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しおりを挟む「み、御薙さん……?」
「昼間にあれだけはっきり告白したのに、さらっとベッドに潜り込んできたら、期待しちまうだろ」
「そ、それは、ソファで寝るって言ったら気を遣わせてしまいそうだと思ったので」
「そういうとこは気が回るのにな…」
残念なものを見る目で見られても、何も言い返せない。
冬耶だって、(昼間の続きをするのだろうか)と考えなかったわけではないけれど、今更それを主張したところで、無駄に恥ずかしい思いをするだけだ。
困って見上げると、御薙は口元を緩めた。
「この期に及んで、そんなつもりじゃなかった、は通用しねえぞ」
低く囁かれて、冬耶は身の危険を感じて慌てる。
「あっ、ででででも、やっぱり目の前でがっかりされると、この後男に戻れるかわからないくらいダメージを受けそうなので、…っ!?」
言葉の途中で、下腹部にぐっと固いものが押し付けられ、目を見開いた。
布越しでも熱を感じるそれが何なのかなど、確認するまでもない。
いや、しかし、何故?まだなにもしていないのに…。
冬耶の困惑が伝わったのだろう、御薙は口角を上げた。
「あのあと、出先でも親父の後ろに控えながらずっと、夜はどうやってお前をベッドに連れ込もうか考えてたからな」
「ええ…」
恐らく誇張しているだろうが、組のナンバーツーがそれでいいのだろうか。
薄暗い部屋の中、光の加減でやけに悪そうに見える御薙は、更に冬耶を追い詰めていく。
「お前の体見て俺がやる気なくしたらショック受けるくらいには俺のこと好きなんだろ。観念しろ」
「そ、……、」
うっかり本当の気持ちが漏れていたことに気付き、冬耶は真っ赤になった。
真実なので、違いますとも言えない。
開き直って「ずっと好きでした」と伝えるべきなのだろうか。
本当の『冬耶』のことも、話して…。
言うべきかぐずぐず迷っていると、焦れた御薙の顔が近付いてきて、唇を塞がれた。
「んっ…、……は、っ……、」
驚いて硬直しても、すぐに好きな人と触れ合いたいという本能が勝り、弛緩する。
キスをして、粘膜同士が触れ合うこと、吐息が、体温が混ざり合うことが気持ちが良くて、頭がぼうっとしてしまう。
だが、スウェットをずるりとたくし上げられた時、ハッと我に返った。
「っぁ、わわ…っ」
止めようと力の抜けた手を伸ばしても、難なく脱がされてしまう。
「ちょ、ちょっと、待っ……」
「なんか、そんな風に抵抗されるの新鮮だな」
「こんなことで鮮度を実感しないでいいですから…っ」
「嫌じゃなければ抵抗してていいぞ」
「い、意味が…あっ!」
既に反応している場所を下着の上から掌で確かめられて、声が出てしまった。
「お前も、興奮してんだな」
それを知られるのは、どういうわけか、体が女の時よりも恥ずかしい。
ズボンごと下着を下げられて、形を変えつつあるものに、大きな手が絡みつく。
「ゃ、あっ!そ、そこ触っちゃ、ん、んんっ…」
既に滲んでいた先走りを広げるように、ゆるりと擦られただけでびくんとのけぞった。
性別が変化する前は、生理現象として時折処理する程度にしか自慰をしたことはない。
他人の、しかも好きな人の手淫という刺激の強さに身を委ねてしまいそうになった時、その表情を覗き込む御薙の視線に気づいて、両手で顔を隠した。
「は、っあっ、…や、そんな、見たら…だ、だめ」
しかし御薙はもう片方の手で冬耶の両手首を頭上でひとまとめにしてしまう。
「お前も見ろよ」
「や、」
「お前の体を触って、俺が興奮してるのを、ちゃんと確認しておけ」
恥ずかしくて、目を開けたくないのに、御薙の言葉に逆らえない。
御薙と視線がぶつかる。
そこには確かに強い欲望が滲んでいた。
御薙が、…好きな人が、自分を…冬耶を欲しがっている。
「…ぁ…、ゃ、っ…だめ、」
ぞくんと腰が震えて、全身が強張る。
「ひ、あっ、あぁっ…!」
視線に灼かれながら、冬耶は御薙の手の中に欲望を放った。
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