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第六章 明かされた出自と失われた時間
16話 奪う者と奪われる者
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朝から馬車に揺られていたぼく達は道中で立ち寄った町の宿で簡単な昼食を取りそこで馬を交換して走り続ける事により、日が暮れて辺りが暗くなる頃合いに目的の村にたどり着くと、ミュラッカが【ここは私がお忍びで来ている事にして宿を確保します】と言って馬車から降りて宿を確保してくれた。
「この村の宿って……、民泊何だね」
「正確には領主に届け出を出して管理運営されてるから民宿だけど……、本当はもっと広い宿を確保したかったのだけれど狭い部屋しかなくてごめんなさい」
「いや、充分に広いから大丈夫だよ、ミュラッカありがとう」
「そうだよ?まるで貴族のお屋敷みたいだし、これで狭い何て言えないかな」
「それなら良かったわ、急いで村で一番大きい宿を取ったかいがあったと感じるもの」
大きい宿か……、玄関には全員が入っても広く感じる程に広く、そして廊下には豪華な絵画や壺等の美術品が並んでいる。
更には部屋の数が人数分以上にあるおかげで寝る場所が選び放題だ、しかも室内はぼくにダートとミュラッカを入れた三人で入っても充分に広くて王城に用意された個室を思い出させる程だ。
「もしかしてだけどここって元貴族の屋敷だったりする?」
「えぇ元は前領主の屋敷だったらしいのだけど、現領主が他領から領地を広める為に戦争を仕掛けて討ち取って勝ち取ったはいいけど、自分の館の方が大きいから不要だと言って捨てようとした屋敷を村の代表者がそれなら民宿として使いたいと言ってこうなったそうよ」
「こんな大きい屋敷を捨てる何て勿体ない事をする領主なんだね、別荘にするとか色々と使い道があると思うのに」
「……そんな事考えてないんだと思うわ、ここの領主は領民に非常に重い税を課して膏血を絞っては自分が贅沢をする事しか考えてない人物だもの、それも飢えて凍え死ぬ事が無いぎりぎりを狙って反抗する気力すら奪っている悪徳領主として有名なのよ」
「覇王ヴォルフガングはその事を知ってるの?」
何でそんな人物を領主としての立場に置いているのか疑問に思って聞いてしまったけど、……ストラフィリアという国の特徴を考えると【人を支配する力】があるから当然の権利だと国民が思い込んでしまっている可能性がある。
それ程までにこの国では力が絶対視されているからこそ、最悪な領主が生まれてしまうのかもしれない。
「勿論知ってるわよ?でもね、あの人一人だけではどうする事も出来ないの……、父様は今迄味方を作ろうとしなかったし作る事が出来ない立場にいたから、幾ら個人で強大な武力を持っていたとしても多数決という暴力には勝てないのよ、正直私はこの国の現状に納得が行かなけど今のこの国では何処まで行っても力が全てなの」
「だからミュラッカは、王位を継承して覇王になれたら強さだけで格差が決まる環境を変えたがっているんだね?」
「えぇ、仮に私の代で無理だったとしても、次の代に意志を繋げて必ずやり遂げるわ、だからレース兄様とダート義姉様には私が覇王になったら困った時に力を貸して欲しいの」
「私は勿論いいけど……、力になれるか分からないと思うよ?」
「それでも問題ありません、私は力がある立場で育ったせいで下の立場の目線を理解しきれない部分があるので、ダート義姉様とレース兄様には今迄平民として過ごして来た目線で助言を頂ければそれでいいの、それに自国と他国の平民の在り方を学ぶ事は大事だと思うから……」
そういう事なら相談された時に力になれる範囲で彼女の相談に乗れると筈だ。
……本当にミュラッカはこの国を大事に思っていて良くしたいとずっと思い続けていたから、王位を継承できるチャンスを得た今を逃したくないんだろう。
「とはいえまずは目先の事をしっかりと片さないとこの国の王になる事も出来ないから、お互いにまずは出来る範囲の事を頑張ろうか」
「そうね、でも正直言うと不安なの……私達四人でダリアとルミィを救出してヴィーニを生け捕りに出来るかが凄く」
「大丈夫、ミュラッカには私とレース、それにカエデちゃんがいるから仲間を信じて?誰かを信じる力を持つ事も大事な事だよ?」
「ダート義姉様……、ありがとうございます」
「とりあえずはカエデの立てた作戦の通りに動きながら安全に動けば大丈夫だよ……、村に着く前に話してくれた作戦を思い出すとさ――」
……道中聞いたカエデの作戦の内容を思い出しながら口にするけど、確かトキとシンが死絶傭兵団の団長であるSランク冒険者【死絶】カーティス・ハルサーの足止めをする事になった場合、四人でヴィーニの元へ行く事になって四人でまずはルミィとダリアを助け出す事を最優先に行動、その後ヴィーニの隙を付いて彼を生け捕りにする。
という流れだけれど……、その過程で『グロウフェレス』と『ガイスト』に遭遇した場合は可能であれば二名を討伐又は捕縛する事になってはいるけど、難しいと判断した場合は一度撤退して父であるヴォルフガングの到着を待ち彼と共に再度作戦を実行する流れになっていた筈だ。
けど、本当にその場合父である覇王ヴォルフガングが亡くなるリスクが高くなるから本当にそれでいいのだろうか……、もっと良い方法はあるんじゃないのかと心の中で誰にも言えずに葛藤しているぼくがいて、出来る事なら生きて欲しいと思うのだった。
「この村の宿って……、民泊何だね」
「正確には領主に届け出を出して管理運営されてるから民宿だけど……、本当はもっと広い宿を確保したかったのだけれど狭い部屋しかなくてごめんなさい」
「いや、充分に広いから大丈夫だよ、ミュラッカありがとう」
「そうだよ?まるで貴族のお屋敷みたいだし、これで狭い何て言えないかな」
「それなら良かったわ、急いで村で一番大きい宿を取ったかいがあったと感じるもの」
大きい宿か……、玄関には全員が入っても広く感じる程に広く、そして廊下には豪華な絵画や壺等の美術品が並んでいる。
更には部屋の数が人数分以上にあるおかげで寝る場所が選び放題だ、しかも室内はぼくにダートとミュラッカを入れた三人で入っても充分に広くて王城に用意された個室を思い出させる程だ。
「もしかしてだけどここって元貴族の屋敷だったりする?」
「えぇ元は前領主の屋敷だったらしいのだけど、現領主が他領から領地を広める為に戦争を仕掛けて討ち取って勝ち取ったはいいけど、自分の館の方が大きいから不要だと言って捨てようとした屋敷を村の代表者がそれなら民宿として使いたいと言ってこうなったそうよ」
「こんな大きい屋敷を捨てる何て勿体ない事をする領主なんだね、別荘にするとか色々と使い道があると思うのに」
「……そんな事考えてないんだと思うわ、ここの領主は領民に非常に重い税を課して膏血を絞っては自分が贅沢をする事しか考えてない人物だもの、それも飢えて凍え死ぬ事が無いぎりぎりを狙って反抗する気力すら奪っている悪徳領主として有名なのよ」
「覇王ヴォルフガングはその事を知ってるの?」
何でそんな人物を領主としての立場に置いているのか疑問に思って聞いてしまったけど、……ストラフィリアという国の特徴を考えると【人を支配する力】があるから当然の権利だと国民が思い込んでしまっている可能性がある。
それ程までにこの国では力が絶対視されているからこそ、最悪な領主が生まれてしまうのかもしれない。
「勿論知ってるわよ?でもね、あの人一人だけではどうする事も出来ないの……、父様は今迄味方を作ろうとしなかったし作る事が出来ない立場にいたから、幾ら個人で強大な武力を持っていたとしても多数決という暴力には勝てないのよ、正直私はこの国の現状に納得が行かなけど今のこの国では何処まで行っても力が全てなの」
「だからミュラッカは、王位を継承して覇王になれたら強さだけで格差が決まる環境を変えたがっているんだね?」
「えぇ、仮に私の代で無理だったとしても、次の代に意志を繋げて必ずやり遂げるわ、だからレース兄様とダート義姉様には私が覇王になったら困った時に力を貸して欲しいの」
「私は勿論いいけど……、力になれるか分からないと思うよ?」
「それでも問題ありません、私は力がある立場で育ったせいで下の立場の目線を理解しきれない部分があるので、ダート義姉様とレース兄様には今迄平民として過ごして来た目線で助言を頂ければそれでいいの、それに自国と他国の平民の在り方を学ぶ事は大事だと思うから……」
そういう事なら相談された時に力になれる範囲で彼女の相談に乗れると筈だ。
……本当にミュラッカはこの国を大事に思っていて良くしたいとずっと思い続けていたから、王位を継承できるチャンスを得た今を逃したくないんだろう。
「とはいえまずは目先の事をしっかりと片さないとこの国の王になる事も出来ないから、お互いにまずは出来る範囲の事を頑張ろうか」
「そうね、でも正直言うと不安なの……私達四人でダリアとルミィを救出してヴィーニを生け捕りに出来るかが凄く」
「大丈夫、ミュラッカには私とレース、それにカエデちゃんがいるから仲間を信じて?誰かを信じる力を持つ事も大事な事だよ?」
「ダート義姉様……、ありがとうございます」
「とりあえずはカエデの立てた作戦の通りに動きながら安全に動けば大丈夫だよ……、村に着く前に話してくれた作戦を思い出すとさ――」
……道中聞いたカエデの作戦の内容を思い出しながら口にするけど、確かトキとシンが死絶傭兵団の団長であるSランク冒険者【死絶】カーティス・ハルサーの足止めをする事になった場合、四人でヴィーニの元へ行く事になって四人でまずはルミィとダリアを助け出す事を最優先に行動、その後ヴィーニの隙を付いて彼を生け捕りにする。
という流れだけれど……、その過程で『グロウフェレス』と『ガイスト』に遭遇した場合は可能であれば二名を討伐又は捕縛する事になってはいるけど、難しいと判断した場合は一度撤退して父であるヴォルフガングの到着を待ち彼と共に再度作戦を実行する流れになっていた筈だ。
けど、本当にその場合父である覇王ヴォルフガングが亡くなるリスクが高くなるから本当にそれでいいのだろうか……、もっと良い方法はあるんじゃないのかと心の中で誰にも言えずに葛藤しているぼくがいて、出来る事なら生きて欲しいと思うのだった。
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