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第五章 囚われの姫と紅の槍

33話 戦いの終わり

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 ジラルドに綺麗な飛び蹴りが入ると違和感を感じる程に勢いよく転がって行く。
もしかして衝撃を逃がす為にしてるのかなって思ったけど、そんな事する必要があるのだろうか。

「勝てたのは嬉しいけど、うちを巻き込もうとして攻撃した事のお返しはちゃんとするからねっ!」
「ミントよ……、未来の旦那なのだろう?暴力は行かんと思うぞ?」
「おとんは黙っててっ!これはジラルドとうちの問題なんよっ!」
「……何故そういう強気な所だけ母に似てしまったのだ」
「娘だからしょうがないやん」

 クラウズ王が何とも言えない顔をしながらコルクと口喧嘩をしている放っといていいんだろうか……、それにさっきまでの戦いの緊張感は何処へ行ってしまったのかと思っていると、後ろからスイが近付いて来た。

「そろそろ私の魔力が限界何だけどもう切っていいわよね?」
「うん、いいと思うよ」
「良かったわ、途中でジラルドとクロウの傷を癒すのにも意識を集中させなければ行けなかったからしんどかったのよ」
「そんな器用な事出来るんだ……」
「戦いなれている治癒術師や治癒術が使えるわよ?あなたは出来ないの?」

 やった事無いけど試してみたら出来るのだろうか……、もし実践出来るなら魔術と治癒術を同時に使うという事も出来そうだから色んな応用が出来そうな気がする。
例えばぼくが最近使えるようになった空間魔術と治癒術を組み合わせる事によって、相手の体内に空気を入れてみるとかどうだろうかと思うけど、その場合少しでも動かれたら魔術の範囲外に出てしまいそうだ。

「やった事ないから分からないけど、スイは魔術と治癒術を同時に使えたりする?さっきは毒の魔術を使って強化したりしてたからどうなのかな」
「同時に……?そうね、私の毒を使った強化は治癒術を応用して使ってるから魔術では無いから出来るか分からないけど多分心器が使える人なら出来るんじゃない?、私は心器を安定して扱える程精神面を安定させる事が出来ないし、正直あんまり肉体強化や魔術を使うのが得意じゃないから力になれないわね」
「理論上は出来はするけどー、難しんじゃないかなー」

 声がした方に振り向くと、狼の姿のままのクロウに抱き着くように乗って暖かそうな顔をしているソラの姿があるけど、どうしたんだろうか……

「不思議な顔をしてるけど、あんな周りの事を考えない魔術を使ったらこうなるよー、余りに身体が冷えすぎてしんどくてさー」
「……ガウ」
「早く人の姿に戻りたいって言われてももう少しこのままでお願いー、寒いんだよー、取り合えずだけど二つの術を同時に使うのは出来なくは無いけど、二つの術を同時に使う事が出来るような人じゃないと無理だと思うよ」
「えっと……何かごめん」
「結果的に勝てたから良いけど、もし他の人とまたチームを組んで戦う事があるなら気を付けなよー?」

 ソラに言われたように次からは気を付けた方が良い気がする。
……でも折角作った魔術だから何処かで活かしたいな、それに二つの術を同時に使う事なら出来そうだ、ぼくの心器には【高速詠唱と多重発動】で、術を使う速度が上昇する効果と複数個の術を同時に使える事が出来る能力があるらしいけど、まだ二つまでしか同時に使う事が出来ないし、高速詠唱の方になると高度の術程効果があるらしいけど現状意味があるのはスノーゴーレム位だ。
それに心器の能力は使えば使う程使いやすくなって行ったり、最大で三つまで増えるらしいからそのうちもっと術を使うのに適した能力が増えたらどうなるのか楽しみだ。

「わかったけど……、コルク達の方は大丈夫なのかな、ずっと何か親子喧嘩みたいなのしてるけど」
「部外者の私達が口を出し過ぎるのは悪く無いもの、それよりもソラさん先程の話信じていいのよね?」
「いいよー、後で姫ちゃんと団長に掛け合ってあげるよ」
「ならいいわ、自由になれたらそうね、あなた私に言ったわよね?治癒術を教えてくれるって……、だからお世話にならせて貰いたいのだけどいいかしら?」
「診療所で働いてくれるなら別にいいけど……、色んな人が来るから大変だと思うよ?」

 スイが診療所という言葉を聞いて何だか考えるような仕草をした後にソラの方を向いて口を開く。

「そういう事らしいけど良いかしら?」
「何かあった時に連絡も取りやすいと思うし良いんじゃないかなー」
「ならそうさせて貰うわね、じゃあ自由になったらよろしくお願いするわね?所で……、無理かもしれないけど将来的に治癒術師になれたりとかするかしら?」
「一応例外としてメセリー出身の治癒術師からの推薦があれば学会で実技テストを受ければ慣れるけどぼくはあそこの人達に好かれてないから、その時は師匠にお願いしてみるよ」
「師匠って確か叡智のカルディアよね?新しい魔術や治癒術を生み出す事で有名な人だからどんな人か気になるのよね、推薦の後ろ盾としても問題無いから是非宜しくお願いするわ?」

……ぼく達の会話が一段落すると同時に、どうやらあちらの会話も一段落が付いたらしくいつの間にか起き上がってコルク達の話に参加していたジラルドとクラウズ王が何故か肩を組んで楽し気に笑っていた。
これはなんなのだろうなぁって思っていると、雲で作られた牢が消えて意識を失っていたダート達が解放されるのだった。
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