眠姦学校

るふぃーあ

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22 森下小春3-3 (最終話)

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ぱち。
目を醒ますとそこは教室で、みつるが俺に移動教室だぜ、とか笑いかけてることを希望したが、それは叶わなかった。

俺は魔王城の暗い天井を見上げていて、上から森下が覗き込んでいた。

「・・・・・・俺、生きてる、のか?」
「・・・・・・そう」
「どう、して」
「分かんない」

身体を起こした。
すぐそばに、石化したみつると乗宮が転がっていた。雨屋も。

バクの姿はなかった。消えたのか、どこかに行ったのか。

「助けてくれたのか、森下」

こくん、と彼女は小さく頷いた。
もう、彼女の瞳は炎を燃やしておらず、髪の毛も蛇ではなかった。

「わたしね、本当は男なの」

ぽつり、と彼女が言った。

は?
意味が分からなかった。

「男性、というべきかな。・・・・・・ずっと生理がなくって、病院で詳しく調べたら、遺伝子がおかしいんだって」

彼女の瞳は、今は淡い水色に光っていた。
泣いているのか。

「遺伝子?」
「そう。性染色体異常。女子がXX、男性がXYでしょ?わたしはXYなの」
「けど」
「うん。一見女子に見えるし、わたしもずっと、この歳まで女子として生きてきた。それでなんの不自由もなかった。ただ生理が来ないだけ、ちょっと遅いだけだって。・・・・・・アンドロゲン不応症、ていう病名らしいの」
「なんだそれ」

聞いたこともない。
けど、そういう概念があるのはなんとなく知っていた。
確か、有名なホラー小説の元ネタにもなってたはず。

「アンドロゲン不応症。別名、睾丸性女性化症候群っていうんだって。外見上は女性だけど、子宮がないの。だって男なんだもん。だけど男性ホルモンが少なくて、それで女子に見えるだけ。だから、その、膣もほとんどないし、性行為だって満足にはできないって、お医者さんに言われた。お父さんもお母さんも泣いてた。まだお腹の中に精巣が残ってるから、ガンになりやすくて、いずれ手術して取り出すんだって」
「・・・・・・」
「わたし、手術なんて受けたくない。だけど、放っておいたらガンになるかもしれないし。どのみちホルモンは異常だから、早く死ぬこともあるって」
「・・・・・・」
「泣いたりもしなかった。なんだか現実感がなくって、自分のことだとは思えなかったし。どうしてわたしが、とか、明日になったら悪い夢から覚めて、ちゃんと女の子に戻ってるって、とか、毎日そんなふうに思ってた。だけど、ずっと悪夢からは覚めなかった。ずっと、ずっと」

森下は俺に言いたいのか、独白なのか分からなかった。
俺には、ただ聞いていることしかできなかった。

「両親にも言われたの。学校の人には内緒にしておきなさいって。男だって分かったら、女子の中にいられなくなるって。チア部にもいられないし、女子トイレにも入れない。でも男子トイレには行けないし、行きたくない。修学旅行でも、男子と一緒の部屋に、お風呂になってしまうって。だから誰にも言わず、誰とも付き合っちゃだめ、その人がどんな人でも、男だって分かったら絶対に別れることになるばかりか、気持ち悪がられるって」
「・・・・・・」
「だって、そうだよね?恋人になって、相手が男だって分かって、そんなのどう思うの?多様性だって言うけど、それは相手が男らしい外見をしている場合だよね。女の外見で実は男でしたって、どんな人でも無理。だから付き合うのはだめって」
「みつるには?」
「内緒だよ、もちろん。だって、どう言えばいいの?」

森下に聞かれて、俺は何も言えなかった。

「でも、その話を聞いてから、もう我慢できなくなった。わたしは一生、女の子として幸せになることなんてできない。だったら高校生の間だけ、知らなかったふりをして恋人を作るのはだめなの?短い間だけでも、恋をしたいって思うのはいけないこと?だから、一番好きな人に告白したの」
「・・・・・・」
「みつるくんは、高校の間だけってことを承知してくれた。大学生になったら、またその時に考えればいいよって。お願いして、キスもしないでくれた。ううん、したかったけど、あとでみつるくんがどんな気持ちになるかって考えたら、どうしても言い出せなくって。だから、しないでおこうって。でも一度だけ、どうしても我慢できなくて、しよ、って言ってしまったけど、みつるくんは優しく微笑んで頭を撫でてくれるだけだった。無理しなくていいって。そんなわたしでも、みつるくんはデートに連れてってくれたり、学校の帰りに送ってくれたり、優しくしてくれた。幸せだった」
「・・・・・・」
「でも」

森下は、俺を見つめた。

「見てしまった、みつるくんを。知ってしまった、みつるくんの気持ちを。本当は誰が好きなのかを。女子のことを、乗宮さんのことを好きで、キスして、本当はエッチもしたいんだってことも。わたしには全部、できないことだった。彼に与えられないものだった」
「・・・・・・」
「雨屋さんともエッチしてた。とても楽しそうに。よりにもよって、わたしの身体を使って。わたしの身体、夢の中ではそんなこともできちゃうんだね。あのコテージで、わたしは雨屋さんの意識で動かされてた。でも、からすまくんに抱かれたり、みつるくんにも抱いてもらって、ああ、これが女子としての幸せ、女子が本来感じる気持ちいいことなんだって、思い知らされた。許せなかった。わたしを裏切っていたみつるくんも、嘘をついてた乗宮さんも、わたしの身体を操っていた雨屋さんも、こんな夢に連れてきたからすまくんも。・・・・・・こんな、こんな病気になった、気持ちの悪い、わたしの、身体も」

とめどなく、水色の液体がその瞳から流れ出ていた。
俺はただ、それを眺めていた。

「もう、この4人は絶対に許せない、一生ここから出してあげない、そう思った。だから石にして、バクに夢を食べさせて、もう戻れないようにしてやりたかった。うまくいってたのに。最後まで、うまくいってたのに」
「・・・・・・」
「ね、からすまくんは気持ち悪いでしょ?こんなわたしとキスしちゃって。ね、教えて?本当のことを。こんな話聞いて、自分のファーストキスが男とだって知って、後悔してるでしょ?」
「してない」

夢の中では、嘘はつけない。つきにくい。
だけど、今は嘘を言う必要もなかった。

「嘘」
「嘘じゃない。森下とキスできて、嬉しかった」

今の話を聞いても、ピンと来なかった。
森下が男?そんなわけないじゃないか。誰よりも可愛い女子なのに。

森下は、また俺を睨んだ。

「は、話を聞いてなかったの!?わたしは染色体で男性なんだよ!?そんなの、気持ち悪いに決まって_____」
「そんなこと、俺が決めることだろ。俺が気持ちよかったって感じれば、それでいいんじゃないのか。お前が勝手に決めんなよ」
「でも_____」
「じゃあ聞くけど、みつるがあとで「乗宮が好きだった俺と一緒にいて気持ち悪かっただろ、つき合ったこととか全部、忘れてくれ」って言われて、おまえ忘れんのか?」
「・・・・・・そんなの、違うに決まってる。楽しかった時間は、否定したくない。たとえみつるくんに言われても、みつるくんとの思い出とか、みつるくんを好きだったこと、忘れたりしない」
「じゃあ一緒だろうが。俺は森下の中身がどうだろうと、自分が思ったことは自分で決める。勝手に指図すんな」

どうなんだろう。
俺は変なんだろうか。
本当は、嫌だって思うべきなんだろうか。分からない。

ただ、自分の心がそう言っていた。
なんであれ、森下とキスできたり、家まで送っていって抱きしめたのは、最高の思い出だ、と。

「なあ、森下」
「なに?」
「お前、俺と付き合えよ」
「・・・・・・どうして」

もう、彼女の涙は止まっていた。
俺はそっと、彼女を抱きしめた。

「今みたいな話、また誰か他の男子にしたいのか?」
「・・・・・・したくない。絶対」
「他の男がお前のことどう思うのか、付き合うたび毎回聞きたいのか?」
「聞きたくない」
「みつるに話したいか?乗宮から取り返したいか?」
「・・・・・・話したくない。取り返したいけど、無理だって分かってる」
「俺なら、いつだってお前をこうやって夢の中に連れてきてやる。夢の中では、森下の望む自分になれる。セックスだってできるし、してやる。妊娠だってできる。お前が望むなら」
「でも、そんなの夢の中だけだよ!夢から覚めたら、また現実に戻っちゃう」
「そうだな。だけど、現実だけなのと夢があるの、どっちがいい?」
「・・・・・・それは」

彼女は言い淀んだ。
夢は夢だ。真実ではない。

「人の夢って」
「え?」
「はかない、って書くんだよ。人の夢。儚い」
「そうだっけ」

夢がはかないなんて。
なんだか物悲しいな。
だけど。

「・・・・・・でも、たまには夢を見たい。儚い夢でも」
「だろ。だったら俺といろよ。夢、見させてやるから」
「でも、でも、でも!・・・・・・からすまくんも、きっといつか、普通の女の子が好きになるよ。現実でエッチだってできて、赤ちゃんも産める子の方がいいに決まってる!」
「だろうな。俺もそう思う。だけど、お前に飽きるまで、お前につき合ってやる。高校の間だけでも、あるいは大学生まで、あるいは飽きるまで、ずっとな」
「・・・・・・いつか飽きて、他の女子に浮気しちゃうんでしょ?」
「だな。浮気して、妊娠とかさせて、お前に怒られる未来しか見えない」
「ひどいねそれ。絶対に許さないから」

森下は笑った。
涙がまだ残っている状態で、それでも笑った。

彼女はおずおずと、しがみついてきた。

「・・・・・・いいのかな、からすまくんに甘えても?」
「いいよ」
「わたし、すごく執念深いかもよ?」
「何せ魔王だからな」
「赤ちゃん、一生産めないんだよ?お父さんもお母さんも、きっと本当のことを知ったら、泣いちゃうよ」

ああ。
そうだな。

兄貴の時の、うちの両親の顔を思い出す。
電気もつけず、真っ暗な居間で座っていたふたり。

兄貴がどうなるか、まだ分からない。
俺までそんなことになって、父さんは、母さんはどんな顔をするだろう。どんな顔で泣くだろう。

俺って、親不孝者かなあ。

「・・・・・・雨屋さんは、いいの?」
「別につき合ってるわけじゃないし」
「わたし、絶対恨まれるね」
「むしろ恨んでただろ」
「あはは。そうだね。・・・・・・ね、みつるくんと乗宮さんがつき合って、わたしとからすまくんがつき合ったら、クラスとか学校のみんな、どう思うかな」
「驚くだろうな」

驚く、では済まないだろう。
何があったのか、何が起こったのか、全員が興味津々で聞くことだろう。

ウワサし合ったり、あることないこと言いふらしたり、あるいは笑ったり下衆な勘ぐりをしたり、嘲笑したり勝手に失望したりする奴も出るかもしれない。
だけど、他人の目を気にして、自分の心を偽ることなんて必要だろうか。

「・・・・・・俺たち、4人で仲良かったよな」
「うん、そうだね」
「まあ、当面はそんなペースでいいんじゃね?俺とみつる、お前と乗宮、とりあえず4人でいれば、さ」
「雨屋さん、泣いちゃうね」
「だったら、時々愛人として慰めてやるさ」
「えええ、いきなり浮気宣言とか、ひどい」

はは。
俺は森下の顎を持ち上げた。
彼女は抵抗しなかった。

やがて、柔らかな感触がした。
それは、以前味わったものと同じ感触だった。同じ感情だった。

ぴし。
暗い魔王の間に、亀裂が入った。
この世界が、終わりを告げようとしているのだ。

「ね、からすまくん」
「ん?」
「最後に、聞かせて。・・・・・・どうして、わたしのことが好きなの?」

森下は、真顔で俺に聞いてきた。
何だ、そんなことか。
言う必要すらないと思ってたよ。

「そんなの森下、お前が好きだからに決まってるじゃないか」


きーんこーんかーんこーん。
長い、とても長い古文の授業が終わった。

「はーあ。・・・・・・よく寝たぜ」
「疲れるよなー」

あちこちで、クラスメイトたちの声がする。
6限目は視聴覚教室なので、みんな出ていった。

「・・・・・・」

俺は、残った4人と目を合わせた。
みつる、乗宮、雨屋、そして森下。
全員、腰が抜けたかのように動けない。

「・・・・・・結局、最後はどうなったんだ?」

みつるが俺に尋ねてきた。
雨屋も乗宮も、俺を見つめている。

「勇者が魔王を倒した。世界が救われ、魔王は勇者の願いを聞き届けた」

真顔で言った俺に、みつるは苦笑した。

「そっか。・・・・・・じゃあ、うまくいったんだな」
「ああ」
「こはるも」
「う、うん」
「なら、次行こうぜ。のりみ・・・・・・あこ」
「うん。・・・・・・その、こはるちゃん、その・・・・・・ううん、あとでちゃんと言う。ちゃんと。・・・・・・先、行くね」

涙が止まらない乗宮の肩を、そっとみつるが抱いた。
ふたりが出ていくと、雨屋が俺と森下を交互に見つめていた。

「うまく、いったんだね」
「ああ」
「・・・・・・うん」
「そっか。・・・・・・じゃあ、わたしも次、行こうっと」

雨屋は何かを振り切るように、駆け足で教室を出ていった。

「終わったね」

ぽつりと言うこはるに、俺は手を差し出した。

「いいや、これから始まるのさ」



眠姦教室 -完-




エピローグ

さて、これで俺と俺の夢にまつわる話は終わりだ。
これ以上もう、書くこともない。

え?あれとかあれはどうなったかって?そんなの蛇足だろ。
まあ、興味がある、あるいは知りたい人だけ読んでくれ。


木津川千鶴。
彼女は相変わらず、無表情で図書室にこもっている。俺が入っても、ほとんど目も合わない。

だけど、一度だけ会話した。

「・・・・・・森下さんと、付き合ってるの?」
「ああ」
「そ」

それだけだ。
彼女には感謝している。あの日、彼女の消しゴムを拾ったまま寝込まなければ、こんな日は来なかったと思う。

きっと今でも、木津川はオーディオルームで兄の持つAV作品に見入っているのだろう。
彼女が将来、女性には珍しいAV作家および監督になるなど、今の俺には知る由もない。


乗宮あこ。そして時生充。
こいつらは予定通り、恋人となった。
とても仲良く、たまに喧嘩もしている。よく4人で会うけど、やっぱこいつらお似合いだよな、とか思ってしまう。

「んで、やったのか?最後まで」
「まあな」

みつるが嬉しそうに言ってやがった。くそ羨ましいぜ。俺も乗宮としたかった。


乗宮のことは、これ以上もう話すこともないだろう。
彼女は自分の願いを叶えた。

ちょっと女っぽくなったって、もっぱらの噂だ。髪も少しだけ、長くなった。
前のショートのが似合ってると思うけどな。

彼女とは、時々夢で会っている。
みつると、彼女のお母さんと一緒に。


鴉間星矢、俺の兄貴。
兄貴は今、リカちゃん先生とお付き合いしている。

それが良いのかどうかは分からない。ただ、ふたりとも楽しそうだ。
父さんと母さんには泣いて感謝された。小遣いも増えてラッキーである。

「どこかでキッカケを探してたんだろうな。俺も斎藤も」

意外とあっさり諦めた理由を、兄貴はそんなふうに言っていた。
俺もいつか、きっかけを探すことになるんだろうか。


雪原リカ。
保健室の先生にはあれ以来、催眠をかけていない。
兄貴との約束だし、やっぱり兄貴とダブったりするのはちょっとね。

リカちゃんは彼氏がいたんだろうか。その人とどうなったかは知らない。
俺は誰かに悪いことをしたのかもしれないし、もう既に別れてたのかもしれない。

先生は今でも、看護資格を目指して勉強を頑張っている。資格をとっても学校は辞めないそうだ。
なお、うちの両親からの受けは大変に良いようである。


真行寺楓。
彼女は、兄と添い遂げることに決めたようだ。

「お兄さまはあんなお身体ですから、婿に出すのは難しいだろうと。わたくしも、婿を取るのはかなり先になるでしょうし」

そんなふうに、俺だけに教えてくれた。
彼女は真行寺家の跡取りであり、いずれ有力な家から婿養子を迎えることになるのだ。
そっちにはとっとと愛人でも作ってもらって、兄と秘密の関係を続ける気、らしい。

兄である誠氏は長年眠っていたせいで、今もリハビリで数分程度しか歩けないそうだ。
だけど、真行寺はずっと待つつもりでいるらしい。兄と愛し合える日を。

「でもさ、きょうだいでってのは、遺伝子的にマズいんでは?」
「そうですね。実際にお兄さまの子どもを生むことは難しいでしょう。残念ですけれど」
「だよな」
「では、その時はからすまくんの子種を提供していただきましょうかしら?兄と婿様と奥様には、内緒で」

ふふ、と妖艶に笑う真行寺に、冗談だとは思いつつもドキドキしてしまった。

「い、いや、そんな、試験管ベビーとかって、その、親の愛情とかさ」
「あら、そんなことは望んでおりませんけど?・・・・・・自然な方法で子を成すには、わたくしでは魅力不足でしょうか?夢ではあれほど激しく、してくださいましたのに?」

そっと耳元で囁かれて、俺はますますドギマギしてしまうのだった。
なお、この「予言」は数年後(以下略


井野口美希。
彼女とは、その後夢に入ることも、そこで会うこともなかった。もう怖い目は嫌だ。
最近じゃ、3年のセンパイと付き合ってるって噂もある。
もう、悪夢は見なくて済みますように。


本織朱音。
地下アイドルを推す生活からは足を洗ったらしい。たぶん、パパ活とかからも。
学校でよく話すようになった。以前より笑顔が増えたようにも思える。

そういうのやめてから、身体が疼いて、学校でして欲しい、身体だけの関係でいいから・・・・・・と俺にねだってきたり。
屋上でとか男子トイレでとか、体育館倉庫とかで。
・・・・・・なんて妄想をしてみたりする。残念ながら妄想ってだけだ。


雨屋小智子。
彼女は相変わらず委員長だ。みんなの頼れるクラス委員長。

あの森下の夢から戻った翌日、彼女から、改めて熱烈な告白を受けた。
だけど、俺は森下を選んだ。

雨屋は少し泣いたが、でも、分かった、と笑顔で言ってくれた。
もったいないことをしたのかもしれない。雨屋なら、きっとずっと勉強も教えてくれたり、恋人になっても妻になっても母になっても、老夫婦になってもいつまでも頼れる女性でいるのだろう。
またいつ夢に呼んでくれてもいいから、と小さな鉛筆削りをプレゼントしてくれた。まだ使っていない。きっと孔明の罠だ。


最後、森下小春。

彼女のことを、両親に紹介した。
彼女の身体の事は、内緒にして。

俺の両親は乗宮を気に入っていたらしく、ちょっと微妙な表情をしていたが、無邪気に喜んでくれた。
いつか、本当のことが分かったら、どんな顔をするだろうか。

彼女の両親にも会った。
こちらは、もう彼女の身体のことは全て分かってお付き合いしている、と伝えてからお会いした。

「・・・・・・こはるのこと、支えてやってください」

頭を下げられた。
いえ、とこちらも下げるしかなかった。
俺はまだ高校生で、将来のことなんて分からない。安易に責任を取るなんて言えない。
だけど、森下が笑顔でいてくれれば嬉しいと思う。

森下とは、セックスをした。現実で。
彼女曰く、「盲端膣」という状態になっているらしい。その奥には子宮がないのだ。長さも、7センチくらいしかないらしい。

「それでも、先生が言うにはだいぶ長い方なんだって」

入り口も、ずいぶん細く感じた。
なるほど、これは多目的トイレで挿れることなんて無理だ。相当慣れない限り。

こわごわ挿入してみると、確かに途中でつっかえる感じがした。
だけど、幸せな感覚だった。痛がってすがりつく森下に射精できて、俺は十分に満足した。

彼女には子宮も卵巣もない。だから妊娠はできないけど、逆に中出しし放題である。これはこれでいい。
高校の間ずっと、森下と生でやりまくりである。これでなんの不満があるというのか。

「ね、いつか、夢で赤ちゃんを産みたいなあ」
「産めるさ」

18歳の誕生日を迎えても、俺の能力は消えなかった。
兄貴とは違うのか、それともいつかは消えるのか。

まあ、それはその時に考えよう。
俺は愛しいカノジョの頭を抱き、微睡んだ。

これが全部夢じゃなかったらいいのに、と思いながら。
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