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さらにその後のいじわる社長と愛されバンビ
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しおりを挟む優しい手が頭を撫でる。
気持ちがいい。
もっとして欲しくて、甘えるようにその手に顔を擦り寄せた。
「…万里」
名前を呼ばれたことでわずかに覚醒し、ぼんやりと返事をする。
「ぅん……?」
「起こして悪い。俺は会社に行ってくるから、腹減ったら適当にキッチンを漁ってくれ」
「…ぇ…、って、朝!?」
はっとして、飛び起きた。
寝ぼけて普段しないような甘ったれた仕草をしていた気がして、にわかに慌てる。
「い、今のは、寝ぼけてただけで」
「そんなかわいいお前と一緒にいられないのは残念だが、今日はちょっと顔を出さないといけなくてな」
いい子にしてろよ、と額にキスを落とすと、久世は怪我をしたなんて夢だったかと思うようなパリッとしたスーツ姿を翻し、颯爽と出掛けていった。
化け物か。撃たれたのに元気すぎるだろ。
あと起き抜けに恥ずかしいことすな!
一人残された万里は、再び広いベッドへと沈み、羞恥に悶えつつ久世への文句を呟いた。
こちらは秘密結社潜入と廃工場拉致事件と、そして久世に弄ばれたせいで眠った気がしないくらいに疲労困憊だというのに、通常営業すぎる。
眠気はなくなったものの起き上がる気力をなくして、布団の中でしばしうだうだしていたが、やがて空腹に耐えきれずベッドから出た。
昨日着ていたやや埃っぽい服を身につけてからキッチンに行くと、冷凍庫を漁る。
ナントカいう有名なシェフのレシピらしい冷凍ドリアを平らげると人心地ついて、今更ながらに今日は平日で、講義があるということを思い出した。
『SILENT BLUE』や久世と関わるようになってから、それまでの日常の存在が万里の中で薄くなってしまっていて、忘れがちなのは困ったものだ。
スマホを確認すると、案の定友人から連絡が入っている。
午後からは行くと返信をしようとした矢先、神導から電話かかってきた。
『おはよう、昨日は大変だったね』
「お、おはようございます。昨夜は、迎えの人を送っていただいて、ありがとうございました」
そんなの当然でしょ、と電話の向こうで笑う神導に、申し訳なさが込み上げてくる。
「…あの、昨日のことは、なんというか…」
どんな風に言えばいいか、言葉に詰まった。
久世が怪我してごめんなさい、というのも違う気がする。
悩んでいると、神導は気にした様子もなく話を続けた。
『あまり思い出したくないかもしれないけど、一応、わかったことを説明しておくね。あの男達は、『暗黒の夜明け団』の入団志望だったんだけど、九鬼紅蓮に言わせると『我が主が相応しくないと判断した』って事で入団できなかったから、例のビルから出てくる団員を狩って強引にバッジを手に入れようとしてたんだって』
「九鬼…さん?は知らないって言ってましたけど」
『いちいち覚えてないんじゃないの?我が主とティータイムのこと以外どうでもいいんでしょ』
ひどい言い草だが、本当にそんな気がして、フォローの言葉は浮かんでこなかった。
『真面目すぎて拗らせただけの狂信者みたいで、組織だっての犯行とかではなかったみたい。ま、とにかく無事でよかったよ。それより九鬼紅蓮なんかと話したら頭痛がしたでしょ。なんか慰労の差し入れとかいる?』
「い、いえ。大丈夫です。確かに変わった人でしたけど、特に嫌なことを言われたとかでもないですし」
『嘘。僕なら一ヶ月くらい休みが必要だよ。でも、そんなに気にならないなら、今度僕のかわりに商談に行ってもらおうかな…』
「そ、それは、ちょっと…」
神導の代わりなど務まるわけがない。
『出張キャストでもいいよ。あいつほんと週一くらいでお茶のお誘いがあるから鬱陶しくて』
やっぱり拒否られてたんだ、導師様……。
またあの謎の非現実的な空間や事象を見ると正気度が下がるので、できればもう関わり合いになりたくないのだが、仕事であれば断れない。
否、断っても神導は怒ったりしないだろうが、自分自身、彼の役に立ちたい気持ちもある。
万里が苦渋の決断する直前、神導は冗談だよと笑った。
『うちの大事なスタッフを、人身御供にしたりしないよ』
「オーナー……。でももし、本当に必要な時は、言ってください」
『うんうん、万里はいい子だね』
相変わらずの子供扱いだ。
釈然としないものはあるが、それで頼みたかったことを思い出した。
「あ、あの、慰労とかとは関係ないんですけど、一つオーナーにお願いが」
『うん、何?』
「近いうちに、『SHAKE THE FAKE』に行ってみたくて。研修とかで行けるようにしてもらえませんか?」
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