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第一章 目覚めたらそこは……

6話 冒険者登録

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 カフス呼ばれたこの冒険者ギルドの長を見て改めて思うが、老いて衰える事の無い覇気と杖から鉈へと変形する不思議な武器。
仮に戦闘になった場合、苦戦とは言わないが傷の一つや二つ位は付けられるだろう。
思い出せる範囲では大戦の中で私達に傷を負わせる事が出来る存在は一握りだった事から考えると、平和そうに見えるこの時代に実力者がいる事実に驚きを隠せない。

「……おや?そこにいるのは聖女様ではありませぬか?」
「聖女様?それって私の事?」
「えぇ、たまにこの首都に訪れては負傷者の傷を奇跡と見紛う程の技術で傷も残らずに治してしまう事で、冒険者達の中でその美しい見た目も相まって聖女様として敬われており姿絵が作られておるのですが、ご存知ではありませぬか?」
「いえ、全く……兄貴はその姿絵って言うの見た?」

 何故そこで私に聞く……、他にも問いかけるべき相手がいるだろう。
セスカは口調が厳しいが周囲を良く観察しているから姿絵があったら気付いているだろうし、セツナに関しては喋れなくなったとはいえ、この中で最も冷静な判断が出来る。
だがシュラに頼らないのは分かる、あいつは自分よりも弱い存在に価値を見出せない、奴に期待するのは止めた方がいい。
そして最も論外なのはレイスだが、周囲に興味を持っているように見えて実のところ誰よりも無気力で周囲に何の興味も持てない男で、奴に相談したとしてもまともな答えが返って来るのは周りに合わせた言葉位だ。
私はどうなのかというとミコトと歳が1つしか変わらない、おかげで家族の中では一番付き合いが長い為、小さい頃はお兄ちゃんと呼ばれて常にべったりとくっ付いて甘えて来ていたがいつしか兄貴と呼ぶようになったが、その後も何か不安な事があると私に頼る当たり懐かれてはいるんだと思う……、あぁ成程そういうことか。

「いや、私は見てないが……、悪い意味では無いから安心しろ」
「あ、兄貴……?」
「お前が誰かを助けた結果、ここで無用な戦闘を回避する事が出来た、そうだろう?カフス」
「えぇ、先程の聖女様の発言で皆様が家族である事が理解出来ました……武器を向けてしまい申し訳ない」
「いや、構わない……、こちら側もまぞ、いや獣人族を見て良くない感情を向けてしまったからな、問題が起きる前に対応しようとしたのだろう?」

 これに関しては全体的にこちら側に非がある。
魔族が現代で獣人族と呼ばれている事を知らずに殺意を向けてしまった、それに対応する為に責任者が出て来るのは当然だ。
今も柔らかい口調で話ながらもシュラへの警戒を解かない辺り、この中で一番危険だという事を理解しているのだろう。

(シュラ、殺意を向けるのを止めろ)
(黙れ……俺に指図をするな再び眠らせるぞ)
(黙るのはシュラちゃんの方、あなたが殺意を抑えない限り何時までも話が進まないよ?だからカフスさんに謝ろ?)
(……しょうがない、言う事を聞いてやる)

 シュラは周囲へと向けている殺意を収めると、苦虫を噛み締めたような顔をして頭を下げ……

「……悪かったな」
「なんだ、ちゃんと謝れるんじゃない……、ただ次からは誰かに指摘される前に頭を下げる事ね」
「セスカお前っ!」
「……喧嘩をするなら外でやった方がいい、僕達は冒険者になりに来たんだから周りに合わせた方がいいよ」
(シュラちゃん……、謝れて偉いね)

 こちら側に敵意が完全に無い事を理解したのか鉈がまた杖に戻る。
そして私達を見ると……

「ほぅ、冒険者になりに来たのですな?、本来なら受付で魔力の登録を行わなければならないのですが、聖女様に助けられた者が多いですしそれに優秀な治癒術師が冒険者になって頂けるのはありがたい、それに他の方達も私では太刀打ち出来ない程の実力と見受けられますからな……、特別処置となりますが私自ら登録をさせて頂くので、このままついて来てくだされ」

 言われたままについて行くと確かに、冒険者ギルドの壁にミコトに似た姿が描かれた絵が貼られているのが視界に入る。
なるほど良く特徴を捉えているが、少しばかり美化しすぎている気がするな……。
ミコトも耳まで赤くして俯いているしこれでは公開処刑もいい所だろう。

「さて、受付につきましたな……、一応冒険者登録について軽く説明をするので聞いて下され」
「あぁ、宜しく頼む」
「とりあえず説明前にこの冒険者の資格証となるカードと針を人数分渡しますぞ」

……カフスが何やら受付の上にある道具に魔力を流すと周囲の音が消え、ゆっくりと冒険者について説明を始める。
このカードに自身の血を付ける事で個人情報が本部に送られ冒険者登録が出来るらしいが、その際に能力と魔力の適正とやらについて鑑定が行われるらしい。
とりあえず言われるがままに魔力を通すと資格証に顔写真と名前が表示されその隣にEランク冒険者という文字が現れるのだった。
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