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第一章 非日常へ

12話 村に着いたら

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 道中で色々とあったけれど腕を引っ張られて走っているうちに村にあっという間に着いてしまう。
何処か心地が良い強引さがある人だと思うけど、腕を掴んで走るのは痛いから止めて欲しい。
村の様子は朝だからだろう、今から開拓の為に森へ行く人や彼等の護衛の為に付いていく冒険者上がりの人達が歩いている。

「あっ……わりぃ、やっぱ先に服屋に寄っていいか?」
「えぇ、構いませんけどどうしたんですか?」

 いきなりどうしたのだろうか?ダートさんが焦ったように民家の陰に身を隠す。
隠れた彼女の顔を見ると何やらばつが悪そうな顔をしている。
服屋に変更するのは良いけれど何をそんなに焦っているのだろうか?
ぼくの家に行く前にこの村を通る事になるわけだけど……彼女のあの性格だ、もしかして何かその時に問題を起こしてしまっているのだろうか?それで自身の印象を変えたいとかそういう感じだったりしたらどうしよう。

「おめぇ、俺が村でなんかやらかしたと思ってんだろ……顔に出てんぞ」

 思わず顔に出ていたようで、ダートさんに指摘されてしまう。
昨日のぼくとのやりとりを思い出してもあの性格ならトラブルが絶えないだろうし、何も起こしていないと思う方が難しいんじゃないだろうか。
しかしそれを言う勇気がない為顔を横に反らして誤魔化す事にした。

「おめぇ、顔を反らすってやっぱそう思ったってことじゃねぇかよっ!勘違いすんじゃねぇよ!確かに酒場で喧嘩はしちまったけど怪我はさせてねぇよっ!」
「やっぱり問題起こしてるじゃないですか……」

 案の定問題を起こしていたようで、何となく最初に服を買いに行きたい理由が分かった気がする。
服装を変えて髪型も変えれば大分印象が変わるだろうし何処でその喧嘩をした人と出会うか分からない。
そう思うと先に服屋に行った方がいいだろう。

「……思い出すと腹立つぜ、言い合いになったのは俺の口調が悪いと思うけどよぉ。仕返しなのかおめぇの家に行く道を嘘つく必要ねぇだろうが」
「自覚……あったんですね」
「……うっせぇよ」

 ぼくに逆ギレをされても困る。
ただ理由が理由なので先に服屋に行こう。
その方がダートさん的にも良い筈だし、これから助手として一緒に居て貰う以上トラブルだけは避けたい。

「事情は分かりました……、ただ服屋や雑貨屋は村の中央にあるんですけど顔を隠せるような物ってありますか?」
「顔を隠せそうなもんか?あるぜ?」

 指先を光らせると空間を開き中から黒に所々金色の刺繍が入ったローブを取り出して羽織り頭にフードを被る。
魔術師は自身の得意属性に合わせた色のローブを持っている事は有名だからこれなら違和感は無い。
黒は闇属性で金色は確か精神干渉系の魔術で習得が非常に難しかった筈、それだけでも高位の魔術を納めている事が分かる。

「取り合えずこれでいいか?」
「えぇ、では行きましょうか」

 それにローブを着ている人は開拓村という都合上、様々な人が外から入ってくるため大して珍しくはない。
そういう意味では自然と村に溶け込んでいる。
おかげでトラブルもなく服屋に到着した。


「こんにちわーっ!」
「はいはい、いらっしゃいませーってあら先生じゃない!珍しいわねぇ」

 服屋に入り挨拶をすると、お店の奥から人のよさそうな顔をしたおばさんが出てくる。
この人は村に来て以来病気も無くいつ会っても元気で安心する。

「えぇ、お久しぶりです。」
「ほんとよぉ、先生ったらたまにしか村に出てこないから心配してたのよぉ?」
「はは、心配かけてすいません」
「ほんとよぉ、もっと村に顔出しなさいよ……あら?」

 おばさんの目がぼくの後ろにいるダートさんを見つける。
暫く見つめていたと思うと凄い速さで歩み寄って彼女の方を掴む。

「あらあなた美人さんねぇっ!先生っ!この子何処で捕まえて来たのかしら?」
「捕まえて来たってそんなんじゃないですよ……、彼女は今日からぼくの助手として派遣されてきたダートさんです。」
「あらぁ、ダートさんっていうのね。それにしても本当に美人さんねぇ……」
「えっ、あの美人って私えっとその……」

 ……わたし?今ダートさんが自身を私と言わなかったか?思わず彼女の顔を見てしまう。
余裕が無いのか顔を真っ赤にしてあたふたしているダートさんがそこにいて印象が余りにも変わり過ぎてあの横暴な姿が嘘のようだ。

「先生が服を買いに来るわけないし、今日はダートちゃん今日は服を買いに来たのよね?」
「えぇ、着の身着のままで来てしまったようで替えの服がないらしいので適当に選んで貰う事って出来ますか?」
「先生?適当にってあなた女の子のお洋服をなんだと思っているの?」

 おばさんに凄い顔で睨まれる。
以前師匠にも同じ事を言われた気がするけど、分からない物は分からないんだからしょうがないと思う。
服なんて着れれば良いと思うのに何がダメなのだろう。

「もういいわ、ダートちゃんと話して服を決めるから先生は外で待ってなさい!」

 そういうとおばさんはぼくの背中を押して服屋から追い出す。
どうしてこうなってしまったのだろうか?服を買いに来た筈が怒られて追い出されて待っていろとは理不尽な気がするけれど、そんなことを言ったら更に怒らせてしまうだろう。
取り合えず大人しく服屋の前で待つことにした。

「先生もういいわよーっ!入ってきてー!」

……店の中からおばさんの元気な声がする。
それに答えて再びお店に入って直ぐ目に映った光景は、水色を主体にしている村娘ワンピースを着たダートさんが恥ずかしそうに顔を赤く染めた光景だった。
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