TSですが、ワンナイトした極道が責任をとるとか言いだして困っています

イワキヒロチカ

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「お、おい、……あー……、まったく、お前は」

 御薙は突然のことに困惑していた様子だったが、冬耶の決意が固いのを見て取って、諦めたように笑った。
 無理はしなくていいからなとの言葉に頷いて、緊張しながらベルトを外す。

 『JULIET』で働き始めた頃、そもそも風俗店に来る男性の気持ちがよくわからないという話を国広にしたら、「特にわかる必要はないが、自分たちがどんなことを求められているのかは知っておけ」と風俗店が舞台の漫画などを貸してくれた。
 中にはアダルトコミックも混ざっていて、女性に貸与するものかなあとその時は思ったが、冬耶が本当は女性ではないことを元々知っていたのだったら、それも納得できる。
 無論、接客中にアダルトコミックのようなサービスを提供しろということではなく、その先にそういう展開があると期待させることがリピートしてもらうためのコツだということだ。
 結局、営業の苦手な冬耶はそれをあまり上手く活用することはできなかったが、今こそあの知識を役立てる時…、かもしれない…?

 前をくつろげて、まだ反応していないものを取り出そうと冬耶の指先が触れた瞬間、それはひくっと震えた。
 もっとそんな反応を見たくなり、持ち上げ、両手で包み込む。
 羞恥心を好奇心が凌駕して、顔を近づけると、ちろ、と軸を舐めてみた。
 頭上で息を呑む気配。
 手の中のものの質量が増したため、冬耶は更に張り切った。

 国広から借りたアダルトコミックを読んでいる時。
 これまで勉強ばかりで、あまりアダルトコンテンツには触れずに来てしまったため、最初はドキドキしたが、それが性衝動に結びつくことはなかった。
 淡白なのは、元々の嗜好のせい、あるいは性別が入れ替わってしまうような特異体質だからかもしれないと勝手に納得していたけれど、どうやら好きな人が相手でないとスイッチが入らないものだったようだ。
 御薙に対しては、触れたいとか、気持ちよくなって欲しいとか、そういう気持ちが自然に湧き上がってくる。
 もっとも今は、彼が好きでいてくれているのに、そして自分も好きなのに、同じ気持ちを返すことが出来ないもどかしさや申し訳なさも混じっているかもしれないけれど。

「んっ…」
 舐めているだけでは物足りなくなって、先端を咥えてみる。
 少しくらいは抵抗があるかと思ったが、興奮しているせいか、先に滲む蜜も甘く感じた。
 量感のある亀頭を舌の上で転がすように舐める。
 これで、ちゃんと気持ちよくできているだろうか。
 表情を確認しようと、咥えたまま御薙を見上げた。
「っ…、だから、お前は、挑発するなって」
「んぅ……!?」
 何故か脈打ちぐっと質量を増したものに口内を圧迫されて困惑する。
 よくはわからないが、気持ちよくなってくれてはいるようだ。

 もっと、と育ったものを奥まで頬張ったら目測を誤り、むせてしまった。
 思わず口から離して咳き込むと、「無理すんな」と気遣われてしまう。
「だ、大丈夫です」
「無理して全部咥えなくていいから、手ェ使え」
 なるほど、と、教えられた通り咥えきれない部分は手を添えて、不器用ながらも動かしてみた。
「っ……、お前は覚えがいいな」
 頭を撫でながら褒められると、子供のように嬉しくなってしまう。

「ン、…っ、ずっとしていてもらいてえが、お前が可愛すぎてそろそろ限界だ」
 は、と荒い息を吐きだす御薙に、頷く。
 このまま最後まで、気持ちよくなってほしい。
 手の動きを早めて、強く吸い上げる。
「っあ、こら、待てって、……っ」
「んんっ……!?」
 ドクンと震えた先端から、口内に熱いものが放たれる。
 熱さに驚きながら、粘りつくものをなんとか飲み込んだ。
「……んっ……」
「悪い、口の中に……って、飲んじまったのか?出してもよかったのに」
 不味かっただろと心配されて、平気だと笑おうとした時だった。

 ドン、と内側から突き上げるように心臓が鳴った。

「っ……!?」

 咄嗟に胸を押さえ、ラグの上についたもう片方の手で身体を支える。
 身体が熱くなり、次いで言いようのない不快な痛みが全身に走った。
「……真冬……!?」
 きんと耳鳴りがして、彼が名前を呼ぶ声が遠く聞こえる。

「(なに……これ、もしかして、)」

 やばい、と思った瞬間、冬耶は苦痛に耐えかね意識を失った。










 冬耶は、いつかのように具合の悪さで目覚めた。
 何故こんなに具合が悪いのか。
 現状を把握しようと、体の節々の痛みや気分の悪さを堪えて、何とか体を起こす。
 すると、かけられていたブランケットが滑り落ちたことに気づき、拾おうとして目に入った己の姿に猛烈な違和感を覚える。
 ミニ丈のドレスからのぞく骨ばった足。膨らみの消失している胸元。
 わざわざ下着の中を確かめるまでもない。

 冬耶の体は、男に戻っていた。
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