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第六章 明かされた出自と失われた時間

間章 彼等の目的 ダリア視点

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 俺とルミィが捕まってから一日が経ったけど、目の前で起きている光景に何と言うか言葉が出ない。
特に昨日何て人質にされた以上は必要最低限の食事等しか出されないと思っていたのに、出てくるのは豪華な食事とこの国では珍しい湯船が張られたお風呂で心行くまで温まる事が出来たし、そして極めつけにはとても王城の部屋のようにとても豪華な部屋に大きな一つのベッドでルミィと一緒に朝までぐっすり寝れたと来たもんだ。
扱いが思っていたよりも良くて困惑しちまうが、今は目の前の光景に困惑を隠しきれないでいる。

「団長っ!次は何処を耕すんで?」
「……この近辺の村で畑に出来そうな所は全部耕したから今日はこれを使って見よう」
「これは色合い的に毒みたいっすけどどうやるんで?」

 外から聞こえる声は何ていうか緊張感が無くて、俺達が人質になった意味は?という気持ちになる。
それに今日になって分かった事だけど、今俺達がいる場所はとある領主の館らしく周辺の村から重い税を取り領民を飢えさせて自分は贅沢の限りを尽くしているという、絵に描いたような悪徳領主だ。
何でそんなとこに居るのかというと、ヴィーニの野郎がその領主を独断で処刑して領地を乗っ取り自分の物にしてしまったらしく、領地の運営に関しては処刑された領主の息子に父の名を名乗らせてやらせているらしい。

「植えた野菜に使う事で成長を促進させる効果があるんだけど変わりに……」
「変わりにどうなるんで?」
「大地の栄養さえ強引に吸い上げるせいで、次の作物が育たなくなる」
「団長!?、それじゃ周辺の村の食糧難はどうなるんで!?」
「一時的にとは言え、人々の暮らしが豊かになるなら良いと思わない?」

 何でこんなやり取りを外の奴等はしているのだろうかと違う意味で不安になる。
ヴィーニが現地で雇った傭兵で【死絶傭兵団】というらしいけど、傭兵という割にはやっている事が農民見たいというかやってる事に違和感しかない。

「……ほんと何なんだよあいつらは」
「何なんだですか、それは私も知りたい所ですが……、ヴィーニさんはいったい何を考えているのでしょうね」
「おいおい、おめえあいつの味方だろ?それなのに把握してないってどういう事だよ」
「まぁ……、私は協力してるだけですからね、知らない事の方が多いんですよ」

 声がした方に振り向きながら答えると目を閉じて困ったような顔をしているグロウフェレスの姿があった。

「知らない事がって、おめえのボスであるマスカレイドの命令で来てんだろ?」
「厳密には私の主人の指示で彼に従うように言われているだけですね、個人的には彼のように犠牲を出すような手段を選ぶ人は好きではありません」
「……なら俺達を解放して返してくれよ」
「それは出来ません、あなたとルミィ王女様は覇王ヴォルフガングを呼び出す為の大事な人質ですので」
「大事な人質って俺達を餌にして覇王を呼び出してヴィーニの手で殺させる為だろ?」

 家族で殺し合いをする姿をルミィに見せたくないから、出来れば上手くこの場から離れたいけど……、この男がそれを許してくれそうにない。
グロウフェレスは人質を取る事に対して乗り気ではないみたいだけど、話して感じる印象からして私情を仕事に挟まないタイプだと思うから期待するだけ無駄だ。

「……ヴィーラ王子からしたら、レースさんの目の前で覇王ヴォルフガング様を殺害する事が目的ですが、私達の目的は違うのですよ」
「目的が違うって、おめえらあいつに協力してるって事は同じ目的がじゃねえのかよ」
「協力しているとはいえ、必ずしも同じ目的を共有しているとは限らないのですよ?」
「つまりどういう事だよ……」
「そうですね、こちらにレースさんとは別に王位を継承できる人がいると言ったらあなたはどう思いますか?」

 どう思うと言われても……、そんな事急に言われてもどう反応すればいいのか俺には分からない。
俺が知ってる限りでは、レースを除いたらミュラッカ王女とルミィしかいないけどそれ以外となると妾との間に産まれたゴスペルか?

「もしかしてゴスペルか?」
「いいえ、彼が王位を継承したら国を纏める事が出来ないと思うので違いますね」
「……じゃあ誰だよ」
「ガイストさんですね、彼女はゴスペルの双子の妹なんですよ……、彼女もれっきとした覇王ヴォルフガング様の血を引く者の一人なんですよ」

 ガイストが血を引いている?、言われてみると確かにレースと同じ白い髪をしているけど……、あの女の見た目は【白い髪に赤い眼】だ。
レース達やゴスペルは【白い髪に水色の眼】をしているから違和感がある。

「ガイストは赤い眼じゃねぇか……、本当に血が繋がってんのかよ」
「彼女の眼の色は母親の遺伝らしいですよ?、それにガイストは偽名らしいのですが……、幼い頃に父から捨てられて実の兄と引き離された末に、国外追放となり母と二人で【メイディ】で暮らす事になったらしいのですが、その後直ぐに母が死んだらしく一人で生きて来たとの事で今迄恨んで来たらしいですよ」
「……それが本当だったら何でそいつがストラフィリアの王位を継承して覇王になろうとしてんだよ」
「【マーシェンス】に潜伏する事が出来なくなったので、新たな潜伏先として私達がこの国で活動しやすくする為ですね、……彼女からしたら別の目的があるとは思いますけど、そんな個人の事情に無遠慮に深入りする趣味はございませんので、まぁ腹違いの妹のルミィ様を可愛がっている姿を見ると何となくどういう意図があるのか分からなくもないですがね」
「……そうかよ」

……俺達が話している間に、外で騒いでいた死絶傭兵団が何処かへと行ってしまったらしく静かになっていたけど多分、例の植物促進剤を使いに行ったのだろうけど本当に使っていい物なのか分からないから不安しかないけど、今はガイストの目的が何なのか気になる。
これは……、この場から逃げるよりも先に調べた方が良いのかもしれないと思うのだった。
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