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第三章 戦う意志と覚悟

11話 コルクの仲間達 ダート視点

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 レースが私達の家に帰った後、コーちゃんと一緒に朝ご飯を作って二人で朝ご飯を食べた後に、客室でゆっくりと会話をしているけど本当に幸せそうな顔をするんだなぁって思う。
私も彼とそのような関係になってみたいと思うけどいつになったらこの気持ちに気付いてくれるのかな……

「って感じでなぁって、ダーどうしたん?何か難しい顔しとうけど」
「え?な、なんでもないよ?」
「ほーん……、コルクお姉ちゃんの前で隠し事をしても直ぐにバレるんだからはよ言うた方がええよ?」

 コーちゃんは直ぐに人の感情の揺れに気付いてくれる。
何でも冒険者をしていた時に身に着いたらしくて、斥候をしている時は周囲の環境の変化にも直ぐに対応できるようにしていたら無意識のうちに身についていたというけど本当に凄いなぁって思う。

「……あのね?どうしたらレースとそういう関係になれるのかなぁって」
「そんなんどう見ても両片思いさんなんやから、ダーから好きですぅって行けばええんよ」
「その方が良いとは思うけど……それに最近のレースの反応を見ると本人は隠してるみたいだけど私に好意があるの分かりやすい位に出てるもの」
「なら何で自分から行かないん?あぁいうタイプは自分から行かんと進展せんよ?」

 コーちゃんの言うように私から動かないと進展しないのは分かるけど、こういうのって男性の方から言って欲しいって気持ちがあるから自分から行くのは何か違うような気がしてしまう。
それ以外には初めて好きになった人に自分の気持ちを素直に伝えるのが怖いというのもあるけど……

「分かってるの……でもね?私が異世界から来た人間だって彼に知られたら嫌われてしまうんじゃないかなって思うと怖いの……でもそれは隠せば大丈夫だと思うけど、そういうのはレースから言って欲しいなって気持ちもあってね?」
「不安なのは分かるけどあんたが好きになった男の事を信じてあげないでどうするの?それにな?ダー、男の方から言って欲しいって待ちの姿勢に入っているうちに誰かに取られるかもしれんよ?顔はどちらかというと良い方だし、それに最近は良くない所も徐々に改善されて来とるやろ?あんたが気付いて惹かれたレースの良い所に周りが気付いたら横取りされちゃうかもね」

 コーちゃんのその言葉に胸が苦しくなる。
誰かに取られると思うだけで嫌な気持ちになるし、横取りされる位ならレースを独占してしまいたい気持ちが溢れそうになってしまう。

「それにな?ダー、初恋で不安な事が多いのは分かるけど……あんたは自分では気づいてないかもしれないけどかなり嫉妬深いし独占欲が強いタイプなんやからこのままだと拗らせるよ?」
「……え?」
「他の女が近付くだけで態度に出てるし、無意識にレースに近づいて『この人は私のっ!』っていう雰囲気を出してるんだから自覚せぇ?」

 コーちゃんはそういうと椅子から立ち上がり、座っている私に近づくと腕を伸ばして頭を軽く撫でてくれる。
隠しているつもりだったのに無意識にやっていると言われて恥ずかしいけど、それをしっかりと言葉にしてくれる人がいるのは本当に嬉しい……この世界に来て出来た初めての親友が彼女で良かった。
私がそう思っていると、玄関のドアが叩かれる音が聞こえてくる。

「お?来たみたいやな、ダーこの話はしまいにしよ、後は自分でレースとの関係をどうしたいのか、これからどうなりたいのか、どういう風に変わって行きたいのかをゆっくりと考えてみなよ?」
「……うん」
「って何度もドア叩かんと一回叩けば分かるからまちぃやっ!直ぐ行くからっ!」

 そういうとコーちゃんは玄関のドアを勢いよく開ける。
先程言われた事を自身の心の中で繰り返して考えているけど、私に出来るのだろうか……そんな思いを浮かべると同時に鈍い音が聞こえて何事かと眼を見開くと、赤い髪を全体的に後ろに流した男性が額を押さえて蹲っていて、その隣には頭に獣の耳が生えている筋骨隆々な上半身裸で下半身には狼のような尻尾を生やしていて腰から足元まである布を腰に巻いた茶色い髪の男性がいた。

「あんた……、ドアが開く方向に避けるのはどうかと思うよ?」
「ってー、まぁじでいってえ……」
「この馬鹿の事はそのままで良い、それよりも入って良いか?」
「ええよー、うちはそこで蹲ってるジラルドの事引きずって行くからあんたは入って直ぐの所にある客室で待っててなー、分かりやすく言うとあんたの事見てるかわいらしい女の子がいるとこが客室やー」
「理解した」

 獣人がこの国にいる事が珍しくて思わずじーっと見てしまう。
初めて見る訳では無いけどこの世界では、私達のような人種を人間族と呼び彼等を獣人族と呼ぶ分けられている。
彼等の特徴としては外見は獣の耳と尻尾を持っていて、それ以外では魔術や治癒術への適性は低いけど肉体強化に秀でており種族全体が優秀な戦士である事で知られている。

「……獣人が珍しいか?」
「えぇ、この国で見るのは初めてなので……」
「確かにそうだろうな」

 気まずい雰囲気が流れる中でどうしたらいいのかと悩んでしまう。
こういう時コーちゃんなら一瞬にして雰囲気を変えてくれるのだろうけど……、一向に戻ってくる気配がない。
本当にどうしよう……と思っていると額に塗り薬を付けられた赤い髪の男性がコーちゃんと一緒に客間に入って来た。

「ダーお待たせぇ!うちのジラルドが軽く怪我してたから薬塗って来たわっ!」
「そうなんだ……遅いから何か心配しちゃった」

 コーちゃんが、うちのって言う姿が想像できなかったから思わず驚いてしまう。
ここまで積極的に男性を自分のってアピールできるのって凄い……

「なんか初対面なのに恥ずかしいとこ見せちゃってすいません……」
「あぁいえ、気にしないでください」
「そう言ってくれると助かるよっ!ありがとう!」
「お前はもっと気にしろ……」

 そしてジラルドさんは、少年のようにころころと表情が変わって面白い人だなと感じる。
獣人の……、多分この人が消去法でクロウさんだろうけど彼と違って落ち着いた雰囲気を持っていて対照的だなって思う。

「クロウも何で椅子に座ってないで立ってるのっ!あるんだからちゃんと座りなよっ!」
「背もたれがあると尻尾が邪魔して座れない……」
「あっ……ごっめん!忘れてたっ!ちょっと待ってて!」
「いや、このまま床に直接座るから問題無い」
「もぅっ!あんたは直ぐそうやって……それだと汚れちゃうじゃない!今から敷物取って来るから三人は自己紹介して待っててっ!ジラルドもさっさと椅子に座ってよね!」

 なんかコーちゃんがお母さんみたいになってる……。
きっと当時3人で行動していた時はこんな感じで仲が良かったんだろうなぁって感じて微笑ましい。
そう思っているとジラルドさんが椅子に座り、クロウさんは待つ事無く直接床に座ってしまう。

「はいよっと……じゃあ自己紹介と行こうか、俺達はAランク冒険者のジラルドだ。そしてこいつが」
「クロウ……種族は見て分かると思うが狼の獣人だ」
「ありがとうございます……、私はあなた達と同じAランク冒険者のダートです」

……三人で自己紹介を始めた後に、この町でのコーちゃんがどういう生活をしていたのかを話したり冒険者次第はどうだったのかを聞いたりして盛り上がる。
そうしているうちにコーちゃんが戻って来てクロウさんに対して『もぅっ!待っててって言うたやんか!』と怒りながら彼を立たせて尻尾の汚れを落としてあげた後に敷物を床において座らせてあげたりとお母さんのような対応をしていて微笑ましかった。
ただ、この出会いが後にあんな事になるなんて今の私には想像も出来なかった
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