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 そのままソファに押し倒し、シャツのボタンをはずしていく。
 ちびはおろおろと目をさ迷わせ、心もとなさげにはだけられたシャツの袖を握り締める。
「あっ……お、おれ、シャワー」
「さっき一緒に風呂入っただろ」
 はっと起き上がりかけたちびを苦笑しながら止めた。
「そ、そうでした……」
 大人しく再び横になった体は、緊張しているのかやけに強張っている。
「嫌か?無理はしなくていいぞ」
 気持ちでは望んでいても、疲れているとか、気分じゃないとか、そういうこともあるだろう。
 そこは正直に言って欲しいところだが、ちびは「違う」とぷるぷる首を振った。

「……その、途中で欲しくなっちゃったらどうしようって……」

「それはそれでいいだろ。俺の方は、やることかわんねえし」
「でも、いつもなんだかわからなくなっちゃって、おればっかり気持ちよくて……征一郎は楽しくないんじゃないかって心配で……」
 今までそんなことを思ったことは一度もない。
 安心させるように頭を撫でてやる。

「お前は、させてやってるくらいの気持ちでいればいいんだよ」

 身を倒し、まだ不安がこぼれてきそうな唇を塞いだ。
 唇を舐め、啄みながら、手触りのいい肌に手を滑らすと、ちびは猫のように目を細める。
「あ……征一郎の手、気持ちいい」
 素直な感想に、もっと気持ちよくしてやりたくなって、薄い胸へと顔をずらした。
「舐められんのはどうだ?」
「あっ、…し、舌もすき…っ」
 弄るのが怖いような小さな粒を舌先で転がしながら、太腿を撫で上げ中心へと触れる。
「こっちは?」
「あ……!すき、あっ、き、きもちい…っ、あっあっ!」
 何度か優しく扱いただけで刺激に弱いちびはびくっと腰を突き上げ、手に熱いものがかかった。

「は……っ、」
 手を拭き、息が整うのを少し待ってやっていると、ちびはすぐにもそもそと起き上がり、征一郎のズボンのウエストに手をかけた。
「せいいちろ……おれも」
「ほしくなっちまったか?」
「したいの……だめ?」 
 好きなようにしていいと言いかけたが、違うなと思い言い直す。
「してくれ」

 そうして少しずつ、征一郎も望んでいるのだということを教えていこう。

「ん……っ、う、っ」
 今日の口淫は、空腹に耐えきれずするときと様子が違っていた。
 上手く喉奥まで呑み込めず、頭を上下する動きもぎこちない。
 これはこれで一生懸命な感じが胸を打つのだが、苦しそうなのは気になる。
 大変なばかりなのはよくないなと手を伸ばし、後ろを探った。
「あっ、だ、め、」
 いつもは慣らしも必要なく征一郎のものを受け入れてしまうそこは、指一本を拒むように固く閉ざしている。
 ホムンクルスというのは、空腹時と通常時では随分と様子が異なるようだ。
 恐らくどちらもちびの本当の姿で、どちらの方がいいとかそういうのはないが、今は繋がるために手間をかけられることを、嬉しく思った。

「ちび、俺もしていいか?」
「え……、あっ」
 ちびが顔を上げたタイミングで、征一郎は素早く場所を移動して背後に回った。
 まだ細い体にまとわりついているワイシャツの裾をめくり上げ、あらわになった狭間を両手で割り開く。
 舌を伸ばすと、ちびは慌てて振り返った。
「う、そ……、あっ、やぁ……!」
 自分が同性のしかも少年相手にこんなことをするなど想像したこともなかったが、ちびとの行為で嫌悪感や抵抗感を覚えたことは一度もない。
 不思議な感慨を抱きながら舌を強く閃かせると、ちびは息を飲んでアームに沈んだ。
「せ、征一郎……っそ、そんなこと、しちゃ、」
「嫌か?」
「や、じゃない、けど…っ、だめぇ…!」
「嫌じゃなきゃさせてくれ。お前のこと、全部可愛がってやりたい」
 素直に伝えると、全身真っ赤になったちびから蚊の鳴くような「うん……」という許可が聞こえ、征一郎は愛しさに笑みを深くした。
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