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19 雨屋小智子3-2
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はあ。
腹、減ったなあ。
乗宮の家に行こうか、と思った。
彼女は父親と二人暮らし、今頃夕食を作っているかもしれない。頼めばひとりぶんくらい。
「あ」
「あ」
駅へ向かったところで、誰かと顔が合った。
今日、学校で出会った顔。
雨屋小智子。
クラスの委員長にして秀才。
だが、今の俺には顔を見るのも嫌な相手だ。勝手に誤解して、勝手に人を見下してる奴。
まだ学校の帰りなのだろう。制服にカバンを下げていた。
俺は無視してさっさと横を通り過ぎようとした。
「・・・・・・また、本織さんに会いに行くんでしょ」
むかっ。
一瞬、殴ってやろうかと思った。拳を握りしめた。
だが、悲しくなった。
こいつは本来、頭の悪い奴じゃない。なのにどうして。
「・・・・・・違う」
「じゃあ、乗宮さんのところ?」
「ああ」
「知らないって幸せだよね。乗宮さんも、からすまくんがこんな人だって____」
「てめえ!」
胸ぐらを掴んだ。
いつもなら、ぐらじゃないほうを掴みたいだろうが、今はそんなものどうでもよかった。
でかい声に、通行人が足を止めて俺たちを見つめた。
喧嘩している男女、険しい顔で女子の胸ぐらを掴んでいる男。
まるで俺の方が悪いような目つき。くそっ。
俺は手を離した。
メガネごとぶん殴ってやりたい気持ちを、必死に抑え込んで。
「・・・・・・雨屋、一度だけ言ってやる。俺は嘘など言ってないし、本織とも何もしていない」
「じゃあ、ラブホから出てきたのはどういう理由なの?」
「・・・・・・それは、言えない」
「ほら。やっぱり」
「どう誤解されようと構わない。俺はすべきことをしただけだ。後ろめたいことなど何もない」
それだけ言い捨てると、雨屋を放って駅へと向かった。
駅前を通っていったほうが、乗宮の家にも近いのだ。
くそ。くそ。くそ。
あんな奴、もうどうでもいい。二度と助けてなんかやらない。消えてしまえ、いなくなってしまえ。
二度と顔も見たくない。永久に。
ぐい。
服を引っ張られた。
足を止め背後を振り向くと、そこには息を切らせた雨屋がいた。
俺の服を、引っ張っていた。
「何だ」
「・・・・・・からすま、くん、あし、速すぎ」
「バスケ部ナメんな」
「・・・・・・られ、ないよ」
「はあ?」
「この・・・・・・ままじゃ、いられ、ないよ」
彼女の息が落ち着くまで、待つしかなかった。
駅前のサイゼリヤはかなり混雑していて、それでも十数分で席につくことができた。
一応店内を見回したが、真行寺をはじめ同級生の姿はなかった。ミスドの二の舞いはごめんだ。
「悪いけど、俺ちょっと何か食うわ。今日うちの親、色々あってメシ作ってないから」
「うん、どうぞ」
「えーと、ペペロンチーノの大盛りは何番だったかな」
「PA03」
「あとドリンクバー」
「DB01」
「・・・・・・なんで覚えてんだ」
「一度見たら、だいたい何でも覚えてるから」
どんな記憶力してんだよ。
一応メニューを眺めたが、ちゃんと合っていた。すげえ。
ちなみに、雨屋がサイゼリヤに来るのは数カ月ぶりらしい。
とりあえず空腹と口渇を満たすと、俺はイヤホンを差し出した。
「・・・・・・何?」
「ここうるさいし、しゃべる内容がアレだからさ」
「イヤホンをつけても、話せないよ?」
数分後。
彼女は沈黙した。
さすがだな雨屋。この睡眠の呪文に3分も耐えるなんて。乗宮なら秒単位だぞ。
俺は雨屋の手を握り、イヤホンを耳にした。
教室にいた。
やっぱり、雨屋の心の中は、学校なんだ。
「からすまくん!?」
「よう」
夕暮れ時。
クラスの中には他に誰もいなかった。
「・・・・・・また、夢の中なんだね」
「ああ」
「センパイを、生徒会長を、ああしてくれたのも」
「いや、あれはお前の夢だけどな」
夢というか、悪夢だったな。
あれは怖かった。ガチでオバケだらけだったし、あいつら脅かしてきたし掴んできたし、本気で殺そうとしてきたし。
「このチカラで、うまくやったんでしょ。乗宮さんも、本織さんも」
「乗宮は、みつるが好きなんだ」
「・・・・・・え?」
夢の中では、あまり言い淀んだり、嘘をついたりしにくい。
恐らく、心で思ったことがすぐ声に出てしまうんだろう。
「嘘」
「夢の中は、嘘がつきにくいんだよ雨屋。例えば、おまえまだ、生徒会長がちょっと好きだろ」
「ううん。全然」
あれ。
違うのか。
「じゃあ、誰が好き____」
「それはいいの!・・・・・・で、さっきのはどういう意味?乗宮さんは、時生くんが好きなの?」
「そうだ」
俺は、乗宮との密約を話した。
話していいのか分からなかった、というかダメだけど、喋った。しゃべってしまった。
今の雨屋には、俺が正直だって分かって貰う必要があった。
「・・・・・・すると、乗宮さんは時生くんが好きで、時生くんも乗宮さんが好き、なの?」
「そうだ」
「じゃあ、森下さんは、こはるちゃんはどうなるの?」
「俺は森下が好きだ。だから、森下を俺が恋人にすれば、誰も傷つかない」
雨屋の表情が曇った。
「・・・・・・そんな」
「まあ、俺たちの勝手な言い分だ。実際にはみつるはもう、森下のことを心底好きなのかもしれない。だとしたら、この話は終わりだ。あと、偽りの関係であっても、俺は結構乗宮のことが気に入ってる。たぶん乗宮も。だから完全な嘘じゃない」
「・・・・・・森下さん、は」
「どうかな。森下はやっぱり、みつるが好きなんだと思う。これを俺がどうこうするのは無理じゃないかな。もう諦めかけてる」
「だから、本織さんとしたっていうの」
「それは違う。雨屋、本織が売春してるって、知ってたか」
「・・・・・・え?」
ああ。
言ってしまった。
ごめんな本織。でも、お前との仲を誤解され続けるのは、嫌なんだ。
「雨屋にだけ言うよ。絶対に秘密だって約束したから、絶対誰にも言うなよ。・・・・・・あの日、お前が俺たちを見た日、本織はパパ活相手の中年のハゲのおっさんと、ラブホへ入ってった」
「・・・・・・まさか」
「まさに扉を閉める寸前で、俺が中に入って止めた。で、本織は学校とか親への口止め料に俺とセックスしてやるって言ったけど、俺はもう辞めろって、あいつ、元々売春もしてたからさ。ソープとかで」
「・・・・・・信じられない、本織さんが、そんなこと」
「地下アイドルとかに貢ぎまくって、金が欲しかったって言ってた。だけど辞めて欲しいって頼んだ。同級生だし、良くねぇと思ってさ」
「じゃあ、してないの?本当に?」
「してない。まあ、したいとは思ったよ。以前あいつの夢で、フェラしてもらって、一緒に風呂入って、セックスもしたことあったからな。現実では俺童貞だったから、今でもちょっとは後悔してる」
あ。
嘘、言えるじゃん。リカちゃん先生のこと、言わなくて済んだ。
いや、童貞だったから、だし、嘘は言ってないのか。
「・・・・・・本織さん、いまでもしてるのかな、そゆこと」
「さあな。こないだ席替えの後、おまえ、してねーだろうなってこっそり言ったら、ないよって笑ってたから、まあ信じてる。心の中は分からんけど」
「この夢のチカラを使えば分かるんでしょ?また本織さんと、夢の中で楽しめるんでしょ?」
「まあな。でも疑いたくないし、それにぶっちゃけ、本織とそれほどしたいわけじゃない」
「今まで、何人くらいしてきたの?」
「さあ、7-8人くらいじゃね?」
「・・・・・・からすまくん、最低」
「お前も入ってるぞ」
「・・・・・・そうだけど」
はあ、と雨屋がため息を付いた。
「・・・・・・このチカラがなかったら、そもそもわたし、からすまくんに助けてもらえなかったんだよね」
「だな」
「あの時のこと、今でも感謝してる。すごく。からすまくんが助けてくれなかったら、学校辞めてた。・・・・・・それか、自殺してた」
「・・・・・・雨屋」
「そのくらい辛かった。もう、自分が汚くて、嫌で嫌で仕方なかった。誰にも言えなくて、黙ってたらダメだって、でも言ったら恥ずかしくて、他人にどんな目で見られるかって、そんな保身ばっかり考えてる自分が、今まで誰かに相談に乗ったら、みんなのためになることを考えてねって、そんなふうに言ってきたくせに、いざ自分が弱い立場になったら自分のことしか考えない自分が、大嫌いになった」
おおう。
さっきまで教室の外は夕陽が差してたのに、日が陰ってきやがった。
雨屋の局所に、深々と刺さっていた短剣。
あれは、彼女が彼女自身に突き刺したものだ。
「だから、感謝してるんだよからすまくん」
「なのに、屋上とかさっきとか、えらく冷たかったじゃねーか」
「だって、好きだったんだもん」
「・・・・・・はあ?」
「好きだったんだもん、からすまくんのこと。・・・・・・乗宮さんだけじゃなくて、本織さんにまで取られて、悔しかった」
「・・・・・・んな」
んなわけ、あるか。
だけど、雨屋は俺の顔を真っ直ぐに見つめていた。
夢の世界では、嘘は言いづらい。
「好き。好き。大好き。からすまくんのことが、好き。わたしを助けてくれた、王子様」
「いや、おうじさまって」
「王子様だよ。死にそうなわたしを、救ってくれた。正義の王子様」
おわ。
なんだこれ。
俺の服装が、白い騎士のような姿に変わった。
雨屋は、真っ白な王女様に。
「今は乗宮さんが好きかもしれないけど、きっと、いつか。王子様が、わたしを迎えに来てくれる。そう、思ってた」
「・・・・・・」
「だけど、王子様、は」
服装が、元に戻った。
「他の女の子と、ラブホテルに」
「・・・・・・」
「わたしが、連れ込まれて、あんなに嫌な、怖い思いをした場所へ」
「・・・・・・」
「連れ込んで、悪いことを」
「してねー」
「でも、そう思ったんだよ。思わざるを得なかったんだよ!だって!他にどう思えばいいの!?わたしが想ってた王子様が!他の!あんな女と!ホテルに!行くなんて!」
ごおおおっ。
遠くから、雷鳴が聞こえてきた。
以前も思ったことだが、雨屋って冷静沈着、いつも穏やかで平和そうに見えて、実は心の中でもの凄い嵐を抱えているんだな。
普段、無理してるんだろう。
教室の外はますます暗くなり、降り出した雨はあっという間に大嵐となった。
雷鳴が恐ろしい勢いで轟き、稲光が天地を突き刺す。
「おい雨屋、ちょっと落ち着いて____」
ドオオオオン!
強烈な落雷。直上だ。
ばき。
天井が割れた。窓ガラスが割れて四散する。
ざあああ。雨が吹き込んできた。
うわやべえ。こりゃやべえよ。
俺は雨屋を抱きしめた。
「雨屋、落ち着け、雨屋」
「王子様とか期待させちゃって、なんてゲスで、クズで、ゴミで、浮気者で、変質者で、犯罪者で」
「あめや」
「死んでしまえ、殺してやりたい、鴉間里矢なんて死んでしまえばいい!消えればいい!」
「雨屋!」
彼女の唇を、唇で塞いだ。
もはや天井は吹き飛び、大粒の雨が滝のように俺たちの頭へ降り注いでいた。
びしょ濡れのまま、俺は雨屋を抱きしめ、唇を吸った。吸い続けた。
冷たい雨に打たれ、感覚が消えていく。
もはや、立っているのかどうかも分からない。
腕の中の彼女のぬくもりと、唇の暖かさだけが、唯一の感覚だった。
雨がやんでいた。
嵐は過ぎ去り、雷鳴も消えていた。
遠くから、オレンジ色の光が差している。黄昏時だ。
「・・・・・・からすまくん」
「落ち着いたか、雨屋」
「・・・・・・うん」
彼女は、俺を見上げた。
メガネをかけた、端正な顔立ち。
決して美人ではないけれど。森下みたいな可愛い顔ではないけれど。
知的な彼女の瞳は、やっぱり美しい。
雨屋の瞳に、雨粒ではない水分が浮いていた。
「でも、わたしは選んでもらえないんだね。からすまくんに」
「悪い」
「もし、もし乗宮さんと時生くんが付き合って、こはるちゃんとうまくいかなかったら、わたしと、付き合ってくれますか?」
「そう、雨屋が願ってくれるなら」
「こんな、汚れたわたしでも?」
「汚れてなんかいないさ」
野良犬に噛まれただけだ。
それで彼女の価値が落ちるなんて思わない。
ぐす、と泣く彼女の瞳から、涙をキスで吸い取った。
それを見上げて、雨屋は泣きながら笑った。
「・・・・・・ずるい、そんな仕草」
「現実じゃ、恥ずかしくてできないな」
「夢だったら、できちゃうの?」
「まあ、だいたいのことは」
俺は、壊れた校舎から見える夕暮れの空へ手を伸ばした。
雨屋を抱いたまま、ゆっくりと空中へ昇る。
遙か校舎の上空で浮かびながら、徐々に移りゆく黄昏の空を眺めた。
太陽の伸ばす最後の光が、消える。
「・・・・・・綺麗」
「こんな光景、現実じゃ見られないよな」
またキスをした。
彼女の目にはもう、涙はなかった。
「・・・・・・じゃ、夢の中で、抱きしめて」
「現実でも構わないけど」
「だめ。現実のわたしの身体は、汚れてるから」
「そんなことはない。絶対に」
「でも、わたしが嫌。からすまくんを汚したくない。乗宮さんを汚すことにもなっちゃう。だから」
雨屋の方から、口づけをしてきた。
「この世界でだけ、ぎゅって、して」
「うん」
俺たちは、ゆっくりと地上へ舞い降りた。
そこには、もう学校も、校舎もなかった。
平らな大地に、ひとつの大きな、天蓋付きの白いベッドがあった。
雨屋は、とても熱心に俺を愛撫してくれた。
「ね、こう、かな」
「うん、それから、もうちょっと上の方、先っぽの方を」
「ん」
口淫。
本織には負けたくない、とでも思ったのか。俺が言うままに、俺の欲望に答えてくれた。
散々奉仕させておいて、今度は俺が雨屋を自由にした。
彼女の肉体は、木津川と同じように、甘い蜜の味がした。いや違う、そもそも胸から甘い液体を放出してくれたのは、雨屋の胸だった気がする。
「ね、わたしの身体、変じゃないかな?」
「とても素敵だ」
全裸になった雨屋は、ベッドの上でひどく乱れ、あられもない声を漏らした。
それは、怒った時の絶叫や、校舎をぶっ飛ばす勢いの嵐や、生徒会長を懲らしめた時の恐ろしいまでのお化け屋敷と同じかもしれない。
彼女は、抑圧されているのだ。他でもない、彼女自身から。
誰だって、理想の自分、期待されたい自分がある。そのために、努力もする。自分も磨く。
でも、たいていの場合、それはどこかで限界がある。
こんなの俺がすることじゃない、俺じゃなくていい。わたしはそこまでしなくていい。誰かが代わりにしてくれたら、それで十分。
誰だって、俺だって、どこかでそう思ってる。苦しくなったら手抜きして、自分を守ろうとする。
だけど、雨屋はそんなふうに手抜きをしないし、できない。
授業も完璧に予習し、全てのノートを取り、教師の発言や重要ポイントを書き込み。
その通称「雨屋ノート」には、テストで出そうな部分が誰でも分かるように書いてある。なんなら予想問題まであったりする。
そのまま出てビビることもしばしばだ。
噂では、教師の中にも雨屋ノートを入手し、それで問題を考えたり作ったり、予想が的中しすぎて慌てて問題を替えたりする先生もいるという。あくまで噂だが。
ホームルームでもそうだ。あらかじめ、文句を言いそうな生徒、不平が出そうな生徒にそれとなく聞き取りを行い、意見をまとめておく。
いざホームルームが始まると、予想通りに意見が紛糾する。だけど雨屋にうまいこと利点と欠点を挙げられ、黒板にまとめられ、本質を指摘され、論破され、あるいは言いくるめられ。
最後には納得させられ、まあいいか、雨屋には敵わねーよ、で笑って終わってしまう。
ほんと、雨屋っていいやつだ。
きっと、彼氏になったら、すっげえ尽くしてくれるんだろう。
俺のこと、全部知ってしまって、好きなこととか、気持ちいい部分とか、して欲しいこととか、ぜんぶ満たしてくれるんだろうな。
生徒会長の野郎、本っ当に馬鹿だな。こんな凄くて素晴らしい女の子の本質も知らずに、ただ性欲を満たすためだけに。
そんな彼女は、雨屋小智子という高校生を演じている。全力で。
だから、夢の中でタガが外れると、抑えていた感情が爆発してしまう。
(なんで、なんの権利があってわたしを責めてるの!?からすまくんは)
(からすまくんのほうがよっぽど下品で人でなしだよ!ゲスの極みだよ!)
(死ね!死ね死ね死ね死ね死ね!死ね!)
そんな感情が爆発してしまう、雨屋だから。
夢の中で、本当に気持ち良いセックスなんて、してしまうと。
「ひい、あああああああ!だめええええっ!いく、いくぅ!いっくう!いっちゃううううううううううっ!」
うーむ。
木津川も乗宮も、井野口も真行寺も本織でさえ、こんな強烈な反応は見せたことがない。
澄ました顔がトレードマークな委員長がここまで乱れまくるのを見て、こちらも否が応でもみなぎってしまう。
俺は全力で、あらん限りの力を振り絞って、雨屋の身体を上から下へと突きまくった。
本来の性器とは、違う部分まで。
「い、いやあ、からすまくん、そ、そこ」
「いいだろ。きっと気持ちいいぜ」
「だめ、だめだったら・・・・・・痛っ、い、いや、だめ、ああ、き、きもちい、いい、いいいい、いいいいいいいい!」
菊門。
恐らく、現実では一度も味わうことのないであろう、性器ではない部位。
雨屋のアナルは、ものすごく気持ち良かった。
きゅっと締まった穴。膣とは違って、全体がぎゅっと締め付けてこない。入っている場所、その部分だけが、輪っかのように締め付けてくる。
その奥には、広い空間があった。
そのアンバランスが、さんざん雨屋の膣を堪能した俺に、違う快感を与えてくれた。
「雨屋のここ、すげえ、すげえよ。すっげえ気持ちいいよ」
「ほんと?嬉しい、気持ちいい、わたしも、気持ちいい!すごく!」
「ああ、ここに出すぞ雨屋、雨屋、あめや」
「うん、いいよ、いいよ!出して、ぜんぶ出して!」
ど。
どぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ。
大量の白濁液が、ゲートを通過してあふれ出た。
あー、気持ちええ。ここ、初めて使ったけど、信じられないくらい気持ちいいな。
まあ、夢だからできることだけど。
「ああ・・・・・・からすま、くん・・・・・・」
雨屋が身を捩り、唇をねだってくる。
俺はそれに応え、桃色の唇を楽しんだ。
「・・・・・・ねえ、からすまくん」
「ん?」
「ここって、ずっといちゃだめ?」
「もうすぐ、夢から覚めるかな」
さすがに、あの木津川との夢以来、俺はちゃんとアラームを鳴らすようにしている。
もうあんなのは、金輪際ごめんだ。
雨屋は、とても残念そうな顔になった。
「そっか・・・・・・もう、永遠にこのままでもいいけど」
「現実の身体はどーすんだよ」
「ね、もっかい、して?」
雨屋がおねだりしてくる。
それに応えることは、できる。なにせ夢の性欲は無限大だ。木津川と何年もセックスし続けて、それはよく分かっている。
だけど。
俺は彼女に頼みたいことがある。
「雨屋、残りの時間でちょっと、相談に乗って欲しい」
俺は真剣な顔で言った。
腹、減ったなあ。
乗宮の家に行こうか、と思った。
彼女は父親と二人暮らし、今頃夕食を作っているかもしれない。頼めばひとりぶんくらい。
「あ」
「あ」
駅へ向かったところで、誰かと顔が合った。
今日、学校で出会った顔。
雨屋小智子。
クラスの委員長にして秀才。
だが、今の俺には顔を見るのも嫌な相手だ。勝手に誤解して、勝手に人を見下してる奴。
まだ学校の帰りなのだろう。制服にカバンを下げていた。
俺は無視してさっさと横を通り過ぎようとした。
「・・・・・・また、本織さんに会いに行くんでしょ」
むかっ。
一瞬、殴ってやろうかと思った。拳を握りしめた。
だが、悲しくなった。
こいつは本来、頭の悪い奴じゃない。なのにどうして。
「・・・・・・違う」
「じゃあ、乗宮さんのところ?」
「ああ」
「知らないって幸せだよね。乗宮さんも、からすまくんがこんな人だって____」
「てめえ!」
胸ぐらを掴んだ。
いつもなら、ぐらじゃないほうを掴みたいだろうが、今はそんなものどうでもよかった。
でかい声に、通行人が足を止めて俺たちを見つめた。
喧嘩している男女、険しい顔で女子の胸ぐらを掴んでいる男。
まるで俺の方が悪いような目つき。くそっ。
俺は手を離した。
メガネごとぶん殴ってやりたい気持ちを、必死に抑え込んで。
「・・・・・・雨屋、一度だけ言ってやる。俺は嘘など言ってないし、本織とも何もしていない」
「じゃあ、ラブホから出てきたのはどういう理由なの?」
「・・・・・・それは、言えない」
「ほら。やっぱり」
「どう誤解されようと構わない。俺はすべきことをしただけだ。後ろめたいことなど何もない」
それだけ言い捨てると、雨屋を放って駅へと向かった。
駅前を通っていったほうが、乗宮の家にも近いのだ。
くそ。くそ。くそ。
あんな奴、もうどうでもいい。二度と助けてなんかやらない。消えてしまえ、いなくなってしまえ。
二度と顔も見たくない。永久に。
ぐい。
服を引っ張られた。
足を止め背後を振り向くと、そこには息を切らせた雨屋がいた。
俺の服を、引っ張っていた。
「何だ」
「・・・・・・からすま、くん、あし、速すぎ」
「バスケ部ナメんな」
「・・・・・・られ、ないよ」
「はあ?」
「この・・・・・・ままじゃ、いられ、ないよ」
彼女の息が落ち着くまで、待つしかなかった。
駅前のサイゼリヤはかなり混雑していて、それでも十数分で席につくことができた。
一応店内を見回したが、真行寺をはじめ同級生の姿はなかった。ミスドの二の舞いはごめんだ。
「悪いけど、俺ちょっと何か食うわ。今日うちの親、色々あってメシ作ってないから」
「うん、どうぞ」
「えーと、ペペロンチーノの大盛りは何番だったかな」
「PA03」
「あとドリンクバー」
「DB01」
「・・・・・・なんで覚えてんだ」
「一度見たら、だいたい何でも覚えてるから」
どんな記憶力してんだよ。
一応メニューを眺めたが、ちゃんと合っていた。すげえ。
ちなみに、雨屋がサイゼリヤに来るのは数カ月ぶりらしい。
とりあえず空腹と口渇を満たすと、俺はイヤホンを差し出した。
「・・・・・・何?」
「ここうるさいし、しゃべる内容がアレだからさ」
「イヤホンをつけても、話せないよ?」
数分後。
彼女は沈黙した。
さすがだな雨屋。この睡眠の呪文に3分も耐えるなんて。乗宮なら秒単位だぞ。
俺は雨屋の手を握り、イヤホンを耳にした。
教室にいた。
やっぱり、雨屋の心の中は、学校なんだ。
「からすまくん!?」
「よう」
夕暮れ時。
クラスの中には他に誰もいなかった。
「・・・・・・また、夢の中なんだね」
「ああ」
「センパイを、生徒会長を、ああしてくれたのも」
「いや、あれはお前の夢だけどな」
夢というか、悪夢だったな。
あれは怖かった。ガチでオバケだらけだったし、あいつら脅かしてきたし掴んできたし、本気で殺そうとしてきたし。
「このチカラで、うまくやったんでしょ。乗宮さんも、本織さんも」
「乗宮は、みつるが好きなんだ」
「・・・・・・え?」
夢の中では、あまり言い淀んだり、嘘をついたりしにくい。
恐らく、心で思ったことがすぐ声に出てしまうんだろう。
「嘘」
「夢の中は、嘘がつきにくいんだよ雨屋。例えば、おまえまだ、生徒会長がちょっと好きだろ」
「ううん。全然」
あれ。
違うのか。
「じゃあ、誰が好き____」
「それはいいの!・・・・・・で、さっきのはどういう意味?乗宮さんは、時生くんが好きなの?」
「そうだ」
俺は、乗宮との密約を話した。
話していいのか分からなかった、というかダメだけど、喋った。しゃべってしまった。
今の雨屋には、俺が正直だって分かって貰う必要があった。
「・・・・・・すると、乗宮さんは時生くんが好きで、時生くんも乗宮さんが好き、なの?」
「そうだ」
「じゃあ、森下さんは、こはるちゃんはどうなるの?」
「俺は森下が好きだ。だから、森下を俺が恋人にすれば、誰も傷つかない」
雨屋の表情が曇った。
「・・・・・・そんな」
「まあ、俺たちの勝手な言い分だ。実際にはみつるはもう、森下のことを心底好きなのかもしれない。だとしたら、この話は終わりだ。あと、偽りの関係であっても、俺は結構乗宮のことが気に入ってる。たぶん乗宮も。だから完全な嘘じゃない」
「・・・・・・森下さん、は」
「どうかな。森下はやっぱり、みつるが好きなんだと思う。これを俺がどうこうするのは無理じゃないかな。もう諦めかけてる」
「だから、本織さんとしたっていうの」
「それは違う。雨屋、本織が売春してるって、知ってたか」
「・・・・・・え?」
ああ。
言ってしまった。
ごめんな本織。でも、お前との仲を誤解され続けるのは、嫌なんだ。
「雨屋にだけ言うよ。絶対に秘密だって約束したから、絶対誰にも言うなよ。・・・・・・あの日、お前が俺たちを見た日、本織はパパ活相手の中年のハゲのおっさんと、ラブホへ入ってった」
「・・・・・・まさか」
「まさに扉を閉める寸前で、俺が中に入って止めた。で、本織は学校とか親への口止め料に俺とセックスしてやるって言ったけど、俺はもう辞めろって、あいつ、元々売春もしてたからさ。ソープとかで」
「・・・・・・信じられない、本織さんが、そんなこと」
「地下アイドルとかに貢ぎまくって、金が欲しかったって言ってた。だけど辞めて欲しいって頼んだ。同級生だし、良くねぇと思ってさ」
「じゃあ、してないの?本当に?」
「してない。まあ、したいとは思ったよ。以前あいつの夢で、フェラしてもらって、一緒に風呂入って、セックスもしたことあったからな。現実では俺童貞だったから、今でもちょっとは後悔してる」
あ。
嘘、言えるじゃん。リカちゃん先生のこと、言わなくて済んだ。
いや、童貞だったから、だし、嘘は言ってないのか。
「・・・・・・本織さん、いまでもしてるのかな、そゆこと」
「さあな。こないだ席替えの後、おまえ、してねーだろうなってこっそり言ったら、ないよって笑ってたから、まあ信じてる。心の中は分からんけど」
「この夢のチカラを使えば分かるんでしょ?また本織さんと、夢の中で楽しめるんでしょ?」
「まあな。でも疑いたくないし、それにぶっちゃけ、本織とそれほどしたいわけじゃない」
「今まで、何人くらいしてきたの?」
「さあ、7-8人くらいじゃね?」
「・・・・・・からすまくん、最低」
「お前も入ってるぞ」
「・・・・・・そうだけど」
はあ、と雨屋がため息を付いた。
「・・・・・・このチカラがなかったら、そもそもわたし、からすまくんに助けてもらえなかったんだよね」
「だな」
「あの時のこと、今でも感謝してる。すごく。からすまくんが助けてくれなかったら、学校辞めてた。・・・・・・それか、自殺してた」
「・・・・・・雨屋」
「そのくらい辛かった。もう、自分が汚くて、嫌で嫌で仕方なかった。誰にも言えなくて、黙ってたらダメだって、でも言ったら恥ずかしくて、他人にどんな目で見られるかって、そんな保身ばっかり考えてる自分が、今まで誰かに相談に乗ったら、みんなのためになることを考えてねって、そんなふうに言ってきたくせに、いざ自分が弱い立場になったら自分のことしか考えない自分が、大嫌いになった」
おおう。
さっきまで教室の外は夕陽が差してたのに、日が陰ってきやがった。
雨屋の局所に、深々と刺さっていた短剣。
あれは、彼女が彼女自身に突き刺したものだ。
「だから、感謝してるんだよからすまくん」
「なのに、屋上とかさっきとか、えらく冷たかったじゃねーか」
「だって、好きだったんだもん」
「・・・・・・はあ?」
「好きだったんだもん、からすまくんのこと。・・・・・・乗宮さんだけじゃなくて、本織さんにまで取られて、悔しかった」
「・・・・・・んな」
んなわけ、あるか。
だけど、雨屋は俺の顔を真っ直ぐに見つめていた。
夢の世界では、嘘は言いづらい。
「好き。好き。大好き。からすまくんのことが、好き。わたしを助けてくれた、王子様」
「いや、おうじさまって」
「王子様だよ。死にそうなわたしを、救ってくれた。正義の王子様」
おわ。
なんだこれ。
俺の服装が、白い騎士のような姿に変わった。
雨屋は、真っ白な王女様に。
「今は乗宮さんが好きかもしれないけど、きっと、いつか。王子様が、わたしを迎えに来てくれる。そう、思ってた」
「・・・・・・」
「だけど、王子様、は」
服装が、元に戻った。
「他の女の子と、ラブホテルに」
「・・・・・・」
「わたしが、連れ込まれて、あんなに嫌な、怖い思いをした場所へ」
「・・・・・・」
「連れ込んで、悪いことを」
「してねー」
「でも、そう思ったんだよ。思わざるを得なかったんだよ!だって!他にどう思えばいいの!?わたしが想ってた王子様が!他の!あんな女と!ホテルに!行くなんて!」
ごおおおっ。
遠くから、雷鳴が聞こえてきた。
以前も思ったことだが、雨屋って冷静沈着、いつも穏やかで平和そうに見えて、実は心の中でもの凄い嵐を抱えているんだな。
普段、無理してるんだろう。
教室の外はますます暗くなり、降り出した雨はあっという間に大嵐となった。
雷鳴が恐ろしい勢いで轟き、稲光が天地を突き刺す。
「おい雨屋、ちょっと落ち着いて____」
ドオオオオン!
強烈な落雷。直上だ。
ばき。
天井が割れた。窓ガラスが割れて四散する。
ざあああ。雨が吹き込んできた。
うわやべえ。こりゃやべえよ。
俺は雨屋を抱きしめた。
「雨屋、落ち着け、雨屋」
「王子様とか期待させちゃって、なんてゲスで、クズで、ゴミで、浮気者で、変質者で、犯罪者で」
「あめや」
「死んでしまえ、殺してやりたい、鴉間里矢なんて死んでしまえばいい!消えればいい!」
「雨屋!」
彼女の唇を、唇で塞いだ。
もはや天井は吹き飛び、大粒の雨が滝のように俺たちの頭へ降り注いでいた。
びしょ濡れのまま、俺は雨屋を抱きしめ、唇を吸った。吸い続けた。
冷たい雨に打たれ、感覚が消えていく。
もはや、立っているのかどうかも分からない。
腕の中の彼女のぬくもりと、唇の暖かさだけが、唯一の感覚だった。
雨がやんでいた。
嵐は過ぎ去り、雷鳴も消えていた。
遠くから、オレンジ色の光が差している。黄昏時だ。
「・・・・・・からすまくん」
「落ち着いたか、雨屋」
「・・・・・・うん」
彼女は、俺を見上げた。
メガネをかけた、端正な顔立ち。
決して美人ではないけれど。森下みたいな可愛い顔ではないけれど。
知的な彼女の瞳は、やっぱり美しい。
雨屋の瞳に、雨粒ではない水分が浮いていた。
「でも、わたしは選んでもらえないんだね。からすまくんに」
「悪い」
「もし、もし乗宮さんと時生くんが付き合って、こはるちゃんとうまくいかなかったら、わたしと、付き合ってくれますか?」
「そう、雨屋が願ってくれるなら」
「こんな、汚れたわたしでも?」
「汚れてなんかいないさ」
野良犬に噛まれただけだ。
それで彼女の価値が落ちるなんて思わない。
ぐす、と泣く彼女の瞳から、涙をキスで吸い取った。
それを見上げて、雨屋は泣きながら笑った。
「・・・・・・ずるい、そんな仕草」
「現実じゃ、恥ずかしくてできないな」
「夢だったら、できちゃうの?」
「まあ、だいたいのことは」
俺は、壊れた校舎から見える夕暮れの空へ手を伸ばした。
雨屋を抱いたまま、ゆっくりと空中へ昇る。
遙か校舎の上空で浮かびながら、徐々に移りゆく黄昏の空を眺めた。
太陽の伸ばす最後の光が、消える。
「・・・・・・綺麗」
「こんな光景、現実じゃ見られないよな」
またキスをした。
彼女の目にはもう、涙はなかった。
「・・・・・・じゃ、夢の中で、抱きしめて」
「現実でも構わないけど」
「だめ。現実のわたしの身体は、汚れてるから」
「そんなことはない。絶対に」
「でも、わたしが嫌。からすまくんを汚したくない。乗宮さんを汚すことにもなっちゃう。だから」
雨屋の方から、口づけをしてきた。
「この世界でだけ、ぎゅって、して」
「うん」
俺たちは、ゆっくりと地上へ舞い降りた。
そこには、もう学校も、校舎もなかった。
平らな大地に、ひとつの大きな、天蓋付きの白いベッドがあった。
雨屋は、とても熱心に俺を愛撫してくれた。
「ね、こう、かな」
「うん、それから、もうちょっと上の方、先っぽの方を」
「ん」
口淫。
本織には負けたくない、とでも思ったのか。俺が言うままに、俺の欲望に答えてくれた。
散々奉仕させておいて、今度は俺が雨屋を自由にした。
彼女の肉体は、木津川と同じように、甘い蜜の味がした。いや違う、そもそも胸から甘い液体を放出してくれたのは、雨屋の胸だった気がする。
「ね、わたしの身体、変じゃないかな?」
「とても素敵だ」
全裸になった雨屋は、ベッドの上でひどく乱れ、あられもない声を漏らした。
それは、怒った時の絶叫や、校舎をぶっ飛ばす勢いの嵐や、生徒会長を懲らしめた時の恐ろしいまでのお化け屋敷と同じかもしれない。
彼女は、抑圧されているのだ。他でもない、彼女自身から。
誰だって、理想の自分、期待されたい自分がある。そのために、努力もする。自分も磨く。
でも、たいていの場合、それはどこかで限界がある。
こんなの俺がすることじゃない、俺じゃなくていい。わたしはそこまでしなくていい。誰かが代わりにしてくれたら、それで十分。
誰だって、俺だって、どこかでそう思ってる。苦しくなったら手抜きして、自分を守ろうとする。
だけど、雨屋はそんなふうに手抜きをしないし、できない。
授業も完璧に予習し、全てのノートを取り、教師の発言や重要ポイントを書き込み。
その通称「雨屋ノート」には、テストで出そうな部分が誰でも分かるように書いてある。なんなら予想問題まであったりする。
そのまま出てビビることもしばしばだ。
噂では、教師の中にも雨屋ノートを入手し、それで問題を考えたり作ったり、予想が的中しすぎて慌てて問題を替えたりする先生もいるという。あくまで噂だが。
ホームルームでもそうだ。あらかじめ、文句を言いそうな生徒、不平が出そうな生徒にそれとなく聞き取りを行い、意見をまとめておく。
いざホームルームが始まると、予想通りに意見が紛糾する。だけど雨屋にうまいこと利点と欠点を挙げられ、黒板にまとめられ、本質を指摘され、論破され、あるいは言いくるめられ。
最後には納得させられ、まあいいか、雨屋には敵わねーよ、で笑って終わってしまう。
ほんと、雨屋っていいやつだ。
きっと、彼氏になったら、すっげえ尽くしてくれるんだろう。
俺のこと、全部知ってしまって、好きなこととか、気持ちいい部分とか、して欲しいこととか、ぜんぶ満たしてくれるんだろうな。
生徒会長の野郎、本っ当に馬鹿だな。こんな凄くて素晴らしい女の子の本質も知らずに、ただ性欲を満たすためだけに。
そんな彼女は、雨屋小智子という高校生を演じている。全力で。
だから、夢の中でタガが外れると、抑えていた感情が爆発してしまう。
(なんで、なんの権利があってわたしを責めてるの!?からすまくんは)
(からすまくんのほうがよっぽど下品で人でなしだよ!ゲスの極みだよ!)
(死ね!死ね死ね死ね死ね死ね!死ね!)
そんな感情が爆発してしまう、雨屋だから。
夢の中で、本当に気持ち良いセックスなんて、してしまうと。
「ひい、あああああああ!だめええええっ!いく、いくぅ!いっくう!いっちゃううううううううううっ!」
うーむ。
木津川も乗宮も、井野口も真行寺も本織でさえ、こんな強烈な反応は見せたことがない。
澄ました顔がトレードマークな委員長がここまで乱れまくるのを見て、こちらも否が応でもみなぎってしまう。
俺は全力で、あらん限りの力を振り絞って、雨屋の身体を上から下へと突きまくった。
本来の性器とは、違う部分まで。
「い、いやあ、からすまくん、そ、そこ」
「いいだろ。きっと気持ちいいぜ」
「だめ、だめだったら・・・・・・痛っ、い、いや、だめ、ああ、き、きもちい、いい、いいいい、いいいいいいいい!」
菊門。
恐らく、現実では一度も味わうことのないであろう、性器ではない部位。
雨屋のアナルは、ものすごく気持ち良かった。
きゅっと締まった穴。膣とは違って、全体がぎゅっと締め付けてこない。入っている場所、その部分だけが、輪っかのように締め付けてくる。
その奥には、広い空間があった。
そのアンバランスが、さんざん雨屋の膣を堪能した俺に、違う快感を与えてくれた。
「雨屋のここ、すげえ、すげえよ。すっげえ気持ちいいよ」
「ほんと?嬉しい、気持ちいい、わたしも、気持ちいい!すごく!」
「ああ、ここに出すぞ雨屋、雨屋、あめや」
「うん、いいよ、いいよ!出して、ぜんぶ出して!」
ど。
どぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ。
大量の白濁液が、ゲートを通過してあふれ出た。
あー、気持ちええ。ここ、初めて使ったけど、信じられないくらい気持ちいいな。
まあ、夢だからできることだけど。
「ああ・・・・・・からすま、くん・・・・・・」
雨屋が身を捩り、唇をねだってくる。
俺はそれに応え、桃色の唇を楽しんだ。
「・・・・・・ねえ、からすまくん」
「ん?」
「ここって、ずっといちゃだめ?」
「もうすぐ、夢から覚めるかな」
さすがに、あの木津川との夢以来、俺はちゃんとアラームを鳴らすようにしている。
もうあんなのは、金輪際ごめんだ。
雨屋は、とても残念そうな顔になった。
「そっか・・・・・・もう、永遠にこのままでもいいけど」
「現実の身体はどーすんだよ」
「ね、もっかい、して?」
雨屋がおねだりしてくる。
それに応えることは、できる。なにせ夢の性欲は無限大だ。木津川と何年もセックスし続けて、それはよく分かっている。
だけど。
俺は彼女に頼みたいことがある。
「雨屋、残りの時間でちょっと、相談に乗って欲しい」
俺は真剣な顔で言った。
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