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第五章 囚われの姫と紅の槍
間章 生命の冒涜 カルディア視点
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あの子達に頼まれてダリアの身体を作ったけど、自分以外の身体を作る事に内心拒絶感がある。
この技術は過去に自分が犯した過ちでもあるから当然なのかもしれないけど、まさか役に立つ日が来るなんて思わなかった。
過ちと言っても遠い過去にレイドと二人で暮らしていた時期があり、その時に私の遺伝子情報と彼の遺伝子情報を組み合わせて、他種族同士だと産まれる可能性が極端に低い合いの子を作ったという事だけど、あの子は元気だろうか。
「……まぁ過ぎた事を言ってもしょうがないわね」
取り合えず今は作った身体にダリアの精神を移す事を優先しないと……、頭の中に魔法陣を描く想像をする。
そのまま自分の意識を何処かへと飛ばして体の制御を遠隔で行う。
『……えっと、他人の意識を他の身体に移すには』
今私がいるのは魔力特性の『叡智』で行く事が出来る世界の魔術が納められた記憶の図書館、ここでは過去に失われ、現代で作られ、百年先までの未来で生まれる術が記録されている。
五百年前は当時魔法と言われていた力を使おうとする度に私の知らない知識が、頭の中に勝手に入って来て気が触れるかと思ったけど、制御出来るようになってからはこうやって自分から訪れる事が出来るようになった。
『人の人格は、脳内で起こっている電気信号と魔力の流れによって生まれるもので、生まれた環境、幼少期などの経験により個性が分かれる……、また脳が何らかの要因により負傷する等して大きな変化が生じると人格が変容する場合があるが、治癒術にて対象の魔力に同調し脳に直接干渉する事で、人格を任意で作り変える事が可能であるが、後にその技術を悪用した者が現れ自身が長く生きる為に、他者の脳へと強引に干渉し人格と記憶を複数人へ上書きした物が現れた為禁術として、術の開発者及び悪用した者を幽閉し以降の使用を禁止する事となった……ねぇ』
悪用等されなければ素晴らしい術になったろうに……例えば脳が損傷し人格が変容してしまった人が居たとすると、その形を戻す事が出来れば人格すら治療する事が出来るようになるだろう。
特に脳死状態になった人ならどうだ、干渉する事で脳の機能を回復させる事が出来れば徐々に弱り死ぬだけの者ですら治せるのではないか……。
『記憶の複製は術者が対象となる人物と魔力の糸で脳を繋いで、魔力の波長を同調した後に自身の魔力を電気信号へと変換し相手の脳に直接送り込む事で可能になる。
成功率は術者の魔力の高さに依存し、対象よりも適正と魔力が劣っていた場合は逆に相手の記憶が上書きされてしまう可能性がある為、外部に保存をしておく必要がある』
外部に保存ね……、取り合えず理屈は分かったから身体を遠隔で動かしながら魔力の線でダリアの新しい身体の頭部と彼女の心器を繋いでいく。
私が身体を交換する時はこんな難しい事をしなくても、培養槽の中にある身体に意識を飛ばす事で簡単に出来たけど他者に移す場合はこんなにも難しいのか。
ここからは精密な作業が必要になるから意識を戻した方が良さそうだ。
「……ふぅ、じゃあダリアちゃん今から移動するからね」
他者の意識を他の身体に移動させる場合は本来なら不可能だと思うけど、今から使う肉体には意識が覚醒することなく眠り続けて居るから簡単に出来る筈だ。
「でも余りに魔力の効率が悪いから暫く寝込む事になりそうだわ……、そうなったらダリアちゃん私の事は大丈夫だからレースちゃん達の所に直ぐに行きなさい」
培養槽の中にある身体が持っている魔力を心器と同調させて、身体の方に染め上げるとダリアの記憶と人格を電気信号へと変換する。
私の中の叡智が言うには、そうする事で肉体の魔力をそのままに記憶や人格を移植できるという事だけど……
「……なるほど、こうすると心器は固定化されていても形を維持出来なくなって消えるのね」
心器の姿が徐々に薄くなっていくと、電気信号となったダリアが新しい身体の中に流れて行く。
そして完全に姿が消えると培養槽の中の彼女が手足を伸ばして痙攣したかと思うと、暫くして落ち着いたのか今迄とは違い呼吸に合わせて胸部が上下している。
術を使ったから分かるけどこれは生命の冒涜だ、使い続けると術者の中で命の価値が薄れてしまうだろう。
……未来に生きる人達が禁術にした理由が良く分かる、確かに様々な可能性があるけれどこれだけは人の世に存在しては行けない。
「……このままだと目覚めたダリアちゃんが培養槽の中で溺れちゃいそうだからベッドに移してあげないと行けないわね」
……目の前で眠っている、十歳前後のプラチナブロンドの髪を持った少女を見ながらそう思う。
成長途中で凄い可愛い子が出来たからそこで成長を止めてしまったけど、本当に愛らしい、レースとダートの間に将来産まれる可能性がある子供もこれ位可愛くなるのだろうか。
まぁ……、そこは数年後の楽しみにしていようかなと思いながらダリアをレースが使っていた部屋のベッドへと転移させると久しぶりに感じる魔力欠乏の症状に耐え切れず意識を手放すのだった。
この技術は過去に自分が犯した過ちでもあるから当然なのかもしれないけど、まさか役に立つ日が来るなんて思わなかった。
過ちと言っても遠い過去にレイドと二人で暮らしていた時期があり、その時に私の遺伝子情報と彼の遺伝子情報を組み合わせて、他種族同士だと産まれる可能性が極端に低い合いの子を作ったという事だけど、あの子は元気だろうか。
「……まぁ過ぎた事を言ってもしょうがないわね」
取り合えず今は作った身体にダリアの精神を移す事を優先しないと……、頭の中に魔法陣を描く想像をする。
そのまま自分の意識を何処かへと飛ばして体の制御を遠隔で行う。
『……えっと、他人の意識を他の身体に移すには』
今私がいるのは魔力特性の『叡智』で行く事が出来る世界の魔術が納められた記憶の図書館、ここでは過去に失われ、現代で作られ、百年先までの未来で生まれる術が記録されている。
五百年前は当時魔法と言われていた力を使おうとする度に私の知らない知識が、頭の中に勝手に入って来て気が触れるかと思ったけど、制御出来るようになってからはこうやって自分から訪れる事が出来るようになった。
『人の人格は、脳内で起こっている電気信号と魔力の流れによって生まれるもので、生まれた環境、幼少期などの経験により個性が分かれる……、また脳が何らかの要因により負傷する等して大きな変化が生じると人格が変容する場合があるが、治癒術にて対象の魔力に同調し脳に直接干渉する事で、人格を任意で作り変える事が可能であるが、後にその技術を悪用した者が現れ自身が長く生きる為に、他者の脳へと強引に干渉し人格と記憶を複数人へ上書きした物が現れた為禁術として、術の開発者及び悪用した者を幽閉し以降の使用を禁止する事となった……ねぇ』
悪用等されなければ素晴らしい術になったろうに……例えば脳が損傷し人格が変容してしまった人が居たとすると、その形を戻す事が出来れば人格すら治療する事が出来るようになるだろう。
特に脳死状態になった人ならどうだ、干渉する事で脳の機能を回復させる事が出来れば徐々に弱り死ぬだけの者ですら治せるのではないか……。
『記憶の複製は術者が対象となる人物と魔力の糸で脳を繋いで、魔力の波長を同調した後に自身の魔力を電気信号へと変換し相手の脳に直接送り込む事で可能になる。
成功率は術者の魔力の高さに依存し、対象よりも適正と魔力が劣っていた場合は逆に相手の記憶が上書きされてしまう可能性がある為、外部に保存をしておく必要がある』
外部に保存ね……、取り合えず理屈は分かったから身体を遠隔で動かしながら魔力の線でダリアの新しい身体の頭部と彼女の心器を繋いでいく。
私が身体を交換する時はこんな難しい事をしなくても、培養槽の中にある身体に意識を飛ばす事で簡単に出来たけど他者に移す場合はこんなにも難しいのか。
ここからは精密な作業が必要になるから意識を戻した方が良さそうだ。
「……ふぅ、じゃあダリアちゃん今から移動するからね」
他者の意識を他の身体に移動させる場合は本来なら不可能だと思うけど、今から使う肉体には意識が覚醒することなく眠り続けて居るから簡単に出来る筈だ。
「でも余りに魔力の効率が悪いから暫く寝込む事になりそうだわ……、そうなったらダリアちゃん私の事は大丈夫だからレースちゃん達の所に直ぐに行きなさい」
培養槽の中にある身体が持っている魔力を心器と同調させて、身体の方に染め上げるとダリアの記憶と人格を電気信号へと変換する。
私の中の叡智が言うには、そうする事で肉体の魔力をそのままに記憶や人格を移植できるという事だけど……
「……なるほど、こうすると心器は固定化されていても形を維持出来なくなって消えるのね」
心器の姿が徐々に薄くなっていくと、電気信号となったダリアが新しい身体の中に流れて行く。
そして完全に姿が消えると培養槽の中の彼女が手足を伸ばして痙攣したかと思うと、暫くして落ち着いたのか今迄とは違い呼吸に合わせて胸部が上下している。
術を使ったから分かるけどこれは生命の冒涜だ、使い続けると術者の中で命の価値が薄れてしまうだろう。
……未来に生きる人達が禁術にした理由が良く分かる、確かに様々な可能性があるけれどこれだけは人の世に存在しては行けない。
「……このままだと目覚めたダリアちゃんが培養槽の中で溺れちゃいそうだからベッドに移してあげないと行けないわね」
……目の前で眠っている、十歳前後のプラチナブロンドの髪を持った少女を見ながらそう思う。
成長途中で凄い可愛い子が出来たからそこで成長を止めてしまったけど、本当に愛らしい、レースとダートの間に将来産まれる可能性がある子供もこれ位可愛くなるのだろうか。
まぁ……、そこは数年後の楽しみにしていようかなと思いながらダリアをレースが使っていた部屋のベッドへと転移させると久しぶりに感じる魔力欠乏の症状に耐え切れず意識を手放すのだった。
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