眠姦学校

るふぃーあ

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10 雨屋小智子2-1

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10 雨屋小智子2



委員長の様子がおかしい、そう誰もが噂し始めた。

いつもの快活さや歯切れの良さは身を潜め、ぼんやりとして目の下にクマができている。
テスト前なのに、雨屋ノートが回って来ない。すなわちテスト対策もできないってことだ。

英語の時間には完全に寝こけていて、当てられても気付かなくて、彼女にしては珍しいことに、教師からひどく叱られていた。
テスト期間だったし、と思っていたが、テスト期間が終わっても、やはり雨屋の様子はおかしなままだった。

「何ともないよ、って、言うんだけど」

森下を始め、クラスの女子たちも心配していたが、雨屋は決まって笑顔で否定するだけだった。
俺は昼休み、筆箱忘れたから、と彼女に鉛筆を借りた。消しゴムも。

雨屋は誰かが筆記用具を忘れた時のために、鉛筆と消しゴムを一揃い用意してある。全く、大した委員長だ。
月曜5限、俺は鉛筆を握りしめた。


暗い。
井野口の時みたく、真っ暗闇の空間、って訳じゃなかった。夜でもない。
誰もいない教室の窓の外は、雨が降っていた。

雨屋だけに、とか下らないことを考えつつ、俺は教室を出て彼女を探した。

そして3年の教室で、彼女を見つけた。

雨屋は呆然とした表情で、無人の教室の隅っこで体育座りをしていた。
が。

(う、何だこの臭い)

異臭がした。
珍しい。夢の中はカラフルで音もしたりするが、あまり強く匂いを感じたことはなかった。

そして原因は、一目瞭然だった。

雨屋は血溜まりの中に座っていた。
真っ赤な血、ではなく、真っ黒なものだったが。
別に放送倫理規定を守ってるわけではないだろう。これは彼女のイメージとしての血液だ。

そして、その血液は彼女の身体から流れ出ていた。
今も流れ出ている。
パンツを期待して体育座りのスカートを覗き込んだ俺は、局所に突き刺さった短剣と、そこからゆっくりと流れ出る血に、背筋が凍った。

「あ、雨屋」

俺の声に、彼女はぼんやりと顔を上げた。

「・・・・・・からすま、くん?どうして」
「いや、鉛筆のお礼、しようと思って」

意味不明な発言をしつつ、でも彼女の局所に突き刺さった短剣から、目を離せないでいた。
彼女は俺の視線に気づいて、そこを隠そうとした。

「雨屋、それ」
「なんでも、ないよ。なんでも」
「・・・・・・抜いていいか」

そっと、彼女に近づく。

答えを待たず、俺は短剣の柄に手をかけた。
一気に引き抜く。

「い、痛っ」
「保健室へ行こう、雨屋」

肩を貸し、俺は彼女を保健室まで連れて行った。
真っ暗な学校だが、ちゃんと保健室には電灯が灯っていた。

「あら、いらっしゃい」

夢の中の保健室にもちゃんとリカちゃん先生がいて、笑顔で迎えてくれた。

「ども」
「まあ、ひどい怪我ね。手当するから、休んで」

先生は雨屋をベッドに寝かせてくれ、手当てしてくれた。
そして消えた。

「雨屋」
「・・・・・・」
「お前それ、何があった」
「・・・・・・わたしね、生徒会長のこと、好きだったんだ。3年の」
「知ってる」

夢の中で、見たからな。
強制的ではあったけど、生徒会長との性行為。
あれは彼女の期待、そのものだったんだろう。

「・・・・・・2週間前、先輩の方から誘ってくれたんだ。デートに」
「良かったな」
「良くないよ。・・・・・・で、途中で気分が悪いって言われて、ちょっと休みたいって言われて」
「・・・・・・」

だいたい分かった。
でも、今はただ彼女の話をじっと聞いていた。

「すぐ良くなるからって、ら、ラブホに」
「・・・・・・」
「そしたら先輩、突然襲いかかってきて・・・・・・お、おまえも期待してんだろって」
「・・・・・・」

最低だな、あいつ。

「む、無理矢理脱がされて、パンツも破かれて、そ、そのまま」
「もういい、雨屋」
「い、言わせて。・・・・・・誰にも、言えなかった。誰にも!誰にも!お父さんにも、お母さんにも!親友にも!言おうと思ったのに!・・・・・・・・・・・・でも言ったら、言っちゃったら!?言ったらどんな目で見られるの!?わたし、汚い、汚いんだよ!もう、汚れちゃった!汚されちゃったんだよ!」
「・・・・・・」
「ものすごく怖くて、痛くて、意識がぼーっとなって、でもそれが同意してる、って思われて。・・・・・・お前のこと好きなんだ、愛してるんだって何度も耳元で言われたの。変だけど、もうおかしくなってて、うん、て言っちゃった。それを動画に撮られてて」
「・・・・・・」
「あとで動画を見せられた。わたしが、無理矢理されてる動画を。わたし、うん、て言ってた。言わされてたんだ。でも言っちゃってた。センパイ、嬉しいですって」
「・・・・・・」
「あれを出されたら、同意してたって言われると思う。だから何も言えなかった。誰にも、何も」
「・・・・・・」

外はまだ、雨が降り続いていた。
昼間なのに、夜みたいだ。

「・・・・・・もう、死んだ方がいい。死んだほうがまし」
「雨屋」
「先輩、あれからLIMEも返事なくって、たぶんブロックされてる。他に付き合ってる人、いるみたいだし」
「・・・・・・」
「わたし、遊ばれただけなんだ」

ごうっ。
外の風が、一層強くなった。

「死にたい、死にたい、死にたい、死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい、死にたい」
「・・・・・・」
「けど、わたしが悪いんだと思う。デートに誘ってもらって、有頂天になってて、ホテルまでのこのことついてって」
「・・・・・・」
「先輩とふたりっきりになれるって考えて、どきどきしてた。もしかして、だ、抱きしめてくれるかも、キスとかしてくれるかもって。とか。・・・・・・バカだ、わたし」
「・・・・・・」
「夢の中でも、先輩にそういうことされる夢、見たことあった。何度も。わたし、期待しちゃってたんだ。だから、わたしの自業自得」
「・・・・・・んなわけないだろ」
「・・・・・・えっ?何?」
「んなわけねーって、言ってんだよ!」

傍にあった保健室の丸椅子を蹴飛ばした。
俺は自分でも良くわからないほど、激昂していた。
被害者であるはずの、雨屋に向かって。

「か、からすま、くん」
「てめーは被害者だろ!お前が悪い?ちげーだろ!そんなもん、あのクズが悪いに決まってるだろーが!レイプされて自分が悪かったとか、どういう思考回路してんだてめーは!」
「で、でも」
「じゃあ俺が今からお前をレイプしてやるよ!でもてめーはまた自分が悪い、って思うのか?怪我して、保健室へ連れ込まれたからって」
「・・・・・・それは」
「やった奴が悪いんだよ!クソムカつく!あのクズにも、てめーにもな雨屋!」
「・・・・・・ごめんなさい」
「なんで謝んだよ!てめーも怒れよ!被害に遭って、俺にも言われ放題言われて、ムカつきもしねーのかよ!」

いつのまにか、肩で息をしていた。
なんで俺はこんなに怒ってるんだろう。

少しクールダウンして、考えてみる。
ああ、そうか。そういうことか。
俺、結構好きだったんだな。雨屋のこと。

「・・・・・怒ってるよ」
「雨屋?」
「怒ってないわけ、ない!わたし、初めてだったんだよ!?キスだって、せ、セックスだって。初めてを奪われて、怒ってないわけない!むかついてるよ!」
「いや、あ、雨屋」
「それをそんなふうにいうなんて、どういうこと!?なんで、なんの権利があってわたしを責めてるの!?からすまくんは!」

怒った雨屋、というのを、初めて見た。
彼女は普段、柔和な笑顔を決して崩さない。
たとえクラス内で意見が割れた時でさえ、最後まで冷静に笑顔で収集してしまうのが彼女だ。その雨屋が、激怒していた。

「いやあのな、雨屋、俺に怒っても」
「だいたい、からすまくんってなんなの!?ここはどこなの!?どうして勝手にわたしの心の中に入ってきてるの!?なに勝手に覗き込んでるのよ!どうして、わたしの、言いたくない秘密を知ってしまってるの!」
「いや、これは」
「さっきなんて言ったの?今からレイプしてやるって!?わたしに?被害を告白したばかりの、心を痛めてる女の子に?信じらんない!センパイをゲス呼ばわりしておいて、からすまくんのほうがよっぽど下品で人でなしだよ!ゲスの極みだよ!」
「いや、クズとは言ったがゲスとは」
「最低、最低!からすまは最低な男、わたし覚えたからね。からすまって最低だ、そうクラスに言いふらしてやる!あはは、からすまくんは最低、あはは!あはははははははは!」

壊れた。
雨屋が壊れた。

いつまで哄笑していただろう。
未来永劫笑い続けるかと思っていたが、いつのまにか雨屋は沈黙していた。

「・・・・・・ごめん、からすまくん」
「落ち着いたか?」
「わたし、やっぱりダメだ。ほんと、もうだめだ。もうだめ、もう、もう。最低だ、わたしって。最低、最低の女だ。からすまくんにまでこんなこと言っちゃって、勝手に傷ついて、傷つけて、ほんと最低、死にたい、消えたい。もう、もう・・・・・・」

俺はベッドの上で泣く雨屋を抱きしめた。
雨屋はすがりついてきた。

胸が温かくなった。
彼女の涙が、服に染み通ってきたのだ。

俺もベッドに横になった。
いつのまにか、衣服は消えていた。お互いに。

横抱きにしたまま、俺は彼女の頭を引き寄せた。
唇が触れ合い、次の瞬間猛烈に絡め合った。
息をする間もなく、息をする必要もなく、ただただ互いの唇を求め合った。

俺は、彼女の中に入っている自分に気づいた。
挿入しようとはしてなかったけど、したいとは思っていた。

短剣の傷や痛みなどどこにもなく、俺は彼女を貫いた。
彼女も反応していた。甘い吐息を漏らして俺の耳を楽しませた。腰をくねらせ、何度も何度も俺の名を呼んだ。
脚を俺の腰に絡め、ぎゅっと締め上げた。

ああ、と彼女が薄い瞳を開けた。

「だ、だめ、からすまくん、わたし、いっちゃいそう」
「いいよ。いけよ」
「あ、あ、だめ、もうだめ、あっ、あっ」
「俺も、雨屋の、中に」
「だめ、中はだめ、赤ちゃん、できちゃう」
「大丈夫さ。これは夢なんだから」
「夢なんだ、これって夢なんだ。あっ、き、気持ちいい、気持ち良すぎるよ、からすまくん」
「あっ、も、もうだめ、だめ、だめ・・・・・・・・・・・・だめ、だめえええええっ!」

ひときわ大きく、雨屋の身体が跳ねた。
俺も雨屋の中へと、自分を解き放つ。
どく、どく、とリアルな感覚で、肉棒から液体が注がれていく。
彼女の心の中へと。


「夢、だったんだよね?」
「ああ」

放課後。
俺は雨屋と、屋上にいた。

通り雨があがった屋上は誰もおらず、雨の香りが充満していた。
それは決して不快な感覚ではなかった。

「ものすごく、もんのすごく、現実みたいだったけど」
「だけど夢だ」
「でも、会話内容は覚えてる、のかな」
「最低、からすまは最低の男、ゲスとクズの極み」
「あ、あれはその、う、売り言葉に買い言葉、てやつで」
「はは。気にしてねー」

顔を真っ赤にしている雨屋は、本当に可愛かった。
まだ腰の辺りに、性交後の余韻が残っている。恐らく、彼女にも。

「し、してたよね、わたしたち」
「雨屋の身体、最高」
「・・・・・・やっぱりからすまくんって最低。・・・・・・ごめん、嘘。なんか、心が軽くなっちゃった。言いたいことぜんぶ言って、喚きたい気持ちも、怒りも悲しさも、ああいう行為に対する嫌悪感も、ぜーんぶまとめて雨に流されちゃった感じ」
「良かったな」
「・・・・・・ね、これからどうすればいいのかな、私」
「告発すべきだな」
「え?」

雨屋が、俺を見つめた。
メガネの奥の瞳には、また怯えた色があった。

「あの先輩、常習犯だろ。手口も慣れてて、被害者は雨屋だけじゃない。違うか?」
「・・・・・・たぶん」
「雨屋が感じた悲しい気持ち、それを放置したら、もっと悲しむ人が出る。告発して、未然に防ぐべきだ」
「そう、だけど」

端正な顔が歪む。
そりゃそうだろう。誰だって怖い。他人からどう見られるか、どう思われるか。
気丈なはずの雨屋だって、まだ17歳の女子高生なのだから。

報復は十分に考えられる。
噂だけでなく、リベンジポルノも流されるだろう。
それはネット空間の中で、永久に彼女を苦しめ続ける。
俺は雨屋の肩に手を置いた。

「1週間、準備に時間をくれ、雨屋。俺がなんとかしてやる」
「できるの?そんなこと。からすまくんに」
「どうかな。・・・・・・できるだけのことは、してみる」


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