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第六章 明かされた出自と失われた時間

間章 マスカレイドの協力者は誰? カエデ視点

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 レースさん達が出て行って直ぐに通信端末で、シンさん達に連絡をしてこの部屋に来るように伝えたから後は合流を待つだけになったけど……

「思っていた以上にとんでもない事になってしまいましたね……、ヴィーニ王子だけの問題なら彼を拘束すればまだ済んだのですが、指名手配されている元Aランク冒険者が二人もいるみたいですし、それに……」

 あの地図の場所……私の頭の中にある記憶の間違いでなければ、Sランク冒険者【死絶】カーティス・ハルサー率いる傭兵団が現在滞在している場所に近かった筈だ。
生活に不自由のないお金を貰い、生活を保障する変わりに世界に危害を加えないように管理されているSランクだけど、実際はこの国だと【福音】ゴスペルのように国に使役されている者や、トレーディアスに居た【教皇】ミコト様のように奇跡を使い、世界のバランスを崩すような行為を教会の手で行われていた事があったり……、メセリーの【叡智】カルディア様みたいに国に直接関わる等と、実際の所管理が出来ていないのが現実だったりする。
特に【マーシェンス】に現在滞在している、【黎明】マスカレイドはこの世界の禁忌を犯しているし、もう一人いる【宵闇】フィリスに関してはお金を貰って暗殺を行なう等無法地帯もいい所だから、正直Sランク冒険者と言う枠組みは管理出来てない以前に機能していないのかもしれない。

「とはいえ、メイディだけは【薬姫】メイメイ様や【滅尽】焔の炎姫様みたいにちゃんとしてる人もいるんですよね」

 メイディの【薬姫】は、新しい薬を作り出して世界に流通させてくれたりと存在そのものが世界の為になってくれているのと、国内にて何処にいるのかすら国民すら知らない無責任な王と言われる、現【薬王】ショウソク・メイディの娘でありながらとても真面目な性格をしていて何よりも人当たりが良い。
一度薬王と共に栄花に来た事があるけど、この人からどうしてこんな出来が良い人が生まれたんだろ?と思う位に優しい女の子だった。
まぁ……、それに比べたら【滅尽】は困っている人を放っとけない性格をしているみたいで、周辺諸国が攻めてきた時にその場に現れては武力介入をして問題を解決してしまうような人だ。
ただ最近は出て来ただけで逃げ出す人が増えたようで、存在自体が抑止力になっている。
何でも……争いが起きた時に、何処からか大きな声で……

【ひとーつ!争いある所に私ありっ!ふたーつ!皆の平和は私が守るっ!みーっつ!世界の涙を止める為にっ!!誰が呼んだか焔の炎姫っ!ここにありぃっ!!】

 と言いながら上空から落ちて来るらしくて、最初の【ひとーつっ!】が聞こえた瞬間に全員が逃げ出すのが既にメイディの名物になってると聞いた事があるけど、なんていうかSランクの人達は個性的過ぎるんだと思う。
特に世界の何処にでも現れる事で有名な【天魔】シャルネ・ヘイルーン様や、数える程しか姿を現した事が無い【剣鬼】と呼ばれる人に、傭兵団を作り世界を移動している【死絶】カーティス・ハルサーにおいては行動を予測出来ないから、個性的どころか存在が災害としか言えない。
特にお金さえ貰えれば誰にでも雇われる【死絶傭兵団】と言われる集団を率いている彼が一番危険だと感じる。

「マスカレイドの協力者はもしかしてカーティス?、もしそうなら二つの組織が協力関係にあるのかもしれませんね」

 もしそうだった場合傭兵団と言う集団は冒険者とは違い戦闘に特化した人が多いから危険度が跳ね上がる事になる。
特に私達栄花ですら把握しきれていない高ランク冒険者に匹敵する程の戦闘力を持つ人物がいる可能性があるから、敵対した場合相手の実力を把握できないのは不利だ。

「――姫ちゃん入るよーっ!」
「え?」

 トキさんの声が聞こえたと思ったら扉が開いてトキさんとシンさんが入って来る。
何時の間にこの部屋まで来たのかと思ったけど……

「なぁにそんな驚いた顔してんだい?あたいが何度もノックしたのに反応無かったから心配したんだよ?」
「……ごめんなさい、考え事し過ぎて気付けなかったみたいです」
「考え事だと……、何があったか言って見ろ」
「実は……」

 さっきまで考えていた事を二人に伝えると難しい顔をして黙ってしまう。
そうなるのもしょうがないと思う、指名手配されている元Aランク冒険者二人だけだと思ったら裏にそんな大物がいるかもしれないのだから……、正直私達とレースさんにお姉様を入れた五人では戦力不足だ。

「……まだ確定じゃないんだよな?」
「あくまで私の予想ですが、何だか嫌な予感がして……」
「嫌な予感で俺達を振り回すなと言いたいが、人の嫌な予感と言うのは当たる事が多いからな警戒をしてそんはないだろ」
「珍しくあんたが賛成するじゃないか、まぁあたいは敵が誰だろうが作った武器の性能を確かめる事が出来るなら良いけどね」

 理由はどうであれ二人が協力してくれるみたいで安心するけど……、この中で戦闘になったら足手まといになるのは私だから申し訳ない気持ちになる。

「ありがとうございます、ですが戦闘になったら私の実力だと足手まといに……」
「そんなの気にすんじゃないよ、姫ちゃんの強みは戦いよりも作戦立案能力だろ?期待してるよ副団長」
「……俺は姫が副団長である事を認めてはいないが能力は認めているからな」
「分かりました、私頑張りますっ!」

……二人が信じて期待してくれているならそれに応えられるように精一杯頑張ろう。
そう思って皆で明日からの動きを相談していると、客室の準備が出来たのか侍女の一人が部屋をノックして入って来る。
取り合えず残りの話は明日レースさん達としようと思いながら用意された客室へと向かったけど、その後に出たお夕飯が凄い美味しくて思わずおかわりをしてしまいました……、太ったらやだなぁって思うけどまだ若いから大丈夫だよねと自分を納得させつつ、暫くして浴室の準備が出来たと呼ばれたので行った場所は……、湯船の無い嗅いだことのない芳香剤入りのサウナだったのが個人的には凄い残念で、……正直に言うとゆっくりお風呂に入って身体全体を綺麗にしたかったけど、これもお国柄だと自分を納得させて明日に供えて客室で眠るのだった。
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