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過去に遡って……
12話
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二人で楽しい時間を過ごしてから、あっという間に時間が過ぎて気づいたら10歳になっていた。
その間は特に何も無く平穏な日々だったけど色々と思う所がある。
その間に起きた変化としては身長が伸びと共に、子供特有の短かった手足もしゅっとして顔も大人びて来て、気が付いたら学園に通う年齢まで後2年程しかない。
私が12歳になった頃に、入学する事になる……それまでの間に何事も無ければいいのだけれど……
「……マリスお嬢様?今日のケーキと紅茶はどうですか?」
「えぇ、今日も美味しいわね……こうやって二人で楽しい時間を楽しめているからかしら」
「そう言って頂けて嬉しいですね、私も本当に娘が出来たようで毎日が楽しいですよ」
それにしても……ステラにお屋敷の中の事を調べて欲しいとお願いするのを止めただけでどうして一部を除いて問題が何も無いのか。
そう思いながら彼女の淹れてくれた紅茶を一飲みして、今の幸せを楽しんでいると……
「マリスお嬢様、あの大事なお話があるのですが……」
「あら?どうしたのかしら?」
「あの……大変申し上げ難いのですが、マリスお嬢様の我が儘が耐え難いので、暇をもらおうと思います」
「……え?」
さっきまで本当に娘が出来たようで楽しいと言っていたステラが、申し訳なさそうな顔をしながらそう言葉にする。
驚きのあまり手に持ったティーカップを落としそうになるけど、どうしてそんな事を言うの?我が儘が耐えがたいって言われても、以前の失敗から学んで言い過ぎないようにしてるし、甘える時は二人きりの時だけなのにどうして?。
私何もおかしな事してないよね……、それとももしかして私が一緒に紅茶やケーキを楽しみたいって言ったのがそんなに負担だったのかな。
いや、もしそうならステラの事だからちゃんと言ってくれるだろうし、ここ数年の間も本当に私の事を実の娘のように扱ってくれて、私の知らない事を色々と教えてくれたじゃない。
平民は冬になると、雪のせいで畑仕事が出来ないからそれまでの間に蓄えた食料で雪解けの季節を待つ冬篭りをする事、特にその間の納める税に関しては領主であるお父様の計らいで……農作物や畜産物の買い取りを止め、手先の器用な女性が集まり編み物や織物をして、それを毎月一定の量納める事で良い事になっている事。
その際に食料の蓄えが少ない家庭には有事の際に保存している、森に生息しているモンスターや動物を狩って作った保存食を分けている事も教えてくれて、前の私では知る事が出来なかった事も知ることが出来て感謝してる。
それに、私が悪い事をしたらしっかりと叱ってくれるステラが、どうしていきなりそんな事を言うのか……いくら考えても理解ができない。
「あの……私何かしてしまいましたか?知らない間にステラに対して失礼な事を……えっと、ごめんなさい」
「あ、いえ……そういう訳ではなく、あのですね」
「じゃあ何でそんな事を言う……の?」
気丈な態度で接しようとするけど、目に涙が浮かんでくる。
必死にふき取ろうとしてもどんどん溢れて来てしまう……そんな私を見て何やら言いづらそうな仕草をしているけど、もしかして正直に言えない理由があるのだろうか。
やっぱり私が何かやってしまったの?、それともこの前食事の席でお父様達に……町に遊びに行きたいと言ってしまったから?……でもその時は
「町に?……それはどうしてだい?」
「えっと、ほら私は将来婿養子を得てこの領地を継ぐでしょう?その際に領民の暮らしを知らないのは良くないと思いましたの、ほら……彼らの事を知らないのにまともな領地運営が出来るとは思えませんし……」
「なるほど、それなら今度私と一緒にお忍びで行ってみるかい?勿論その時は平民の服を着て行く事になるから、綺麗なドレスとかは着れないけどいいかな」
「……あなた、何を言ってるの?マリスはこの領地を継ぐ大事な娘なのよ?そんな立場にあるのに平民の服を着せるですって?あなたの判断は間違えてるわ、お忍びよりもしっかりとした形にするべきよ、護衛を沢山つけて領民達に触れさせないようにするの、そうしないと……ダートのように攫われてしまうかもしれないでしょう?この子は私の希望で全てなのですよ?、マリスまで居なくなってしまったら私はどうすればいいのですか?」
とお母様が怒りだしてしまう。
雰囲気的にも最早食事のどころでは無く、誰も作ってくれた美味しい料理を口に運ぶ事が出来ない気まずさがあって……、あの時はこんな事なら言わなければ良かったと後悔していた。
「……それは、あえて平民の服装をすることで周囲の雰囲気に溶け込めば問題ない筈だよ?」
「問題ない?あなたは本当にそう思ってるのですか?……いいですか?ダートの時を思い出してくださいまし、生まれながらに高貴な立場にある貴族は何時狙われているのか分からないのですよ?、ですから……仮にマリスに平民の小汚い服を着せた所で今まで身に着けて来た所作は隠せませんし、整った顔付で直ぐにバレてしまうでしょう?……貴族と言うのは生まれもそうですが、見た目も精錬されているから貴族なのです、何の為に長い年月を掛けて容姿の優れた物同士で子を成し続けて来たと思うのですか?」
「……これはマリスに聞かせる話ではないね、悪いけどマリスは部屋に戻りなさい、冷めた食事は再度温めてから料理長に持っていかせるから悪いね」
そのして部屋に戻された私は、ステラと一緒に二人で食事を楽しんだけど……もしかしてそのせいで彼女に何かがあったのかもしれない……。
だから使用人を辞めようとしている?……そう思うと申し訳ない気持ちと共に、平和と感じていた日々が崩れる音が心の中でした。
その間は特に何も無く平穏な日々だったけど色々と思う所がある。
その間に起きた変化としては身長が伸びと共に、子供特有の短かった手足もしゅっとして顔も大人びて来て、気が付いたら学園に通う年齢まで後2年程しかない。
私が12歳になった頃に、入学する事になる……それまでの間に何事も無ければいいのだけれど……
「……マリスお嬢様?今日のケーキと紅茶はどうですか?」
「えぇ、今日も美味しいわね……こうやって二人で楽しい時間を楽しめているからかしら」
「そう言って頂けて嬉しいですね、私も本当に娘が出来たようで毎日が楽しいですよ」
それにしても……ステラにお屋敷の中の事を調べて欲しいとお願いするのを止めただけでどうして一部を除いて問題が何も無いのか。
そう思いながら彼女の淹れてくれた紅茶を一飲みして、今の幸せを楽しんでいると……
「マリスお嬢様、あの大事なお話があるのですが……」
「あら?どうしたのかしら?」
「あの……大変申し上げ難いのですが、マリスお嬢様の我が儘が耐え難いので、暇をもらおうと思います」
「……え?」
さっきまで本当に娘が出来たようで楽しいと言っていたステラが、申し訳なさそうな顔をしながらそう言葉にする。
驚きのあまり手に持ったティーカップを落としそうになるけど、どうしてそんな事を言うの?我が儘が耐えがたいって言われても、以前の失敗から学んで言い過ぎないようにしてるし、甘える時は二人きりの時だけなのにどうして?。
私何もおかしな事してないよね……、それとももしかして私が一緒に紅茶やケーキを楽しみたいって言ったのがそんなに負担だったのかな。
いや、もしそうならステラの事だからちゃんと言ってくれるだろうし、ここ数年の間も本当に私の事を実の娘のように扱ってくれて、私の知らない事を色々と教えてくれたじゃない。
平民は冬になると、雪のせいで畑仕事が出来ないからそれまでの間に蓄えた食料で雪解けの季節を待つ冬篭りをする事、特にその間の納める税に関しては領主であるお父様の計らいで……農作物や畜産物の買い取りを止め、手先の器用な女性が集まり編み物や織物をして、それを毎月一定の量納める事で良い事になっている事。
その際に食料の蓄えが少ない家庭には有事の際に保存している、森に生息しているモンスターや動物を狩って作った保存食を分けている事も教えてくれて、前の私では知る事が出来なかった事も知ることが出来て感謝してる。
それに、私が悪い事をしたらしっかりと叱ってくれるステラが、どうしていきなりそんな事を言うのか……いくら考えても理解ができない。
「あの……私何かしてしまいましたか?知らない間にステラに対して失礼な事を……えっと、ごめんなさい」
「あ、いえ……そういう訳ではなく、あのですね」
「じゃあ何でそんな事を言う……の?」
気丈な態度で接しようとするけど、目に涙が浮かんでくる。
必死にふき取ろうとしてもどんどん溢れて来てしまう……そんな私を見て何やら言いづらそうな仕草をしているけど、もしかして正直に言えない理由があるのだろうか。
やっぱり私が何かやってしまったの?、それともこの前食事の席でお父様達に……町に遊びに行きたいと言ってしまったから?……でもその時は
「町に?……それはどうしてだい?」
「えっと、ほら私は将来婿養子を得てこの領地を継ぐでしょう?その際に領民の暮らしを知らないのは良くないと思いましたの、ほら……彼らの事を知らないのにまともな領地運営が出来るとは思えませんし……」
「なるほど、それなら今度私と一緒にお忍びで行ってみるかい?勿論その時は平民の服を着て行く事になるから、綺麗なドレスとかは着れないけどいいかな」
「……あなた、何を言ってるの?マリスはこの領地を継ぐ大事な娘なのよ?そんな立場にあるのに平民の服を着せるですって?あなたの判断は間違えてるわ、お忍びよりもしっかりとした形にするべきよ、護衛を沢山つけて領民達に触れさせないようにするの、そうしないと……ダートのように攫われてしまうかもしれないでしょう?この子は私の希望で全てなのですよ?、マリスまで居なくなってしまったら私はどうすればいいのですか?」
とお母様が怒りだしてしまう。
雰囲気的にも最早食事のどころでは無く、誰も作ってくれた美味しい料理を口に運ぶ事が出来ない気まずさがあって……、あの時はこんな事なら言わなければ良かったと後悔していた。
「……それは、あえて平民の服装をすることで周囲の雰囲気に溶け込めば問題ない筈だよ?」
「問題ない?あなたは本当にそう思ってるのですか?……いいですか?ダートの時を思い出してくださいまし、生まれながらに高貴な立場にある貴族は何時狙われているのか分からないのですよ?、ですから……仮にマリスに平民の小汚い服を着せた所で今まで身に着けて来た所作は隠せませんし、整った顔付で直ぐにバレてしまうでしょう?……貴族と言うのは生まれもそうですが、見た目も精錬されているから貴族なのです、何の為に長い年月を掛けて容姿の優れた物同士で子を成し続けて来たと思うのですか?」
「……これはマリスに聞かせる話ではないね、悪いけどマリスは部屋に戻りなさい、冷めた食事は再度温めてから料理長に持っていかせるから悪いね」
そのして部屋に戻された私は、ステラと一緒に二人で食事を楽しんだけど……もしかしてそのせいで彼女に何かがあったのかもしれない……。
だから使用人を辞めようとしている?……そう思うと申し訳ない気持ちと共に、平和と感じていた日々が崩れる音が心の中でした。
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