警狼ゲーム

如月いさみ

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十七夜 その18

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 将は冷静に
「騎士は神田だ」
 と告げた。

 一番影が薄かった神田美也子だったのである。誰もが「「まじか」」と呟いていた。

 将は全員を見ると
「よし! 今回のメンバーは戻って良し! 続いて行うメンバーの名前を呼ぶから直ぐに来る!」
 と告げた。

 この初回を皮切りに9人でする人狼ゲームを全部4回行った。しかし、その中に田中龍之介の名前を将は敢えて入れなかった。

 今回は彼一人の可能性が高いからである。人狼ゲームを通して36名の新人警察官の動きを見たが、テント内カメラにもまた外部への極秘通信などの様子は全くなかった。

 また佐賀県のように手を鳴らしたり、ハンドサインなどを使って不正を働く様子も見られなかった。

 将だけでなく翼にしても省吾にしても由衣にしても狼に値する人間を見つけることが出来なかったのである。

 午前中に2回行い、昼食後に2回終えて時間は午後4時を知らせていた。

 体育館の中で窓はなく外の空に広がる夕闇を中の人間は誰も感じることは出来ていなかったが赤い空が周囲を取り巻いていたのである。

 田中龍之介は息を吸い込み吐き出していた。自分が目を付けられている事はよくわかっていた。紛れ込ませた身上書のウソが分かり、自分が組織の人間だと彼らには分かっている可能性が高いと干潟満也に言われたのだ。

 だが他に人間はいないと言われ、まして、始まる前に逃げ出したとしたら捕まって終わると忠告されたのだ。
『俺たちがいるから安心しろ。絶対に阻止する。とにかく人狼ゲームをやり切れ』
 そう指示されたのだ。

 大丈夫だ。
 田中龍之介はそう自分に言い聞かせて息を吐き出した。この数時間何時試されるのかと緊張感が半端なかった。
 他の人間は恐らくやらされている理由は分かっていない。これが真の警察へ入り込んだ狼を狩るゲームだとは思っていないのだ。いや、だとしても自分たちには関係ないと思っているから何とも感じていないだろう。

 だが。
 だが。

 田中龍之介の緊張感が最高潮に来た時に将は中央に立ち唇を開いた。
「そうだ、一つ言っておくことがある」

 そう告げた。
 全員が顔を向けた。

 将は笑みを浮かべると
「この人狼ゲームの成績如何で学校を辞めてもらう可能性がある」
 と堂々と告げた。

 全員が顔を見合わせて騒めいた。
 翼にしても省吾にしても由以にしても驚いて将を見た。その話をここでするとは思っていなかったのである。いや、もっと前にすると思っていたのだが将が言わなかったのを敢えて黙止していたのである。

 将は咳払いをすると
「勿論、アウトされた人間の成績が低いというわけではない。俺たちが見て真剣さや色々考慮しての話だ」
 と告げた。
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