治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

文字の大きさ
上 下
180 / 575
第五章 囚われの姫と紅の槍

33話 戦いの終わり

しおりを挟む
 ジラルドに綺麗な飛び蹴りが入ると違和感を感じる程に勢いよく転がって行く。
もしかして衝撃を逃がす為にしてるのかなって思ったけど、そんな事する必要があるのだろうか。

「勝てたのは嬉しいけど、うちを巻き込もうとして攻撃した事のお返しはちゃんとするからねっ!」
「ミントよ……、未来の旦那なのだろう?暴力は行かんと思うぞ?」
「おとんは黙っててっ!これはジラルドとうちの問題なんよっ!」
「……何故そういう強気な所だけ母に似てしまったのだ」
「娘だからしょうがないやん」

 クラウズ王が何とも言えない顔をしながらコルクと口喧嘩をしている放っといていいんだろうか……、それにさっきまでの戦いの緊張感は何処へ行ってしまったのかと思っていると、後ろからスイが近付いて来た。

「そろそろ私の魔力が限界何だけどもう切っていいわよね?」
「うん、いいと思うよ」
「良かったわ、途中でジラルドとクロウの傷を癒すのにも意識を集中させなければ行けなかったからしんどかったのよ」
「そんな器用な事出来るんだ……」
「戦いなれている治癒術師や治癒術が使えるわよ?あなたは出来ないの?」

 やった事無いけど試してみたら出来るのだろうか……、もし実践出来るなら魔術と治癒術を同時に使うという事も出来そうだから色んな応用が出来そうな気がする。
例えばぼくが最近使えるようになった空間魔術と治癒術を組み合わせる事によって、相手の体内に空気を入れてみるとかどうだろうかと思うけど、その場合少しでも動かれたら魔術の範囲外に出てしまいそうだ。

「やった事ないから分からないけど、スイは魔術と治癒術を同時に使えたりする?さっきは毒の魔術を使って強化したりしてたからどうなのかな」
「同時に……?そうね、私の毒を使った強化は治癒術を応用して使ってるから魔術では無いから出来るか分からないけど多分心器が使える人なら出来るんじゃない?、私は心器を安定して扱える程精神面を安定させる事が出来ないし、正直あんまり肉体強化や魔術を使うのが得意じゃないから力になれないわね」
「理論上は出来はするけどー、難しんじゃないかなー」

 声がした方に振り向くと、狼の姿のままのクロウに抱き着くように乗って暖かそうな顔をしているソラの姿があるけど、どうしたんだろうか……

「不思議な顔をしてるけど、あんな周りの事を考えない魔術を使ったらこうなるよー、余りに身体が冷えすぎてしんどくてさー」
「……ガウ」
「早く人の姿に戻りたいって言われてももう少しこのままでお願いー、寒いんだよー、取り合えずだけど二つの術を同時に使うのは出来なくは無いけど、二つの術を同時に使う事が出来るような人じゃないと無理だと思うよ」
「えっと……何かごめん」
「結果的に勝てたから良いけど、もし他の人とまたチームを組んで戦う事があるなら気を付けなよー?」

 ソラに言われたように次からは気を付けた方が良い気がする。
……でも折角作った魔術だから何処かで活かしたいな、それに二つの術を同時に使う事なら出来そうだ、ぼくの心器には【高速詠唱と多重発動】で、術を使う速度が上昇する効果と複数個の術を同時に使える事が出来る能力があるらしいけど、まだ二つまでしか同時に使う事が出来ないし、高速詠唱の方になると高度の術程効果があるらしいけど現状意味があるのはスノーゴーレム位だ。
それに心器の能力は使えば使う程使いやすくなって行ったり、最大で三つまで増えるらしいからそのうちもっと術を使うのに適した能力が増えたらどうなるのか楽しみだ。

「わかったけど……、コルク達の方は大丈夫なのかな、ずっと何か親子喧嘩みたいなのしてるけど」
「部外者の私達が口を出し過ぎるのは悪く無いもの、それよりもソラさん先程の話信じていいのよね?」
「いいよー、後で姫ちゃんと団長に掛け合ってあげるよ」
「ならいいわ、自由になれたらそうね、あなた私に言ったわよね?治癒術を教えてくれるって……、だからお世話にならせて貰いたいのだけどいいかしら?」
「診療所で働いてくれるなら別にいいけど……、色んな人が来るから大変だと思うよ?」

 スイが診療所という言葉を聞いて何だか考えるような仕草をした後にソラの方を向いて口を開く。

「そういう事らしいけど良いかしら?」
「何かあった時に連絡も取りやすいと思うし良いんじゃないかなー」
「ならそうさせて貰うわね、じゃあ自由になったらよろしくお願いするわね?所で……、無理かもしれないけど将来的に治癒術師になれたりとかするかしら?」
「一応例外としてメセリー出身の治癒術師からの推薦があれば学会で実技テストを受ければ慣れるけどぼくはあそこの人達に好かれてないから、その時は師匠にお願いしてみるよ」
「師匠って確か叡智のカルディアよね?新しい魔術や治癒術を生み出す事で有名な人だからどんな人か気になるのよね、推薦の後ろ盾としても問題無いから是非宜しくお願いするわ?」

……ぼく達の会話が一段落すると同時に、どうやらあちらの会話も一段落が付いたらしくいつの間にか起き上がってコルク達の話に参加していたジラルドとクラウズ王が何故か肩を組んで楽し気に笑っていた。
これはなんなのだろうなぁって思っていると、雲で作られた牢が消えて意識を失っていたダート達が解放されるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~

北きつね
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。  ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。  一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。  ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。  おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。  女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。 レベル、ステータス、その他もろもろ 最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。 彼の役目は異世界の危機を救うこと。 異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。 彼はそんな人生で何よりも 人との別れの連続が辛かった。 だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。 しかし、彼は自分の強さを強すぎる が故に、隠しきることができない。 そしてまた、この異世界でも、 服部隼人の強さが人々にばれていく のだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...