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第六章 明かされた出自と失われた時間
33話 馬車の中で……
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馬車が移動して暫くした後にダートが目を覚ましたけど、起きるまでぼくの膝の上に頭を乗せて眠っていたせいか……
「え?ここ何処って……、レースは何処!?っていったいっ!」
「っつぅ!?」
焦って飛び起きた彼女の頭が綺麗にぼくの顎に当たり視界が星が見える。
余りの痛みに視界が暫くぐらぐらと揺れていたけど、多分良い角度で顎に当たったせいで脳が揺れているのかもしれない。
「あ、ご、ごめんね……?目を覚ましたらレースの姿が無くて焦っちゃって」
「いや、別にいいよ、それよりも当たった所怪我してないか見せて貰ってもいい?」
「うん……」
「おい、目を覚ましてそうそういちゃつくのを止めてくれないか?、俺達はこれからヴィーニ達の元へ行って戦うんだぞ?、これでは戦闘前の緊張感が無くなってしまう」
「あ、ごめんなさい」
シンさんに注意された事に謝りながら、ぶつけた所を診るけど特に怪我とかは無さそうで良かった。
「まぁまぁ、シンの事は気にしないでいちゃつくなら存分にやりなよ、周りの事気にせずに出来るのは、若さゆえに特権だよ?」
「この中で一番年上のお前が言うと説得力があるな……」
「何を!?あたいは確かにあんたらと比べたら二回りは歳取っちゃいるけど、ドワーフの中ではまだ若者だわっ!、見た目もまだ人族から見たら、十代の女と変わらない筈だよ!そんなあたいに対してほんと失礼な奴だねっ!」
「……そこで本気で口調を荒げるから子供っぽく見られるんだ、見た目の若さを誇よりも、積み重ねてきた人生の中で得た経験を誇るべきではないのか?、勿論成功経験ばかりでは無く、後進の為に失敗から自分はこうしましたと言う、失敗から学んだ事を言うべきだ」
「くどくどと、うるさいよあんたはっ!、ミュラッカ王女はこんなのの何処が良いんだい?」
いや、ぼく達よりもこの人達の方が緊張感が無いって言いたいけど、ここでそんな事を言ったら喧嘩になりそうな気がするから何も言わないでおく。
現にダートも状況が呑み込めていないのか、困惑したような顔で説明を求めてくるけど、ぼくもどうしてこうなったのか分からない。
「えっと、こうやって正論みたいに言ってるけど、実は周囲の緊張を解そうとしてくれているところですかね……、実際に戦って見て分かりましたけど、シン様の戦い方は素直な剣術では無く大変捻くれた戦場の剣で型も何もあったもんじゃないですから、素直に言葉にするのが苦手だけど性根は優しい人何だって感じる所が良いですね、特に今も図星なのか後ろを向いて馬車の壁を見続けている所が実に愛おしい、それにカーティス様と話し合っている時も勝てない相手だと分かっているのに、剣を持って私を守ろうとしてくれた所とかとても頼りがいがあって素敵ですね」
「……シン、あんた凄い人に好かれたなぁ、多分だけど何処に居ても追いかけて来るタイプだよこの王女様は」
「どうしてこうなった……、俺の何処がそんなに気に入ったんだよこの王女様は」
「私の事を好きだって言ったのシン様じゃないですか、今でも覚えてますよ?初対面の時に『お前が好きだ』って私の方を見て言ったじゃないですか!、私は自分の事を好きになってくれた方と全力で戦って負けた方と結婚すると決めているのですよ、だから責任取って下さいね?、勿論逃がしませんしこの世界の何処に居たとしても必ず捕まえますよ」
「本当にどうしてこうなった!、負けたと言ってもお前が俺よりも弱かっただけだろっ!」
騒がしいなぁと思いつつ、三人が仲良く話してる間にどうして馬車に居るのかの説明をダートにしたけど、抱き上げてここまで運んできた事を説明したら顔を真っ赤にしてぼくの肩を力無く両手でポコポコと殴って来て、何とも言えないくすぐったさが襲う。
それにしてもミュラッカってもしかして好きな人が出来ると、何処までも愛情が重い人なのかもしれない。
血縁である以上ぼくも似ている所があるかもしれないから、ここ反面教師にした方がいいかも……
「まぁ、既に私の事をお前って呼んで自分の女扱いする何て……、積極的過ぎて素敵ですね、カエデ様、彼が栄花騎士団から抜けた場合、新たに最高幹部になる方はいるの?」
「いるにはいるのですが、能力面が高くないので育つまでは引き抜かないで頂けると……」
「そう、ならその人が育つまでは国籍をそちらに置いたままにして、育ち次第国籍を移すようにするわね?じゃないとカエデ様の方に迷惑をかけてしまうもの」
「いや……、俺の迷惑を考えてくれよ」
「シン、あたい思うんだよね……、あんたみたいな男はミュラッカ王女みたいなタイプに掴まった方が将来的に安泰だって……、ほらあんたは戦う度に傷だらけになるからさ、これからは体を大事にした方がいいよ」
なんだか良い話風にしようとしてるけど、シンさんが流石に可哀そうに見えて来たから何とかしないと……
「あの、シンさんの意志を尊重した方が良いんじゃないかな、本人が嫌がってたらどうするの?」
「……そうだぞ?俺がもし嫌だと言ったらどうするつもりだ?」
「どうするつもりも何もあんた、嫌だったらここから逃げてるでしょ?付き合いが長いから分かるのよ」
「好きに言ってろ、俺は御者台に行って馬を走らせているサリアの様子を見て来る」
「ほら、言い返せなくなったから逃げた、レース、あいつはこういう奴だから気遣いはいらないんだよ、でもシンの事気遣ってくれてありがとね」
……シンが『勝手に言っていろ』と言って馬車の前方に行くとサリアの隣に座る。
彼女は一瞬ビクッとしてこっちを振り向くと『この流れで来られると僕気まずいんだけどっ!?ねぇ勘弁してよっ!』と言うけど、個人的には一人で御者台にいる方が大変だと思うから彼女に丁度良い話し相手が出来た気がする。
それにサリアがくれたメイディ産の乗り物酔いを抑える薬のおかげで馬車の中でも体調を崩さないでいられるという事に感謝の気持ちしかない。
そんな事を思いながら、彼女が作ってくれた朝食を皆で食べるのだった。
「え?ここ何処って……、レースは何処!?っていったいっ!」
「っつぅ!?」
焦って飛び起きた彼女の頭が綺麗にぼくの顎に当たり視界が星が見える。
余りの痛みに視界が暫くぐらぐらと揺れていたけど、多分良い角度で顎に当たったせいで脳が揺れているのかもしれない。
「あ、ご、ごめんね……?目を覚ましたらレースの姿が無くて焦っちゃって」
「いや、別にいいよ、それよりも当たった所怪我してないか見せて貰ってもいい?」
「うん……」
「おい、目を覚ましてそうそういちゃつくのを止めてくれないか?、俺達はこれからヴィーニ達の元へ行って戦うんだぞ?、これでは戦闘前の緊張感が無くなってしまう」
「あ、ごめんなさい」
シンさんに注意された事に謝りながら、ぶつけた所を診るけど特に怪我とかは無さそうで良かった。
「まぁまぁ、シンの事は気にしないでいちゃつくなら存分にやりなよ、周りの事気にせずに出来るのは、若さゆえに特権だよ?」
「この中で一番年上のお前が言うと説得力があるな……」
「何を!?あたいは確かにあんたらと比べたら二回りは歳取っちゃいるけど、ドワーフの中ではまだ若者だわっ!、見た目もまだ人族から見たら、十代の女と変わらない筈だよ!そんなあたいに対してほんと失礼な奴だねっ!」
「……そこで本気で口調を荒げるから子供っぽく見られるんだ、見た目の若さを誇よりも、積み重ねてきた人生の中で得た経験を誇るべきではないのか?、勿論成功経験ばかりでは無く、後進の為に失敗から自分はこうしましたと言う、失敗から学んだ事を言うべきだ」
「くどくどと、うるさいよあんたはっ!、ミュラッカ王女はこんなのの何処が良いんだい?」
いや、ぼく達よりもこの人達の方が緊張感が無いって言いたいけど、ここでそんな事を言ったら喧嘩になりそうな気がするから何も言わないでおく。
現にダートも状況が呑み込めていないのか、困惑したような顔で説明を求めてくるけど、ぼくもどうしてこうなったのか分からない。
「えっと、こうやって正論みたいに言ってるけど、実は周囲の緊張を解そうとしてくれているところですかね……、実際に戦って見て分かりましたけど、シン様の戦い方は素直な剣術では無く大変捻くれた戦場の剣で型も何もあったもんじゃないですから、素直に言葉にするのが苦手だけど性根は優しい人何だって感じる所が良いですね、特に今も図星なのか後ろを向いて馬車の壁を見続けている所が実に愛おしい、それにカーティス様と話し合っている時も勝てない相手だと分かっているのに、剣を持って私を守ろうとしてくれた所とかとても頼りがいがあって素敵ですね」
「……シン、あんた凄い人に好かれたなぁ、多分だけど何処に居ても追いかけて来るタイプだよこの王女様は」
「どうしてこうなった……、俺の何処がそんなに気に入ったんだよこの王女様は」
「私の事を好きだって言ったのシン様じゃないですか、今でも覚えてますよ?初対面の時に『お前が好きだ』って私の方を見て言ったじゃないですか!、私は自分の事を好きになってくれた方と全力で戦って負けた方と結婚すると決めているのですよ、だから責任取って下さいね?、勿論逃がしませんしこの世界の何処に居たとしても必ず捕まえますよ」
「本当にどうしてこうなった!、負けたと言ってもお前が俺よりも弱かっただけだろっ!」
騒がしいなぁと思いつつ、三人が仲良く話してる間にどうして馬車に居るのかの説明をダートにしたけど、抱き上げてここまで運んできた事を説明したら顔を真っ赤にしてぼくの肩を力無く両手でポコポコと殴って来て、何とも言えないくすぐったさが襲う。
それにしてもミュラッカってもしかして好きな人が出来ると、何処までも愛情が重い人なのかもしれない。
血縁である以上ぼくも似ている所があるかもしれないから、ここ反面教師にした方がいいかも……
「まぁ、既に私の事をお前って呼んで自分の女扱いする何て……、積極的過ぎて素敵ですね、カエデ様、彼が栄花騎士団から抜けた場合、新たに最高幹部になる方はいるの?」
「いるにはいるのですが、能力面が高くないので育つまでは引き抜かないで頂けると……」
「そう、ならその人が育つまでは国籍をそちらに置いたままにして、育ち次第国籍を移すようにするわね?じゃないとカエデ様の方に迷惑をかけてしまうもの」
「いや……、俺の迷惑を考えてくれよ」
「シン、あたい思うんだよね……、あんたみたいな男はミュラッカ王女みたいなタイプに掴まった方が将来的に安泰だって……、ほらあんたは戦う度に傷だらけになるからさ、これからは体を大事にした方がいいよ」
なんだか良い話風にしようとしてるけど、シンさんが流石に可哀そうに見えて来たから何とかしないと……
「あの、シンさんの意志を尊重した方が良いんじゃないかな、本人が嫌がってたらどうするの?」
「……そうだぞ?俺がもし嫌だと言ったらどうするつもりだ?」
「どうするつもりも何もあんた、嫌だったらここから逃げてるでしょ?付き合いが長いから分かるのよ」
「好きに言ってろ、俺は御者台に行って馬を走らせているサリアの様子を見て来る」
「ほら、言い返せなくなったから逃げた、レース、あいつはこういう奴だから気遣いはいらないんだよ、でもシンの事気遣ってくれてありがとね」
……シンが『勝手に言っていろ』と言って馬車の前方に行くとサリアの隣に座る。
彼女は一瞬ビクッとしてこっちを振り向くと『この流れで来られると僕気まずいんだけどっ!?ねぇ勘弁してよっ!』と言うけど、個人的には一人で御者台にいる方が大変だと思うから彼女に丁度良い話し相手が出来た気がする。
それにサリアがくれたメイディ産の乗り物酔いを抑える薬のおかげで馬車の中でも体調を崩さないでいられるという事に感謝の気持ちしかない。
そんな事を思いながら、彼女が作ってくれた朝食を皆で食べるのだった。
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