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しおりを挟む「……本当に、いいのか?」
真剣な表情で問われて、冬耶は羞恥に目をぎゅっと瞑り、こくこくと何度も頷いた。
「…だ、大丈夫なので、そのまま、……、」
むしろ、ベッドの上で全裸で足を開き今まさに男を受け入れようとしている、こんな体勢をじっと見下ろされているほうが大丈夫ではない。
こうして聞いてくれるのが彼の優しさだとわかっていても、いたたまれなかった。
男でいれば安全かもしれないという御薙の提案を冬耶が了承したため、善(?)は急げということで、早速取り掛かる(?)ことになった。
「わ、私の部屋で、いいですか…?」
聞くと、御薙はすっと表情を改める。
「……いいのか?」
「そ、そうですね。ここではちょっとなんですし…」
「あ、いや、そういう意味じゃなくてだな」
「あっ…、シーツは取り替えたばっかりなので大丈夫です!」
・・・・・・・・・。
生温かい沈黙で、御薙がそんなことを気にしたのではないことがわかった。
なんだろう。もしかしたら彼は、ここが晴十郎の家だというのを気にしているのかもしれない。
確かに冬耶も家主に少し申し訳ない気持ちはあるが、晴十郎本人は特に気にしない気もする。
ともあれ、家主への遠慮や冬耶の頓珍漢な発言くらいでは、御薙のやる気は損なわれなかったようだ。
ぎくしゃくと御薙を二階へ誘い、ドアを閉めたら抱き寄せられて、あれよという間にこんなことになっている。
「んっ……、」
指で慣らされ、たっぷりと濡れたそこに、太い先端が入り込んでくる。
「っ…、こんな濡れてんのに、きついな」
「ぅ……、」
拡張の圧迫感よりも、触れ合う場所が熱くて、冬耶は眉を寄せた。
苦痛を感じているように見えたのだろう、御薙は動きを止める。
「痛いか?」
「だ、大丈…、あっ!?ゃ、そ、そこは」
気にしないで欲しいと伝える途中で、親指で包皮をめくるように小さな粒をぎゅっと押されて、強い刺激に体が跳ねた。
「こっちも一緒にすれば、少しはいいだろ」
「っぁ、んっ…、だ、大丈夫、って…、あっ、それだめ……っ」
「大丈夫なんじゃなかったのか?」
「ぅう、…」
なんだか、意地悪をされている気がする。
御薙はいつもは優しいのに、こういう時少し意地悪になるような…。
からかわないでほしいと抗議の眼差しで見上げると、軽く息を乱した御薙は、困ったように笑った。
「そんな顔するなよ。優しくできなくなる」
額にキスをされて、抗議したはずなのにどうしてそうなるのかと目を瞬かせた。
瞬きでこぼれた涙を拭ってくれた指は、言葉に反して甘くて優しい。
「大丈夫そうなら、もう少し奥まで入れるぞ」
「ん…、」
解せないながらも先を続けることに異論はなく頷くと、大きなものがずるりと身体の中を移動する。
今はまだ、我を忘れるほどの快楽はなく。
リアルな体感が慣れなくて、思わず御薙に縋りつきそうになる。
だが、上げかけた腕ははたりと落ちて、指先は力なくシーツを搔いた。
冬耶自身が肝心なところをあやふやにしたまま彼と抱き合っているから、自分から求めることには躊躇いがある。
御薙は真冬が男でもいいと言ってくれたけれど、実際にその時になったら、やっぱりその気になれないなんてことはあるかもしれないから。
卑怯かもしれないが、今はまだ、自分にも御薙にも逃げ道を作っておきたかった。
やがて抽挿が始まり、動きが激しくなると、快楽が押し寄せてきて声が止まらなくなる。
こうなると羞恥も少し遠ざかり、冬耶は我知らず快感を追いかけて腰を揺らした。
「あっ、あっ、ゃあ、っ、」
「っ…、お前ん中、よすぎて、あんま持たねえ」
「は、っぁ、い…、です、から、このまま、……っ」
言った途端、抱き込むようにされて、強く腰を打ち付けられた。
「あ!あっ!っゃ、つぶれちゃ……っ!」
恐いくらい奥まで入り込んだ御薙が震え、弾ける。
熱い。
言いようのない熱が、体中を巡る。
熱い飲み物をごくんと飲み込んでしまった時のように、腹が熱くて、…熱い。
陽気って、こういうことかとどこか遠くで考えながら、冬耶は意識を失っていた。
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