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第二章 開拓同行願い
25話 日常への回帰
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ぼくはいったい何を考えて居るのかと我に返り頭を左右に振ると、深呼吸をしてダートの部屋のドアをノックする。
暫く静かになった後ドアがゆっくりと開きダートが顔を出す。
「レ、レース?どうしたの?」
「アキさんが来たから呼びに来たんだけど……」
「え?そうなの、ならすぐ行くねっ!コーちゃんアキさん来たって!」
「ならうちも直ぐ行くからダーは先いっててー」
ダートは『わかったー!』と部屋を出てリビングへと向かって行く。
ここは二人で一緒に行くものだと思っていたのだけれどどうしたのだろうか……
「レース、聞こえるようにあんたが来るタイミングでもう一度同じ話題振ったけど、ダーは自分から話してくれたよ」
「……秘密を打ち明けてくれる位に仲良くなれて良かったね」
「その顔、あんたやっと自覚したんやねぇ……ただ独占欲出す前にやる事とかあるんじゃないの?……そんなんじゃダーに嫌われるよ?それに誰かに嫌われるのが怖いだなんて誰にもある事なんだから彼女から話して貰えるようにもっと一緒に居て安心させてあげないと駄目なんよ」
「別に……独占欲なんて」
独占欲何て持ってないというのに……、コルクはぼくの反応を見ると困った奴だと言わんばかりの呆れ顔をして足早に立ち去って行く。
色々と思う所はあるけどダートをもっと安心させてあげた方が良いっ事は理解出来たから今度彼女が村に行く時は一緒に付いて行ってみようか。
そんな事を思いながら二人が向かったリビングへとぼくは戻って行った。
「成程……という事はその左に黒い蝙蝠の羽と右に純白の鳥の翼を持った黄金色の髪で儚げな雰囲気の少女が死人使いルード・フェレスを連れ出したという事ですね?」
ぼく達がリビングに付いてテーブルに座ると直ぐにアキがダートから事情聴取を始める。
ルードを連れて行った少女が何者かはぼくには分からないけど彼を助けに来たという事はこの村の近くに居たのだろうか……
「話を聞いて思うたんやけど、その謎の少女って何者かアキさんには心当たりがあるん?」
「いえ……、金髪の少女の姿だけなら思い当たる節があるのですが彼女には羽が無いので別人だと思います」
「アキさん、彼女って誰か言ってもらえないかな、思い当たる疑わしいって事は」
「……そうですね。実力で見ると彼等のリーダーだと思われるSランク冒険者である【黎明】マスカレイド・ハルサーと同等かそれ以上の実力を持つ人物であると思われます。特に【泥霧の魔術師】ダートさんを一撃で戦闘不能に出来る実力の持ち主となると先程の聴取と合わせた場合、【聖魔】シャルネ・ヘイルーンが位になりますが……彼女は率先して人を助けつつ全世界を行商人として回ってるので違うと思います」
「あぁ……確かにそれは無いと思うわ。うちの店も商品の仕入れでお世話になってるしレースのとこも森に自生している薬草では作れない薬を届けて貰ってるやろ?」
あぁ、たまに来るあの人がそうだったのか……。
そんな凄い人だと知らずに薬を受け取ったりしていたけど確かにそういう事をするようには見えない。
見た目や性格的にも無害だ。
「私は会った事無いけど……皆が言うなら安全な人なのかな」
「せやで?今度来たら会わせたるー」
「しかしそれだと誰なのか……ここでは調べる事が出来ないので私は一度栄花に戻り騎士団本部で調べてみます」
アキはそういうと聴取を書いた紙を本の中にしまい椅子から立ち上がると玄関へ向かって歩き出す。
「あっ!あのっ!」
「……どうしたんですか?」
「戻るって今から帰るという事なのかな」
「そうですけどそれが何か問題でも?、それにあなたは冒険者ではないので知らないと思いますが、冒険者ギルドには栄花の者だけが使える空間転移の魔術が付与された魔導具があるので問題ありません……、なのでそろそろ出ないと夜までに帰れないので失礼致します」
そういうとアキは玄関を通り家を出て行く。
本当に用件だけ済まして帰って行ってしまうなんて栄花騎士団の最高幹部ともなると忙しいのかもしれない。
そう思いダートやコルクを見ると同じような感想を抱いたのか複雑そうな顔をしている。
そんな雰囲気の中、外から大きな声が聞こえて来た。
「はぁぁっ!!……疲れたよぉっ!もう直ぐ帰ってお兄ちゃんに甘えたいよぉっ!……甘いのも食べたーいっ!休みたーいっ!」
思わず三人で顔を見合わせて笑ってしまう。
最初は凄い真面目で頭が固いイメージがあったけど暫く接して見るとそんな事が無くて、思いやりのある優しい人だっていうのも分かったし、接してみないと分からない所って結構あるんだなと思わせてくれる人だった。
「なんか気が抜けてもうたなぁ……うちもいつまでも店を閉める訳にはいかないから帰るわー」
「私も、怖い思いした筈なのに気が抜けちゃったな……」
「って事でダーにレース、また今度遊びに来てなー?」
そういうとコルクも家に帰って行く。
何だかここ暫くの慌ただしい日々がやっと終わり日常が今から戻って来た気がする。
ただ……今迄戦う力を持たなかったぼくが大切な人を守る為に力を求め始めた以上は、今迄通りとは行かないのだろう。
そんな事を思いながらダートの事を見ると不思議な顔をしてぼくの事を見つめ返して来た。
「えっと……、そんなに私を見つめてどうしたの?」
「あ、いや何でも無いよ」
ぼくがそういうと何か言いたげな顔をしたけれど何も言わずにぼくの顔を見て何かを考える仕草をする。
いったいどうしたのだろうか……。
「ならいいけど……それなら私からお願いしたい事があるの」
「お願いしたい事?……別に良いけどどうしたの?」
「これから村に行く時は一緒に行ってくれる?……一人で移動するのが怖くなっちゃって」
空間魔術を使って村に転移すればいいじゃないかと思うけど……、怖いというなら付いて行ってあげた方が良いのかもしれない。
それに謎の襲撃者に襲われた以上、まだその犯人がこの付近に居る可能性もあるし彼女に危険な思いをさせたくないという気持ちがある。
「それならいいけど……」
「やった!これからずっと一緒に行こうねっ!」
……ずっとってどういう事なのか分からないけど、コルクにも言われた通りもっとダートと一緒に居て彼女を安心させてあげた方が良いだろうから今はその通りにしてあげようと思う。
そんな事を思いながら開拓が終わり明日から新たな日々が始まって行く。
いつか彼女が元の世界に帰ってしまう日が来るとしてもそれまでこの日々を大事にしていこうと思いぼく等は日常に戻って行った。
暫く静かになった後ドアがゆっくりと開きダートが顔を出す。
「レ、レース?どうしたの?」
「アキさんが来たから呼びに来たんだけど……」
「え?そうなの、ならすぐ行くねっ!コーちゃんアキさん来たって!」
「ならうちも直ぐ行くからダーは先いっててー」
ダートは『わかったー!』と部屋を出てリビングへと向かって行く。
ここは二人で一緒に行くものだと思っていたのだけれどどうしたのだろうか……
「レース、聞こえるようにあんたが来るタイミングでもう一度同じ話題振ったけど、ダーは自分から話してくれたよ」
「……秘密を打ち明けてくれる位に仲良くなれて良かったね」
「その顔、あんたやっと自覚したんやねぇ……ただ独占欲出す前にやる事とかあるんじゃないの?……そんなんじゃダーに嫌われるよ?それに誰かに嫌われるのが怖いだなんて誰にもある事なんだから彼女から話して貰えるようにもっと一緒に居て安心させてあげないと駄目なんよ」
「別に……独占欲なんて」
独占欲何て持ってないというのに……、コルクはぼくの反応を見ると困った奴だと言わんばかりの呆れ顔をして足早に立ち去って行く。
色々と思う所はあるけどダートをもっと安心させてあげた方が良いっ事は理解出来たから今度彼女が村に行く時は一緒に付いて行ってみようか。
そんな事を思いながら二人が向かったリビングへとぼくは戻って行った。
「成程……という事はその左に黒い蝙蝠の羽と右に純白の鳥の翼を持った黄金色の髪で儚げな雰囲気の少女が死人使いルード・フェレスを連れ出したという事ですね?」
ぼく達がリビングに付いてテーブルに座ると直ぐにアキがダートから事情聴取を始める。
ルードを連れて行った少女が何者かはぼくには分からないけど彼を助けに来たという事はこの村の近くに居たのだろうか……
「話を聞いて思うたんやけど、その謎の少女って何者かアキさんには心当たりがあるん?」
「いえ……、金髪の少女の姿だけなら思い当たる節があるのですが彼女には羽が無いので別人だと思います」
「アキさん、彼女って誰か言ってもらえないかな、思い当たる疑わしいって事は」
「……そうですね。実力で見ると彼等のリーダーだと思われるSランク冒険者である【黎明】マスカレイド・ハルサーと同等かそれ以上の実力を持つ人物であると思われます。特に【泥霧の魔術師】ダートさんを一撃で戦闘不能に出来る実力の持ち主となると先程の聴取と合わせた場合、【聖魔】シャルネ・ヘイルーンが位になりますが……彼女は率先して人を助けつつ全世界を行商人として回ってるので違うと思います」
「あぁ……確かにそれは無いと思うわ。うちの店も商品の仕入れでお世話になってるしレースのとこも森に自生している薬草では作れない薬を届けて貰ってるやろ?」
あぁ、たまに来るあの人がそうだったのか……。
そんな凄い人だと知らずに薬を受け取ったりしていたけど確かにそういう事をするようには見えない。
見た目や性格的にも無害だ。
「私は会った事無いけど……皆が言うなら安全な人なのかな」
「せやで?今度来たら会わせたるー」
「しかしそれだと誰なのか……ここでは調べる事が出来ないので私は一度栄花に戻り騎士団本部で調べてみます」
アキはそういうと聴取を書いた紙を本の中にしまい椅子から立ち上がると玄関へ向かって歩き出す。
「あっ!あのっ!」
「……どうしたんですか?」
「戻るって今から帰るという事なのかな」
「そうですけどそれが何か問題でも?、それにあなたは冒険者ではないので知らないと思いますが、冒険者ギルドには栄花の者だけが使える空間転移の魔術が付与された魔導具があるので問題ありません……、なのでそろそろ出ないと夜までに帰れないので失礼致します」
そういうとアキは玄関を通り家を出て行く。
本当に用件だけ済まして帰って行ってしまうなんて栄花騎士団の最高幹部ともなると忙しいのかもしれない。
そう思いダートやコルクを見ると同じような感想を抱いたのか複雑そうな顔をしている。
そんな雰囲気の中、外から大きな声が聞こえて来た。
「はぁぁっ!!……疲れたよぉっ!もう直ぐ帰ってお兄ちゃんに甘えたいよぉっ!……甘いのも食べたーいっ!休みたーいっ!」
思わず三人で顔を見合わせて笑ってしまう。
最初は凄い真面目で頭が固いイメージがあったけど暫く接して見るとそんな事が無くて、思いやりのある優しい人だっていうのも分かったし、接してみないと分からない所って結構あるんだなと思わせてくれる人だった。
「なんか気が抜けてもうたなぁ……うちもいつまでも店を閉める訳にはいかないから帰るわー」
「私も、怖い思いした筈なのに気が抜けちゃったな……」
「って事でダーにレース、また今度遊びに来てなー?」
そういうとコルクも家に帰って行く。
何だかここ暫くの慌ただしい日々がやっと終わり日常が今から戻って来た気がする。
ただ……今迄戦う力を持たなかったぼくが大切な人を守る為に力を求め始めた以上は、今迄通りとは行かないのだろう。
そんな事を思いながらダートの事を見ると不思議な顔をしてぼくの事を見つめ返して来た。
「えっと……、そんなに私を見つめてどうしたの?」
「あ、いや何でも無いよ」
ぼくがそういうと何か言いたげな顔をしたけれど何も言わずにぼくの顔を見て何かを考える仕草をする。
いったいどうしたのだろうか……。
「ならいいけど……それなら私からお願いしたい事があるの」
「お願いしたい事?……別に良いけどどうしたの?」
「これから村に行く時は一緒に行ってくれる?……一人で移動するのが怖くなっちゃって」
空間魔術を使って村に転移すればいいじゃないかと思うけど……、怖いというなら付いて行ってあげた方が良いのかもしれない。
それに謎の襲撃者に襲われた以上、まだその犯人がこの付近に居る可能性もあるし彼女に危険な思いをさせたくないという気持ちがある。
「それならいいけど……」
「やった!これからずっと一緒に行こうねっ!」
……ずっとってどういう事なのか分からないけど、コルクにも言われた通りもっとダートと一緒に居て彼女を安心させてあげた方が良いだろうから今はその通りにしてあげようと思う。
そんな事を思いながら開拓が終わり明日から新たな日々が始まって行く。
いつか彼女が元の世界に帰ってしまう日が来るとしてもそれまでこの日々を大事にしていこうと思いぼく等は日常に戻って行った。
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