癒術を教える側と教わる側の関係でしかなかったからかこういう一面もあるんだなと新鮮な気持ちになる。
栄花騎士団副団長としての彼女を見た事は何度かあるけど、あの時は周りから姫と呼ばれていたのもあって可愛い女の子にしか見えなかったけど、今は何処と無く大人びて見えるのが不思議でダートがいなかったらもしかして惹かれていたかもしれないと、そんな事をこんな大事な話をしている時に思っている自分に少しだけ呆れるのだった。
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