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過去に遡って……
4話
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子供は周囲を振り回す位がちょうど良いって言葉……多分本心から言ってくれているって分かるけど、前の私の事があるから不安になる。
でもこういう気持ちは凄い嬉しくて……だから
「……ならあなたの前では甘える事にするわね?」
今は素直に甘える事にする。
けど恥ずかしくて顔が熱い、きっと今の私は耳まで真っ赤だろう。
……それを想像するだけで更に熱くなってしまうし、私を見たメイドがかわいいもの見るような顔をして表情を緩ませながら……
「えぇ、そうなさってくれると嬉しいです……、ほらマリスお嬢様もご存じの通り私の息子達は一人立ちして家を出てしまったので寂しいのですよ、だから甘えて構ってくださいませ」
「でも嫌だったら早めに言ってね?」
「えぇ、そう致しますね?……でもうちには男の子しかいませんでしたけど、女の子というのは成長が早い気がしますね、お嬢様がたまに私と同じ大人みたいに感じます」
同じ大人みたいに感じる……その言葉を聞いて一瞬体が強張ってしまう。
だって今の私は大人の状態から、過去に戻って言わば二週目の人生を過ごしているわけで……メイドの言う通り今の私の中身は子供じゃなくて大人だ。
そう思うと騙している気がして申し訳ない気持ちになってしまうけど、今はこの何気ない日常を大事にしていたいと、庭でメイドの淹れてくれた紅茶を飲んでいると……屋敷の扉が開いて中から執事が出て来る。
「あら?あれは確か……」
「執事長様ですね、この時間はご領主様の近くにいる筈なのにどうしたのでしょうか」
「あぁ……」
執事長……忠誠心が高くお父様のその前の領主、私のお爺様の頃から仕えてくれている人で、当時我が儘放題であった私が幾ら八つ当たりをしたり我が儘を言っても笑って受け流してくれた。
当時魔王になった私が捕らえられた後、お父様たちと一緒に処刑されたらしいけどその際に最後まで私の身を案じていてくれた辺り本当に良い人だったのだろう。
そんな彼の普段は開いてるのかどうか分からない位に細い目を大きく開いて、片眼鏡を光らせながらこっちに近づいてくる姿に驚いてしまい、思わず椅子から落ちそうになるところをメイドに支えられる。
「マリスお嬢様……お茶の時間の最中に申し訳ございません、ご主人様がマリスお嬢様をお呼びです」
「お父様が?ならメイドと共に今から参りますわ」
「それが……申し訳ないのですが一人で執務室まで来て欲しいとのことで」
一人で執務室まで来い?いったい何があったのか。
子供の頃は『子供が大人の仕事場に入ってはいけない』と厳しく言われていた場所で、私が学園から戻るまでは一度も中に入れたことは無かったのにどうして……?
「……分かりましたわ、直ぐに向かいますけど本当に一人でですの?」
「はい、そう仰っております……」
「でも私、いつもはお父様から子供は仕事場に入らないようにと言われておりますのよ?」
「えぇ、存じております……私も聞いた時は疑問に思ったのですが、何でもここ数日のマリスお嬢様を見て何か思う所があったらしく、とにかく早くいかれた方が良いでしょう」
「え、えぇ……それじゃあ行ってくるわね」
私が椅子から立ち上がるとメイドと執事長がゆっくりを頭を下げる。
それを確認してから屋敷に入るとお父様のいる執務室に向かうけど……何だかいつもと違って違和感を感じる。
「おかしいわね……、何時もならこの時間メイド達が屋敷内の掃除をしている筈なのにいないわ」
思わず不安になり独り言を言ってしまったけど、いつもいる筈の人達がいない。
お母様は基本的に自室から出てこない人だから屋敷であんまり見ないのはしょうがないけど、それ以外の人達まで屋敷の中で会わないのはどう見てもおかしい、そう思うと何とも言えない不安に襲われてしまう。
「もしかしてだけどお父様が人払いでもしたのかしら」
そうだ、きっとそうに違いない……そう思うとこの違和感の理由にも納得がいく。
「でもそれ程に大事な用があるって事ですわよね?」
いったい何を言われるのだろうか、そんな不安がストレスとなり胸を締め付ける。
会った時に何を言われるのだろうか、もしかして何か悪い事……そう怒られるようなことをしてしまったのかもしれない。
滅多に人に怒ったりする事が無い人だけど、人払いをするくらいだからよっぽどの事があったのだろう。
そう思うと不安で足が竦みそうになるけど、何とか気持ちを奮い立たせて歩いて執務室の前に到着したので、ゆっくりと扉をノックしようとすると……
「誰だい?」
叩く前に扉の奥から声がする。
その声はいつものように優しいけど何処か冷たいような気がした。
「マリス・シルヴィ・ピュルガトワールですわ、お父様に呼ばれて執務室に来ましたの」
「マリスか……入っておいで、君とは大事な話があるんだ」
「はい……失礼致しますわ」
お父様の許可を得られたので執務室に入ると、様々な呪いの術を使う為の道具が綺麗に整頓された部屋が目に入る。
不気味な人形に、触媒となる動物の血を貯めた瓶、そして我が一族のみが許される人の皮で作られているという魔導書。
そして奥にある机に座って何かを書いているお父様……一般的に見たら以上に見える空間だけど、久しぶりに見る光景に何だか懐かしい安ど感を覚えてしまう。
「……この部屋を見ても驚かないんだね」
「えぇ、だってピュガトワール家は呪術と空間魔法の専門家ですもの」
「おかしいな……、私は君にその事を教えた覚えがないのにどうして知ってるんだい?」
お父様が椅子から立ち上がると、人の皮で作られた魔導書を手に取り何かを確認しだす。
「やはりそうだ……、ここに書かれている文字が更新されているね、そしてマリスのお姉さんであるダートの名前が消えて君の名前だけが残っている」
「あの……お父様?」
「いいかい?マリス、私の言う質問に嘘偽りなく答えて欲しいんだ」
お父様が膝を混ぜて私に目線を合わせるとゆっくりと口を開く。
「君は今……何週目だい?何回やり直した?そして私はこれを何回君に聞いたのか答えてくれるかい?」
それは親が小さい子供を見る視線ではなく。
対等な立場の大人を見るような、そんな冷たいものだった。
でもこういう気持ちは凄い嬉しくて……だから
「……ならあなたの前では甘える事にするわね?」
今は素直に甘える事にする。
けど恥ずかしくて顔が熱い、きっと今の私は耳まで真っ赤だろう。
……それを想像するだけで更に熱くなってしまうし、私を見たメイドがかわいいもの見るような顔をして表情を緩ませながら……
「えぇ、そうなさってくれると嬉しいです……、ほらマリスお嬢様もご存じの通り私の息子達は一人立ちして家を出てしまったので寂しいのですよ、だから甘えて構ってくださいませ」
「でも嫌だったら早めに言ってね?」
「えぇ、そう致しますね?……でもうちには男の子しかいませんでしたけど、女の子というのは成長が早い気がしますね、お嬢様がたまに私と同じ大人みたいに感じます」
同じ大人みたいに感じる……その言葉を聞いて一瞬体が強張ってしまう。
だって今の私は大人の状態から、過去に戻って言わば二週目の人生を過ごしているわけで……メイドの言う通り今の私の中身は子供じゃなくて大人だ。
そう思うと騙している気がして申し訳ない気持ちになってしまうけど、今はこの何気ない日常を大事にしていたいと、庭でメイドの淹れてくれた紅茶を飲んでいると……屋敷の扉が開いて中から執事が出て来る。
「あら?あれは確か……」
「執事長様ですね、この時間はご領主様の近くにいる筈なのにどうしたのでしょうか」
「あぁ……」
執事長……忠誠心が高くお父様のその前の領主、私のお爺様の頃から仕えてくれている人で、当時我が儘放題であった私が幾ら八つ当たりをしたり我が儘を言っても笑って受け流してくれた。
当時魔王になった私が捕らえられた後、お父様たちと一緒に処刑されたらしいけどその際に最後まで私の身を案じていてくれた辺り本当に良い人だったのだろう。
そんな彼の普段は開いてるのかどうか分からない位に細い目を大きく開いて、片眼鏡を光らせながらこっちに近づいてくる姿に驚いてしまい、思わず椅子から落ちそうになるところをメイドに支えられる。
「マリスお嬢様……お茶の時間の最中に申し訳ございません、ご主人様がマリスお嬢様をお呼びです」
「お父様が?ならメイドと共に今から参りますわ」
「それが……申し訳ないのですが一人で執務室まで来て欲しいとのことで」
一人で執務室まで来い?いったい何があったのか。
子供の頃は『子供が大人の仕事場に入ってはいけない』と厳しく言われていた場所で、私が学園から戻るまでは一度も中に入れたことは無かったのにどうして……?
「……分かりましたわ、直ぐに向かいますけど本当に一人でですの?」
「はい、そう仰っております……」
「でも私、いつもはお父様から子供は仕事場に入らないようにと言われておりますのよ?」
「えぇ、存じております……私も聞いた時は疑問に思ったのですが、何でもここ数日のマリスお嬢様を見て何か思う所があったらしく、とにかく早くいかれた方が良いでしょう」
「え、えぇ……それじゃあ行ってくるわね」
私が椅子から立ち上がるとメイドと執事長がゆっくりを頭を下げる。
それを確認してから屋敷に入るとお父様のいる執務室に向かうけど……何だかいつもと違って違和感を感じる。
「おかしいわね……、何時もならこの時間メイド達が屋敷内の掃除をしている筈なのにいないわ」
思わず不安になり独り言を言ってしまったけど、いつもいる筈の人達がいない。
お母様は基本的に自室から出てこない人だから屋敷であんまり見ないのはしょうがないけど、それ以外の人達まで屋敷の中で会わないのはどう見てもおかしい、そう思うと何とも言えない不安に襲われてしまう。
「もしかしてだけどお父様が人払いでもしたのかしら」
そうだ、きっとそうに違いない……そう思うとこの違和感の理由にも納得がいく。
「でもそれ程に大事な用があるって事ですわよね?」
いったい何を言われるのだろうか、そんな不安がストレスとなり胸を締め付ける。
会った時に何を言われるのだろうか、もしかして何か悪い事……そう怒られるようなことをしてしまったのかもしれない。
滅多に人に怒ったりする事が無い人だけど、人払いをするくらいだからよっぽどの事があったのだろう。
そう思うと不安で足が竦みそうになるけど、何とか気持ちを奮い立たせて歩いて執務室の前に到着したので、ゆっくりと扉をノックしようとすると……
「誰だい?」
叩く前に扉の奥から声がする。
その声はいつものように優しいけど何処か冷たいような気がした。
「マリス・シルヴィ・ピュルガトワールですわ、お父様に呼ばれて執務室に来ましたの」
「マリスか……入っておいで、君とは大事な話があるんだ」
「はい……失礼致しますわ」
お父様の許可を得られたので執務室に入ると、様々な呪いの術を使う為の道具が綺麗に整頓された部屋が目に入る。
不気味な人形に、触媒となる動物の血を貯めた瓶、そして我が一族のみが許される人の皮で作られているという魔導書。
そして奥にある机に座って何かを書いているお父様……一般的に見たら以上に見える空間だけど、久しぶりに見る光景に何だか懐かしい安ど感を覚えてしまう。
「……この部屋を見ても驚かないんだね」
「えぇ、だってピュガトワール家は呪術と空間魔法の専門家ですもの」
「おかしいな……、私は君にその事を教えた覚えがないのにどうして知ってるんだい?」
お父様が椅子から立ち上がると、人の皮で作られた魔導書を手に取り何かを確認しだす。
「やはりそうだ……、ここに書かれている文字が更新されているね、そしてマリスのお姉さんであるダートの名前が消えて君の名前だけが残っている」
「あの……お父様?」
「いいかい?マリス、私の言う質問に嘘偽りなく答えて欲しいんだ」
お父様が膝を混ぜて私に目線を合わせるとゆっくりと口を開く。
「君は今……何週目だい?何回やり直した?そして私はこれを何回君に聞いたのか答えてくれるかい?」
それは親が小さい子供を見る視線ではなく。
対等な立場の大人を見るような、そんな冷たいものだった。
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