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しおりを挟む「自分でも何が欲しいかなんてわかってなかったしな。そこまで言われたら、本当かどうか確かめてみたくなるだろ。結局、月華の言ってたことは正しかったんだが」
神導は久世が手掛けた仕事を調べ、この男の企業再生の手腕を見抜いていたらしい。
ファンドマネージャーとして意見を求められながら、
『この店だけど、このまま使いたいからちょっと手入れしといて』
などと仕事を振られているうちに、神導と仕事をするのが楽しくなってしまったのだという。
社員の育成を疎かにしないところでも、二人は気が合った。
「……そんなわけで、気付いたら、復讐はどうでもよくなってたってわけだ」
「そう……なんだ」
昨日の話とはつまり、『何で今の仕事してるの?』に対する詳細だった。
『惚れた』が人としてだったとしても彼にとって神導はやはり大切な存在で、そこに並べないことはとても悔しいが、今はこの話を聞けただけで十分だ。
……十分なのだが。
「き の う、それを言えばよかっただろ……!」
カッと怒りの形相になった万里は、ぎゅうと久世の耳を引っ張った。
「いてて、こら、乱暴するなよ」
「昨日ちゃんと話してくれてたら…」
あんなに悲しい夜はなかったのに。
わかりにくいのだ、この男の本気は。
「誰が聞いてるかもわからない場所で話すことじゃないだろ」
怒る万里に対し、久世は憎たらしいくらいしれっとしている。
「俺とバンビちゃんの二人だけの秘密だから、誰にも言うんじゃないぞ」
更に意味深に耳打ちされて、むすっと黙り込んだ。
そうは言ってもどうせ神導も野木も知っているのだろう。
久世はずるい。
一応言っておくが、顔が赤いのは、怒っているからだ。
断じて、顔が近かったとか、吐息が耳に触れたからとかではない。
しばらく久世の悪い男ぶりにぷりぷりしていた万里だが、とても大切なことを思い出した。
「なあ、今、何時?」
何しろ寝起きを強引に攫われてきたので、スマホがない。
久世は素早く傍らに置いてあった自分のスマホを手に取り、確認した。
「十四時二十一分。どうした、やっぱり何か予定があったか?」
現実を知り、万里は力なく首を振った。
「朝メシも昼メシも食べ損ねたなって……」
腹が減っていたことを思い出すと、力まで抜けていく気がする。
消沈した様子の万里を見てしばし沈黙していた久世は、ぶはっと噴き出した。
「それは……悪かったな。今からでよければ何か作るから、少し待ってろ」
大変ありがたい申し出だが、ベッドから降りた久世は全裸で、万里は叫びそうになるのを堪えながら目を逸らす。
「あの、て、てつだう?」
「いや、いい。元気そうなら、シャワーでも浴びてこい。そうだ、お前の着てきたのじゃ寒いんじゃないか。何か着替えるもの…」
「まず自分の着替えを探してほしいんですけど!?」
しかも寒そうな格好なのはあんたのせいだろ!
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