28 / 85
28
しおりを挟む軽く触れた唇が離れた後で、ようやく己の身に何が起こったのか認識して、冬耶はとても動揺した。
(って……キス……!?いや今更なのか既にもっとすごいことを色々してしまっているような気もするけれどこれは好き同士がすることではああでも彼の言うことを鵜呑みにするならば事実上は両想いなわけでだからといって流されるわけにはいかないのにもう本当にどんな気持ちでいればいいのか混乱してきた……!)
「い、いい今の」
真っ赤になってあわわと慌てながら御薙を見ると、相手もなんだかはっとしたように口元を押さえて。
「わる、……」
謎の言葉の後が続かない。
気になった冬耶は刹那慌てていたのを忘れ、小首を傾げて聞き返した。
「わる?」
「……いや、これは謝らねえ。今のは不可抗力っつーか、突然可愛いこと言うお前が悪い」
そんな。
うっかりキスされるほどのことを言ったつもりもなくて、謎の理屈に戸惑う。
更に、不意にのぞかせた子供っぽい表情をかわいいと思ってしまって、つい口元をむずむずさせると、ばつの悪そうな顔になった御薙に腕を掴まれ、ソファに押し倒された。
この展開は予想していなくて、驚いて覆いかぶさる男を見上げる。
光の加減で、一瞬怒っているように見えたが、そうではないようだった。
「…ここで笑うとか、お前は突然無防備すぎるんだよ。それとも意識してやってんのか?」
欲望を堪えるような眼差し。
自分はどんな表情をしていたのか、そんなつもりはないと首を横に振った。
一体どこがスイッチだったのかわからない。
けれど、気持ちのこもった視線をぶつけられると、どうしても心がわきたつようになって、それを受け止めるので精いっぱいになってしまう。
うっかりそのまま身を委ねそうになり、すんでのところではっと正気に戻った。
今夜は「秘策」がないのだ。
いや、決して国広を信じているわけではないけれど、…そう、この後五十鈴との約束もあるから、あまりハードなプレイは避けたいとかそういう意味で。(自分に言い聞かせるように)
なんとか断らなくては。
理性はそう警告しているが、本能の方はもう少し好きな人にくっついていたいと抵抗を続けている。
全てに折り合いをつける解決案はないものかとごく短い時間に知恵を絞ってでてきた答えは。
「あっ、あの…、今日は、私がします……!」
「は?」
「その…、く、口で」
現時点で最もトリガーと思われている行為を避けつつ、接待的な行為であり、彼も恐らく嬉しいのでは?という一石二鳥の案である。
名案と思ったが、唐突すぎたのか御薙の目は点になっていて、少し不安になってきた。
上手くできるかどうかわからないけれど、どうすると気持ちいいのかは女性よりはわかる、と思うのだが。
「えっと…、い、嫌…ですか?」
「いいか嫌かで聞かれたら、そりゃ、いいって答えるけどよ…」
そもそも好きではない行為かもしれないと心配になったが、嫌がられてはいないようでほっとする。
ならばと、冬耶は彼の腕をすり抜け、足元へ跪いた。
1
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる