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十六夜 その10
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由衣は佐賀県警本部警務部長から届いたメールを見ると
「SAGAアリーナで行うようにと指示がありました。4月13日と14日の二日に予約を入れたそうです」
と告げた。
省吾がパソコンの検索にSAGAアリーナを入れて情報を引き出すとプリントアウトをして人数の割り振りと誰に何の役をさせるかを話し合っていた将と翼の元へと持って行った。
「ここだよ」
言われてテーブルの中央に置かれた資料を見ると将と翼は同時に
「「良いんじゃないか」」
と告げた。
また運がいいことにSAGAアリーナは警察学校に隣接しているので移動にも良い立地場所だったのである。恐らくその辺りを考えての警務部長の推薦だったのだろう。
将は由衣と省吾に
「もう少しで全員の役の振り分けが終わるから、明日の朝一で確認にいこう。13と14だったら後一週間しかないから東京からカメラや測定器を取り寄せて設置したらギリギリだ」
と告げた。
その時、扉が開き桐谷世羅が姿を見せた。
「順調に進んでいるみたいだな」
将は全員を見て頷くと
「明日、実地場所の候補としてSAGAアリーナを見学に行きます。来週の13日と14日に既に予約を入れているそうです」
と告げた。
桐谷世羅は「なるほど」と言い足を進めるとテーブルの上のそれを見て
「これは良い位置取りだ」
と言い
「わかった、それは任せる。だったら、俺は明日に警察学校の方へ告知に行くからチラシを用意しておいてくれ」
と告げた。
それには由衣と省吾が同時に
「「はい」」
と答えた。
翌日、桐谷世羅は学校へ行き、将たちはSAGAアリーナへと出向いた。桐谷世羅は警察学校の学校長と対面しチラシを渡すと
「全員参加でお願いいたします」
と告げた。
学校長は既に連絡を受けていたようで
「わかりました、必ず全員を参加させます」
と答えた。
桐谷世羅は笑むと
「あと、見学をしたいんですが」
と告げた。
学校長は頷くと立ち上がり
「案内します」
と些か緊張した面持ちで告げた。
今回の急な警狼チームの招集で自らが学校長を務める警察学校で疑惑があるという噂が県警内に出回っているのに気づいていた。勿論、学校が始まって突然学生が増えたということはない。そんなことすればすぐに分かる。
だが。
だが。
当初の新人警察官の人数と実際の入学式に参加してきた人数が一人違っているのは事実だったのである。それを調べようとした時にデータがおかしいことに気付いたのだ。
……一人偽の新人警察官が紛れ込んでいる……
それについては学校長である花村和樹にも分かっていたのである。その誰かが彼にも今教育をしている教師にも学生にも分からない。わかっているのは狼唯一人だけなのだ。
桐谷世羅は花村和樹に案内を受けながら見て回り気丈にしつつも今回の件で悩んでいる彼に
「必ず狼を見つけるのでその後の新人警察官と教官のメンタルケアを宜しくお願いします」
というと立ち去った。
花村和樹はその意味を理解すると笑みを浮かべて
「お願いします」
と答えた。
勝村友治は桐谷世羅が見回っていることに授業を聞きながら気付いておりその日の夜に一本の電話を入れた。
「……話がある」
それを受けた相手は煙草をふかしながら
「わかった、だが、今は色々目が厳しいから今日の午前1時にサンライズ球場横で落ち合おう。あそこなら人目が付かない」
と言い携帯を切ると
「ったく、面倒くさいことになった」
と呟いた。
その日の夜半に一つの影が警察学校から闇に紛れ、その影を追うように同じく一つの影が闇に姿を消したのである。将たちはホテルで身体を休めて翌朝にはSAGAアリーナに姿を見せると利用するサブアリーナの中を見て回った。
サブと言っても広々とした屋内で2面のバスケット用の空間があり、その周囲に観客が座る座席がある。メインアリーナはそこにセンターハングビジョンという4面テレビがついているがサブには流石にない。
将は息を吐き出し
「サブでもかなり広いな」
と感嘆の声を上げた。
翼も笑むと
「確かにそうだな、まあ十分だろ」
と告げた。
一周して自分たちがテントの中で見るための映像と外にもカメラを配置して座っている他の面々の様子も見れるようにしておいたのである。
「SAGAアリーナで行うようにと指示がありました。4月13日と14日の二日に予約を入れたそうです」
と告げた。
省吾がパソコンの検索にSAGAアリーナを入れて情報を引き出すとプリントアウトをして人数の割り振りと誰に何の役をさせるかを話し合っていた将と翼の元へと持って行った。
「ここだよ」
言われてテーブルの中央に置かれた資料を見ると将と翼は同時に
「「良いんじゃないか」」
と告げた。
また運がいいことにSAGAアリーナは警察学校に隣接しているので移動にも良い立地場所だったのである。恐らくその辺りを考えての警務部長の推薦だったのだろう。
将は由衣と省吾に
「もう少しで全員の役の振り分けが終わるから、明日の朝一で確認にいこう。13と14だったら後一週間しかないから東京からカメラや測定器を取り寄せて設置したらギリギリだ」
と告げた。
その時、扉が開き桐谷世羅が姿を見せた。
「順調に進んでいるみたいだな」
将は全員を見て頷くと
「明日、実地場所の候補としてSAGAアリーナを見学に行きます。来週の13日と14日に既に予約を入れているそうです」
と告げた。
桐谷世羅は「なるほど」と言い足を進めるとテーブルの上のそれを見て
「これは良い位置取りだ」
と言い
「わかった、それは任せる。だったら、俺は明日に警察学校の方へ告知に行くからチラシを用意しておいてくれ」
と告げた。
それには由衣と省吾が同時に
「「はい」」
と答えた。
翌日、桐谷世羅は学校へ行き、将たちはSAGAアリーナへと出向いた。桐谷世羅は警察学校の学校長と対面しチラシを渡すと
「全員参加でお願いいたします」
と告げた。
学校長は既に連絡を受けていたようで
「わかりました、必ず全員を参加させます」
と答えた。
桐谷世羅は笑むと
「あと、見学をしたいんですが」
と告げた。
学校長は頷くと立ち上がり
「案内します」
と些か緊張した面持ちで告げた。
今回の急な警狼チームの招集で自らが学校長を務める警察学校で疑惑があるという噂が県警内に出回っているのに気づいていた。勿論、学校が始まって突然学生が増えたということはない。そんなことすればすぐに分かる。
だが。
だが。
当初の新人警察官の人数と実際の入学式に参加してきた人数が一人違っているのは事実だったのである。それを調べようとした時にデータがおかしいことに気付いたのだ。
……一人偽の新人警察官が紛れ込んでいる……
それについては学校長である花村和樹にも分かっていたのである。その誰かが彼にも今教育をしている教師にも学生にも分からない。わかっているのは狼唯一人だけなのだ。
桐谷世羅は花村和樹に案内を受けながら見て回り気丈にしつつも今回の件で悩んでいる彼に
「必ず狼を見つけるのでその後の新人警察官と教官のメンタルケアを宜しくお願いします」
というと立ち去った。
花村和樹はその意味を理解すると笑みを浮かべて
「お願いします」
と答えた。
勝村友治は桐谷世羅が見回っていることに授業を聞きながら気付いておりその日の夜に一本の電話を入れた。
「……話がある」
それを受けた相手は煙草をふかしながら
「わかった、だが、今は色々目が厳しいから今日の午前1時にサンライズ球場横で落ち合おう。あそこなら人目が付かない」
と言い携帯を切ると
「ったく、面倒くさいことになった」
と呟いた。
その日の夜半に一つの影が警察学校から闇に紛れ、その影を追うように同じく一つの影が闇に姿を消したのである。将たちはホテルで身体を休めて翌朝にはSAGAアリーナに姿を見せると利用するサブアリーナの中を見て回った。
サブと言っても広々とした屋内で2面のバスケット用の空間があり、その周囲に観客が座る座席がある。メインアリーナはそこにセンターハングビジョンという4面テレビがついているがサブには流石にない。
将は息を吐き出し
「サブでもかなり広いな」
と感嘆の声を上げた。
翼も笑むと
「確かにそうだな、まあ十分だろ」
と告げた。
一周して自分たちがテントの中で見るための映像と外にもカメラを配置して座っている他の面々の様子も見れるようにしておいたのである。
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