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第六章 明かされた出自と失われた時間
19話 戦いと不穏な影
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滑るようにこちらに向かって大剣を横薙ぎにするミュラッカの一撃を受け止めようと、雪の壁を作り出そうとすると……
「レースっ!そのまま何もしないでっ!」
「え!?」
足元の感覚が無くなったかと思うと目の前まで迫って来た大剣が消えたかと思うと、何故ミュラッカが横に吹き飛んで行く。
何が起こったのか分からなくて一瞬動きが止まってしまうけど、追撃を加えた方が良い気がして彼女の頭上に魔術で作り出した雪を作り出して固めると勢いを付けて落とすが、盾に防がれてしまって効果が無かった。
「ダート、今のは何をしたの?」
「空間魔術でレースの前方の空間とミュラッカの背後を繋げて、自分自身を攻撃させたの」
「良くあの一瞬でそんな事が出来たね」
「今の私に出来るのは正直それ位だもの、ダリアが居なくなってから呪術が上手く使えなくなっちゃったから……」
「大丈夫、その分ぼくがしっかりと支えるから」
多分だけど今迄呪術を使う為に使っていた負の感情を担当していたのがダリアで、彼女を自分の中から切り離した結果上手く使えなくなってしまったんだと思う。
とは言えそれは一時的な物でまた使い続けていれば使えるようになると思うから問題無いとは思うけど今は戦いに集中した方が良い……
「やってくれますねダート義姉様、今のは盾が無ければ間違いなく自滅していたわ」
「自滅してくれた方が嬉しかったんだけど……」
「それは遠慮するわ……、だって折角の戦いを楽しめなくなってしまうものっ!」
ミュラッカは立ち上がり大剣を再び構えると、再び雪の上を滑るように走って来るけどこれだと攻撃に入ったらさっきと同じ結果になる気がするけどどうしてそんな事をしているのだろうか……
「これはっ!ダート姉様っ!レースさんっ!逃げてくださいっ!」
「逃げてって、ダートの空間魔術で防げば大丈夫じゃ……?」
「いいから早くこっちまでっ!……、あぁもうっ!」
ぼく達の前に土で出来た壁が現れたかと思うと紙のように大剣に切り裂かれてそこから氷に包まれて行く。
そしてミュラッカは凍り付いた壁を足場にして高く跳び上がると落下の勢いを付けたまま武器を地面に振り下ろす。
「カエデ様の判断は良いですが、連携が取れてないみたいですね……、武技【凍刃】」
大剣が叩きつけられた地面を中心に雪が針のように突き出すと周囲を氷が覆って行き、氷雪の剣が生み出されてゆく。
「え?うそ、脚が動かないっ!レースっ!」
「ダート!?……、大丈夫!?ってあれ!?ぼくの脚も動かない!」
咄嗟に逃げようとするけれど足元が雪に固定されてしまい逃げれなくなってる。
多分だけど、ミュラッカの魔力特性のせいでその場に【固定】又は【停止】させられてしまったのだろうけど、このままでは怪我だけじゃすまない……、これはどうなるか分からないけどやるしかないと思う。
心器の長杖に魔力を通すと、ダートとぼくの間の空間移動する想像をすると周囲の色と音が消えて自分の身体が勝手にダートの元へと移動すると、世界に色が戻り音が戻って来た。
それと同時に異常な疲労感が身体を襲って来て眩暈からその場に倒れそうになるけど必死に意識を繋ぎとめて、再び同じ要領でカエデの元へと移動するけど……、今度は元に戻る時に気配をを感じたと思うと耳元で【見つけた……、私が帰る為の鍵の一つ】と誰かの声が囁く。
「レース兄様、あなた今世界の壁を越えませんでしたか?」
「……今のは」
「レース兄様っ!」
「今の声は……」
「っ!……皆さんの実力は今ので分かったのでここまでにします!、早く意識を飛ばさないと引っ張られるっ!」
焦ったような顔をしたミュラッカがぼくに近付いて来たかと思うと体に触れて魔力を通して来る。
そして徐々に身体が冷えて来たかと思うと意識が遠のいて行き……、気が付いたら真っ暗な世界の中に一人取り残されてしまっていた。
「ここは……?、ぼくはさっきまでミュラッカに実力を見せる為に戦っていた筈……」
真っ暗中にぽつんと一ヵ所だけ、開いた白いカーテンと石畳の床が浮かんで見える。
取り合えずそこに向かって見ようと思って近づいてみると、カーテンの後ろに誰かがいるのか勢いよく閉められてしまう。
「……えっともしかして誰かいるの?」
「えぇ、ここは私の領域ですからね、それにしてもまさかレースさんが空間を移動する能力を持ってる何て思いませんでした」
「その声は何処かで……」
「これ以上は近づかないでください、姿を見られると困った事になるので」
声の主を確かめる為に近づくと、カーテン越しに黒い蝙蝠のような翼と白い翼が透けて見えて、うっすらと見える黄金色に輝く髪が神秘的な雰囲気を出していた。
「いい子ですね、これ以上近づかれていたら折角見つけた鍵の一つを殺してしまう所でした」
「……言ってる事が分からないんだけど」
「そりゃ説明してませんからね、分からなくて当然だと思います、ですがそうですね……、質問に答えてくれたら元の場所に帰してあげるので聞いてくれますか?」
「……それ位なら?」
「ありがとうございます……、なら聞きたいのですが、レースさんは異世界からの転移者又は転生者ですか?もしそうだった場合……あなたは元の世界に帰りたいと願いますか?」
異世界からってどうしてそのような事を聞くのだろうか……
「いや、違うよ」
「では、あなたの周りに異世界から来た人や転生者はいますか?」
「……何でそんな事を聞きたいの?」
「大事な事だからですね、もしいた場合元居た世界の名前を聞いたりしてませんか?、例えば映像を映し出す箱があったとか、夜なのに電気の力で外が明るかったとか」
異世界から来た人物と言えばダートだけど、彼女は帰りたいと望んでいないしこれから先もずっとぼくの傍にいてくれる筈だ。
「成程ダートさん、あぁあの時コルクさんのお部屋で会った珍しい髪色の女の子ですか」
「……言葉にしてないのになんで」
「だってここは私の領域ですよ?人の心の中位簡単に見えますよ?」
「なら改めて質問をするのですが、あなたの空間を移動する能力とは別に【時空】そうですね、時を止めたり加速出来る人は?、後次元を切り裂ける能力の持ち主は?」
「……知らないけど」
何でそんな人達を求めているのか分からない……、それに理解が出来なくて気持ち悪い。
「本当に知らない?それとも……隠してるだけ?、まぁいいです。ここまで質問に答えてくれたあなたにお礼として簡単に説明すると、時空間魔術で世界の理に干渉して貰って、その中に次元を切り裂ける異世界の人と私達があなたの使う【空間移動】で一緒に入って、異世界へと繋がる空間を切り開いて貰おうという感じですね」
「……それならぼくの師匠とマスカレイドが過去に異世界の扉を開けたらしいから二人に頼めばいいんじゃ?」
「最初はそう思ったんですけど、二人が出来るのは異世界にこちら側への一方通行の穴を空けるだけで、この世界かから異世界に行く事は出来ないんですよ……、まぁマスカレイドさんに協力して時空間魔術の適性が僅かにある人や、空間移動能力に目覚める可能性がある子供を集めたりしましたが、どれも外ればかりで期待外れなんですよね……、唯一使えるのは彼が作り出した発明品の魔導具だけだけど、それも魔術を扱える人じゃないと扱えないし私はそういう類を扱う能力が無いので、ただのガラクタと同じ……っとついつい長話をしてしまいました、今から意識を身体の方に戻しますが最後に一つだけいいですか?」
「それ位ならいいけど……」
「ありがとうございます、なら……、マスカレイドと共に私の元へ来ませんか?今ならそうですね、世界の半分を差し上げますよっ!」
この人の元へ来たいとは思わないし、世界の半分なんてぼくにはいらない、ダートさえいればそれでいいから、それ以上の事を望む必要がない。
「そうですか……、出来れば協力して頂けたら嬉しかったんですけど……、分かりました、後日使いの者をあなたの元へ向かわせますので、もしその人に負ける事があったら付いて来て下さいね、私はどうしてもあなたの事が欲しいので」
「つまり負けなければいいんでしょ?……、それなら今よりももっと強くなる努力をして返り討ちにするから大丈夫だよ」
「ふふ、その強気な発言がいつまで続くか楽しみですね……、ではそろそろお目覚めの時間ですよ」
「待って、ぼくの方から聞きたい事が……」
……身体が後ろに引っ張られるような感覚と共に意識もそっちへと流されていく。
そして再び意識が遠のいて行ったかと思うと、身体が重くなったような違和感を覚えて息苦しくなる。
何とか呼吸をしようと眼を開けると……、そこには心配そうに眼に涙を浮かべたダートの姿があるのだった。
「レースっ!そのまま何もしないでっ!」
「え!?」
足元の感覚が無くなったかと思うと目の前まで迫って来た大剣が消えたかと思うと、何故ミュラッカが横に吹き飛んで行く。
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多分だけど今迄呪術を使う為に使っていた負の感情を担当していたのがダリアで、彼女を自分の中から切り離した結果上手く使えなくなってしまったんだと思う。
とは言えそれは一時的な物でまた使い続けていれば使えるようになると思うから問題無いとは思うけど今は戦いに集中した方が良い……
「やってくれますねダート義姉様、今のは盾が無ければ間違いなく自滅していたわ」
「自滅してくれた方が嬉しかったんだけど……」
「それは遠慮するわ……、だって折角の戦いを楽しめなくなってしまうものっ!」
ミュラッカは立ち上がり大剣を再び構えると、再び雪の上を滑るように走って来るけどこれだと攻撃に入ったらさっきと同じ結果になる気がするけどどうしてそんな事をしているのだろうか……
「これはっ!ダート姉様っ!レースさんっ!逃げてくださいっ!」
「逃げてって、ダートの空間魔術で防げば大丈夫じゃ……?」
「いいから早くこっちまでっ!……、あぁもうっ!」
ぼく達の前に土で出来た壁が現れたかと思うと紙のように大剣に切り裂かれてそこから氷に包まれて行く。
そしてミュラッカは凍り付いた壁を足場にして高く跳び上がると落下の勢いを付けたまま武器を地面に振り下ろす。
「カエデ様の判断は良いですが、連携が取れてないみたいですね……、武技【凍刃】」
大剣が叩きつけられた地面を中心に雪が針のように突き出すと周囲を氷が覆って行き、氷雪の剣が生み出されてゆく。
「え?うそ、脚が動かないっ!レースっ!」
「ダート!?……、大丈夫!?ってあれ!?ぼくの脚も動かない!」
咄嗟に逃げようとするけれど足元が雪に固定されてしまい逃げれなくなってる。
多分だけど、ミュラッカの魔力特性のせいでその場に【固定】又は【停止】させられてしまったのだろうけど、このままでは怪我だけじゃすまない……、これはどうなるか分からないけどやるしかないと思う。
心器の長杖に魔力を通すと、ダートとぼくの間の空間移動する想像をすると周囲の色と音が消えて自分の身体が勝手にダートの元へと移動すると、世界に色が戻り音が戻って来た。
それと同時に異常な疲労感が身体を襲って来て眩暈からその場に倒れそうになるけど必死に意識を繋ぎとめて、再び同じ要領でカエデの元へと移動するけど……、今度は元に戻る時に気配をを感じたと思うと耳元で【見つけた……、私が帰る為の鍵の一つ】と誰かの声が囁く。
「レース兄様、あなた今世界の壁を越えませんでしたか?」
「……今のは」
「レース兄様っ!」
「今の声は……」
「っ!……皆さんの実力は今ので分かったのでここまでにします!、早く意識を飛ばさないと引っ張られるっ!」
焦ったような顔をしたミュラッカがぼくに近付いて来たかと思うと体に触れて魔力を通して来る。
そして徐々に身体が冷えて来たかと思うと意識が遠のいて行き……、気が付いたら真っ暗な世界の中に一人取り残されてしまっていた。
「ここは……?、ぼくはさっきまでミュラッカに実力を見せる為に戦っていた筈……」
真っ暗中にぽつんと一ヵ所だけ、開いた白いカーテンと石畳の床が浮かんで見える。
取り合えずそこに向かって見ようと思って近づいてみると、カーテンの後ろに誰かがいるのか勢いよく閉められてしまう。
「……えっともしかして誰かいるの?」
「えぇ、ここは私の領域ですからね、それにしてもまさかレースさんが空間を移動する能力を持ってる何て思いませんでした」
「その声は何処かで……」
「これ以上は近づかないでください、姿を見られると困った事になるので」
声の主を確かめる為に近づくと、カーテン越しに黒い蝙蝠のような翼と白い翼が透けて見えて、うっすらと見える黄金色に輝く髪が神秘的な雰囲気を出していた。
「いい子ですね、これ以上近づかれていたら折角見つけた鍵の一つを殺してしまう所でした」
「……言ってる事が分からないんだけど」
「そりゃ説明してませんからね、分からなくて当然だと思います、ですがそうですね……、質問に答えてくれたら元の場所に帰してあげるので聞いてくれますか?」
「……それ位なら?」
「ありがとうございます……、なら聞きたいのですが、レースさんは異世界からの転移者又は転生者ですか?もしそうだった場合……あなたは元の世界に帰りたいと願いますか?」
異世界からってどうしてそのような事を聞くのだろうか……
「いや、違うよ」
「では、あなたの周りに異世界から来た人や転生者はいますか?」
「……何でそんな事を聞きたいの?」
「大事な事だからですね、もしいた場合元居た世界の名前を聞いたりしてませんか?、例えば映像を映し出す箱があったとか、夜なのに電気の力で外が明るかったとか」
異世界から来た人物と言えばダートだけど、彼女は帰りたいと望んでいないしこれから先もずっとぼくの傍にいてくれる筈だ。
「成程ダートさん、あぁあの時コルクさんのお部屋で会った珍しい髪色の女の子ですか」
「……言葉にしてないのになんで」
「だってここは私の領域ですよ?人の心の中位簡単に見えますよ?」
「なら改めて質問をするのですが、あなたの空間を移動する能力とは別に【時空】そうですね、時を止めたり加速出来る人は?、後次元を切り裂ける能力の持ち主は?」
「……知らないけど」
何でそんな人達を求めているのか分からない……、それに理解が出来なくて気持ち悪い。
「本当に知らない?それとも……隠してるだけ?、まぁいいです。ここまで質問に答えてくれたあなたにお礼として簡単に説明すると、時空間魔術で世界の理に干渉して貰って、その中に次元を切り裂ける異世界の人と私達があなたの使う【空間移動】で一緒に入って、異世界へと繋がる空間を切り開いて貰おうという感じですね」
「……それならぼくの師匠とマスカレイドが過去に異世界の扉を開けたらしいから二人に頼めばいいんじゃ?」
「最初はそう思ったんですけど、二人が出来るのは異世界にこちら側への一方通行の穴を空けるだけで、この世界かから異世界に行く事は出来ないんですよ……、まぁマスカレイドさんに協力して時空間魔術の適性が僅かにある人や、空間移動能力に目覚める可能性がある子供を集めたりしましたが、どれも外ればかりで期待外れなんですよね……、唯一使えるのは彼が作り出した発明品の魔導具だけだけど、それも魔術を扱える人じゃないと扱えないし私はそういう類を扱う能力が無いので、ただのガラクタと同じ……っとついつい長話をしてしまいました、今から意識を身体の方に戻しますが最後に一つだけいいですか?」
「それ位ならいいけど……」
「ありがとうございます、なら……、マスカレイドと共に私の元へ来ませんか?今ならそうですね、世界の半分を差し上げますよっ!」
この人の元へ来たいとは思わないし、世界の半分なんてぼくにはいらない、ダートさえいればそれでいいから、それ以上の事を望む必要がない。
「そうですか……、出来れば協力して頂けたら嬉しかったんですけど……、分かりました、後日使いの者をあなたの元へ向かわせますので、もしその人に負ける事があったら付いて来て下さいね、私はどうしてもあなたの事が欲しいので」
「つまり負けなければいいんでしょ?……、それなら今よりももっと強くなる努力をして返り討ちにするから大丈夫だよ」
「ふふ、その強気な発言がいつまで続くか楽しみですね……、ではそろそろお目覚めの時間ですよ」
「待って、ぼくの方から聞きたい事が……」
……身体が後ろに引っ張られるような感覚と共に意識もそっちへと流されていく。
そして再び意識が遠のいて行ったかと思うと、身体が重くなったような違和感を覚えて息苦しくなる。
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