警狼ゲーム

如月いさみ

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十六夜 その5

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 淡島巳春は笑みを浮かべると一枚の紙を出した。
「これだよ」

 将は目を細めると
「この一件だけ?」
 と聞いた。

 淡島巳春は頷いて
「そうだよ」
 と告げた。

 桐谷世羅はその一枚を手にすると
「わかった、それと『本物』の隠しファイルの方の警察学校の新人警察官の一覧も貰おう」
 と告げた。

 それには水田勇次郎が小野原県警本部長を見て頷いた。小野原信次は数枚の紙の束を渡した。
「これが本来の全員です」

 将はそれを手にして
「ありがとうございます」
 と答えた。

 淡島巳春は立ち上がると
「じゃあ、俺もういい?」
 海堂が待っているんだけど、と告げた。

 水田勇次郎は大きく息を吸い込んで吐き出すと
「淡島、お前は」
 と言いつつ
「まあ、確かに急ぐ必要があるしお前一人にさせているからな」
 と桐谷世羅を見ると
「申し訳ないが淡島警部には作業があるので」
 と説明した。

 桐谷世羅はさっぱりと
「それは分かっているので、こちらはこれだけ貰えれば十分なので大丈夫です」
 と答えた。

 淡島巳春は「ああ」というと
「そう言えば今回使われた生成AIプログラム……専用プログラムだと思うよ。バイリンガル機能が入ってる。その分壊しやすいけど反対にやられたら怖い奴ね」
 と告げた。

 それに水田勇次郎は驚いて
「淡島! お前、それ何で言わなかった!」
 と腰を浮かせた。
 
 桐谷世羅も目を見開き直ぐに
「そりゃ、対応を急がないとだな」
 と唇を歪めた。

 淡島巳春は手を振って
「水田さんには、後で報告するから……でもあのプロトタイプで取り敢えずは何とかなるから」
 じゃ、と立ち去った。

 将は手をピラピラ振って立ち去る彼を見送り
「課長と同等ぐらいの癖のある人間を見た」
 と心で突っ込んだ。
「でもあの淡島って子も根は真面目そうだな」
 そう呟いた。
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