上 下
16 / 103

16

しおりを挟む

 天王寺は、手と唇で丁寧にましろの身体を辿っていく。
 触れられる場所全て気持ちがよくて、するりと臍の横を撫で下ろされると「あっ」と高い声が飛び出た。
「あ……っぁ、ごめ、ごめんなさい……声、が、」
「どうして謝る」
 自分のものではないような声が出てしまうことへの羞恥と、天王寺はそんな声を聞いて気持ちが悪くないだろうかという不安と、彼に真実を告げずにこんなことをさせている罪悪感。
 複雑な気持ちが絡み合って上手く言葉にできず、ただ揺れる瞳で見つめれば、天王寺はそっとましろの唇をなぞった。

「もっと……お前の声を聞かせてくれ」

 何かを堪えるような低い声と、熱を孕んだ瞳にどきりと胸が波打つ。
 ましろの答えを待たず、天王寺は再び身をかがめると、愛撫を再開した。
「っ……あ、」
 熱い手が内腿を撫で上げ、きわどい場所をぞろりと擦る。
 動揺して反射的に視線を落としたましろは、勃ちあがり先端から蜜を零して震える己自身が天王寺の口の中に消えていく瞬間を見てしまった。
「や、~~~っ」
 熱い口内に導かれ、あまりの刺激に声を失う。
 ぬるぬると舌で扱かれると、突き上げるように腰が跳ねた。

「ァ……っ!あ、だめ、っあ、あっ!………っ………」

 強すぎる刺激に訳が分からなくなり、びくんと仰け反る。
 急激な絶頂にぐったりしながら息を整えていたましろは、天王寺の口の中に出してしまったことに思い至り、慌てた。
「っあ……っ、ご、ごめ……なさ、」
 力ない謝罪に天王寺からの返事はなく、代わりに肩を引かれ、うつ伏せにされる。
 腹の下に枕を押し込まれて、背後の天王寺に恥ずかしいところを晒すような格好に顔が熱くなった。
 見ないで欲しいと思うのに、視線を感じる。
 再会した日は、外は夜で部屋も暗かったのでこんな風に見られることはなかったが、暗くなりつつあるとはいえ、まだ太陽はその姿を隠しきっていない。
 視線から逃れたくて腰を引くと、逃がさないと言うように双丘を強く掴まれ、割り広げられた。

「え、そんな、ところ……っ」

 息がかかったと思うと、ぬるりと舐め上げられて、驚く。
 閉ざされた場所をこじ開けるように、硬くした舌に抉られて、そこがひくりと震えたのがわかった。
「だめ、です……っ、そんな、汚い……っあ、あっ」
 どうしてこんなことまで、とましろは困惑する。
 好きな人ならばともかく、厚意でこんなことまでできるのだろうか。
 ましろはこうしたことに疎く未熟な自覚もあるため、遠慮して止めるべきなのか、喜んで受け入れるべきなのかを測りかねて、ただされるがまま、与えられる刺激に震える身体を差し出すことしかできなかった。

 やがて、たっぷりと濡らされたそこに指が差し込まれる。
 強く感じた異物感はしかし、慎重に中を探られることで妖しいものに変化していく。
 ある一点を擦られると、大きく腰が揺れた。
「な、に……っ、そこ、こするの、…っあぁっ!や、びくって、なっ……」
 何かが漏れてしまいそうで、不安になる。
 強く反応してしまう場所にそれ以上触れられるのが怖くて身をくねらせると、腹の下の枕に勃ち上がったものが擦れて、感じているものが快楽だと知った。

「ましろ」

 欲望をにじませた声を後ろから吹き込まれて、どきりと鼓動が鳴る。
 ひたりと後ろにあてがわれた熱いもの。
 ぬるぬると狭間に擦りつけてから、それはましろの中に潜り込んできた。
「あ、あっ……!」
 押し込まれると、痛みと圧迫感で声かでる。
 辛くても、嫌ではなかった。
 自覚したばかりの天王寺への想いが、全てを気持ちよさに変えていく。
 それでも、天王寺の意に添わぬことをさせてしまっているという罪悪感は拭えない。
 せめて、天王寺にもたくさん気持ちよくなってほしかった。

「もっと、して、くださ……っ」

 ましろには経験もなく欲求もなかったので、どうすれば喜んでもらえるのかわからない。
 少しでも天王寺の思うようにしてほしくて、拙く腰を振った。
 すると腰を掴む手に力がこもり、痛いくらいになる。
 抽挿が激しくなり、切れ切れの高い声をあげながら、熱さに身を委ねた。
「ちー様……っ」
 攫われそうで切なく呼ぶと、縋るようにシーツを掴む手を、背後から伸びてきた手が握ってくれる。
「あぁっ、あ、や、もう、あっ、あん、あ………っ」

 ひときわ奥を穿たれたかと思うと唐突に引き抜かれ、背中に熱いものがかかった衝撃で、ましろも達していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...