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しおりを挟む「な…………………、何で泣くんだよ」
征一郎は滝汗をかきながら、恐る恐る問いかける。
少し触られただけで出てしまったからだろうか?
確かに、意中の女性とこれから本番……というときにこの事故が起こったら、名誉挽回への道のりはかなり厳しいものと思われる。
征一郎も先日は『次の時勃たなかったらどうしよう』と不安に思ったけれども!
それとも、無遠慮に触られたことがショックだったのだろうか。
そういえば「待って」と言いかけていたところを好奇心に負けて触ってしまったような…。
以前から夜のお楽しみがどうこう言っていたし、あまり斟酌していなかったが、それ自体が男の都合のいい思い込みなのかもしれない。
やばいハラスメントかもどうしようとオロオロしていると、ちびはうるうるする瞳をこちらに向けた。
何を言われるのかと身構えると。
「…手を汚して…ごめんなさい…」
…………手?
思いもよらない理由に、征一郎は目を点にした。
どうやら、迷惑をかけてしまった(と思っている)のがショックだったようだ。
「抜いてやるっつったの俺だろ。そんなこと気にすんな」
理由がわかって、はあぁ、と大きく安堵の息を吐き出す。
……驚いた。やってしまったかと思った。
だが、理由は違ったにしても、征一郎なら同じことをされたら引く気がする。
シチュエーション的にありえない例えだが、舎弟にこんなことはしない。
そういう意味では、『そういうことをしていい相手』として軽く考えてしまっていたかもしれないなと、征一郎は自分の軽率さを戒めた。
同意のない行為、ダメ絶対。
「お前なあ…俺なんかお前の口にぶちまけてんだろーが」
「征一郎のは……美味しいから」
「何だそりゃ…」
苦笑しながら、もう泣くなと涙を拭ってやろうとして、動転しすぎて手を拭くのを忘れていたことに気付いた。
洗ってくるかと立ち上がりかけて、ふと思いついて聞いてみる。
「俺のが美味いって言ったけど、自分のはどうなんだ?」
「え………」
征一郎にはホムンクルスと人間の体のつくりの違いはよくわからない。
わからないが、人のものに近いように見えるちびの精液もエネルギー源になるのであれば、緊急時の補給に使えるのではないかと思ったのだ。
究極の自給自足。自分の身に置き換えてみるとぞっとしないが、死ぬよりはましだろう。
征一郎の仮説の真偽はちびにもわからないのか、試してみると征一郎の手に顔を寄せた。
だが、ちろりと舐めただけで眉を寄せる。
「ん…………美味しくない……」
「そういうもんか」
「たぶん……液体に含まれる成分とかじゃなくて、生命力みたいなものがエネルギーになるんだと思う……」
どこかぼんやりとした様子で呟いたちびは、再び征一郎の手についた己のものを舐め始めた。
「ちび?不味いなら無理に…」
洗ってくるからと止めようとしたのだが、ちびは何故か頑なに舌を這わす。
それが、まるで男のものを弄ぶような淫猥な仕草で、征一郎は思わず目を離せなくなった。
強請るように深く、長い指を口に含まれて、ぞくりと腰が疼く。
『欲しい』
ちびの欲求が、頭に直接響いたように感じた瞬間の、灼けつくような衝動。
本能に支配され、その小さな体に手を伸ばした。
ぎしりとベッドの軋む音。そして…、
「せい……いちろう……?」
不思議そうに見上げる瞳にはっとした。
慌てて組み敷いた体を開放する。
「悪い」
一体、何をしているのか、自分は。
……何を、しようとしていたのか。
「あ、あのおれ…っ」
「…手え洗ってくる。お前は先に寝てろ」
もしかしたらあれが『男を惹き付ける仕様』の片鱗なのか。
だとしたら、あてられてしまったようだ。
ついでに水でもかぶって頭も冷やして来ようと、征一郎は、寝室を後にした。
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