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222小噺
純白は、猫に挑戦する
しおりを挟む「シロ、今日はこれで遊びませんか?」
ましろはニコニコしながら、別室で組み立てたおもちゃを床に置く。
ラグの上でのんびりしていたシロだが、好奇心をくすぐられたらしく、起き上がってすぐに寄ってきてくれたので、好感触だと嬉しくなった。
ましろが持ってきたのは、自動で動く猫のおもちゃである。
先端に羽のついた、少し柄が短い猫じゃらしのようなものを、中心となる機械に差し込んでスイッチを入れるだけで、くるくると回って動くのだ。
カサカサと音のする素材のカバーがかけてあり、その下を獲物が動くような様が、猫の興味を引くらしい。
ましろの動きではどう頑張ってもシロにじゃれてもらうことができないので、これならば遊ばせられるのではと思い、購入したものである。
インターネット上でたまたま見かけた広告で、商品ページの動画には、激しく遊ぶ猫が映っていた。
シロがそんなふうに遊ぶところを見たい。
思いが募り、迷わず購入ボタンを押していた。
猫のおもちゃと侮るなかれ、スピードも三段階に切り替えられて、飽きさせないよう不規則な動きもできる優れものなのだ。
万感の期待を込めてスイッチを入れると、音を立てて回り出す。
生き物のように滑り出したそれを、シロは近くでじっと見ている。
やがて姿勢を低くし、お尻を振り、狙いを定める動作をし出したシロを、固唾を呑んで見守った。
シロが飛びかかる!そして……、
どかっとおもちゃの柄から中心の機械ごと、押さえ込むようにして横になってしまった。
「え……シロ、それは」
そんな、本体を押さえてしまっては……。
機械の方も、動くことができず、キュンキュンと困惑したような音を立てている。
当然、ましろとおもちゃの困惑など汲むはずもないシロは、どっかりと体を乗せたまま、毛繕いを始めてしまった。
おもちゃが獲物だとしたら、最終目的はその動きを止めることだろうと思うので、対処としては正しい。
正しいのだが……悲しい。
「シロは、頭がいいですね……」
ラグの上に膝をつきがっくりと肩を落とすましろを、後ろで一部始終を見ていた天王寺が優しく慰めてくれる。
「猫にはよくあることだ。気にするな」
「ちー様…」
手が伸びてきて、猫にするように顎を撫でられた。
皮膚の薄いところを指の腹で柔らかく擦られると、少しくすぐったい。
「はぅ……私は猫ではないです……」
「だが、気持ちがよさそうだな?」
「それは……、ちー様に触ってもらえるのは、嬉しいから…」
身をかがめた天王寺の唇が、額に触れる。
もっと他のところにもしてほしくて、強請るように目を閉じた。
こめかみ、頬、そして、唇。
「お前のことは、俺が構ってやる」
耳元で甘く囁かれると、頭が痺れるような心地がして、ぼうっとなってしまう。
膝をついて視線が近くなった天王寺が、ましろの腰を抱く。
ましろは身を委ねかけたものの、ふと不審な音に気付き、反射的に視線を向け、驚愕に目を見開いた。
「し、シロ……?」
シロが、おもちゃの先端についている羽を、食いちぎっている。
状況を掴みかねているうちに、先端は無残な有様になり果てた。
「も、……もう仕留めてしまったのですか……?」
口元に羽をつけたまま、シロは「何か?」という表情でましろを見る。
背後では、翼を失ったただの棒が、ただくるくると回っていた。
「シロ、お前な…」
「うう…今回も惨敗です…」
「うな~~~」
猫は強し。
シロが食べて喉や腸などで詰まってしまっては大変なので、甘い雰囲気は一先ずお預けにして、二人はおもちゃを片付けた……。
おしまい。
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