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そして学園へ……
4話
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彼の行動に思わず吹き出して笑ってしまった私を見て、困惑した表情を浮かべると
「……な、なんだよ」
「ふふ……えっと、何か微笑ましい……いや、男の子だなぁって思ったら可愛くて」
「かわいいって、俺は男だぞ!?」
頬を赤く染めて文句を言う彼の反応に更に笑いが込み上げて来る。
私の専属の使用人になって、更には従騎士という立場にもなったけど、こういうところはやっぱり年相応の男の子なんだなって思うと、微笑ましいしアーロと一緒にいると不思議と心が落ち着く。
「だ、だから笑うなって!」
「ふふ、ご、ごめんなさい」
「ったく……これじゃまともに話し合いが出来ねえぞ?」
「……確かにそうね、ごめんなさい」
その通りだけど、アーロに言われるとちょっとだけ複雑な気持ちになる。
だって最初にソファーに座ってはしゃぎだしたのは彼なのに、なんで私が注意されなければいけないのか。
さっきは落ち付くなぁって思ったのに、直ぐにこんな思いをするのは理不尽では?……でもまぁ、そういうところも含めてアーロだからしょうがないのかもしれないけど……
「分かればいいんだよ分かれば……、で?嫌な予感がするって言ってたけど、どんな感じなんだ?」
「どんな感じって……」
「ほら、色々とあるだろ?家に帰るまでの道のりとかでさ、何時も通ってる道なのになんか今日はここを通りたくねぇなぁって感じたりする時って、そういう感じでさ……何かあったりとかするだろ?」
「その感覚はちょっと伝えるのが難しいかも、だって……私はピュルガトワール領ではお屋敷に住んでるし、外には滅多に出る事が無いじゃない?」
「あぁ、じゃあどう説明すりゃいいかなぁ、んー……あっ!、それなら何が不安か直接言えばいいんじゃないか?」
確かにあれこれと二人であぁでもない、こうでもないと悪い予感の伝え方について話し合って貴重な時間を使ってしまうぐらいなら、直接伝えた方がいいかもしれない。
その方がちゃんと伝わるだろうし、それにアーロの事だから私の言う事を信じてくれるだろう。
「……変なことを言うかもしれないけど、驚かないで聞いてくれる?」
「ん?お前が言う事だから大事な話なんだろ?マリスの専属使用人で尚且つ、将来の護衛騎士でもある俺が主人を信じなくてどうすんだよ」
「ありがとうアーロ……、じゃあこれを見て欲しいんだけど……」
部屋に置いて貰ったカバンを開けると、中からピュルガトワール領を治める一族の身が所持する事を許されている、人の皮で作られた魔導書を取り出す。
……本来ならお父様が管理するべきものなのだと思うのだけれど、魔王に選ばれ死に戻り人生をやり直す力を得た以上、私が所持して管理した方が良いと押し付けられてしまった。
でも……この本のおかげで、私が死に戻りをしている事に関して話す事が出来る。
本来なら少しでも話そうとすると、まったく関係の無い内容が相手に伝わってしまう。
例えば……
「馬車の旅は疲れたわね、ところで明日の朝食はいったい何が出るのかしら、私的にはモーニングにトーストと季節に合わせた色とりどりの野菜とフルーツ、そしてベーコンを使った物が食べたいわ、アーロあなたは何が食べたい?」
「……は?いきなり何言ってんだ?今は朝食云々よりも、学園に行く経路について感じた不安について話し合うんだろ?」
本当は『私はこの魔導書に選ばれた事で、死んで人生をやり直す事が出来るようになったの……、以前の人生では魔族の誘惑に負けてしまって魔王へとその身を変えてしまったけれど、今はその人生を悔いてやり直そうとしているわ、アーロはこれを聞いてどう思う?』と言ったのだけれど、この通り意味が分からない内容になってしまう。
「じゃあ次はこの本に触れて今から言う事を聞いて?」
「え?あ、おぅ……」
言われるがままにアーロが本に触れると、ゆっくり眼を閉じる。
「なんだこれ……すっげぇ、滑らかで何ていうか柔らかい?なんだこれ、ほんっとなんだ?なぁマリス、これ何の皮だ?」
「……なんの皮なんでしょうね」
「おまえも知らないのかよ、何て言うか触ってると手触りがすげぇ気持ち良いぞ?何て言うか羊皮紙を使った本とは違う感じ」
「……本の感想はいいから、私の話を聞いて欲しいんだけど?」
「お、おぅ……ごめん」
この魔導書が人の皮で作られていると知ったら、アーロはどんな反応をするのだろうか。
ふとそんな事を思うけれど、世の中には知らない方が良い事の方が沢山ある。
だから何も言わないでおいてあげた方が彼の為になるだろう。
「まぁいいわ……、それでは言うわよ?私はこの本の力で死に戻りの力を得て、人生をやり直す事が出来るの」
「……は?それって何のじょうだ──」
「冗談じゃないわ、事実よ?それで以前の人生であの道を通った時に野盗に出会ってのよ……それで──」
私が最初の人生でどんな経験をしたのか話しつつ、途中で魔導書から手を離すとどんな内容に変わるのか経験させながら伝えていく。
そうしているうちに、最初は疑っていたアーロも信じてくれたようで、真剣な表情を浮かべると何も言わずに最後まで聞いてくれた。
「……な、なんだよ」
「ふふ……えっと、何か微笑ましい……いや、男の子だなぁって思ったら可愛くて」
「かわいいって、俺は男だぞ!?」
頬を赤く染めて文句を言う彼の反応に更に笑いが込み上げて来る。
私の専属の使用人になって、更には従騎士という立場にもなったけど、こういうところはやっぱり年相応の男の子なんだなって思うと、微笑ましいしアーロと一緒にいると不思議と心が落ち着く。
「だ、だから笑うなって!」
「ふふ、ご、ごめんなさい」
「ったく……これじゃまともに話し合いが出来ねえぞ?」
「……確かにそうね、ごめんなさい」
その通りだけど、アーロに言われるとちょっとだけ複雑な気持ちになる。
だって最初にソファーに座ってはしゃぎだしたのは彼なのに、なんで私が注意されなければいけないのか。
さっきは落ち付くなぁって思ったのに、直ぐにこんな思いをするのは理不尽では?……でもまぁ、そういうところも含めてアーロだからしょうがないのかもしれないけど……
「分かればいいんだよ分かれば……、で?嫌な予感がするって言ってたけど、どんな感じなんだ?」
「どんな感じって……」
「ほら、色々とあるだろ?家に帰るまでの道のりとかでさ、何時も通ってる道なのになんか今日はここを通りたくねぇなぁって感じたりする時って、そういう感じでさ……何かあったりとかするだろ?」
「その感覚はちょっと伝えるのが難しいかも、だって……私はピュルガトワール領ではお屋敷に住んでるし、外には滅多に出る事が無いじゃない?」
「あぁ、じゃあどう説明すりゃいいかなぁ、んー……あっ!、それなら何が不安か直接言えばいいんじゃないか?」
確かにあれこれと二人であぁでもない、こうでもないと悪い予感の伝え方について話し合って貴重な時間を使ってしまうぐらいなら、直接伝えた方がいいかもしれない。
その方がちゃんと伝わるだろうし、それにアーロの事だから私の言う事を信じてくれるだろう。
「……変なことを言うかもしれないけど、驚かないで聞いてくれる?」
「ん?お前が言う事だから大事な話なんだろ?マリスの専属使用人で尚且つ、将来の護衛騎士でもある俺が主人を信じなくてどうすんだよ」
「ありがとうアーロ……、じゃあこれを見て欲しいんだけど……」
部屋に置いて貰ったカバンを開けると、中からピュルガトワール領を治める一族の身が所持する事を許されている、人の皮で作られた魔導書を取り出す。
……本来ならお父様が管理するべきものなのだと思うのだけれど、魔王に選ばれ死に戻り人生をやり直す力を得た以上、私が所持して管理した方が良いと押し付けられてしまった。
でも……この本のおかげで、私が死に戻りをしている事に関して話す事が出来る。
本来なら少しでも話そうとすると、まったく関係の無い内容が相手に伝わってしまう。
例えば……
「馬車の旅は疲れたわね、ところで明日の朝食はいったい何が出るのかしら、私的にはモーニングにトーストと季節に合わせた色とりどりの野菜とフルーツ、そしてベーコンを使った物が食べたいわ、アーロあなたは何が食べたい?」
「……は?いきなり何言ってんだ?今は朝食云々よりも、学園に行く経路について感じた不安について話し合うんだろ?」
本当は『私はこの魔導書に選ばれた事で、死んで人生をやり直す事が出来るようになったの……、以前の人生では魔族の誘惑に負けてしまって魔王へとその身を変えてしまったけれど、今はその人生を悔いてやり直そうとしているわ、アーロはこれを聞いてどう思う?』と言ったのだけれど、この通り意味が分からない内容になってしまう。
「じゃあ次はこの本に触れて今から言う事を聞いて?」
「え?あ、おぅ……」
言われるがままにアーロが本に触れると、ゆっくり眼を閉じる。
「なんだこれ……すっげぇ、滑らかで何ていうか柔らかい?なんだこれ、ほんっとなんだ?なぁマリス、これ何の皮だ?」
「……なんの皮なんでしょうね」
「おまえも知らないのかよ、何て言うか触ってると手触りがすげぇ気持ち良いぞ?何て言うか羊皮紙を使った本とは違う感じ」
「……本の感想はいいから、私の話を聞いて欲しいんだけど?」
「お、おぅ……ごめん」
この魔導書が人の皮で作られていると知ったら、アーロはどんな反応をするのだろうか。
ふとそんな事を思うけれど、世の中には知らない方が良い事の方が沢山ある。
だから何も言わないでおいてあげた方が彼の為になるだろう。
「まぁいいわ……、それでは言うわよ?私はこの本の力で死に戻りの力を得て、人生をやり直す事が出来るの」
「……は?それって何のじょうだ──」
「冗談じゃないわ、事実よ?それで以前の人生であの道を通った時に野盗に出会ってのよ……それで──」
私が最初の人生でどんな経験をしたのか話しつつ、途中で魔導書から手を離すとどんな内容に変わるのか経験させながら伝えていく。
そうしているうちに、最初は疑っていたアーロも信じてくれたようで、真剣な表情を浮かべると何も言わずに最後まで聞いてくれた。
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