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第六章 明かされた出自と失われた時間
15話 作戦の確認
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馬車に揺られている間は特にやる事が無い時間が過ぎていく、時折下から突き上げられるように揺れたりするおかげで酔いそうになるのだけは勘弁して欲しい。
出来る限り会話をしたりしないようにしつつ、眼を閉じて意識を思考の世界へと落とす事で酔わないようにしてるけど何だかんだやっぱり辛かったりする。
「レース大丈夫?辛いなら一度吐いた方がいいよ?」
「……大丈夫」
「レース兄様は乗り物が苦手だったんですね……、知ってたら陸路を選びましたのに」
「ぼく自身乗り物酔いするタイプだという自覚が無かったからしょうがないよ……」
「多分ですけどたまに来る縦揺れのせいかもしれませんね、レースさんお姉様が言うようにどうしても我慢が出来なかったら一度吐いた方がいいですよ?」
ダートやミュラッカ、そしてカエデまでもがぼくを心配して声を掛けてくれるけど今は出来れば喋りたくない。
それに反応する為に眼を開けてしまうと、馬車に乗って動き出した時に紹介して貰った栄花騎士団最高幹部のトキさんの身体の一部が眼に入って視覚情報でも酔いそうになる。
何をどうしたらあんなに揺れるのか分からないし、好きな人は好き何だろうけど今はあの定期的に揺れに合わせて動く二つの物が眼の毒でしかないと思う。
それと比べるようで申し訳ないと思うけど、ダートの平坦な姿を見ていた方が落ち着くのも言わない方がいい気がした。
「レース目線が……、場所を考えてくれない?」
「あ、えっと……ダートを見ていると落ち着くからつい見ちゃって」
「気持ちは嬉しいけどトキさんの方見た後に私の方見られるのは比べられてるみたいで嫌なんだけど?」
「レースさん、浮気は良くないですよ?」
「レース兄様……」
どうしてぼくが責められているんだろうか……。
それに場所を考えてくれないと言われても、これに関してどう反応すればいいのか分からないから困ってしまう。
「そんな反応されたらレースも困るよな?、俺の胸を見たかったら減るもんじゃないから別に幾らでも見てていいけど、変わりにあたいにあんたの心器を見せてくれよ、どんな能力してるか気になるんだよ」
「……見てると気持ち悪くなるから勘弁してください」
「なっ!?、男は大きいのが好きなんじゃないんかい!?」
「いや、ダートの方がいい」
「……嘘だろっ!?こんな平坦な娘にあたいが負けたって言うのかいっ!シンっ!あんたは大きいのと平坦なのどっちが好きなんだいっ!」
だから騒がないで欲しいと言いたいけどこの状況では静かにしてくれそうにない。
それに何故だかダートが顔を真っ赤にしてぼくの事を見てるし、ミュラッカは呆れた顔をしてぼく達を見ている、カエデに関しては何かをメモ帳に書いているけど何をしているんだろうか。
話を振られたシンの方はめんどくさそうな顔をすると
「俺はまぁ、ミュラッカ王女みたいに程よく肉が付いてる方が好きだな……、お前みたいに大きいと邪魔そうだし一々目に入るから勘弁してくれよ」
「……なんだって!?」
「あなたいくら栄花騎士団の者とは言え不敬ですよっ!」
「話を振られたから反応しただけだろ?、この国の王女様は雑談を許してくれないのか?」
「いいでしょうそこまで言うなら自由に会話をして頂いて構いませんが……、あなたがこの国の民でなくて良かったですね、そうでなければ今ここで切り捨てられても文句は言えませんでしたよ?」
これからルミィ達を助けに行くというのにどうして険悪な雰囲気になる事が出来るんだろうか。
人との会話がそこまで得意じゃないぼくが言うのもどうかと思うんだけど、こういう時は親睦を深めて仲良くなるべきだと思うんだけど……
「……栄花騎士団の者がミュラッカ様に不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」
「カエデ様が謝罪する事ではないと思いますが、気持ちを受け取らせて頂きます」
「ありがとうございます……、所で作戦の説明をしたいのですが宜しいでしょうか」
「えぇ、先程から馬車内で書いていた内容ですよね?是非お願い致します」
「では皆さん説明しますのでお話しはこれ位にして、こちらに集中してください……、レースさんは無理そうなら後で説明するので眼を閉じて眠ってもいいですよ」
眠っていいと言われてもこの馬車の中で寝る事は出来そうにないし、聞いていた方が気が紛れそうな気がする。
カエデが立ち上がり空中に固定されたままの黒い文字をぼく達が見えやすい用に壁に近づけると、そこに指を差してぼく達の方を見て口を開く。
「では作戦なのですが、私達は六人という大変少ない人数で行動をする事になる為、現地に着いた場合は極力騒ぎを起こさないように行動致します……、何故かと言いますとヴィーニ王子が滞在していると見られる場所は小さな村がそこかしろにあるのですが、現在その地域にはSランク冒険者【死絶】カーティス・ハルサー率いる【死絶傭兵団】が滞在しており、彼等がヴィーニ王子及びに指名手配されている元Aランク冒険者【炎精】ガイストと【幻死の瞳】グロウフェレスとの間にて協力関係を結んでいる場合ああります」
「……カエデ様、死絶傭兵団が滞在しているのは私も知ってはいるのですが、ヴィーニと協力関係にあるという根拠はあるのですか?」
「いえ、こればっかりは私の勘なので申し訳ないのですが、傭兵団という立場である以上ヴィーニ王子に雇われている可能性もありますし、そうでなくても指名手配されている二人に雇われて付近に滞在しているという可能性は捨てきれません」
「なるほど……、ですが彼等はここ最近王城内で話題になってはいますが、周囲の貧しい村を回っては農具を使って大地を耕してはジャガイモや麦を植えたり等の奇行が目立っており、しまいには周囲の雪を解かす薬剤を使っては温室を作成しそこに様々な野菜を植えては別の村に行くという、最早傭兵団というよりも奇行団ですね」
「つまりあの地域にいるのは寒村の食料難を解決する為?」
何でそんな事をしているのか分からないけど、結果的にこの国の為になっているのなら歓迎するべき事だと思うけどミュラッカの反応的に、国からしたら勝手にその近隣を管理する領主の許可を取らずに好き勝手する迷惑集団なんだと思う。
「それならいいんですけどね、出来れば領主の許可を得てからやって欲しいものです」
「……しかしそれなら尚の事良くないですね、死絶傭兵団がヴィーニ王子に雇われていた場合、彼等の行動はストラフィリア第二王子公認の行動となるので周辺の村からしたら救世主のようなものになります、もしヴィーニ王子を捕まえに来たと知られたら周辺の村に住む国民全員が敵に回るでしょうから、現地に着いたら目立たないようにした方が良いかもしれません」
「……という事は姫ちゃんあたい等はどうしたらいいんだい?、あたいは武器を作る事と戦う事しか脳にないし、シンに限っては戦う以外能力がないけど?」
「それに関してなのですが、死絶傭兵団だけならレースさんやお姉様、更にはストラフィリアの【氷雪の盾】として名高い第一王女ミュラッカ・ミエッカ・ヴォルフガング様が居ますので何とかなると思いますが……、もし【死絶】カーティス・ハルサーが出て来たら詰みに近い状況になってしまうので、その時はお二人に足止めをお願いします」
「つまり俺達に命を捨てる覚悟をしろという事か……」
シンがカエデの事を睨みつけると彼女は気まずそうな顔をして黙ってしまう。
「シン、あたいらの副団長が立てた作戦だからやるんだよ」
「……仕方ない、だが俺は死にたくないからなヤバくなったら逃げる」
「あくまで足止めなので、不利な場合は逃げて貰ってこちらに合流して頂いて構いません、トキさんもそれでお願いします」
「……頑張っては見るよ」
「ありがとうございます……、では作戦内容の続きなのですが」
……作戦の確認をしていて思うけど、いくら栄花騎士団の副団長とは言え十三歳の女の子がここまで考えて動かなければいけないのは大変だと思う。
シンの反応から分かるけど、彼女の作戦次第では死んでしまうかもしれないのだからそこにある責任はぼくでは計り知れない物がある。
そんな事を考えながら揺れる馬車の中、無意識に緊張を和らげる為かダートの手を握ってしまうのだった。
出来る限り会話をしたりしないようにしつつ、眼を閉じて意識を思考の世界へと落とす事で酔わないようにしてるけど何だかんだやっぱり辛かったりする。
「レース大丈夫?辛いなら一度吐いた方がいいよ?」
「……大丈夫」
「レース兄様は乗り物が苦手だったんですね……、知ってたら陸路を選びましたのに」
「ぼく自身乗り物酔いするタイプだという自覚が無かったからしょうがないよ……」
「多分ですけどたまに来る縦揺れのせいかもしれませんね、レースさんお姉様が言うようにどうしても我慢が出来なかったら一度吐いた方がいいですよ?」
ダートやミュラッカ、そしてカエデまでもがぼくを心配して声を掛けてくれるけど今は出来れば喋りたくない。
それに反応する為に眼を開けてしまうと、馬車に乗って動き出した時に紹介して貰った栄花騎士団最高幹部のトキさんの身体の一部が眼に入って視覚情報でも酔いそうになる。
何をどうしたらあんなに揺れるのか分からないし、好きな人は好き何だろうけど今はあの定期的に揺れに合わせて動く二つの物が眼の毒でしかないと思う。
それと比べるようで申し訳ないと思うけど、ダートの平坦な姿を見ていた方が落ち着くのも言わない方がいい気がした。
「レース目線が……、場所を考えてくれない?」
「あ、えっと……ダートを見ていると落ち着くからつい見ちゃって」
「気持ちは嬉しいけどトキさんの方見た後に私の方見られるのは比べられてるみたいで嫌なんだけど?」
「レースさん、浮気は良くないですよ?」
「レース兄様……」
どうしてぼくが責められているんだろうか……。
それに場所を考えてくれないと言われても、これに関してどう反応すればいいのか分からないから困ってしまう。
「そんな反応されたらレースも困るよな?、俺の胸を見たかったら減るもんじゃないから別に幾らでも見てていいけど、変わりにあたいにあんたの心器を見せてくれよ、どんな能力してるか気になるんだよ」
「……見てると気持ち悪くなるから勘弁してください」
「なっ!?、男は大きいのが好きなんじゃないんかい!?」
「いや、ダートの方がいい」
「……嘘だろっ!?こんな平坦な娘にあたいが負けたって言うのかいっ!シンっ!あんたは大きいのと平坦なのどっちが好きなんだいっ!」
だから騒がないで欲しいと言いたいけどこの状況では静かにしてくれそうにない。
それに何故だかダートが顔を真っ赤にしてぼくの事を見てるし、ミュラッカは呆れた顔をしてぼく達を見ている、カエデに関しては何かをメモ帳に書いているけど何をしているんだろうか。
話を振られたシンの方はめんどくさそうな顔をすると
「俺はまぁ、ミュラッカ王女みたいに程よく肉が付いてる方が好きだな……、お前みたいに大きいと邪魔そうだし一々目に入るから勘弁してくれよ」
「……なんだって!?」
「あなたいくら栄花騎士団の者とは言え不敬ですよっ!」
「話を振られたから反応しただけだろ?、この国の王女様は雑談を許してくれないのか?」
「いいでしょうそこまで言うなら自由に会話をして頂いて構いませんが……、あなたがこの国の民でなくて良かったですね、そうでなければ今ここで切り捨てられても文句は言えませんでしたよ?」
これからルミィ達を助けに行くというのにどうして険悪な雰囲気になる事が出来るんだろうか。
人との会話がそこまで得意じゃないぼくが言うのもどうかと思うんだけど、こういう時は親睦を深めて仲良くなるべきだと思うんだけど……
「……栄花騎士団の者がミュラッカ様に不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」
「カエデ様が謝罪する事ではないと思いますが、気持ちを受け取らせて頂きます」
「ありがとうございます……、所で作戦の説明をしたいのですが宜しいでしょうか」
「えぇ、先程から馬車内で書いていた内容ですよね?是非お願い致します」
「では皆さん説明しますのでお話しはこれ位にして、こちらに集中してください……、レースさんは無理そうなら後で説明するので眼を閉じて眠ってもいいですよ」
眠っていいと言われてもこの馬車の中で寝る事は出来そうにないし、聞いていた方が気が紛れそうな気がする。
カエデが立ち上がり空中に固定されたままの黒い文字をぼく達が見えやすい用に壁に近づけると、そこに指を差してぼく達の方を見て口を開く。
「では作戦なのですが、私達は六人という大変少ない人数で行動をする事になる為、現地に着いた場合は極力騒ぎを起こさないように行動致します……、何故かと言いますとヴィーニ王子が滞在していると見られる場所は小さな村がそこかしろにあるのですが、現在その地域にはSランク冒険者【死絶】カーティス・ハルサー率いる【死絶傭兵団】が滞在しており、彼等がヴィーニ王子及びに指名手配されている元Aランク冒険者【炎精】ガイストと【幻死の瞳】グロウフェレスとの間にて協力関係を結んでいる場合ああります」
「……カエデ様、死絶傭兵団が滞在しているのは私も知ってはいるのですが、ヴィーニと協力関係にあるという根拠はあるのですか?」
「いえ、こればっかりは私の勘なので申し訳ないのですが、傭兵団という立場である以上ヴィーニ王子に雇われている可能性もありますし、そうでなくても指名手配されている二人に雇われて付近に滞在しているという可能性は捨てきれません」
「なるほど……、ですが彼等はここ最近王城内で話題になってはいますが、周囲の貧しい村を回っては農具を使って大地を耕してはジャガイモや麦を植えたり等の奇行が目立っており、しまいには周囲の雪を解かす薬剤を使っては温室を作成しそこに様々な野菜を植えては別の村に行くという、最早傭兵団というよりも奇行団ですね」
「つまりあの地域にいるのは寒村の食料難を解決する為?」
何でそんな事をしているのか分からないけど、結果的にこの国の為になっているのなら歓迎するべき事だと思うけどミュラッカの反応的に、国からしたら勝手にその近隣を管理する領主の許可を取らずに好き勝手する迷惑集団なんだと思う。
「それならいいんですけどね、出来れば領主の許可を得てからやって欲しいものです」
「……しかしそれなら尚の事良くないですね、死絶傭兵団がヴィーニ王子に雇われていた場合、彼等の行動はストラフィリア第二王子公認の行動となるので周辺の村からしたら救世主のようなものになります、もしヴィーニ王子を捕まえに来たと知られたら周辺の村に住む国民全員が敵に回るでしょうから、現地に着いたら目立たないようにした方が良いかもしれません」
「……という事は姫ちゃんあたい等はどうしたらいいんだい?、あたいは武器を作る事と戦う事しか脳にないし、シンに限っては戦う以外能力がないけど?」
「それに関してなのですが、死絶傭兵団だけならレースさんやお姉様、更にはストラフィリアの【氷雪の盾】として名高い第一王女ミュラッカ・ミエッカ・ヴォルフガング様が居ますので何とかなると思いますが……、もし【死絶】カーティス・ハルサーが出て来たら詰みに近い状況になってしまうので、その時はお二人に足止めをお願いします」
「つまり俺達に命を捨てる覚悟をしろという事か……」
シンがカエデの事を睨みつけると彼女は気まずそうな顔をして黙ってしまう。
「シン、あたいらの副団長が立てた作戦だからやるんだよ」
「……仕方ない、だが俺は死にたくないからなヤバくなったら逃げる」
「あくまで足止めなので、不利な場合は逃げて貰ってこちらに合流して頂いて構いません、トキさんもそれでお願いします」
「……頑張っては見るよ」
「ありがとうございます……、では作戦内容の続きなのですが」
……作戦の確認をしていて思うけど、いくら栄花騎士団の副団長とは言え十三歳の女の子がここまで考えて動かなければいけないのは大変だと思う。
シンの反応から分かるけど、彼女の作戦次第では死んでしまうかもしれないのだからそこにある責任はぼくでは計り知れない物がある。
そんな事を考えながら揺れる馬車の中、無意識に緊張を和らげる為かダートの手を握ってしまうのだった。
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