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11 雪原リカ2
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11 雪原リカ2
誰もが謎の睡魔に襲われる、月曜日5限目。
それは、真面目なクラスの委員長であっても逃れることができない、恐るべきマモノの支配する時間である。
だが、逃れるすべはある。呪文の届かない場所へ行けばいいのだ。
ガラガラ
俺は保健室の扉を開けた。
「あら、どうしたのからすまくん」
「すんません、ちょっと気分が悪くて。休んでても、いいですか?」
「いいわよ。誰もいないし」
ベッドに横になると、先生がカーテンを開けて入ってきた。
「はい、体温計。・・・・・・熱はないみたいね、ゆっくり休んでなさい」
シャッ。
カーテンが閉まる。
あ。
体温計、回収されてしまった。
前回、ここで不思議な体験をした。
白昼夢、リカちゃん先生が夢の中にいるのに、身体は動いている、という不思議な時間だった。
あの時は、先生が渡してくれた体温計がキーアイテムとなっていた。
今回も同じことを期待してたのに、回収されたらどうすればいいんだ。
(同じ体温計じゃ、だめかもしれんしな)
木津川の時は、同じ消しゴムじゃ2度目が発動しなかった。
それは一度使ったキーアイテムがだめなのか、あるいは「木津川の消しゴム」というメタファーがだめなのか。
(カーテンとかベッドシーツじゃ・・・・・だめだろうなあ)
先生が洗濯しているわけじゃない。これは用務員さんとかだろう。
ふうむ。どうすればいい。
あー、リカちゃん先生、今日もノーパンノーブラなんだろうか。
またオナってたりするんだろうか。生徒がいるところで。
あるいは、俺がいるからオナってたとか?いやいや、それはないだろ。俺なんて生徒の一人ってだけ、ほとんど個人的な面識もないし。
(からすまくんが好きなの・・・・・・お願い、して)
なーんて。いやいや、ないない。ないったらない。あって欲しいけど。
しかし、前回の体験は本当にラッキーだった。
男子生徒たちの噂になってないところをみると、やっぱりリカちゃん先生に保健室でフェラしてもらったのなんて、きっと俺だけだ。全校生徒で、いや世界中で。
あああ、またフェラしてもらいてえええ。あの口の中を、また味わってみたいいい。
いやいや、違う。
今日はもっと壮大な目標を持ってここに来た。
リカちゃん先生に手コキしてもらって、フェラしてもらって、最後までしちゃうのだ。前回みたいに、催眠術にかかったみたいにして。
そのためには、どうしてもキーアイテムがいる。そして、うつらうつらし始めたばかりのリカちゃん先生の夢に侵入するのだ。
それさえできれば、あとは意のまま思うがまま。リカちゃんのマンコを、最後まで味わい尽くしてやるぜ。
そう、今日の俺は期待と股間を膨らませて、この保健室にやってきた。
いくら夢で楽しいことをしてようと、やっぱり現実は現実だ。したい。現実世界で。
そりゃ、一番したいのは森下と、だ。森下とセックスできて、中出しまでできちゃえればもう死んでも構わない。
でも、森下はきっと処女だ。いくら催眠にかけた状態とはいえ、さすがに処女膜をぶち抜いてしまえば痛みで我に返るかもしれない。それは困る。
だとすると、やはり最適なのはリカちゃん先生だ。催眠にかかりやすく、たぶん処女じゃない。俺のチンポなんて、安々と受け入れてしまえるだろう。
ああ、やりたい。リカちゃん先生と。
キーアイテム、なんだろう。考えろ。この保健室で、彼女に気取られないように、入手できるものを。
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
などとどうでもいいことを考えているうちに、本当に眠ってしまった。
「よ、さとや。ゆっくり休めたか?」
ぽん。
肩に手が置かれた。
友人にして恋のライバル、時生充のものだ。
俺ははあ、とため息を漏らす。計画失敗に。
「教室で寝るか、保健室で寝るかの違いだろ」
「でもさ、リカちゃん先生と同じ部屋で寝るって、なんかエロいよな」
「カノジョいる奴の発言とは思えんな」
「いやいや、男ってそんなもんっしょ」
ちょうど森下が近寄ってきたので、不穏当な会話はそこで中断された。
まあそうかもな。たとえカノジョがいたって、綺麗なものはキレイだ。
リカちゃん先生再襲撃計画はあっけなく不発に終わったが、意外なところでチャンスが巡ってきた。
週末のバスケ部の練習合宿に、先生が参加することになったのだ。
「マジで!?リカちゃんも泊まってくの?」
「ひゃっほううぅぅぅ!」
「やったぜ!リカちゃんの処女はオレが頂く!」
「既にヤリまくりだって、ヤリまくり」
「リカちゃん、体位は何が好きかなあ。やっぱ正常位かなあ」
「オレ絶対立ちバックで犯すわ」
「あああ、リカちゃんのアソコの匂いをかぎてぇ、あのほっそい脚の間に、アタマ突き込んでみてぇえええ!」
ギャーギャー騒ぐバスケ部男子達を、女子バスケ部員たち、特に乗宮は冷めた目で眺めていた。
「サルかよテメェら」
「いやいや、俺たちはセンパイらとは違うさ。なーさとや」
「いや、俺は純粋に嬉しい」
ニヤつく俺を、乗宮がさらにジト目で睨みつけた。
だって、リカちゃん先生が合宿所なんだぜ。いいものはいいじゃないか。
週末の合宿。
体育館を借り切っての男女合同合宿で、俺たちは朝から晩まで、嫌というほど暑い中を走り回らされた。
しかし、皆清々しいほど笑顔だった。やっぱり美人な女性教師がいるというのは、野郎どもの気持ちと股間を奮い立たせる何かがあるのだ。
「リカちゃん先生、どうしてバスケの合宿に?」
夕食の時、偶然隣の席に座ってきたので、聞いてみた。
リカちゃん先生は、いつもの吸い込まれそうな深い色の瞳で、じっと俺を見つめた。
「うん、半分は学校の業務ね。去年、この合宿で大きな怪我をした子がいたでしょ?それに対する、学校側としての対策ね」
「もう半分は?」
「ふふ、ひみつ」
いたずらな表情。
あー、この先生、男子をからかってないような素振りで、やっぱりからかってるよなあ。
「からすまくんがいるからよ」とか言わせてやりてぇ。くそ。
夜、俺はキーアイテムをポケットに、皆が寝静まるのを待った。
キーアイテムは、リカちゃん先生が夕食の時に忘れていった、いつも足に巻いてあるミサンガ。
俺たちの部屋は大部屋で2階、先生らの部屋は3階。この距離ならきっと。
しかし、22時の消灯時間を過ぎても、同じ部屋の野郎どもはなかなか眠らなかった。
トランプしたりテレビ観たり、ただくっちゃべってたり、動画みたりスマホゲーしてたりと、まあいつもの光景である。
結局、静かになったのは24時を超えていた。
先生がまだウトウトしていることを願いつつ、俺は意識を切り離した。
キュッキュッ。
聞き慣れた、体育館のフロアをバスケットシューズが擦る音。 汗っぽい匂い。
(あー、完全に夢の中、か)
こないだの保健室みたいに、半覚醒状態を狙うことは難しいようだ。残念。
俺は目の前の体育館へと入った。
いた。すぐに分かった。リカちゃん先生。
いや違うな、服も体操服と短パンだし、なんだか若い。俺と同じくらいだ。
(高校生の時の夢、かな)
先生は数人の同級生らしき女子たちと、バスケの練習を見て黄色い声援を送っていた。
時刻は昼下がり、外は明るい。
ちゃんとした試合ではなく、スリーオンスリーのようだ。
(うはー、高校生リカちゃん、めっちゃかわえええええ)
リカちゃん先生は、高校生でも超可愛かった。
いや、自分の夢だし、補正されているのかもしれないけど。
そして、そんな彼女が目で追っているのは。
(あ、兄貴!?)
俺の兄貴だった。
なんで、と思ったが、考えてみればどっちもうちの高校のOBOGだし、年齢もほぼ同じだし。いや兄貴がひとつ上か。
俺の兄貴もバスケ部だった。万年補欠の俺なんかと違い、バリバリのレギュラー、エースフォワードだった。
俺がバスケしてるのも、小さい頃に教えてもらって、兄貴に憧れたからだし。
「カラスマセンパイ、がんばってー!」
別の女子が、声をあげる。
いいなあ。俺、そんなこと言われたことねえ。ただの一度も。
試合は僅差で推移していたが、ラスト2秒、兄貴のスリーポイントがキマり、大逆転で終わった。
くそ。夢の中でもカッコいいとか、どんなんだよ。くそ。
皆に祝福され、笑顔の兄貴を、リカちゃん先生はじっと見つめていた。
あの深い色の瞳で。
唐突に、場面が変わった。
体育館の奥、倉庫。
汗っぽい匂いが充満する中、白いマットの上で、リカちゃん先生は俺の兄貴に組み敷かれていた。
ユニフォームと体操服のまま、腰と腰が繋がる。
ぐい、と押し込まれて、リカちゃん先生は歓喜の声を上げた。
「リカ、好きだ」
「カラスマセンパイ、嬉しい、大好き」
「リカ、リカ、リカ」
「あああ、センパイ、センパイ」
な。
なんだこれ。
これは現実にあった光景なのか、それともリカちゃん先生の妄想なのか。
兄貴は高校の頃、彼女がいたはずだが(もう別れたはずだが)、あれってリカちゃん先生のことだったのか?
兄貴のことは好きだが、ここでは敵である。
俺は兄貴の背後からそっと近づき、恐ろしく速い手刀を首根っこへ振り下ろした。俺でなければ見逃しちゃうね。
消え失せた兄貴に代わって、リカちゃん先生に抱きつく。
ギンギンに勃起したモノを、力の限りに突き込んだ。
「あ、ああああああっ!すごい、センパイ、すごいのっ!」
気付いた様子はなかった。
何せ、今俺に抱かれているのは高校生のリカちゃん先生であり、俺が入れ替わった兄貴は高校生の頃の兄貴である。細かい部分はともかく、あんまり変わらない。
(うおおおおおお、リカちゃんのアソコ、めっちゃ気持ちえええええ)
締め付けがすげえ。まじで気持ちいい。
俺の腰の動きに合わせて喘ぎ、乱れる姿は、もう永遠に目に焼き付けておきたいほどに素晴らしかった。
(よ、よし、そろそろ、中出しして)
「り、リカちゃん、そろそろ、中に」
「出して、中に、中に出してえええ!」
「い、いくぞ、中に、ぜんぶ___」
ごす。
腹部に強烈な一撃を喰らって、俺は悶絶した。
(な、にが、どうなって)
ぱち。
覚醒した。
合宿所の部屋、その天井が見えた。
眩暈がする。いきなり夢から覚めると、たまにこうなる。
腹の上に、何かが乗っている。
みつるの足だった。
(く、くそ、こいつ、めっちゃいい場面で)
あーあ。せっかく、リカちゃん先生に中出しする直前だったのに。
おのれみつる。もう絶対に、こいつの隣の布団では寝ないぞ。
週明け、学校の保健室で、俺はリカちゃん先生にミサンガを手渡した。
「これ、先生のじゃないですか?」
「あら、ほんと。どこで落としたんだろう、と思ってたんだけど」
「合宿の夕食の時、先生が座ってたとこに落ちてましたよ」
「ありがとう」
リカちゃん先生はミサンガを持ち上げ、眺めた。
「彼氏からの、ですか?」
「ん、まあ、そんなとこかな。・・・・・・ねえ、からすまくん」
「はい?」
「星矢センパイは、お元気かしら?」
「ええまあ、元気だと思いますよ」
やっぱ、兄貴の夢を見てたんだな。
兄貴は就職して、隣の県に住んでいる。盆と正月くらいしか帰って来ない。
まあ便りがないってことは、元気なんだろう。
「リカちゃん先生、兄貴と知り合いですか?」
「えっ?・・・・・・ううん、そうね、知り合いってほどでもないの。でも、カッコよくてすごく人気のあるセンパイだったから。憧れだったなあ」
遠い目。
体育館の中で、ふたりは。
あの夢は、単なる願望だったのだろうか。
「俺とは段違いですね」
「あら、そんなことないわよ。からすまくんもカッコいいわ。よく似てるし。モテるでしょ?」
「全然」
「ふふ。きっとそのうちに分かるわ。・・・・・・星矢センパイ、なんだか不思議なご縁があったの」
「縁?」
「そう。・・・・・・時々ね、眠い授業の時、センパイが夢に出てきたの。・・・・・・楽しくてカッコよくて、ちょっとエッチなセンパイが、ね」
「・・・・・・え?」
楽しげに笑う先生と裏腹に、俺は慄然としていた。
まさか。うちの兄貴にも。
この能力が。
誰もが謎の睡魔に襲われる、月曜日5限目。
それは、真面目なクラスの委員長であっても逃れることができない、恐るべきマモノの支配する時間である。
だが、逃れるすべはある。呪文の届かない場所へ行けばいいのだ。
ガラガラ
俺は保健室の扉を開けた。
「あら、どうしたのからすまくん」
「すんません、ちょっと気分が悪くて。休んでても、いいですか?」
「いいわよ。誰もいないし」
ベッドに横になると、先生がカーテンを開けて入ってきた。
「はい、体温計。・・・・・・熱はないみたいね、ゆっくり休んでなさい」
シャッ。
カーテンが閉まる。
あ。
体温計、回収されてしまった。
前回、ここで不思議な体験をした。
白昼夢、リカちゃん先生が夢の中にいるのに、身体は動いている、という不思議な時間だった。
あの時は、先生が渡してくれた体温計がキーアイテムとなっていた。
今回も同じことを期待してたのに、回収されたらどうすればいいんだ。
(同じ体温計じゃ、だめかもしれんしな)
木津川の時は、同じ消しゴムじゃ2度目が発動しなかった。
それは一度使ったキーアイテムがだめなのか、あるいは「木津川の消しゴム」というメタファーがだめなのか。
(カーテンとかベッドシーツじゃ・・・・・だめだろうなあ)
先生が洗濯しているわけじゃない。これは用務員さんとかだろう。
ふうむ。どうすればいい。
あー、リカちゃん先生、今日もノーパンノーブラなんだろうか。
またオナってたりするんだろうか。生徒がいるところで。
あるいは、俺がいるからオナってたとか?いやいや、それはないだろ。俺なんて生徒の一人ってだけ、ほとんど個人的な面識もないし。
(からすまくんが好きなの・・・・・・お願い、して)
なーんて。いやいや、ないない。ないったらない。あって欲しいけど。
しかし、前回の体験は本当にラッキーだった。
男子生徒たちの噂になってないところをみると、やっぱりリカちゃん先生に保健室でフェラしてもらったのなんて、きっと俺だけだ。全校生徒で、いや世界中で。
あああ、またフェラしてもらいてえええ。あの口の中を、また味わってみたいいい。
いやいや、違う。
今日はもっと壮大な目標を持ってここに来た。
リカちゃん先生に手コキしてもらって、フェラしてもらって、最後までしちゃうのだ。前回みたいに、催眠術にかかったみたいにして。
そのためには、どうしてもキーアイテムがいる。そして、うつらうつらし始めたばかりのリカちゃん先生の夢に侵入するのだ。
それさえできれば、あとは意のまま思うがまま。リカちゃんのマンコを、最後まで味わい尽くしてやるぜ。
そう、今日の俺は期待と股間を膨らませて、この保健室にやってきた。
いくら夢で楽しいことをしてようと、やっぱり現実は現実だ。したい。現実世界で。
そりゃ、一番したいのは森下と、だ。森下とセックスできて、中出しまでできちゃえればもう死んでも構わない。
でも、森下はきっと処女だ。いくら催眠にかけた状態とはいえ、さすがに処女膜をぶち抜いてしまえば痛みで我に返るかもしれない。それは困る。
だとすると、やはり最適なのはリカちゃん先生だ。催眠にかかりやすく、たぶん処女じゃない。俺のチンポなんて、安々と受け入れてしまえるだろう。
ああ、やりたい。リカちゃん先生と。
キーアイテム、なんだろう。考えろ。この保健室で、彼女に気取られないように、入手できるものを。
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
などとどうでもいいことを考えているうちに、本当に眠ってしまった。
「よ、さとや。ゆっくり休めたか?」
ぽん。
肩に手が置かれた。
友人にして恋のライバル、時生充のものだ。
俺ははあ、とため息を漏らす。計画失敗に。
「教室で寝るか、保健室で寝るかの違いだろ」
「でもさ、リカちゃん先生と同じ部屋で寝るって、なんかエロいよな」
「カノジョいる奴の発言とは思えんな」
「いやいや、男ってそんなもんっしょ」
ちょうど森下が近寄ってきたので、不穏当な会話はそこで中断された。
まあそうかもな。たとえカノジョがいたって、綺麗なものはキレイだ。
リカちゃん先生再襲撃計画はあっけなく不発に終わったが、意外なところでチャンスが巡ってきた。
週末のバスケ部の練習合宿に、先生が参加することになったのだ。
「マジで!?リカちゃんも泊まってくの?」
「ひゃっほううぅぅぅ!」
「やったぜ!リカちゃんの処女はオレが頂く!」
「既にヤリまくりだって、ヤリまくり」
「リカちゃん、体位は何が好きかなあ。やっぱ正常位かなあ」
「オレ絶対立ちバックで犯すわ」
「あああ、リカちゃんのアソコの匂いをかぎてぇ、あのほっそい脚の間に、アタマ突き込んでみてぇえええ!」
ギャーギャー騒ぐバスケ部男子達を、女子バスケ部員たち、特に乗宮は冷めた目で眺めていた。
「サルかよテメェら」
「いやいや、俺たちはセンパイらとは違うさ。なーさとや」
「いや、俺は純粋に嬉しい」
ニヤつく俺を、乗宮がさらにジト目で睨みつけた。
だって、リカちゃん先生が合宿所なんだぜ。いいものはいいじゃないか。
週末の合宿。
体育館を借り切っての男女合同合宿で、俺たちは朝から晩まで、嫌というほど暑い中を走り回らされた。
しかし、皆清々しいほど笑顔だった。やっぱり美人な女性教師がいるというのは、野郎どもの気持ちと股間を奮い立たせる何かがあるのだ。
「リカちゃん先生、どうしてバスケの合宿に?」
夕食の時、偶然隣の席に座ってきたので、聞いてみた。
リカちゃん先生は、いつもの吸い込まれそうな深い色の瞳で、じっと俺を見つめた。
「うん、半分は学校の業務ね。去年、この合宿で大きな怪我をした子がいたでしょ?それに対する、学校側としての対策ね」
「もう半分は?」
「ふふ、ひみつ」
いたずらな表情。
あー、この先生、男子をからかってないような素振りで、やっぱりからかってるよなあ。
「からすまくんがいるからよ」とか言わせてやりてぇ。くそ。
夜、俺はキーアイテムをポケットに、皆が寝静まるのを待った。
キーアイテムは、リカちゃん先生が夕食の時に忘れていった、いつも足に巻いてあるミサンガ。
俺たちの部屋は大部屋で2階、先生らの部屋は3階。この距離ならきっと。
しかし、22時の消灯時間を過ぎても、同じ部屋の野郎どもはなかなか眠らなかった。
トランプしたりテレビ観たり、ただくっちゃべってたり、動画みたりスマホゲーしてたりと、まあいつもの光景である。
結局、静かになったのは24時を超えていた。
先生がまだウトウトしていることを願いつつ、俺は意識を切り離した。
キュッキュッ。
聞き慣れた、体育館のフロアをバスケットシューズが擦る音。 汗っぽい匂い。
(あー、完全に夢の中、か)
こないだの保健室みたいに、半覚醒状態を狙うことは難しいようだ。残念。
俺は目の前の体育館へと入った。
いた。すぐに分かった。リカちゃん先生。
いや違うな、服も体操服と短パンだし、なんだか若い。俺と同じくらいだ。
(高校生の時の夢、かな)
先生は数人の同級生らしき女子たちと、バスケの練習を見て黄色い声援を送っていた。
時刻は昼下がり、外は明るい。
ちゃんとした試合ではなく、スリーオンスリーのようだ。
(うはー、高校生リカちゃん、めっちゃかわえええええ)
リカちゃん先生は、高校生でも超可愛かった。
いや、自分の夢だし、補正されているのかもしれないけど。
そして、そんな彼女が目で追っているのは。
(あ、兄貴!?)
俺の兄貴だった。
なんで、と思ったが、考えてみればどっちもうちの高校のOBOGだし、年齢もほぼ同じだし。いや兄貴がひとつ上か。
俺の兄貴もバスケ部だった。万年補欠の俺なんかと違い、バリバリのレギュラー、エースフォワードだった。
俺がバスケしてるのも、小さい頃に教えてもらって、兄貴に憧れたからだし。
「カラスマセンパイ、がんばってー!」
別の女子が、声をあげる。
いいなあ。俺、そんなこと言われたことねえ。ただの一度も。
試合は僅差で推移していたが、ラスト2秒、兄貴のスリーポイントがキマり、大逆転で終わった。
くそ。夢の中でもカッコいいとか、どんなんだよ。くそ。
皆に祝福され、笑顔の兄貴を、リカちゃん先生はじっと見つめていた。
あの深い色の瞳で。
唐突に、場面が変わった。
体育館の奥、倉庫。
汗っぽい匂いが充満する中、白いマットの上で、リカちゃん先生は俺の兄貴に組み敷かれていた。
ユニフォームと体操服のまま、腰と腰が繋がる。
ぐい、と押し込まれて、リカちゃん先生は歓喜の声を上げた。
「リカ、好きだ」
「カラスマセンパイ、嬉しい、大好き」
「リカ、リカ、リカ」
「あああ、センパイ、センパイ」
な。
なんだこれ。
これは現実にあった光景なのか、それともリカちゃん先生の妄想なのか。
兄貴は高校の頃、彼女がいたはずだが(もう別れたはずだが)、あれってリカちゃん先生のことだったのか?
兄貴のことは好きだが、ここでは敵である。
俺は兄貴の背後からそっと近づき、恐ろしく速い手刀を首根っこへ振り下ろした。俺でなければ見逃しちゃうね。
消え失せた兄貴に代わって、リカちゃん先生に抱きつく。
ギンギンに勃起したモノを、力の限りに突き込んだ。
「あ、ああああああっ!すごい、センパイ、すごいのっ!」
気付いた様子はなかった。
何せ、今俺に抱かれているのは高校生のリカちゃん先生であり、俺が入れ替わった兄貴は高校生の頃の兄貴である。細かい部分はともかく、あんまり変わらない。
(うおおおおおお、リカちゃんのアソコ、めっちゃ気持ちえええええ)
締め付けがすげえ。まじで気持ちいい。
俺の腰の動きに合わせて喘ぎ、乱れる姿は、もう永遠に目に焼き付けておきたいほどに素晴らしかった。
(よ、よし、そろそろ、中出しして)
「り、リカちゃん、そろそろ、中に」
「出して、中に、中に出してえええ!」
「い、いくぞ、中に、ぜんぶ___」
ごす。
腹部に強烈な一撃を喰らって、俺は悶絶した。
(な、にが、どうなって)
ぱち。
覚醒した。
合宿所の部屋、その天井が見えた。
眩暈がする。いきなり夢から覚めると、たまにこうなる。
腹の上に、何かが乗っている。
みつるの足だった。
(く、くそ、こいつ、めっちゃいい場面で)
あーあ。せっかく、リカちゃん先生に中出しする直前だったのに。
おのれみつる。もう絶対に、こいつの隣の布団では寝ないぞ。
週明け、学校の保健室で、俺はリカちゃん先生にミサンガを手渡した。
「これ、先生のじゃないですか?」
「あら、ほんと。どこで落としたんだろう、と思ってたんだけど」
「合宿の夕食の時、先生が座ってたとこに落ちてましたよ」
「ありがとう」
リカちゃん先生はミサンガを持ち上げ、眺めた。
「彼氏からの、ですか?」
「ん、まあ、そんなとこかな。・・・・・・ねえ、からすまくん」
「はい?」
「星矢センパイは、お元気かしら?」
「ええまあ、元気だと思いますよ」
やっぱ、兄貴の夢を見てたんだな。
兄貴は就職して、隣の県に住んでいる。盆と正月くらいしか帰って来ない。
まあ便りがないってことは、元気なんだろう。
「リカちゃん先生、兄貴と知り合いですか?」
「えっ?・・・・・・ううん、そうね、知り合いってほどでもないの。でも、カッコよくてすごく人気のあるセンパイだったから。憧れだったなあ」
遠い目。
体育館の中で、ふたりは。
あの夢は、単なる願望だったのだろうか。
「俺とは段違いですね」
「あら、そんなことないわよ。からすまくんもカッコいいわ。よく似てるし。モテるでしょ?」
「全然」
「ふふ。きっとそのうちに分かるわ。・・・・・・星矢センパイ、なんだか不思議なご縁があったの」
「縁?」
「そう。・・・・・・時々ね、眠い授業の時、センパイが夢に出てきたの。・・・・・・楽しくてカッコよくて、ちょっとエッチなセンパイが、ね」
「・・・・・・え?」
楽しげに笑う先生と裏腹に、俺は慄然としていた。
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この能力が。
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