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 伸ばした手を掬った久世が、指に口付けを落とす。
 そんな些細なことにも感じてぴくんと反応を返してしまうと、更にちゅっと指先を吸われてあっと声が飛び出た。
「やめ、」
「お前は、本当にかわいい」
「~~~~~~」
 そんな感想は黙っておいてほしい。
 かわいいなんて言われるのは嫌なはずなのに、久世が自分のどこかに好感を抱いている、というのは……嬉しいかもしれないなどと思ってしまうのだ。
 そんなことは、恥ずかしいから絶対に秘密だけれど。

 己の思考に悶えていると、腰から枕を抜かれ、脚を抱えられる。
 押し付けられた感触に、思わず滲んだ視界で久世を見上げた。
「力、抜いてろよ」
 ローションでどろどろになっている場所を大きなものでぐっと拓かれて、目を瞠る。
 無理、と言いそうになったのを唇を噛むことで堪えた。
 痛いのは嫌だが、やめられるのはもっと嫌だ。

「っ……力抜いてろって言ったろ」
 痛かったのは中途半端な場所で締め付けられた久世も同じだったらしい。
 言いたいことはわかるのだが、この状態でリラックスするのはちょっと無理だと思う。
 浅い息を繰り返しながらどうにもできずにいると、挿入の衝撃で萎えてしまった万里のものへと手が伸びた。
「あ、…っ」
 敏感な先端をやわやわと揉まれ、そっと扱かれると腰が浮いてしまう。
 そうして気を逸らした隙に、じわりと久世のものを埋め込まれて。
 しばらくそれを続けていくと、肌と肌が触れ合う感触がして、全てを呑み込んだことを知った。

「あ……っ」
「平気……そうじゃないな。生きてるか?」
 冗談めかした言葉よりは気遣わしげに、久世の長い指が涙を拭った。
 内臓を無理やり押し広げられているようなもので、苦しい上に痛いというよりも熱くて、火傷でもしているのではないかと錯覚して、怖くなる。
 それでも。

「へいき、じゃ…ないけど…、いやじゃ…ないから、腹立つ…!」

 途切れ途切れに正直な気持ちを口にすると、一瞬言葉を失った久世が、ぶはっと吹き出した。
「こんなときに笑わせるなよ、万里」
 可笑しげに細められた目。
 からかわれて腹が立っても、そんな顔をされると弱かった。
 久世のこんな顔をもっと見たい。

「あ……!や、あ、」

 質量のあるものが狭い場所をずるりと移動する。
 何度か行き来するうちに、先ほど指で感じさせられた場所を意識するようになり、瞬く間に苦痛を快楽が凌駕した。
 それは久世にも伝わったのだろう。
「は…すごいな。少しは、よくなってきたか?」
 穿つ腰の動きに少し遠慮がなくなる。
 抜けてしまいそうなくらい腰を引かれた後、ぐいっと強く押し込まれると、ぐちゅんと卑猥な音がたって頭が痺れてしまう。
 万里が大きく反応する場所を久世はもう覚えていて、そこを何度も擦られて万里は泣き声を上げた。

「わか、らな…っ、や、っだ、それ」
「これか?」
「あぁっ!」

 嫌だと言ったのに、何故それをするのか。
 久世はいつも意地悪だ。

「やだ、って…言っ……あ!や、おく……っ、そんなにしたら、」
 深く入り込んで奥をぐいぐいと抉られるとまた違う快楽が噴き出して、万里は嫌々をするように首を振った。
「っ……気持ちいいって、言っても笑わないぞ?」
 息を乱した久世が唆してくる。
「そ…いうこと、言う、な」
「奥を『そんなにしたら』どうなるのか…、教えてくれないか、万里」
 低い囁きにゾクリと背筋が慄く。
「あ、あっ!」
 強く突き込まれて爪先がぴんと伸びた。
 気持ちがいい。

「や、あ、も……っ、」
「限界か?」
「んっ…」
 苦しい息の下、必死に頷いて訴える。
「俺も、そろそろ限界…」
 久世に何度か強く突き上げられて、万里は声もなくただ身を任せるしかなく。

「…………………っ!」

 万里が己の腹の上に白濁を吐き出すと。
 密着した体が震えて奥が濡らされるのを感じ、何故か満ち足りた気分になって万里はほっと息を吐いた。
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