74 / 104
69
しおりを挟む■都内某所 征一郎宅
そのまま船神組事務所まで車を返しに行ってくれるという真人に礼を言い、地下駐車場に降り立った。
ちびを抱えたままエレベーターで十三階に上り、玄関の扉が閉めると、ようやく二人きりだとほっとする。
ちびがホムンクルスだということは誰も知らない。(月華あたりは芳秀から聞いているかもしれないが)
征一郎の頭がおかしいとかいわれるくらいならいいが、芳秀謹製のホムンクルスとして興味を持たれるのは困る。
絡まれるネタを作らないため、二人きりになるまでちびに現在の体調を問うことはできないかったのだ。
寝室に直行し、ぐったりとした身体をベッドに寝かせると、置いていかれると思ったのか。小さな手が懸命に縋ってくる。
「服脱ぐだけだ。どこにも行かねえから、ちょっと離してくれ」
優しく諭してやると、ちびが恐る恐る手を離した。
それでも焦点の合わない瞳が、心細そうに見上げてくる。
手早く服を脱ぎ捨てるとすぐに寝台に上がって、覆いかぶさり唇を重ねた。
差し入れた舌にちゅうっと強く吸い付かれて、ゾクリとする。
コクンと小さく喉を鳴らし、二人分の唾液を飲み込んだちびの顔には、少し血の気が戻ったような気がした。
もしかして、精液以外の体液も代替になるのだろうか。
欲しがり吸い付いてくる舌に、いっそう応えた。
弱った小さな体にのし掛かる罪悪感と背徳感。
まとわりついていただけの衣服を剥ぎ取り、もう一度怪我がないかどうかを確認する。
拘束の痕などがないのは、ちびが暴れなかったからだろう。
「奴等に捕まったときから、具合が悪くなってたか?」
問いかけると、反応は薄かったがちびは首を横に振った。
「あの部屋で……からだ……触られてから……」
急激に体調が悪化するほどのストレスを与えた樋口達に対し、改めて怒りが込み上げてくる。
もちろんそこには、無関係の少年を巻き込み性的な暴行を加えた相手への胸糞の悪さの他に、愛する者に手を出されたという憤りも多く含まれていて、怒っていたことを思い出してしまうと、今からでも暴れにいきたくなった。
「せいいちろう……」
負の感情を育ててしまったのを敏感に感じ取ったのか、ちびが不安そうな声で呼ぶ。
「悪い。どこにもいかねえよ」
意識を逸らしたことを謝り、怒りをしまい込んで再び唇を合わせる。
至近の瞳がほっと緩んで、待ちきれないというように征一郎のものよりも小さな舌が絡みついてきた。
しばらく飽きずに征一郎の舌を吸っていたちびは、そっと顔を離すと息を乱したまま懸命に見上げてくる。
「征一郎……、ほしい、」
「ここに、出していいのか?」
そろりと腹を撫でると、薄いそこはひくりと震えた。
「うん、征一郎ので、なか、いっぱいにして……」
0
あなたにおすすめの小説
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる