警狼ゲーム

如月いさみ

文字の大きさ
上 下
35 / 64

十七夜 その6

しおりを挟む
 桐谷世羅はそれに
「これからです、何かあった後にこそ人は真価を問われる」
 と答え立ち上がると
「では我々は準備を進めるので部屋を一つお借りしたい」
 と告げた。

 松山丈二は笑むと
「真価、か」
 と呟き電話を掛けると警務部長の飯塚孝一を呼び
「新人警察官の訓練の準備をされる。第3会議室へ案内してくれ。それから警務課の人間を三日後に一人今回の訓練の説明のために準備してくれ」
 と告げた。

 飯塚孝一は敬礼すると
「はい!」
 と答え
「どうぞ、こちらへ」
 と5人を三階にある第三会議室へと案内し
「何か準備など手伝いがありましたら、こちらの電話で私の直通へ電話してください」
 と告げて、駅前のアーバンホテルのパンフレットを置くと
「皆さんの泊るホテルをこちらで手配しております」
 と告げた。

 桐谷世羅は受け取り
「ご協力感謝します」
 と答え、彼が立ち去ると大きく息を吐き出し時計を見た。
「1時半か。飯だな飯」

 将もフゥと息を吐き出し翼や省吾や由衣を見た。全員が漸く一息ついたという形であった。
 部屋には長机が二つ並べられ、その上にパソコンが二台ほどある。Wi-Fi接続が出来るようになっており調べモノには問題はなかった。

 警察署内にも食堂はある。が、桐谷世羅は将たちを見ると
「ホテルにチェックインをしてからその辺で飯食うぞ」
 と外で食べることを言外に告げた。

 全員が立ち上がり、荷物を担いで会議室を出て鍵をかけた。書類は置いていないがパソコンは置いているので鍵は当然である。自分たちがしている仕事を考えれば『特に』である。

 警察署を出てパンフレットの地図を頼りに駅前のアーバンホテルを目指した。県警本部が駅から徒歩5分ほどなのでホテルも近い。しかも堀の橋を越えると繁華街なのでレストランを多くある。
 将は堀の橋を通りながら周囲を見回し
「便利だよなぁ」
 と呟き、不意に来るときに通った駅へ続く商店街通りを歩いている男女のカップル風の人物に目を見開いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ファクト ~真実~

華ノ月
ミステリー
 特別編からはお昼の12時10分に更新します。  主人公、水無月 奏(みなづき かなで)はひょんな事件から警察の特殊捜査官に任命される。  そして、同じ特殊捜査班である、透(とおる)、紅蓮(ぐれん)、槙(しん)、そして、室長の冴子(さえこ)と共に、事件の「真実」を暴き出す。  その事件がなぜ起こったのか?  本当の「悪」は誰なのか?  そして、その事件と別で最終章に繋がるある真実……。  こちらは全部で第七章で構成されています。第七章が最終章となりますので、どうぞ、最後までお読みいただけると嬉しいです!  よろしくお願いいたしますm(__)m

九龍城寨図書館と見習い司書の事件簿~忘れられたページと願いの言葉~

長谷川ひぐま
ミステリー
「あらゆる本が集まる」と言われる無許可の図書館都市、『九龍城寨図書館』。 ここには、お酒の本だけを集めた図書バーや、宗教的な禁書のみを扱う六畳一間のアパート、届かなかった手紙だけを収集している秘密の巨大書庫……など、普通では考えられないような図書館が一万六千館以上も乱立し、常識では想像もつかない蔵書で満ち溢れている。 そんな図書館都市で、ひょんなことから『見習い司書』として働くことになった主人公の『リリカ』は、驚異的な記憶力と推理力を持つ先輩司書の『ナナイ』と共に、様々な利用者の思い出が詰まった本や資料を図書調査(レファレンス)していくことになる。 「数十年前のラブレターへの返事を見つけたいの」、「一説の文章しかわからない作者不明の小説を探したいんだ」、「数十年前に書いた新人賞への応募原稿を取り戻したいんです」……等々、奇妙で難解な依頼を解決するため、リリカとナナイは広大な図書館都市を奔走する。

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

10u

朽縄咲良
ミステリー
【第6回ホラー・ミステリー小説大賞奨励賞受賞作品】  ある日、とある探偵事務所をひとりの男性が訪れる。  最近、妻を亡くしたというその男性は、彼女が死の直前に遺したというメッセージアプリの意味を解読してほしいと依頼する。  彼が開いたメッセージアプリのトーク欄には、『10u』という、たった三文字の奇妙なメッセージが送られていた。  果たして、そのメッセージには何か意味があるのか……? *同内容を、『小説家になろう』『ノベルアッププラス』『ノベルデイズ』にも掲載しております。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。 飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。 ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた—— 「そこに、"何か"がいる……。」 科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。 これは幽霊なのか、それとも——?

秘められた遺志

しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?

カフェ・シュガーパインの事件簿

山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。 個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。 だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

処理中です...