警狼ゲーム

如月いさみ

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十六夜 その14

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 全員が驚いて勝村友治を見た。和田和臣は慌てて
「いや、そう言って勝村が狼かもしれないぞ」
 と告げた。

 勝村友治は冷静に
「だったら、先ず志村に入れて違ったら俺に入れたらいい」
 と告げた。
「絶対に志村が狼だ」

 真瀬京平はそれに顔を顰めて
「何か、お前も本間も変じゃないか?」
 と告げた。

 それに本間直は顔を向けて
「何が?」
 と聞いた。

 真瀬京平は悩みながら
「お前さ、もしかして配役を知ってた?」
 だって初めの時に全く喋ってなかった勝村を占い師って当てたんだぜ? と指さして告げた。
「俺なんかそんな想像すらできねぇーよ」

 それには観客席で座っていた人間も誰もがざわめいた。
 本間直は慌てて
「ヤマ勘があったっただけだって」
 と告げた。

 勝村友治も目を細めて
「何か証拠でもあるのか?」
 と告げた。

 将は手をパンと叩くと驚いて振り向いた本間直と勝村友治に
「手を鳴らすことだ」
 と告げた。
「二回鳴らせば狼。一回は村人。鳴らさないのは占い師。騎士あったら3回、狂人があったら4回だったかもしれないが」

 勝村友治は驚いて将を見た。本間直も将を凝視した。

 将は息を吐き出すと
「勝村、本間、武田……後で来るように」
 それから真瀬、お前もだ、と告げた。

 瞬間に武田吉三が席を立って出口へと走り出した。勝村友治も本間直も逃げるように走り出した。全員が立ち上がり慌てて周囲を見回した瞬間に将は
「他の者は座れ!! 今一歩でも動いた人間は全員首だ!!」
 と叫んだ。
「直ぐに座れ!! 1班もだ!!」

 全員が慌てて腰を下ろした。真瀬京平も驚きながらその場にヘロヘロと座った。
 翼はテントから出ると
「東大路、後始末は任せた!」
 と駆け出した。

 将は頷くと
「逃げた三人を頼む」
 と言い

 静寂が戻った管内を見回した。
「このゲームがどうして警狼ゲームと呼ばれるか」
 と言い全員が目を向けると
「佐賀県警内でデータの改ざん騒ぎがあったことは全員が知っていると思うがその改ざんされたデータで紛れ込むように入れられたデータがある」
 と告げた。

 それに水上美姫が蒼褪めて
「まさか、彼ら三人が?」
 と呟いた。

 将は息を吐き出すと
「我々が見つけたのは勝村だけだった。だが、彼が紛れ込んだということは何者かが……何かの組織が警察にそういう人間を紛れ込ませようとしたということだ」
 と告げた。

「警察に不純物はいらない。あってはならない」
 ……何故ならそれでは人々に尽くし、法を守ることが出来ないからだ……
「警察に狼が一匹でも紛れ込めば不当逮捕がまかり通り、隠蔽が公然とおこなわれるからだ」

 ……これは本当の警察に紛れ込む狼を狩る警狼ゲームだということだ……

 全員が蒼褪め息を飲み込んだ。
 将は全員を見回して
「だからここにいる全員に肝に銘じてほしいのは『狼なるな!』『警察に狼は害になるだけで人々に不幸を生むだけだ!!』」
 と告げた。
「警察官である以上は潔白であれ! 人々に尽くす人間であれ!! それ以外の人間は警察に必要ない!」

 ……それが嫌なら他の仕事を探して欲しい……

 安積里美は立ち上がると敬礼し
「私は小さな頃に迷子になって家まで連れて帰ってくれたのが近くの駐在所のお巡りさんでした……だから、私も人々に尽くせるお巡りさんになろうと思ったんです! 絶対になります!」
 と告げた。

 水上美姫も笑んで立ち上がると敬礼し
「私は安定しているからだったけど……今の話を聞いて頑張ろうと思います! 狼にはなりません!」
 と告げた。

 真瀬京平も立ち上がって
「俺も狼にはならない。俺は俺の住む街を守るために警察官になりたかったから」
 と告げた。

 全員が立ち上がり敬礼をして頷いた。
 将は敬礼をすると
「俺はこれからの佐賀県警に期待する!」
 と告げ
「1班はドローだが、2班からはゲームを楽しんでもらいたいしこれはこれから犯罪者と向き合う時や犯罪に関わった人々の心理などを見抜く訓練にもなる。頑張ってくれ」
 と告げた。

 全員が笑顔で頷いた。
 逃亡した三人は外を張っていた佐賀県警の警察官に捕まり更迭された。
 
 狼を炙り出せたのである。
 その夜半。勝村友治と会っていた県警刑事部二課第二係長の榛原正二郎の前に鷹司陽と赤木勇気が姿を見せた。二人は勝村友治と会っていた動画を見せると
「わかっていると思いますが……協力者全てを吐いてもらう」
 と告げた。

 榛原正二郎は顔を伏せると
「金が……大金が手に入ると言われて」
 と告げた。
 公安部の木村明日実に言われたことを自供して彼女も緊急逮捕したのである。

 鬼竜院闘平は東京へ戻った桐谷世羅を呼び出すと
「やはり神田川警部が調べたことは本当だったということだ」
 と言い
「これから手帳に書いているところを順に回っていってもらう」
 という。

 将たちが知らない間に同時進行の新しい本格的な警狼ゲームが開始されたのである。
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