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しおりを挟むベッドの軋む音とぬかるんだ場所を掻き回す卑猥な音が恥ずかしくて、背後から貫かれているましろは、縋り付くようにして枕に顔を埋めた。
奥を突かれると気持ちがよくて、腰が浮いてしまう。
そんな欲深い自分が恐ろしくて反射的に前へと逃れようとする腰を、強い力で引き戻されてまた同じ場所を抉られた。
「あ……っ、あっ、もう…っ」
限界を伝えると、前に回った手が、反り返り蜜を溢す中心を扱く。
「やっ、あ!ああっ!」
脳が灼き切れそうな快感に、びくびくと全身を震わせながら開放すると、同時に密着した天王寺の体も震え、中で避妊具が膨らんだのがわかった。
「っあ………っ、……は……っ」
「っ………、大丈夫か?」
「は……はい…………んっ……」
抜け出ていく感触に身を捩れば、宥めるように背中を撫でられ、ほっと息を吐く。
激しい行為に消耗し、ぐったりと動けずにいると、優しい手が汚れた場所を清めてくれた。
天王寺は、とても優しい。
あれから、天王寺はすぐに連絡をくれて、休日にはましろを連れ出した。
自然の多い公園を散策したり、博物館で展示を見たりと楽しい一日を過ごさせてもらって、送ってきてくれた天王寺に『上がってお茶でも』とすすめたのは、せめてもの礼と、まだもう少し、夜まで一緒にいたかったからだ。
しかし、天王寺は部屋まで来ると、ましろをベッドまで連れていって、抱いた。
今日も全く同じパターンで、何故こんなことをするのかは結局聞けていない。
天王寺が相手に困っているということはないだろうし、当初考えた幼い頃不快な思いをさせた仕返し……ならば、これだけ優しくする必要はないだろう。
ならば、好意なのかと思ってもみるけれど、それに類する言葉を口にしてもらったわけでもない。
お互いに大人なので、学生のように「好きだ、付き合おう」なんてわざわざ言い合ったりしないのかもしれないが、天王寺は再会の日、とても怒っていたように見えたし、最初はずっとましろのことを拒んでいた。
突然優しくしてくれるようになったのは何故なのか……。
ましろとしては、こういうことは好きな人としかしたくないと思うが、天王寺がどうなのかはわからない。
何らかの好意はあるだろうと思うが、そうではないとはっきり言われてしまったら、ましろはやはりそういう関係を持ち続けることはできないと、天王寺を拒むだろう。
そう思うと、終わってしまうことが怖くて、卑怯にも何も聞けずにいた。
わかっている、ただの詭弁だ。
知っていて続けることと、言われないからなかったことにしているのと、何が違うのだろう。
「……俺は、そろそろ戻る」
上から降ってきた声にハッとする。
ましろがぼんやり考えごとをしているうちに、天王寺はもう身支度を終わらせたようだ。
天王寺は、行為が終わるとすぐに帰ってしまう。
それもましろの口を重くしている要因の一つだった。
好きなら少しでも一緒にいたいと思うはずではないだろうか。
背を向けられて、慌ててベッドから降りた。
「あっ……」
行為の余韻が残る足には力が入らず、かくんと膝が折れて転びそうになるのを天王寺が受け止めてくれる。
「っ……、お前は、何をしてるんだ」
「ご、ごめんなさい……」
「いや、……俺のせいだったな」
ゆっくり休めとそのままベッドへと戻されそうになり、必死に縋った。
「あの……っもう少しだけ、でいいので、一緒に…いられませんか?」
天王寺は難しい顔で考え込んでしまった。
沈黙が続き、ましろは失敗を悟る。
「す…すみません。我儘を言ってしまって」
厚かましいお願いをしてしまった。
天王寺がこうして早く帰ると言っているのは、この後用事があるからという可能性の方が高い。
こんな親に置いていかれる子供のように縋られては、迷惑だろう。
手を離すと、「ごめんなさい」ともう一度謝る。
動かない天王寺に、重ねて大丈夫だと伝えようとすると。
「……なら、うちに来るか?」
「え……っ?」
想像だにしないことを言われ、ましろは目を瞬いた。
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