眠姦学校

るふぃーあ

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17 木津川千鶴3-2

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「・・・・・・木津川」

目覚めた時、まだ木津川はソファで眠っていた。
お互いに全裸で、互いを温め合うように、しっかりと密着して。

図書委員室のままだった。

「・・・・・・からすま、くん」
「これ、どっちだろうな」

最初の夢なのか。
あるいは、夢の夢なのか。
まあ、どっちでもいいや。どうせここから出られないんだし。

空腹は感じなかった。
ただ、尽きることのない性欲だけが感じられた。お互いに。

俺たちは、まだ下半身を密着させたままだった。
俺は再び腰を動かし、木津川はそれに応えた。

身体の場所を入れ替え、俺が木津川の、木津川が俺の股間を愛撫しあった。シックスナイン、てやつだ。
相変わらず、木津川のアソコはハチミツのような味がした。

木津川が俺の上に跨り、腰を振った。
もう、互いに隠すこともなかった。木津川は色んな体位を試したがった。四十八手、俺には知らない体位も、彼女は全て実技で教えてくれた。
俺は図書室のガラス窓に木津川の裸体を押し付け、外から見えちゃう、と悶える木津川を背後からずんずんと突いた。

また眠った。
次に起きた時、やっぱり図書委員室だった。
互いに笑いあい、キスしあった。そしてまた求めあった。

・・・・・・
・・・・・・・・・・・・

ここは、どこだろう。
夢の何層目だろう。
果たして、俺と木津川は元の世界へ戻れるのか。

今日は何日目だろう。
何度セックスして、何度眠ったんだろう。
だんだん、記憶があやふやになっていった。
食事も排泄もせず、俺たちはただ尽きることのない性欲にのみ突き動かされ、互いの身体を貪り続けた。

「・・・・・・ねえ、さとやくん」
「ん」

木津川に下の名前で呼ばれるのは、初めてだった。
ちづる、と呼んでみた。彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「なんだか、新婚さんみたい」
「そうかな」
「うん。新婚旅行で、初めて愛し合って、ハマっちゃって、ホテルの部屋から出られなくなるの」
「前にもしたじゃん」
「いいの、細かいことは。・・・・・・ね、ここから出られなくなったら、どうなるのかな」
「さあな」
「わたしたちの身体は、まだ図書室の奥、図書委員室にあるんだよね。誰かが気づいて入ってきたら、起こしてもらえるかもしれない。けど、そのままだったら」
「それでも、いつかは誰かが起こしに来るだろ?」
「うん。けど、もしまだ現実世界では10分くらいしか経っていなかったら?ここではもう、体感でかなり経った気がするけど」
「もう1週間くらい、ここにいるような気がするな」

もし木津川の言うように、一週間が10分くらいなのだとしたら。
1時間で6週間、つまり一月半を木津川とふたりっきりで過ごすことになる。

誰も図書室に来なかったら?
用務員さんが戸締まりをして、図書委員室まで確認しなくて。
翌朝、午前8時頃まで、15時間くらいいたとしたら。

・・・・・・やめよう。仮定の段階でただの推測だ。考えても仕方ない。

「今度から、絶対にアラームをつけようと思う」
「今度があればね」

抱き合って、また眠った。
目が覚めると、窓の外が夜になっていた。

ずっと変わっていないようで、徐々に夢の中でも時間は経過しているらしい。
壁のスイッチを押しても電灯は点かなかった。真っ暗闇の中で、木津川の細い身体を抱きしめた。

また、何度か眠った。
もう、時間の感覚はなくなっていた。窓の外は急に明るくなったり、また暗くなったりしていた。

微睡んでは起き、起きては身体を求めあった。
また微睡み、起き、まどろみ。

同じことばかりしていて飽きないか、と思われそうだが、木津川の肉体には、いつまでも飽きが来なかった。
彼女の控えめな身体つきはとても扱いやすく、感度も良く、性知識も豊富であり、柔らかでしなやかで、どんな体位も可能だった。
膣はみずみずしく、ほどよく締まり、何度でも、ずっと俺を楽しませてくれた。
彼女の舌はネコの舌のようによく動き、俺の身体をすみずみまで、余すことなく舐めてくれた。

あいかわらず空腹感は薄かったが、それは彼女の唾液や体液を飲み続けていたからかもしれない。
想像でお菓子の家を作り出した木津川だから、オムライスくらい作れそうだったが、互いに腹が減らず、お互いの身体を貪っていれば不満もなかった。

何度、彼女の指は俺を導いてくれただろう。
何度、口の中へ放っただろう。
何度、彼女の膣を、子宮を満たしただろう。

図書室の窓から見える季節は、徐々に移り変わっていった。
夏から秋になり、雪が積もり、桜が咲き。

また夏が来て、雪が積もった。
何度目の雪だったかも忘れてしまった。
もう、何年も経過したような気がした。

ある日のこと、起きたら窓の外が明るかった。
そこに、生後数ヶ月くらいの小さな女の子が立っていた。

「ママ」

女の子は、振り返ると木津川を見て笑った。
木津川が笑って、手を伸ばした。

「おいで」
「ママ、パパ」

ついに、子供が生まれた。
妊娠はしていなかったはずだ。少なくとも、直前の記憶にある木津川のお腹は膨らんでいなかった。

彼女は愛おしそうに小さな子を抱きしめ、乳をやった。
子供は嬉しそうに飲み、俺も飲んだ。

次の日。かどうかも分からない。
子供が増えていた。今度は男の子だった。

「パパみたいに、かっこいい子になって欲しいな」
「ちづるみたいに、優しい子でもいいぞ」

ゆっくりと、時間が流れた。
子供がいても、あいかわらず俺たちは毎晩愛し合った。毎日、毎晩。
子どもたちは仲良くママのおっぱいを飲み、並んで眠った。俺たちは親子4人、ひとつのソファで眠った。

永遠に続く、と思っていた毎日。
俺は窓の外を眺めていた。
誰もいない校庭を。

ふと思った。
どうして、俺たちはここから出られないんだろう。
この図書室は、どうして扉が閉まっているんだろう。窓が開かないんだろう。どうして、頑なに俺たちを外へ出してはくれないんだろう。

以前、千鶴と見た夢はこんなじゃなかった。
空を飛んだり、遊園地を作り出したりした。お菓子の家も。楽しかった。

今回、図書室に閉じ込められたのは、何らかの問題があったのだろう、そう漠然と思っていた。
今までずっと。

違う。
これは、違う。
今までの夢と、あまりに違いすぎる。

俺は、こんな夢を望んでなかった。
これは、木津川千鶴の夢だ。

彼女は。
俺を。
閉じ込めたかったんだ。

見慣れたソファに、愛しい妻が眠っていた。
高校生の頃と全く変わらない、細いままの姿で。

「ちづる」

俺は彼女に呼びかけた。
彼女は眠そうに、薄っすらと目を開けた。

「ん・・・・・・あなた、もう、朝?」
「そろそろ目覚めよう」

俺が言うと、彼女はとろん、とした目で俺を眺めた。

「そうできるなら、とっくに」
「ごめん、ずっと言い出せなかった。最初から、こうすればよかったんだ」

俺も、この空間が心地良かった。
ここでは、何もしないで良かった。勉強も、部活も授業も、テストも、受験も、面倒な人間関係も。
彼女を抱き、子供と遊び、ただ眠り続けていれば良かった。
空腹も労働もない、怪我も病気もない図書室。
ある意味、永遠の楽園だ。

俺は、刀を抜いた。
白刃を目にして、ちづるが息を呑んだ。

「・・・・・・わたしを、殺すの」
「そうじゃない。ただ、この空間を終わらせるだけだ」
「いつか、誰かが図書室に入って、図書委員室のわたしたちに気づいて、起こしてくれる」
「そうだな。そうかもしれない。・・・・・・だけど、それはいつだ?あと何年待てばいい?」
「・・・・・・乗宮さんの、ところに」
「え?」
「戻りたいの?あっちに」

ここに来て、初めて見せる、彼女の眼差し。
それは、小鳥を守る母鳥のような瞳だった。

「戻りたい。俺は乗宮に、みつるに、森下に会いたい」
「会わせない。誰にも」

ちづるが起き上がった。
ばさっ。
魔法使いのように、マントがはためく。手にした杖には、魔法の光が煌めいていた。

ラスボスはすぐそばにいたんだ。

彼女が魔法を放った。
刀が魔法を切り裂き、彼女の身体をとらえた。

「・・・・・・帰したくない、あなたを」
「ごめんな、ちづる」

彼女の姿が消えた。
子どもたちの姿も。ソファも。

図書室が、徐々に崩れていく。
砂のように、色褪せ、サラサラと砂のように。

砂の城は、完全に崩れ去った。


はあ。
空気に匂いがある、そんな当たり前のことを感じた。
ずっと、何年も、空気に香りのないところで暮らしていたかのように。

身体がこわばっていた。
まるで、ずっと寝たきりだったかのようだ。

隣を見た。
ちづるがいた。制服を着て、まぶたを閉じていた。

「ちづる」

俺が呼びかけると、ゆっくりと目を覚ました。

「あなた。・・・・・・帰ってきちゃったの?」
「ああ」

自力で目を覚ましたのは、初めてかもしれない。
俺は時計を見た。恐る恐る。

・・・・・・え。
たったの、10分。

何年経過しただろうか、と思っていた。未来永劫のようにも。
あれが10分なら、もし1時間も眠っていたなら。あるいはもっと長く、夕方まで、いや明日まで。
・・・・・・もう、戻ってこられなかったかもしれない。

「10分、て、長かったね」
「長すぎだろ」

彼女を抱きしめた。
それはもう、何年も慣れ親しんだ仕草だ。とても自然に感じた。

キスを、交わした。
唾液の味がした。

「・・・・・・ぜんぜん、レモン味じゃないね」
「そうだな」
「・・・・・・あなたのも、コンデンスミルクじゃないんだね、きっと」
「試してくれても構わないけど」
「遠慮しとく。乗宮さんに、怒られたくないし」
「同感だ」

図書委員室から出た。
何年も見続けた図書館の空間があった。
ここまでは、夢の中の光景と同じだ。

図書室の扉。
俺は扉に手をかけた。
これは、果たして開くのだろうか。

「ね、あなた」
「うん?」
「ここ、現実だよね?」
「たぶんな」

俺は、扉にかけた手に力を込めた。
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