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しおりを挟む「いいか?お前はそんな健気さアピールする必要はねーんだよ」
控えさせなければ俺の涙腺がデストロイする、という危機感を募らせた征一郎は、膝を折り、ちびと目を合わせしっかりと言い聞かせた。
「もっと好きなように過ごしてりゃいい。暇つぶしに何か欲しいものでもあれば買ってやるから」
そもそも人と変わらないというのであれば、こんな場所にほぼ軟禁状態にしておくのは不自然なのではないだろうか。
例えば学校に通わせるとか、就職……をさせるには幼すぎるような気がするが。
できる限り客観的にちびを観察すると、一見して大分幼く見えるものの、小柄な女性(女児ではない)程度の体格ではあり、その表情に『あどけなさ』のようなものは見受けられない。
芳秀が『征一郎よりも頭のいい仕様になっている』と言っていた通り、初見の印象ほどに子供ではないのはよく分かった。
ただ、中身がどうであろうと、この容姿ならば学生の方が相応しいだろう。
もしもちびが望むのであれば、自立した一人の人間として生きていけるように手を尽くしたいと思う。
引き取った以上は、きちんと一生面倒を見るのは当然のことだ。
「……おれが自由気ままに過ごしてる方が征一郎は嬉しいの?」
征一郎の言葉を脳内で処理するようにじっと考えていたちびは、微かに細い首を傾げ、聞き返してきた。
「おう。お前が飯も食わずに待ってるかと思うと仕事が手につかねえ」
「……分かった」
今後のことはちびの様子を見ながら考えて行くとして、まずは我が身を顧みない健気さを控えることを覚えてもらいたい。さもないと征一郎の涙腺がもたない。
ちびは理解したらしく一つ頷くと、リビングに置いてあるローテーブルの上で立ち上げっぱなしになっていたノートパソコンへと、ととと、と足早に向かって何かを調べ始めた。
特に隠している様子もないので、ちらりとのぞくと、そこにはたくさんの猫の画像が表示されている。
「(猫……?)」
「……征一郎は猫派……」
声に出さなかった疑問に応えるように、ぼそりと呟かれた一言に頭を抱えた。
「(何もわかってねえーーーーーーーー!)」
別に自分のアニマルの好みの傾向の話ではないと言いたかったが、無駄なような気がして『少しずつだ』と何とか自分に言い聞かせる。
一応、ちびは『ホムンクルス』とかいう人ではない存在なのだ。
自分の常識で考えてはいけない。
征一郎は、この先のことを思い、遠い目になった。
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